2008/03/01(土)00:00
炎色
石好きの春は、ツーソンショーの石とともにやってくる……のかもしれない。
その割にちょっと出遅れ気味で、ツーソンショー気分がいまいちです。
さて、今期のツーソンショーでは、カザフスタン産の赤い水晶が出た、と聞きました。
赤と言えば、鉄分の内包による赤か、鉄分で赤い角閃石か。
鉄のコーティングで表面赤、というのもありですが、
中まで赤いとなると、ヘマタイトなどの酸化鉄が入っているというのが
一番あり得そうで、真っ先に思い浮かびます。
ただし、内包物による赤なので、透明感はなかなか期待できません。
ところが、今回話題のカザフスタン・赤は
「内包物によるものではない透明赤」だというのです。
透明赤!?
いったいどんなものだろうと興味津々。
某店に入荷したと聞きつけ、いそいそ出かけてみました。
「カザフスタンの赤い水晶があると聞いたんですけど」
「これですよ」
……残念なことに、表面が荒れ気味で、
磨くかスライスしないと色が見えないとのことで、
入荷していたのは輪切り状態のスライスでした。
見せていただいたのは、赤というより、飴色。
針蜜色と言うよりもさらに茶色がかって濃い感じ。
しかし、スモーキー・シトリンのように渋い感じではありません。
ああ、わかった!
シトリンなんだ。
シトリンと言えば黄水晶の名前の通り、黄色。
文字通りの「黄色!」というのは、天然ではなかなかなくて、
多くは意外に渋い色合いだったりします。
そして……シトリンの仲間には、シトリン=黄色系のイメージを裏切る、
「赤い」ものもあるのです。
ルースです。小さいです。そのためにピンぼけしてます。
えーと、最初にお断りしますが、このルースは、加熱である可能性があります。
産地は多分ブラジル、もしかしたらインド。
アメジストにラベンダーアメジストやピンクアメジスト、
ブラックアメジストなどと名前が付けられて区別される
色合いの幅があるように、
シトリンの色もいろいろ名前が付けられていることがあります。
淡い金色で透明度が高いものをシャンパン・シトリン。
ちょっと渋めで、でも金色な「ビール・シトリン」
ポルトガル語では、「シトリン・セルベージャ」というのだそうです。
ちょっと茶色の色味が入ってくると、
コニャック・シトリンや、ウィスキー・シトリン。
そして赤身が強くなると、マディラ・ワイン色……ということで、マディラ・シトリン。
なかなか飲んべえなラインナップです(笑)。
これらの名前は、何か基準があって厳密に決められているものではないので、
同じ名前でも色合いがかなり違っていることがありますが、
ビール、ウィスキー、ワイン……ということで、何となく見当がつきます。
さらに、マディラ・シトリンの系統で、赤が特に強く出たものを
シトリン・フォーゴ(炎色シトリン)と言うのだとか……。
赤いシトリンってどんなのだろう……。
磨きでもいいから見てみたい、と、探し、待ち、
待ちきれなくて買ってしまったルースが、写真の石。
茶色と言うか、赤というか、微妙なラインですが、
ちょっとひいきコミで確かに赤は入っていると思いますし、
「……シトリン?」と言いたくなる色であることは確かです。
この色は、スモーキーと言うにも無理があります。
この石を持っていたのに、「透明赤の水晶」と聞いて思い浮かばなかった!
さて、写真のルースは、加熱の可能性があると書きました。
天然石検定の本では、この手の色は加熱であるとされています。
しかし、写真のルースとは別に、もうちょっと茶色な石を見ましたが、
その石を扱っていた石屋さんは、加熱なら加熱と言ってくださる店なのですが、
特に加熱との説明がなかったので、非加熱もあるんじゃないかと思っていました。
そして今回のカザフスタン・赤。
今のところ、加熱加工の説明を見かけないので、非加熱・赤の期待上昇中。
非加熱なら、少々表面がごつごつがりがりしていようと、できれば原石で。
光に透かすと赤く燃え上がる炎色の水晶……!
そんなのがあったら、クラクラしちゃいます。