2012/06/29(金)20:52
新宿ショー 忘備緑
今回は、突撃インタビューをしたわけでもないのですが、石屋さんと話をしたことで、記憶に残っていることをちょっとメモします。
今回話の中で出てきたのは、
「アゼツライトありませんか、って聞いてくる人がいるんだよねえ……」
……アゼツライトですか。
ご存じ、アゼツライトは1976年頃、ノーズカロライナのベリリウム鉱山で採掘された水晶で、Naisha Ahsian氏がリーディングで「Azez」を名乗る存在(?)につながるイメージを得たことから、アゼツライトの名前があります。
その後、バーモント州やコロラド州でも見つかったとされ、インドのサチャロカ寺院周辺の水晶も「サチャロカ・アゼツライト」と呼ばれています。
コロラド産がどこまでの範囲でアゼツライトと呼ばれているのかちょっとわからないのと、(コロラド産のが、かつてメテオラ水晶と呼ばれていたものとそっくりなのも気になる)
アゼツライトの発見者であるというRobert Simmons氏が、サチャロカ・アゼツはアゼツライトではないと言っているとかいないとか、ちょっと不明なところがあるのですが、要するに、アゼツライトは、ヒーラーのイメージから名付けられた名前なのです。
そのあたりはブラジルのレムリアンシードと同じですが、レムリアンシードが、「レムリアンシードと言えばこんな感じ」と客観的にも判断できる外見の特徴を備えているのに対し、
(※見かけだけで区別すると、厳密にはレムリアンシードと言えない産地のものも入ってしまいますが)
アゼツライトの外見は、白濁した塊状の石英が多く、たまに自形結晶のものがあっても、見た目で他の産地と区別できる特徴を備えていません。
もう一つの違いは、レムリアンシードではあくまでもイメージ的な理由が中心であるのに対し、アゼツライトでは妙に科学っぽい根拠が引っ張り出されることです。
これまで聞いたことがある理由では、
「周波数が高い」
「専門家が石の性質を調べれば、通常の水晶とは性質が違うとこも明らか」
「ベリリウムが含まれている」
「シリカが含まれている」
……というようなもの。
はっきり言っちゃいますと、私は、アゼツライトは水晶だと思っています。
しかし、そのパワーを否定するつもりはありません。
自分では全くわからないのですから、わからないことを理由に否定するわけにもいかないでしょう。
一方で、イメージ的な分野に対して科学的根拠を振りかざし、「根拠がない! 嘘っぱちだ!」というのも、無粋ですね。
石の楽しみ方が、鉱物ばかりではあるまいし。
それを言うなら、私が大好きなヒマラヤ水晶も、「たまたま産地がネパールであると言うだけの、一般的な石英」です。
人が石のどこに価値を見いだし、楽しむかは、個人的な問題なのです。
しかし、石の権威を高めるために「科学的根拠(のようなもの)」を引っ張り出すとなると話は違います。
科学には「仮説-実証」と言うシステムがあります。
システムというのはちょっと変かもしれませんが、科学の分野において仮説が立てられた場合、仮説が正しければその正しさを裏付ける結果(実証)が得られるし、仮説に反する結果(反証)が出た場合は、仮説が修正される……科学とはそういう仕組みを持つのです。
ですから、イメージ的な石の分野においても「周波数」だの、「専門家が調べれば」だの、含まれる成分が特殊である……というような言い方をすれば、「その周波数の数値は」「専門家が調べたデータは」とつっこまれ、成分がと言うのであれば、科学的に分析されてその結果が明らかにされ、「一般的に見られる石英と同じものである」という結果になるわけです。
これに関しては、私は無粋であるとは思いません。
科学という分野を引っ張り出すならば、科学の流儀に従って反論されても仕方がないと思います。
石屋さんのお話では、別の石屋さんが「珍しい水晶だ」というのでアゼツライトを仕入れ、分析してみたら「(成分的には)ただの水晶」だとわかって激怒していたということでした。
さらに、最新の技術で水晶を調べれば、水晶はごく微量ながら実にいろいろな成分を含んでいるので、ベリリウムを含んでいてもおかしくないし、逆に言えば「●●が含まれている」といっても間違いではないけれど、それは別に珍しいことでもないのだということです。
また、ヒーラーは鉱物の専門家ではないので、勘違いしていたり専門家の言うことの一部を取り上げて、大げさに言ってしまったりすることもあるので、鉱物的な分析の結果とつきあわせると、食い違いが多いということもあるようです。
ちょと厳しく言ってしまえば、アゼツライトなどという鉱物名を思わせるような名称を付けず、科学的な根拠をにおわせるような話題を出さす、イメージ分野だけにとどまっていたら、「不思議なパワーがある(らしい)」石としておさまり、あちこちで物議を醸すこともなかったでしょう。
さらに個人的意見を言わせてもらえば、Naisha Ahsian氏と言う方、アゼツライト以外にも「ホワイト・モルダバイト(カルサイト)」や「メルカバイト」など、ちょっと誤解を招くネーミングが多いようですね。
石のイメージ的な側面は、
「信じる人は信じればいい、その人次第」
であるわけですが、私は、このことが
「誰かが言っていたことを疑わずに信じること」
とイコールであるとは思いません。
アゼツライトが産地とリーディングで得られたイメージに重きをおくなら、「アゼツライト」という名前だけでなく、間違いなくノースカロライナやバーモント産であるか、自分なりにつっこんでみてもいいでしょう。
石のイメージ的な側面は個人的価値観にゆだねられてはいるけれど、それは、自分の感覚をいかに掘り下げるか、集中するか自分の価値観はどこにあるのかということを問われていることでもあると思います。
石についてのあれこれの説明は、手がかりにはなるけれど答えではない。
答えを出すのは、あくまでも自分なのだと言うことを、忘れてはならないでしょう。
……あ、最後に、お店で聞く場合は、そのお店の傾向を考えましょう。
見るからに鉱物屋さんで「アゼツライト……」と聞くと、お店の人も困惑します。