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2014年12月19日
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カテゴリ:邦画
​​「ラストのセリフの意味は?」
「この映画が難解に見えるのは○○○だから」

​ありのままを描く怒れる監督の奇跡への挑戦​

戦場のメリークリスマス

Merry Cristmas Mr. Lawrence
日本/イギリス(1983年)123分

■ 監督 大島 渚
■ 出演者
デヴィッド・ボウイ、坂本龍一、ビートたけし
トム・コンティ、ジャック・トンプソン

David Bowie 1975
(wikimedia)
David Bowie
1947-2016


..........................................................................................................

■■■もくじ■■■

Production Note 制作秘話

STORY


■解説■
■人との内なる絆を描く

■衝撃的なキスシーンとその意味

■ラストのセリフの意味(本作がなぜ難解なのかその理由)

..........................................................................................................
▲目次へ▲
- Production Note 制作秘話 -
​​​​
激昂する社会派監督として知られ
「この世に存在する不条理を 無かった事には出来ない」との考えを生涯貫き

時には権力へ対しても 真っ向から立ち向かい
世の中の不条理さ 理不尽さを訴える 非常に高い社会性を持つ作品を発表して来た
世界的な映像作家 大島 渚監督が

初めて商業映画として世界に通用する作品を目指して制作したのが本作でした

しかし書き上がった脚本は 当時にしては早過ぎる内容で
出来上がったら奇跡と 関係者を大いに悩ませるものでした


当時のお金で10億円もの制作費の調達や
2転3転したキャスティングなど 制作は大いに難航し

セリアズ役に ロックスター デビッド・ボウイが決定しても
コンサートツアーに合わせて撮り終わらなければならなかったりと

綱渡りの状態での映画製作でした


大島監督は これまで制作して来た 政治的に影響を持つ作品が
時代が進むに連れ 支持されなくなって来た事で 映画製作から離れ

今回の復帰作そのものが 自分に対しての大きな挑戦になっていましたが

80年に公開されたフランシス・F・コッポラの戦争映画「地獄の黙示録」の内容が
映画生命をかけたコッポラの制作状況とリンクして行った様に

制作は壮絶を極めるものになって行きます


映画の支援制度が充実したニュージーランドが撮影場所に選ばれますが

現地スタッフ・キャストを雇うなどの条件による言葉の問題に加えて

ニュージーランド文化が背景となった
時間にルーズな現地スタッフ・キャストによって遅延して行く作業や
それに伴うコミュニケーションの問題 など

様々な問題が重なって撮影が難航して行く中

何よりも映画制作そのものに難色を示したのは
主要キャストが素人という異例なキャスティングに当惑した
トニー賞受賞の実力派俳優でもあったトム・コンティで

好きな様に演らせて 何も指示をせず
ワンテイクで撮り上げる大島監督のスタイルに驚いたと言います


しかし、
ワンテイク目の時に起こる「奇跡のショット」を目撃する内に

大島監督は詳細な演出プランを立てコンテを切りセッティングをして
役者に細かく演技を付けたものをフィルムに収めようとしている
のでは無くて

今ここに居るスタッフキャスト達が生み出す画を
切り取る様にして撮り上げる

国境を文化を越えて一丸となったスタッフキャスト達が
共に創り上げる画を観たくて、指示をしない

その様な撮影にかける大島監督の強い想いが
「奇跡のワンテイク」を引き出している事に気付いたと言います


そのスタンスとは
「東西の文化の衝突とそれを乗り越える姿を描く」という
本作のテーマを映し出した姿そのものだったと思われ

デヴィッド・ボウイの映画参加の遅れによって
当初予定されていた大物俳優達によるキャスティングが頓挫した事で
プロの役者が演じる作品作りに拘る事を止めて

役者としては素人ではあっても各界のスターを結集し撮影に臨んだ
大島監督の本作での真の狙いとは

その様にして生み出される「奇跡のワンテイク」を撮り上げる所に
あったのかもしれません



大島監督は 撮影でのスタートの掛け声を
声が割れん程の怒号で行う事で有名ですが

本作の奇跡のヒットを支えたのは

その壮絶な現場に置いて そこに集うスタッフ キャストから
誰も見た事の無い空気を 誰にも見せた事の無い表情を

あの怒号の掛け声によって「奇跡のワンテイク」を魔法の様に引き出す
「大島マジック」があってこそだった様に思います


故にあの怒号の掛け声とは
単なる映画の撮影現場から 大島監督の創造の世界へ誘う

ある種のパフォーマンスだったのかもしれません


という訳で今回は
大島監督最大のヒットとなった問題作
『戦場のメリークリスマス』を ご紹介します☆

..........................................................................................................
▲目次へ▲
-STORY-

1942年 ジャワ山中の日本軍捕虜収容所
そこには単純で粗暴な軍曹ハラと日本語が流暢な英国軍中佐ロレンス
そして収容所長のヨイノ大尉がいた
そこへある日 英国軍少佐セリアズが連れてこられた

..........................................................................................................
▲目次へ▲
-解説-

■人との内なる絆を描く

本作は太平洋戦争末期 ジャワ島の日本軍捕虜収容所を舞台に
日本軍兵士と外国人兵士の捕虜達との対立を通して

極めて異常な環境の元で浮かび上がる
人の数奇な運命と 心の闇と絆を 衝撃的に描いた 問題作で

南アフリカの作家 ローレンス・ヴァン・デル・ポストの『影の獄にて』が原作の
3つに分かれた構成の中 「影の獄にて」と「種子を蒔くもの」の2作を
一つにまとめ脚色し

心理学に傾倒していた作者が 人の思考の差異による対立を越えた
無意識の底の深層心理に眠る感覚は 全て同じである という
人の絆をセンセーショナルに描き 欧州で物議を呼んだテーマを

大島監督ならではの感性で解釈し再構成した作品です


原作の柱となる デビッド・ボウイ演じるセリアズと弟とのエピソードの
多くがカットされ 回想として唐突に挿入される形となったり

坂本龍一演じるヨノイが戦犯の罪には問われず
故郷の神社にセリアズの髪を奉納する結末を変更するなどの脚色に加え

当時はまだまだ社会的にも受け入れられてはいなかった
ホモセクシャリティーを含んだ描写と それを踏まえた上での作品内の伏線など

公開当時 本当は何を描いている作品なのか
一般映画としては伝わり切らない難解な作りのイメージを与えましたが

人気ロックスター デビッド・ボウイ
人気テクノポップユニットYMOの 坂本龍一
人気お笑い芸人 ビートたけし の出演が 若い層に支持され

大島渚作品中 最大のヒットとなった作品でもありました


▲目次へ▲
■衝撃的なキスシーンの意味

セリアズがヨノイにキスをするという場面は
邦画史上かつて無いセンセーションを巻き起こしました


これは セリアズに心惹かれ 心乱されて来たヨノイが
取り乱した挙句 捕虜を不当に虐待し始めた事で

セリアズが歩み寄り抱擁し 命がけで制するというシーンで
ホモセクシャリティーな表現が当時話題となりましたが

当時の少女コミックの衝撃作『風と木の詩』や『トーマの心臓』と言った
ボーイズラブ系の耽美的表現の流れを汲む実写化という側面がありました



セリアズは 文武両道の完璧な自分に対し
優れた歌唱以外は取り立てたものが無く 背中に大きなこぶを持った容姿の弟を
愛する気持ちと相反する 残機な念を持ち続け

学生時代 学園の新人洗礼で大勢で虐待に遭う弟を
救わず放置した事に対して罪の意識に苛まれて来た人物で

ここでヨノイにした事とは
どんな人物も行為も差別無く受け入れる気持ちを現したものであり

その後生き埋めの刑を受け 死に行きながらも 安らかな表情だったのも

長年囚われて来た罪の意識と 残機な念を抱いた心の闇から開放され
何の偏見も無く人を愛する事が出来る 全てを受け入れる事が出来る

平穏な心中に居る現れと捉える事が出来ます


ある意味 本作とは この場面に意味するごとく

不条理や理不尽さと 怒りながらも真正面から向き合い
そんな世の中を見捨てずに 真っ直ぐに付き合い続けて来た大島監督の

そんな人の世を包み込む様な
大きな愛情の表れの様な作品に 思えるのでした


▲目次へ▲
■ラストのセリフの意味と
本作がなぜ難解なのかその理由

​​
たけし演じる ハラ軍曹のラストの
「メリークリスマスMr.ローレンス」のセリフの意味ですが

まず​一般的に良く知られる解釈​を紹介してから
その解釈に対する疑問を指摘した後に

当サイトの解釈を解説したいと思います


まず一般的な解釈には諸説あり、その中でも最も多いのが
「釈放して助けて欲しい」という気持ちからという解釈です


・・・終戦後、今度は戦犯として収容所に留置され
刑の執行を待つハラの元にローレンスが訪ねて来た時の事

ハラはクリスマスの日に酩酊して
自分がサンタクロースになって「メリークリスマス」と言いながら
ローレンスとセリアズを釈放した時の話をします

そして最後の別れとなる間際にハラは再びローレンスに
「メリークリスマスMr.ローレンス」と言って笑います

この場面に対して多くの解説記事が

「ローレンスにサンタクロースになって
自分を助けて欲しいという気持ちを暗に含めた布石」

だと解説しており

ハラが勾留中に従順になり欧米の勉強をして英語を話す様になったのは
「敗戦のメタファー」としての意味があるとの事で

「戦時中は帝国軍人として捕虜になるより死を選ぶ
武士道精神を貫いて来たハラが

敗戦した今は英語を覚え 英国の考えも受け入れ
今は素直に死にたくないと思える様になり
助けてくれないか と心で訴えながら とぼける様に笑った・・・」

としておりますが・・・

しかし本作を振り返ってみますと


ハラは作中 ヨノイが制しなければ セリアズを銃で殺していた様な人物
そのシーンを見る限りでも

これまでも何度も捕虜を無下に殺して来たとも捉える事が出来

ローレンスに語った「覚悟は出来ている」というセリフも
国際協定を無視し捕虜虐待を重ね
人としても許されない行為をして来た報いだと

刑に納得している現れとも考えられ

根が粗野な人物で 軍規の呪縛から開放された素直な気持ちの現れとして
「助けて欲しい」という気持ちを持ったとしてもおかしくは無くても

であればストレートに「助けて」と言えば
胸に迫る場面になったと思われますし

本作が多様性を認めない世界が陥る
勝敗によって立場が変わる運命の皮肉を

「反戦」というテーマに落とし込んで訴えるという
そういう狙いがあるならばその方がむしろ 効果的 と言えるので

ハラが従順になり欧米文化を受け入れ英語を話す事を
「敗戦のメタファー」という言葉を用いて解説しているにしては

「メリークリスマスMr.ローレンス」と言わせる理由が
「助けてくれ」が言えない自分に笑ってしまう自虐行為という
一見深そうではあっても

怒れる監督として知られ常にラストには
映画の「様式美」となる表現で幕を下ろす事を忘れない「あの」大島渚が

果たしてそんな「後味の悪い」人間臭いラストを「様式美」と捉えて
あの坂本龍一の名曲に被せ たけしの顔のアップをストップモーションにして
ラストシーンにするのか と考えますと

この解釈では説明が付くだけで
何か大事なパズルのピースが抜け落ちている様な

しっくりこない印象を受け、納得できないものがある訳です

大島渚監督自身

「戦争反対を伝えたいなら口頭で 戦争反対と言う
 言葉で伝えられない事を描く所に意味がある」 と語っていた事からも

気持ちと感情を演出で見せる場面だった事は間違いなく

原作から一人歩きをして 解釈を観た人に委ねる作りとなった事もあり
解釈が多種に渡る ダブル・ミーニングだった可能性も考えますと

尚更解釈が難解と言われる作品と呼ばれる事になり
先程の未消化な解説が本作の真意として知られる様になる背景も

「難解ならではの混沌」として語られたと言う事だと言えます


なぜ解釈が難解なのかという理由は後ほど解説するとして・・・


そこで改めてハラのセリフに付いて検証してみますと


たけし演じるハラは粗野な人物ながら 軍規に準じる真面目な軍人という面と
欧州の思想や人に惹かれるものがあるという 人としての面
常にせめぎ合って来た人物として描かれており

これは、戦犯として収監中に英語を話せる様に勉強した事が
欧州へ対しての惨敗したメタファーであるという、
ネットで良く論じられる様な狙いがあったかどうかという
物語の上の真意とは別に・・・

ハラは当時のどの日本人兵士と同様に
名誉を重んじ国に命を捧げる「武士道精神」に準じる事が
何を差し置いても重要な事であると信じ

捕虜になっても一時の不名誉に甘んじて
命を粗末にしないで生還する事を最優先する欧米の考え方を
一笑に付しならがも

その様な柔軟な考えを持つ 欧米に惹かれる ものを感じていた人物だと
捉えるのが自然だと思われますし

ローレンスにことさら 「捕虜になるなら腹を切る」と吹聴していたのも
単に帝国軍人としての 立場 を強調しながら

それに対しての欧米の考え方を対比しながら学んでいたと
捉えてみますと

クリスマスの夜、酩酊しながらローレンス達を釈放したのは
ローレンスを助ける為の方便として

酔った勢いで知らない内に2人を釈放してしまったと言っても
坂本龍一演じるヨノイがデビッド・ボウイ演じるセリアズに
特別な感情を持っている事を知っていて

恐らく何のお咎めも無い事を知っていたハラが
「サンタクロースの贈り物」という形で釈放して

上官には酔った勢いの失態に見える様に
英国人のローレンスには友人からの贈り物だと分かる様に
確信犯的にやったという

理由が見えて来ます

ただこれは上司に逆らうという厳罰覚悟な事でもあるので
どうにでもなれというやけ酒という意味もあった訳です

そしてここでハラは一度「ローレンス メリークリスマス」
というセリフを言っています


ちなみに、
デヴィッド・ボウイ演じるセリアズがここで「狂っている」と言ったのは
ハラに対してと言うよりも
この様なさじ加減で生死が決まる状況と
その状況下にある理不尽さに対しての言葉とも取る事が出来ます


そしてラストでハラは独房を去ろうとするローレンスに対して
何かを飲み込む素振りをした後「ローレンス!」と叫んで呼び止めるのですが

ローレンスはこれが最後の別れで、自分にはハラを釈放できる力が無く

ハラが今 何を飲み込み そして何を言おうとしているのか
既に分かっている様な感極まった表情で振り返り

そんなローレンスにハラは満面の笑み
「メリークリスマスMr.ローレンス」

あのクリスマスの時と同じ台詞を言います。


この時ハラの表情が、満面の笑みだったのは

この後 刑が執行される運命に対して
もし「助けてくれ」の一言でも言えば

釈放できる力の無いローレンスは友人を見殺しにしたとして
一生後悔しながら生きる事になると感じて

友人のローレンスにそんな思いはさせたく無いと思って
それはグッと飲み込んで

そうでは無くて、残り少ない時間をどう生きてきたのか
今の自分が 本当に伝えたかった気持ち を語った現れなら

ローレンスと 叫ぶ前に飲み込んだのが
「助けてくれないか」という気持ちだった事になり

「メリークリスマスMr.ローレンス」というセリフには
「助けてくれ」という意味は含まれていないと捉えるのが

自然だと思います


又この様な、
「映画」が意味不明で分かりにくい演出をする時というのは往々にして

観客に口が裂けても言えない何かがある時 か
観客に口が避けても言いたくない何かがある時 がほとんどなので

どの様な意味にも取れるラストのセリフのそれ自体の詮索は
実は余り重要では無いのかもしれません

そこで、
演出上の差異を狙い同じセリフを使う場合の「映画のセオリー」を踏まえて
ラストのセリフの意味を考えてみますと


一度目が「友人のキミを助けたかった」という気持ちからの
「命を救う」という「贈り物」をした

敵国の捕虜に対して口が避けても言えない気持ちの現われだとしたら

ラストのセリフには、収容所での事を受けて


​「あの時も、今も、本当の私は変わっていませんよ」​
​「こんな風に本当の自分として生きる事が出来て嬉しい」​

という気持ちが込められていたと捉える事が出来ます。


どういう事かと言いますと、
つまりラストのハラが、人当たりの良い人物になっていたのは

日本が敗戦し
刑を待つ身の上となり憑き物が取れた様に従順になり人が変わった訳では無く
元々そういう人物だったのであり

戦争で兵士となり帝国軍人としての思想を植え付けられ
それに準じる事を強いられながら

「本当の自分」は心の奥に隠して
これまで誰にも見せないで生きていた事になります

つまり
アノ時 ローレンスを助けたのは 「本当の自分」であり
今、ローレンスの前で笑顔で居る自分も あの時と同じ「本当の自分」なんだ

という事がこのセリフに込められていた事が分かります


これは立場が違えど収容所での地獄の様な日々を共に生き抜き
国境を超え立場を超えた友情で繋がった二人が共有できる言葉による

たけし演じるハラの シャイな人柄が見えて来る様な
本当の自分として今生きる素晴らしさを伝えたセリフだった訳です


そして「本当の自分として生きる事が嬉しい」というのは

国際問題や人種問題、宗教問題に社会問題、価値観、偏見など
様々な問題はあっても
人であれば当たり前に自分らしく生きるという事は誰もが享受すべきであり
抑制すべきでは無く

「自分らしくありのままで生きる事は素晴らしい」という

こんな事は
台詞に出して言うまでも無い程当たり前の事なんだ と

映画が鑑賞者に意思表示したとも 捉える事が出来ます


そしてたとえ明日には刑が執行される身の上だったとしても
旧日本軍兵士としての思想や軍規に準ずるという囚われの状況から開放され

友人を友人と呼べ 自由に英語を覚え
欧州の考えを素直に受け入れる事が出来る

ありのままの自分で居られる

そんな喜びの気持ちを表した場面での
そんな気持ちからの言葉だったからこそ
そんな心からの笑顔だったからこそ

胸に迫るシーンになったのだと思います


そしてこの「メリークリスマスMr.ローレンス」というセリフには
「贈り物」という意味がある事から


死刑が宣告され生きる為の時間が残り少なくなってしまった事に対して
刑が執行されるまでの時間を何もしないでただ待つのでは無く

捕虜収容所時代にローレンス達イギリス兵が
名誉よりも一時の恥に甘んじて生還する事を第一に考えて
自分の考えで行動する事を大事に思う

戦時中の日本では考えられない
「ありのままに生きる生き方」をするという事をローレンス達から学び
それを留置中に実行した事は

何も無いまま死ぬしか無かった自分の 心が救われて
「命が救われる」位に 素晴らしい事だったのだと、

今回「サンタクロース」となり、そんな欧米の考えを教えてくれて
「命を救う」という「贈り物」をくれたのは ローレンス 君なんだ と いう

友人への「さようなら」の代わりの
感謝を込めた言葉 だったのでは無いかと思います


大島監督はインタビューの中で
収容所を舞台に極東と欧州の対立の縮図を描いたと語り
後に作中の誰もが 捕虜も看守も 収容所に囚われている事に気付いた
という旨の発言をしております

つまり本作は、

ホモセクシャルな事を偏見の眼に晒される事を恐れて
ひた隠しにして来た ヨノイや

不具な弟を家族として愛しながらも、
優秀校に相応しくない因子として差別されリンチを受ける弟を助けず
優等生である立場を守り見殺しにする事を選択し
その罪の意識に苛まれ続けて来た セリアズや

欧州英国の文化に惹かれ英国人の友人を持ちたくても
帝国軍人としての立場が許さない ハラなど


隠さなければならない、罪の意識から逃れられない、立場が許さない、

様々な呪縛に囚われ、数奇な巡り合わせで収容所の中に一同に介した者達の
「囚われの運命からの開放」を描いた物語だと言えると思います。


そして本作がどうしてその事をもっと分かりやすく
誰でも理解できる様な形にして公開しなかったのかという理由ですが


80年代当時も40年以上経った現在でも
本作で描いている「立場の違い」「人種の違い」
そして「思想の違い」など

そして近年ようやく理解される様になってきた
LGBTの社会的マイノリティーにあたる人々などへの
「差別や偏見」「虐待」など

その様な人の多様性を認めない社会の問題は未だ解決しなまま続いており

もし それらの問題を人類が克服して真の意味で公平な世の中となり
そんな中で曇りのない眼で本作を観れば

その様な公平な世の中には無い
様々な問題が浮かび上がって見えてくる筈であるので

それが見えないのは というよりも

「この映画が難解に見えるのは今の世の中が正にその問題の中にいるから
だという事になり

いつの日か本作が 誰が観てもひと目で意味が分かる日が来た時の為に
本作は作られたという事を

大島渚はそれを警鐘を込めて伝えようとしているからなのだと言えます



本作が原作から一人歩きをし 大島監督自身の描く
東西の文化の衝突とそれを乗り越える姿というテーマすら越えた所の

近年社会現象にもなった『アナと雪の女王』の様に
多くの人の心を打ち 大ヒットした理由同様

ありのままの自分で居られる
囚われの運命からの開放が真のテーマだった事から考えてみますと

デビッド・リーン監督の『戦場にかける橋』や
スピルバーグ監督の 『太陽の帝国』が 何かと引き合いに出され
難解な作品と言われ続けてきた本作ではありますが

むしろ物語も描き方も 両極端な程にまるで違う
大ヒットアニメ作品の方に 意外な共通点を持ち


実は驚く程 誰にでも理解が出来るテーマを描いていたのではと
思うのでした☆


△▼△▼△

本作は収容所を舞台に ともすれば人の狂気に触れる重々しい内容ではありますが
竹宮恵子、萩尾望都作品にも通じる 耽美に満ちた作風を持ち

様々な価値観の中で求められる判断が複雑化した現代だからこそ
本作の持つテーマが再評価される時 なのかもしれません

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