2005/08/10(水)21:52
わが友マキアヴェッリ
夜がくると、家にもどる。そして、書斎に入る。入る前に、泥やなにかで汚れた毎日の服を脱ぎ、官服を身に着ける。
礼儀をわきまえた服装に身をととのえてから、古(いにしえ)の人々のいる、古の宮廷に参上する。そこでは、わたしは、彼らから親切にむかえられ、あの食物、わたしだけのための、そのためにわたしは生をうけた、食物を食すのだ。そこでのわたしは、恥ずかしがりもせずに彼らと話し、彼らの行為の理由をたずねる。彼らも人間らしさをあらわにして答えてくれる。
四時間というもの、まったくたいくつを感じない。すべての苦悩は忘れ、貧乏も怖れなくなり、死への恐怖も感じなくなる。彼らの世界に、全身全霊で移り棲んでしまうからだ。
ニコロ・マキアヴェッリ 「フランチェスコ・ヴェットーリへの手紙」より (塩野七生訳)