『子産(上)』宮城谷昌光 、第35回吉川英治文学賞、講談社
時は紀元前、中国の春秋時代中期。当時、中国は北に晋、南に楚という大国があり、その間に中小の国が乱立していた。それらの国は、他国の侵略に脅かされ、国を保っていくためには晋か楚の大国に従属するしかなかった。
それらの小国の中に鄭という国があった。本書は鄭一国の宰相にまでのぼりつめ善政をしいた子産(しさん)という人物を描いている。
子産が死んだとき、孔子は「古の遺愛なり」と言った。このとき孔子は30才だった。
子産は子国(しこく)という軍人の家に生まれた。子国は最終的に卿、今でいえば大臣の位までのぼりつめた。司馬という鄭の軍事責任者になった。だから子産に軍人になる教育をほどこしたかというとそうではなかった。
家庭教師をつけ、学問をさせた。その家庭教師は子国に「子産は100年に一人の逸材である」と言った。すぐに家庭教師は自分一人で子産を教育するのは無理だと悟り、父親と二人がかりで子産の指導にあたった。
23才で子産は君主・子簡のそば近くに使えるようになる。
当時は、周辺の国と国との間で争いがあったが、国の内部でも権力争いがあった。鄭は、宰相の子駟が横暴だということで、クーデターが起こった。
朝の御前会議の時、反乱分子が宮廷に突入してきて、子駟や子国らを殺してしまう。しかし、クーデターは人々の支持を得ることができず、失敗に終わった。
その後、子産は子しきょうという宰相に次ぐ大臣に認められ、主に外交面で目覚ましい活躍をする。しかし、鄭にとって不幸だったのはクーデターの首謀者が分からなかったことだ。
やがて子きょうが死に、子産は卿(大臣)に。そして、子産は宰相(首相)の地位に昇りつめた。
就任後、早速、いくつかの改革を始める...。
本書は、前半は子国、後半は子産を中心に描いてあるが、彼らを通して中国の春秋時代がわかるように作られている。
春秋版「三国志」のつもりで読んでみると面白いのではないか。
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