2014/03/05(水)16:38
アベンチュリンの落とし穴 2
えーと、続いています、アベンチュリン。
アベンチュリンについて調べていたら、
「フックサイト(クロム雲母)を内包するクォーザイト」という説明を見つけました。
「クォーザイト」って何だ?
思わず脱線して、調べてみました。
クォーザイト(Quartzite)は、クォーツァイトともいい、日本名では「珪岩」です。
石英質の堆積岩(または砂岩)が変成作用を受けてできた岩なんだそうです。
……と、こう書けば実にシンプルな説明なんですが、みなさん、これがどういうことだかおわかりでしょうか。
私は、わかりませんでした。
堆積岩くらいはわかるけど……それが石英質って?
堆積岩がどうなれば、あのアベンチュリンみたいな石になるのだろう?
不純物が多くなりそうだけど……?
一度気になり出すと、かなり謎だらけ。
「????」……と、?マークを連発しながら、目についた単語を片っ端から検索しました。
意味不明なうなり声と共に、私なりに理解したところによると……。
堆積岩は、ご存じのように砂や泥、小石などが湖や河口、海の底に堆積したものが押し固められた岩。
変成作用とは、いったんできた岩石(原岩)に熱や圧力などが加わり、岩石を構成する鉱物の組み合わせや構造が変化することです。
つまり、クォーツザイト(クォーツァイト)は、石英質の砂が堆積して押し固められてできた岩が、熱や圧力を受けて変化したものということになります。
つっこんで調べてみると、さらに面白くなってきました。
トレード・ネームである「インド翡翠」の名前が示すように、グリーン・アベンチュリンの主な産地はインドです。
このインドという産地は、ダテではありませんでした。
ここで、クォーツァイトができる条件を考えてみます。
まず、石英質の砂が地積するためには、もとの石英が豊富でなくてはなりません。
ちょっと盲点だったのが、この場合の「石英」が、水晶や塊の石英でなくても良いと言うことです。
そもそも、石英(SiO2)の原料である珪素(Si)は、地球上に豊富に存在します。
火山活動などで、地中深くからマグマがあがってきて、じっくり冷え固まると、その中で溶けていた鉱物が結晶を作ります。
花崗岩はこのような環境でできた岩で、大雑把に言うと長石と石英がモザイク状に混じっています。
おなじみの石英や水晶は、冷え固まっていくマグマの中で最後に押し出された気体が泡のような隙間を作り、そこに熱水が流れ込んだり、マグマの中で水分を含んで、最後まで固まらなかった部分が、岩の裂け目を移動している中でゆっくり結晶したものです。
空間がある部分で結晶したので、結晶の形をとどめていることができたというわけで、隙間を埋め尽くしてしまえば、塊状の石英です。
つまり、塊状の石英や水晶は、マグマの中から晶出する石英の一部であると言うことです。
すると、クォーツァイトができる条件としては、マグマが地中からあがってきて石英ができる条件がそろっていたところ、ということになります。
また、砂は岩石が風化することでできますが、石英は風化に強く、砂は石英主体となることが多いです。
さらに、風化・侵食作用によってできた岩の破片(小石や砂)が水や風によって運ばれる途中で、比重の似たものが同じようなところにかたまり、結果的に不純物が取り除かれることになります。(これを漂砂鉱床といいます)
ここで第2の条件。
石英質の砂が堆積する海の底であったものが、現在は陸地であること。
砂漠や湖もありですが、規模と変成の際に水があった方がいいということで、海底を想定しました。
そして第3の条件。
変成作用が起こりえる場所であること。
変成作用は、熱・圧力なので、岩があるところにマグマがあがってくると、マグマに接していた岩は、その熱で変成作用を受けます。
また、地殻変動で圧力がかかれば、これも変成作用となります。
さて、インドはこの3つの条件を、どうクリアするでしょう?
まず、第1条件。地中からのマグマ。
もともとインドはアフリカとくっついていました。
……というか、地球上の陸地が一つに集まっていたパンゲア大陸が分裂し、ゴンドワナ大陸になり、それがさらに分裂してインドやアフリカになりました。
大陸を分裂させたもの……それは、地球の奥深くから昇ってきた巨大なマグマの流れ。
インドのデカン高原は溶岩台地でもあったと言うことですから、第1条件は、らくらくクリア。
第2条件の、もとは海、現在陸地。
についても見てみましょう。先ほど、インドはアフリカと分離したと書きましたが、今はユーラシア大陸とくっついています。
アフリカと分離したインドは、マントルの流れに乗っかってユーラシア大陸方向に流され、ぶつかりました。
インドがユーラシアの下に潜り込むような形になってできたのがヒマラヤ山脈です。
このとき、もとはユーラシアとインドの間にあったテチス海の海底も持ち上げられました。
ヒマラヤでアンモナイトの化石が出たり、岩塩が採れるのもそのためです。
……というわけで第2条件クリア。ついでに第3条件もクリア。
あのヒマラヤ山脈を天に向かって押し上げた力、その圧力は想像を超えます。
グリーン・アベンチュリンがインドのどのあたりで採れるかまではわかりませんでしたが、インドには変成作用を起こすに十分なパワーがあるのは確かです。
……と、このようにインドには大規模にクォーツァイトが産出する条件が整っているのです。
残るは「グリーン・アベンチュリン=クォーツァイトか?」ということです。
アベンチュリンは、「アベンチュリン・クォーツ」とも書かれることがあるのでそれに従えば、「クォーツ=石英」なんですけど……。
私は、あえてクォーツァイトに1票。
理由は、グリーン・アベンチュリンの不透明さと、均一さです。
かつてはインドと陸続きだったマダガスカルからは、かたまり状のローズ・クォーツが出ます。
ローズ・クォーツには、白く濁って不透明なものもあれば、透明度が高いものもあります。
結晶の形を残さず塊状になっているとはいえ、石英と言うことは、大きくしっかり結晶しているものもあるわけで、透明度が高いものがあることはうなずけます。
しかし、クォーツと名前が付いているはずのグリーン・アベンチュリンには透明度の高いものは見あたらず、色づきも均一で、クラックもほとんどありません。
このことは、グリーン・アベンチュリンがつぶつぶの集まりであるクォーツァイトだと考えれば、納得できるような気がします。
では、同じつぶつぶ構造であるカルセドニーとクォーツァイトがどう違うのかと言えば、カルセドニーは、最初から石英が目に見えないくらい小さく結晶して降り積もるようにして大きくなったもの。
そのため、年輪状の縞があります。
一方クォーツァイトは、風化して細かくなった石英の粒が押し固められ、さらに変成作用を受けたもの、
つまり、一度できたものにさらに変化が加わったものなので、縞模様はなく、均一な感じの石になるのだと思います。
また、「岩」であれば産出量の多さも納得できます。
このようにでき方が大きく違うのですが、つぶつぶ構造であるため染色しやすいという共通点があります。
クォーツァイトには白いものもあり、緑に染めると高級な翡翠に、赤ピンクに染めると高品質のロードクロサイトそっくりになるそうです。
ご注意あれ。