【PART1 映画解説篇】映画『プレステージ』巧みな布石と衝撃のラスト
PART1【映画解説編】「巧みな布石と衝撃のラストが見物の怪奇幻想ミステリー」プレステージTHE PRESTIGE2007年6月9日公開 アメリカ 128分■監督 クリストファー・ノーラン■出演 ヒュー・ジャックマン、クリスチャン・ベイル、マイケル・ケイン スカーレット・ヨハンソン、アンディー・サーキス、デビッド・ボウイ■ もくじ ■PART1【映画解説編】『巧みな布石と衝撃のラストが見物の怪奇幻想ミステリー』■はじめに- コラム -「日本の脱出マジックブーム」 1. 日本のイリュージョンのパイオニア 2. マジックの三段階 3. 突然の種明かしと脱出ブームの終焉- STORY -19世紀の奇術界を舞台にした怪奇幻想ミステリー 1. 本作の内容 2. 衝撃のラスト5分 3. 19世紀世界を実現した芸術的映像 4. 映画そのものが壮大な「マジック」 デヴィッド・ボウイ演じる実在の天才発明家ニコラ・テスラ 「レディオヘッド」トム・ヨークの主題曲PART2【完全ネタバレ解説篇】※以下は映画の鑑賞者向けに「謎」を解説した記事になります衝撃的ラストの意味や本作の布石や場面の意味など10万文字の大容量で詳細に解説!※ 【完全ネタバレ解説編】の目次に付いてはそれ自体がネタバレになる為ここには記載しません映画鑑賞後にリンク先の PART2の頁で確認して下さい ≫PART2の頁へ■はじめに本レビューは 映画『プレステージ』を解説した記事となっておりこれから観る方向けに PART1 映画解説篇 として既に鑑賞した方向けに PART2完全ネタバレ解説篇 として分けて更新し数ヶ月に渡って映画を詳細に検証し 一年以上の長期に渡る執筆で楽天ブログの限界を越えた 全10万文字2ページに渡り更新解説した当サイトのブログ主が 思う限りの内容を書きたいだけ書きそれでもまだ書き足り無く思い、一本の映画の解説をするだけでなぜ本になるのを納得した空前の長編レビューとなっております本作がどの様な映画なのか お知りになりたい方や本作を鑑賞した後 モヤモヤした方や本作の鑑賞で 謎を知りたい方や「あのラストって何?意味わかんないっつ」と聞いてうるさい家族を持たれた方など(※実話)独断と偏見が多分に入った偏狭な長文駄文ですが何かのご参考までにご鑑賞頂ければと思いますなお、PART2 ネタバレ解説編 に至っては、映画全体に渡る詳細なネタバレを可能な限り解説する、あくまで 映画鑑賞済の方向けに特化された記事 となっており、又、例え興味本位としても 本作品の性質からも映画未見では何を解説した記事なのか 全く意味が分からない内容となっておりますので映画未見 の方の PART2 ネタバレ解説編 のご鑑賞はお勧め致しかねます のでご注意くださいという訳で 順番に解説して行きましょう☆▲目次へ▲- コラム - 「日本の脱出マジックブーム」■日本のイリュージョンのパイオニア引田天功と言えば 現在齢50を幾つも越えているはずの「プリンセス天功」を誰もが思い浮かべるかと思いますがまだ「イリュージョン」という言葉が無かった頃の70年代日本テレビ系の人気バラエティ番組『木曜スペシャル』の目玉企画としてそれまでのマジックの常識を覆す様な非常にスケールの大きい『脱出マジック』を披露し回を追うごとに 大仕掛で大掛かりになって行ったそのパフォーマンスで日本中に『脱出マジック』ブームを巻き起こした初代 引田天功を連想される方は少なくないと思います。半世紀以上前の当時、日本最速を誇る走るジェットコースターに乗せられた燃えるボックスから、手足を縛られた状態からの決死の脱出や仕掛けられた時限爆弾が次々と爆発する水道管を時間内に通って安全地帯へ脱出するパフォーマンス等々特撮の技術を使った様な 現在の大掛かりで高度なパフォーマンスと比べてもスケールの大きさに置いては全く引けを取らない壮大なイリュージョンで日本中をテレビのブラウン管の前に釘付けした不世出のマジシャンでした。▲目次へ▲■■マジックの三段階さて、「イリュージョン」と呼ばれる大規模パフォーマンスが定着した現在ではいわゆる「手品」的小規模パフォーマンスは規模の面から異なるエンタテイメントとして分けて捉えられる所がある様に思えますがそもそも「マジック」の演目は規模がどうあれ大きく分けて3つのパートで出来上がっている点に置いてはどれも同じと言えます。■ マジックの三段階 ■●第1の段階「確認/プレッジ」 種も仕掛けもありませんと客に確認させる●第2の段階「展開/ターン」 手にしたカードやボックスに閉じ込められた人が消えるなどの 展開をする●第3の段階「偉業/プレステージ」 消えたカードが、消えた人物が出現してマジックを締めるつまり、手のひらサイズのテーブルマジックも巨大な仕掛けを要する壮大なイリュージョンも消えたものが 再び出現するという点に置いて基本精神は同じであり正にその一点に全てのマジックの骨頂が集約していると言える訳です。▲目次へ▲■■■ 突然の種明かしとブームの終焉70年代も終わろうとする頃引田天功の体調不良から企画されていた脱出イリュージョンが現在のプリンセス天功こと 朝風まり が代役として選ばれそれを期に初代引田天功はブラウン管の前から突然姿を消しますそして間も無くして79年の師走の最中に、志半ば45歳という若さで他界し日本中を虜にした不世出の天才マジシャンが再びお茶の間の前に登場する「プレステージ」はもう永遠に叶わなくなるのでした。その一年後、正式にプリンセス天功が2代目を襲名した後の事でした、突如、初代引田天功の 脱出イリュージョンの種 を紹介する番組が登場します。図解で分かりやすく解きながら、このパフォーマンスが如何に緻密で複雑に組み上げられていたのかを説明する非常に興味深い内容の番組で、子供には全貌が掴みにくい部分も多い内容だった様に思いましたがある一点に置いて、子供にも即座に理解できるものがありました。それは、マジックの演者はジェットコースターに乗せられたボックスや、地中に埋められた箱に入りそのから如何に脱出するのか、と見せかけて、実は途中で抜け出していたという常識的に考えれば極めて当たり前な「種」という名の知ってしまえば余りにも 肩すかしな事実 でした。テレビ局側にしてみれば、日本中をアット言わしめたイリュージョンの種を明かす事で初代への哀悼の意を表しながらその偉業を振り返りある種の世代交代をイメージ付けながら後継者の活躍を後押しする一環と、世紀のイリュージョンの秘密を解明する超弩級のネタで視聴率に繋げる意図があった事は容易に理解できる所でしたがそもそも視聴者の立場からしてみれば、途中線路の無くなるジェットコースターのコースの手前に設置された小屋のロープに、いかに掴まって落下を逃れるか や手足を縛られた状態で地中に埋められたボックスから水が流れる水道管の中を伝って如何に安全地帯へ辿り着くか など一体どうやって脱出したのかを推理して想像しどう考えても 不可能 だと思いながら未曾有のスリルとサスペンスとミステリーに熱狂し興奮する所にイリュージョンの魅力 を感じていたのであってそもそも 知ってしまえば呆気無い種明かしなどどうでも良い事 だったりする訳なのです。おそらく先代引田天功にしてみても視聴者が如何に驚くかを想像し創り上げたイリュージョンであり演者と視聴者が共に演目に集中し共に成功に興奮するという、日本中が一つになった 唯一無二の巨大な一体感 を含めた所に初代引田天功イリュージョンの真骨頂があったと思われ知ってみれば呆気無い種明かしなど演者にとっても視聴者にとってもとんだ水を差す行為 以外の何ものでも無かったという 訳なのでした☆■ という訳で今回は、『ダークナイト』シリーズで知られる奇才クリストファー・ノーラン監督がイリュージョンの世界をミステリアスに描いた異色作『プレステージ』をご紹介します。プリンセス天功イリュージョン まほう対決!2005 プリンセス天功VSガチャピン・ムック [ プリンセス天功 ]価格:2776円(税込、送料無料) (2017/5/2時点)タネも仕掛けもございません [ 藤山新太郎 ]価格:1,836円(税込、送料込)東大式タネなし手品 決定版[ 東京大学奇術愛好会 ]価格:1,188円(税込、送料込)▲目次へ▲-STORY-19世紀末のロンドン二人の若きマジシャン アンジャー(ヒュー・ジャックマン)とボーデン(クリスチャン・ベール)は互いを認め合いながらスター・マジシャンを目指し腕を競い合っていた。ある日、アンジャーの妻が水槽脱出マジックの失敗で命を落とすアンジャーはその責任がボーデンの行った綱の縛り方にある事を理由に激しい憎しみを向ける様になりボーデンのマジックショーへ乱入し重傷を負わせた事件を皮切りに互いの競争心は深刻な確執を持ったものへとエスカレートして行った・・・▲目次へ▲-解説- 19世紀の奇術界を舞台にした怪奇幻想ミステリー1. 本作の内容Christopher Nolan (画像参照:wikimedia)『ダークナイト』3部作ほか(2015)『インターステラー』(2010)『インセプション』など独特のダークな世界観で驚異の映像を生み出しスペクタクルなアクションから深層心理の闇の領域まで独自のタッチで描く映像作家クリストファー・ノーラン監督が大ヒット作『バットマン・ビギンズ』発表後制作した独特のダークな世界観と深層心理を描く作風をフルに活かし19世紀ロンドンのショービズ界を舞台に深い因縁から激しく競い合う二人の天才マジシャンと衝撃の顛末を描いたダークな怪奇幻想タッチのサスペンス・ミステリー映画です出演は『ダークナイト』3部作の クリスチャン・ベイルと『Xメン』シリーズの ヒュー・ジャックマン同じく『ダークナイト』シリーズに出演しノーラン監督作品の常連でもある アカデミー俳優マイケル・ケインに『アベンジャーズ』シリーズの スカーレット・ヨハンソンそして2016年1月に惜しくも他界したロック・スター デビッド・ボウイほかダークナイト ワーナー・スペシャル・パック(Blu−ray Disc)価格:2916円(税込、送料無料) (2017/5/2時点)▲目次へ▲2. 衝撃のラスト5分が見もののサスペンス・ミステリー本作は、19世紀ロンドンのマジック界で活躍する二人のトップマジシャンのマジックの腕を競い合う長年に渡る壮絶な争いと取り憑かれた様に芸に没頭する 人の心の奥の闇を描いた作品で映画は、ヒュー・ジャックマン 演じる人気マジシャン「偉大なるダントン」こと ロバート・アンジャー がマジックの失敗で命を落とした事故でその場に居合わせた クリスチャン・ベイル演じるライバルマジシャン「教授 (プロフェッサー)」こと アルフレッド・ボーデン が犯人として逮捕されるミステリーで幕が開き物語は、獄中のボーデンが アンジャーが残した手記を読み上げながらアンジャーとボーデンの道程を辿る回顧録の形でサスペンスフルに進行し舞台で事故死した アンジャーの妻ジュリアの一件をきっかけにライバル関係が悪化した二人のマジシャンの壮絶を極める確執と、マジックの「技巧」に取り憑かれた人間の欲と狂気 をミステリアス に描き華やかな奇術界の舞台裏と それに纏わる人間ドラマを折り込んだ原作『奇術師』を、実に一年半もの時間をかけて脚色した巧妙な脚本の構成力が光る異色作でもあり「ダークナイト」シリーズのクリスチャン・ベールの深い闇を抱えた主人公を演じる圧巻の演技力と、「Xメン」シリーズのヒュー・ジャックマンのダイナミックで華のあるアンジャーを演じる存在感ある演技とが火花を散らす様に生み出される緊張感が映画の内容にそのままリンクしながらアンジャーの死は事故か殺人か、映画全編がマジックの演目とも言える 衝撃の結末が見もののノーラン監督独特のダークな切り口と、中世欧州的なモダニズムな映像による重厚なタッチが加わったダークなタッチで描いたサスペンスミステリー作品です。▲目次へ▲3. 実存感ある19世紀世界を実現したオスカー・ノミニー・スタッフによる芸術的映像ノーラン監督に取ってこれが初めての「コスチュームプレイ」いわゆる時代劇作品となり欧州時代劇作品としてとしては 近年ほぼ決定版とも言える『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズや『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズが既にある為新規参入作品には何かと映像を比較される不利なジャンルでしたが『ダークナイト』シリーズの様なアクション作品でも観られる現実に存在する様なリアルさを持った「中世欧州」を思わせる重厚で説得力ある映像を作り出すダーク系ファンタジーな世界観という側面を持った映像作家ノーラン監督と本作品でアカデミー撮影賞、美術賞にノミネートされた撮影:ウォーリ・フィスター、美術:ネイサン・クロウリーいわゆる「ノーラン組」による徹底的にフィルム撮影にこだわった手持ちカメラによる撮影と厳格さよりも リアルさと生活感 に重点を置いた現実感ある美術により特に「コスチュームプレイ」を意識する事無くこれまで通りのノーラン作品として鑑賞することが出来ます更に 監修として、世界的なマジシャンデビッド・カッパーフィールド の参加で演目にリアルさが加わりノーラン監督独特の、奥行きを感じる深みある映像に華やかな拡がりを与えたハリウッド・エンタテイメントに相応しい作品に仕上がった様に感じられました。▲目次へ▲4. 映画そのものが壮大な「マジック」「マジック」を題材にした映画は数多くあり古くは 82年のフランシス・フォード・コッポラ製作の『マジックボーイ』や近年の話題作 (2013)『グランド・イリュージョン』などの他に奇術師が主人公になった(2013)『オズ始まりの戦い』の様なファンタジー作品や邦画の(2014)『青天の霹靂』の様な異色作まで様々ですが本作の様な クライム系サスペンスの外連味の要素を 仕掛けとして映画そのものを一つのマジックに見立てたものもこれまでも数多く作られており本作は19世紀のダークな世界観を利用した緻密な伏線が張られた構成と過去無いタイプの、衝撃的ラストが魅力の作品ではありますがマジックを題材にしたサスペンス系作品として括られる映画の一つとしては目新しさの上では 特に際立ったものは無く『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズや『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズなどいわゆる欧州コスチューム系ダークファンタジーなどで描かれて来た既に手垢の付いたビジュアル に一度観ただけでは分かり難い 布石に満ちた物語構成とフラッシュバックなどを多用した観念的で見やすく無い画面構成に「衝撃的ラスト」そのものが 反則 ではないかという他方の意見からも批評家の評価も高い大ヒット作ではありましたが豪華キャストが演じるこの手の話題作にしては絶賛に繋がらない問題作となった事に置いても異色作となった作品と 言えると思います。したがって数多くの共演者が未曾有の群像劇を繰り広げる様な驚異の映像で壮大なテーマを描いた物語 という訳でも無い本作は物語は至って、主役二人の確執の行方を追う舞台劇に近い内容としてリアルなモダニズム映像に豪華キャストによる迫真の演技が観られる作品ながらも娯楽アクション作品に心象世界的要素を融合しこれまでにない ダークなタッチの刺激的映像を生み出し多くの娯楽アクション大作を撮ってきたノーラン監督の作品にしては「地味」という評価が多いのも事実であり近年公開された 『グランド・イリュージョン』の様な派手な演出のクライム系エンタテイメントミステリーを期待した方は肩透かし を喰らう作品かもしれません。一方で、これまでも新作を作る度 過去製作されたハリウッド映画を引用し出典を隠すこと無くその「雰囲気」を 現代に蘇らせたい 旨を明言して来たクリストファー・ノーラン監督の言及にもある通りSF超大作作品『インターステラー』では既にTVドラマ『スタートレックシリーズ』の中で描かれた既存の物語設定や一部ロバート・ゼメキス監督作品 (97)『コンタクト』に似たコンセプトを使用し代表作 (01)『メメント』にしても、物語が逆行するという作りに付いてはファンタジー系小説の分野では 夢野久作作品の時代から存在した既出のアイデアであり、さほど珍しく無いものだったりと 言った様に本作も 革命的内容や 新しさを求めた所に制作目的は感じられず、むしろ、過去のハリウッド作品の雰囲気を踏襲した既存のビジュアルを利用し・・・・・・映画のネタバレに触れる為、ボカシて解説しますが・・・・・・使い古された事を承知の上で「コスチュームプレイ」を題材にした事を含めたある先入観 を鑑賞者に与える事を目的として全ては映画全体をマジックの演目に据えて様々に張り巡らされた伏線を「トリックの鍵」としての布石として利用する為の巧妙な演出 が施された作品と 言えると思います。■知りたいけれど、知ってしまったらあっけない「マジックの種」に纏わる華やかしいステージの成功の裏に潜む 光と影と闇 を描き19世紀の欧州を背景にした怪奇で幻想的な世界観にサスペンス、ミステリー、ユーモア、果てはSFテイストに至る既存する多くの要素を投入し 化学反応的な再構築で脚色されノーラン監督の特徴でもある深層心理を刺激する息も詰まる様な重々しいタッチで描がれたダーク・ファンタジー作品としての世界観を持ちながらミステリー サスペンス映画らしい思いも寄らぬ衝撃的ラストが待っている、本作はそんな摩訶不思議で絢爛豪華な イリュージョンの舞台を観ている様なエンタテインメント作品として愉しめ一度見ただけでは理解出来ない、何度も見返しては新たな発見を確かめてしまう様なタイプの布石満載の一作だと思います☆映画『コンタクト』のレビューは≫コチラから コンタクト【Blu-ray】 [ ジョディ・フォスター ]価格:1500円(税込、送料無料) (2017/4/2時点)▲目次へ▲■ デヴィッド・ボウイ演じる実在の天才発明家ニコラ・テスラ■(wikimedia)David Bowie1947-2016今年1月の突然の訃報に世界に衝撃が走りこれまで音楽のみならず、様々なシーンで類まれな才能を発揮し日本でもビジュアル系ロックのジャンル確立の核となったアート系ロックの創始者的な存在として様々なミリオンセラーアルバムや問題作を世に送り出した歴史的大スター 、デヴィッド・ボウイ が本作では 実在した発明家 ニコラ・テスラ を演じ物語の「鍵」を握るミステリアスな人物を好演しました。Nikola Tesla (wikimedia)ニコラ・テスラは「交流電気」の開発者として知られラジコン、蛍光灯、無線送電などのシステムを開発した人物としても知られておりますがその発明の数々が、周りの理解を得られない様な余りにも先進的過ぎるものばかりだった事や謎の発明と呼ばれるものが数多く存在する事などから異端の科学者、マッドサイエンティストとして語られる事の多い人物でもあります。■ テスラの放電実験の様子は映画本編 科学博覧会の場面などにも登場しAndy Serkis (wikimedia)この場面で、(01)『ロード・オブ・ザ・リング』のゴラムや(05)『キングコング』(14)『GODZILLA』で モーションキャプチャを担当したアンディ・サーキス 演じるテスラの 助手アリーが「安全です」「エジソン側の陰謀です」を連呼していましたが当時 エジソン 側が交流電気は感電死する危険性がある事を訴えて自分たちが開発した 直流電気 の優位性を唱えていた事に対して交流電気を人体に流す公開実験を行い安全性を主張していた事での理由からでした。他にも「エジソン」の関係者を名乗る謎の人物たちがテスラの研究所を嗅ぎまわる描写がありますがこれは、テスラが開発した「交流」とエジソンが開発した「直流」 とで電気の企画の採用を巡っての争いと、それに伴う確執を描写したものでこれらは主人公達の因縁を彷彿させる映画のひとつの「鍵」にも感じられるプロットの様でもあります。ラボラトリーでの実験風景 (wikipedia)本作のテスラは1899年のコロラド・スプリングスにある研究所で極秘の研究を進める科学者として登場しますテスラの実験に招かれたヒュー・ジャックマン演じるアンジャーが雪の地面に埋められた光る電球に驚くという場面がありましたが、この頃のテスラは 「世界システム」と呼ばれるプロジェクトを米国のコロラド・スプリングスで進めていた時期という事で電波を使って情報とエネルギーを転送し 世界中に供給する事を目的とした無線通信や 無線送電の研究の実験を再現したものと思われますこれは地球を巨大なコイルに見立てて電気を帯電させ電球を点灯させるという実験でしたがこれが100年以上前の世界で行われていたとは信じ難い程のいわゆる「種」は 「科学」だと 頭では分かっていても現代人の私達の目から見てすら「魔法」の様に見える点が本作のひとつの「鍵」となる重要な場面であると言えるのでしょう。無線送電装置 ウォーデンクリフ・タワー (wikimedia)■所で、テスラ初登場の場面では放電実験機をしれっと横切ったテスラが電球を手で点灯させるパフォマンスを見せますが電球が点灯する時「パッツ」というフィラメント独特の音が聞こえる事から手に持っていた電球も 雪に埋められた電球もおそらくエジソンが発明した「白熱球」では無くテスラが開発した「蛍光灯」のプロトタイプだったと思われますその後、アンジャーとの食事の席では『最初は賞賛され、次には引退しろと言われた』と語っていますがこれは 金儲けや政治に興味のないテスラが人類に寄与する事を目的として次々と革命的発明を続け 既存のシステムを書き換える行為に対して起業家達から受けた脅威と敵視の念を言い表したセリフと思われます。■テスラは18世紀の時代の人物とは思えない様な驚くべきシステムを発案した余りにも登場が早すぎた天才であっただけではなく先程の「世界システム」の挫折以降も 数々の発明を続け研究心の衰えを見せることはありませんでしたがこの手の天才にありがちな、波乱な変転のみを強調した色眼鏡で眺めて歪められた人物像から、正当な評価を受けなかった不遇の科学者でもありました。晩年期は 無限エネルギーや 粒子兵器 などの SFまがいな疑似科学に霊界通信装置などの オカルト紛いな研究に没頭した事から度々小説、映画、スチームパンクなどの作品の中の登場人物として「マッドサイエンティスト」として描かれる事が多く日本でも実在した江戸時代の科学者「日高源内」を登場人物にした実像とは違った「想像上のキャラクター」として描かれた時代劇風SFファンタジー系作品があるのと同じ様に屡々テスラは実像とは違った形で人物像が語られる実在した架空のキャラクターとして海外では良く知られる存在となった人物でもあります。そう言った意味を含めても、「充分に発達した科学技術は、魔法と見分けが付かない。」と語った『2001年宇宙の旅』の作者アーサー・C・クラーク の三法則の言葉にもある様にテスラは正に「魔術と科学」を、更には奇しくも自らの存在を持って「架空と現実」の境を無くした最初の人物だったとも言えるのかもしれません。▲目次へ▲■ 世界的ロックバンド「レディオヘッド」トム・ヨークの主題曲■Thom Yorke (wikimedia)世界的オルタナティヴ・ロックバンド「レディオヘッド」のボーカルにして中心人物のトム・ヨークが本作のエンディング主題歌をソロ名義で担当した事でも話題になりました。■■テクノロジーを駆使した「レディオヘッド」サウンドで語られがちなアーティストというイメージがありますが誰もが耳にしているおなじみの楽器として一番に挙げられる「ピアノ」を使って演奏しても誰も聴いた事の無い音空間を構築するトム・ヨーク独特の音世界を感じる楽曲で人生とは分析する時間がないことを思い知る事 と歌われる人の心の底に潜む闇や狂気を、静かな語り口で描いた作品で本作のラストシーンの衝撃を 静かに深く刻みつける様な印象的なタイトルロールと なったように思いました。本曲の音楽のレビューは ≫コチラジ・イレイザー [ トム・ヨーク ]価格:1,832円(税込、送料込)▲目次へ▲PART2【完全ネタバレ解説篇】※ご注意ここから先は映画『プレステージ』を鑑賞済みの方向けの謎解き解説記事となっております「もくじ」にも 本作の根幹となる「ネタバレ」が含まれている為映画未見の方のこの先の記事鑑賞はお勧め致しかねます。以上の事を踏まえてご覧になりたい方のみ▼コチラ▼PART2【ネタバレ解説編】へと、お進みください。