天珠くらべ・その2さて、今度はベースが色つきの天珠C、Dタイプです。 ![]() ●ベースは色つき ネットや店頭の説明を見ると、Cは瑪瑙、Dは瑪瑙や紅玉随であると書かれています。 写真C-2を見てもわかるように、穴の中までまっ黒。 ●Cタイプの特徴 「夢幻天珠」の名前で売られていますが、これはどうやらブランド名のようです。 Cタイプの特徴は、なんといっても模様の線に色が付いていること。 私は持っていませんが、ベースの色が赤かったり、赤と黒のまだらだったりと、 かなり華やかな印象のものが見られます。 ●Cタイプにずずいと肉薄 では、Cタイプをよく見てみましょう。 写真Cでは、模様部分は白く細い線で縁取りされたうえ、 中がオレンジ、茶色、黒のまだらになっています。 では、黒い石(瑪瑙)のうえに細くて白い線で模様のアウトライン(縁取り)を書き、 オレンジ色の染料で中を塗りつぶしたのでしょうか? ●ハイテクニックの極細縁取り? これはまったく私の想像ですが、アウトライン(縁取り)をとったのではないと思います。 ちょっと順序が前後しますが、写真D-4を見て下さい。 これは模様の線の部分を染料で書いた具合がよくわかる写真ですが、 染料が濃く乗った線の中心部分は色が濃く、 染料の薄い部分は濃い部分の縁取りのように見えています。 このことから、C天珠では色つきの染料で模様をかいているのではないかと思います。 ●にじみ具合を見よ C天珠で、もうひとつ気になるところがあります。 写真C-1に写っている模様のにじみです。 模様がにじんでゆがんでいるというわけではありませんが、 模様の染料がベースに溶け出したようにも見えます。 全体写真Cにうちっている「○」模様部分では○の中心が白くなり、 ベースの黒が見えません。 ところが、写真C-2に右端の方に模様の一部が写っているのですが、 こちらはさほどにじんでいないのです。 ●二重塗りの可能性 またまた勝手な想像ですが、この天珠では、黒い石の上に黒っぽい染料を一度塗り、 その上に模様を書いているのではないか……と思います。 「Cタイプの特徴」のところに、ベースが赤と黒のまだらだったり、 あざやかなものもあると書きました。 もちろん、瑪瑙ならばそのような石もあり得ます。 ですが、ネットの写真などで見る限り、どうも石っぽく見えないのです ちょっと話は変わりますが、鋳造の作品では、金属の表面に薬品を焼き付けたり、 薬品に漬けて表面を化学反応させたりして色を付ける (コーティングする)ということをします。 鋳造ではありませんが、刀の鍔が黒いのも、 黒さびをつけてコーティングしているためです。 この鋳造で行う色つけ(コーティング)の中に、 夢幻天珠によく似た赤黒まだらの色が出る方法があるのです。 なので、写真Cに見える両端の線模様の間に一度染料を塗り、 その上に模様を描いているのではないかと考えます。 そうすれば、模様のにじみも納得がいきますし、 ベースが赤や黒になるのも説明が付きます。 ●Dタイプ天珠の特徴 これは、天珠の中でもよく見かけるタイプで、 サイズ、模様、形のバリエーションが豊かです。 西蔵天珠の名前で売られていることが多いようですが、 これもブランド名っぽいような気がします。 写真Dでサイズ別に見ると、上に3写っている小型のもの (左から2cm、1.5cm、7mm)は、比較的透明感のある石が使われています。 右下の2つ(3cm)では、不透明なものと透明感のあるものが約半々。 模様の線が白かったり、茶色っぽかったり、 腐食されたように彫れていたり(写真D-3)、 なめらかだったり(写真D-2)といろいろです。 左下は、2,5cm。このサイズになるとほぼ不透明ですが、 中には写真D-1の左側のように透明感のあるものも混じっています。 このサイズでは、模様部分が彫れているものはなく、 仕上げもきれいなものが多いです。 このほかにも、さらに大きいもの(3.3cm、4.5cm、5.5cm)もあります。 形では、写真にあるビーズ型のほかにも、 牙型、弓型、平型、最近では指輪になっているのも見ました。 ●手書き模様のあたたかさ このタイプの技法については、すでにちょこちょこ書いてしまったので、 改めて言うこともないかもしれません。 色のついた石(瑪瑙や紅玉随)に染料で模様を線書きしたもの、 ということで間違いはないような気がします。 写真D-4ではその様子がよく見てとれます。 模様が彫れている、いないについては(写真D-2とD-3)、 染料の濃度の違いではないでしょうか? このタイプは全体的に色が地味でつや消し調ですが、 その分ウッドビーズや天然石と相性がいいような気がしますね。 |