虚空座標

2008/07/08(火)23:46

古玉獣

中国・(チベット)・韓国・モンゴル産(51)

テラコッタ製のガネーシャとか、 悪魔には見えないネパールから来た悪魔くんとか、 謎のフェルト・ラッキー・アニマルのラッキー君 など、我が家には、いわゆる「ゆるキャラ」がいくつも生息しております。 そこに、とうとう真打ち。 石の「ゆるキャラ」がやってきました。 「古玉獣」として売られていたコイツ。 命名、「けものくん」 全く考えてない「そのまんま」な名前ですが、 なんと言いますか、ひねった名前がつくづく似合わない顔…………。 何にも考えてなさそうなまん丸な目。 悩みのなさそうな笑みを浮かべた口元。 ヘタうまというか、稚拙と素朴の中間を行くというか…… 何とも憎めない、それでいて単なる「ゆる」に終わらない、 小さいくせに、妙に自信たっぷりな雰囲気です。 さて、古玉といいますのは、中国の玉製品のうち、 秦および漢より前に作られた物をいうそうです。wikipedia これはそんなに古いものなのか……? たぶん違うと思います。というのも写真に向かって左側と、 背中に当たる所にすっぱり真っ平らな面があって、 どうも直方体の石材を削って作った感じがするのです。 この造形を感じを見るに、たぶん民間の飾りだったでしょうから、 それを作るとしたら、わざわざ成形した石材ではなくて、 川などで拾ってきた丸い石から、石の形に合わせて作ったのではないでしょうか。 (玉は、古くは川に流されてきたのを拾っていたと聞いたことがあるので) ……というわけでたぶん「古」玉ではないですが、 「けものくん」の魅力はなんと言っても、この「ゆる」な雰囲気。 例え現代の作であろうが、全然問題ありません(値段も)。 ここのところしばらく、パソコン周りの机の上をうろちょろしていますが、 (つまり手元に置いているので、見るたびにあっち向きこっち向きしている) その角度から見ても、「ん?」とこっちを見上げているような感じが とてもかわいいのです。 さて、「玉」というのはとても説明しにくい石です。 この石を現在の鉱物の分け方で分類して理解しようとすると、 必ずどこかでつまづくからです。 「玉(ぎょく)は、古代から中国の人々を魅了し続けてきた、 とろりとしたやわらかな艶を持つ半透明の美しい石のこと。 現在の鉱物の分け方(成分や結晶系)ではなくて、 あくまでも見て美しいと思うものを「玉」としたのです。 そのため、複数の鉱物が「玉」と呼ばれているし、 玉と呼ばれたのと同じ鉱物でも、 見かけが異なれば玉とは呼ばれないということになります。 今現在、宝石といえばダイアモンドやルビーなど、 色鮮やかでキラキラした石ですが、 古代中国では「半透明でとろりとした艶の玉」こそが美しく価値のある石で、 玉とは宝石の意味だったのです。 玉=翡翠と解釈されることもありますが、必ずしもイコールではないし、 翡翠の解釈でさえ今のジェダイドとネフライトと決めてしまうとズレが出ます。 しかも玉の本場中国では、もちろん従来の「玉」の意識が生きていて、 「玉」に含められる石で黄色いから「黄玉」と呼ばれたものが そのまま日本にやってきて、「黄玉だからトパーズか」と勘違いした 説明を付けられていたりします。(トパーズの和名は黄玉) このように、古い歴史のあるもの、鉱物学の分野ではないところで名前が付けられた石は、 その名前が示す基準を考えていかないと、いけないのではないでしょうか。 さて、玉は人の手に触れていることで艶を増す、 油を刷り込んで「育てていく」という考えもあるようです。 「けものくん」も手元に置いて撫でなでしていたら、 もっとつやつやきれいに「育って」くれるのでしょうか。

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