京都花の艶殺人事件~京都花の艶殺人事件~京都の高級クラブ「ダツラ」でホステスをしている涼子は、若い頃にミス祗園祭に選ばれるほどの美貌の持ち主 その美貌を武器に、政財界人、文化人と繋がりを持ち、単なる浮気相手ではない実力者になろうと野心に燃えていた そんなある日、客の一人である大沢医師がラブホテルで服毒死体となって発見された 犯行現場からは黄色いスーツの女性が去るのを目撃されていたのだが、その特徴は、涼子の同僚ホステス千秋にそっくりだった 千秋は、大沢医師にのめりこんでいたのだが、最近二人の仲は冷え切っていて、千秋はずいぶんと落胆していたのである 大沢の死に何らかの関係があると睨まれていた千秋だったが、行方不明になってから三日後、琵琶湖畔の大沢の別荘で服毒死体となって発見される 叶わぬ恋と悟った千秋が大沢を殺し、自殺したのだろうか? 千秋と割と親しかった涼子は、事件について警察に聞かれるが、心当たりはまったくなかった 朝川代議士、一部上場会社社長の田原、日本画家の西川洛泉と、涼子は相変わらず、大物相手にうまく立ち回っていた しかし、いつのときも心が休まることはなく、朝川代議士の秘書を務めている小林の人柄に惹かれ、小林の前だけでは素直な自分でいることができる涼子だった 予てから癌という噂があった石丸代議士が病死した それを受けて、後任の大臣には朝川が選ばれた 朝川は自分のことを気に入ってくれている 大臣の女であれば申し分ないだろう そう思った涼子は、朝川の女になることを決意する が、朝川を甲斐甲斐しく世話していたのは、涼子のライバルでもあり、店のナンバーワンホステス麗子だった 麗子は、石丸代議士の女だった… それがいつのまに鞍替えしたのだろうか? てっきり朝川は自分のことを気に入っていたとばかり思っていた涼子は、裏切られた気持ちで、秘書の小林に怒りをぶちまける 小林は、涼子が朝川をずっと拒否していたので、麗子が接近してきても何も言わなかったという そのうえで、自分ではだめですか?と小林は涼子に訊いてきた ただの秘書の小林などに男の魅力を感じない涼子は小林に暴言を浴びせ、朝川の女になりたいと汚い言葉を吐いてしまう 麗子の対抗心から、意地でも朝川の女になりたくなった涼子 秘書の小林を怒らせたし、麗子の存在もあったので、もう望みは絶たれたかと思ったが、秘書の小林を通じて、朝川が会いたがっているという連絡が入る しかし、その日は折りしも東京から田原が来て、別れ話を切り出そうと思っていた日だった 運が悪いことにダブル・ブッキングになってしまったのだ どちらも断ることが出来ない… 涼子は策を練り、田原を朝川代議士が泊まっている同じホテルに宿泊させ、まずはじめに田原と会い、それから何か口実を作って抜け出して、朝川代議士に会うことを決める ダブル・ブッキング当日… まずは田原との密会を楽しみ、風邪で体調が悪いから帰る…と部屋を抜け出した涼子は、万が一誰かに見られてもいいようにリバーシブルのコートを着て、上にある朝川の部屋を訪れた 約束の時間に訪れたが、何の反応もない 部屋の扉が開いていたので、入ってみると、朝川が床に倒れていた 見ると、首には浴衣の紐が巻きついている 身体を揺さぶり、声を掛ける涼子だったが、朝川は既に死んでいた 涼子は驚きのあまり、部屋から飛び出してしまう その時、運が悪いことにベルボーイと、クラブの常連客と会ってしまったが、涼子は一目散に帰宅した 数時間後… 涼子は京都府警の狩矢警部からの電話を自宅で受け、朝川が亡くなったというホテルに出向いた そこで涼子は、狩矢から色々なことを訊かれたが、自分にはアリバイがあって、朝川の部屋には訪れていないと嘘をついてしまう しかし、アリバイの証言者である田原が、ずいぶん早くに部屋を出ていったこと、そしてベルボーイの目撃証言により、涼子の嘘はすぐに見破られてしまう 華やかな夜の社交場を舞台に繰り広げられる愛と欲の世界 今までは何もかもうまくいっていたものが、殺人容疑をかけられた女ということで、徐々に歯車が狂い始める… 窮地に追い詰められた涼子は、濡れ衣を晴らし、女として幸せを掴むことができるのだろうか? ~感想~ 中盤までは、事件そっちのけで、美貌を武器にのし上がっていこうとする打算的な女と、その色気に惑わされる男たちの性が描かれていて、これはこれで面白いのかもしれないが、肝心な事件はどうなったの?と推理小説としてはイマイチ面白みに欠けた が、後半、主人公に殺人容疑がかけられ、今まで順風満帆だった暮らしぶりに翳りが生じるあたりから、物語は俄然面白くなっていく ただ、欲を言えば、ラストに畳み掛けるようにして事件の真相が明らかにされていくので、もうちょっと落ち着いて展開を楽しみたかった それと、あれほど野心的だった女性が、落ち着くところに落ち着いてしまう結末も、なんだか綺麗事すぎるような気がしてならなかった という事で、私的評価は星【★★★☆☆】3つです ◆この原作のドラマ化作品・1◆ 平成5年1月29日放送 金曜ドラマシアター 『京都花の艶殺人事件・祗園の夜に燃えさかる執念!』 出演/沢田涼子…高樹沙耶/芦原洋一…田村亮/小林啓介…船越栄一郎/狩矢警部…若林豪/尾花令子(千秋)…大場久美子/麗子…蜷川有紀/扶美子…中島ゆたか/大沢礼次…中野誠也/マリ子…山村紅葉/朝川兼太郎…田口計/沢田直美…白石なつみ/ユリ…相田寿美緒 ほか …ドラマの内容 東京で看護婦をしている沢田涼子は、休暇を利用して京都に住んでいる妹の直美との再会を楽しんでいた 直美は、涼子の友人の千秋が勤めている祗園の高級クラブ「ダツラ」でホステスをしているのだ 再会を楽しんだ数日後、直美が密室状態の自室マンションで毒を飲んで死んでいる状態で発見される 直美は死ぬ間際にソファーに“0”という文字を残していたことから、犯人を示すダイイングメッセージかもしれず、他殺の線も考えられるが、現場が密室だったことから自殺の線が強い見方のようだった 直美が自殺したとは信じられない涼子が、京都から戻ってくると、直美から手紙が届いていることに気づく その手紙には、近々結婚する喜びが綴られていた 結婚を喜んでいた直美が自殺する筈がないと確信した涼子は、直美の死の真相を探る為に、恋人の芦原と別れて、単身京都に乗り込み、直美が勤めていた同じ祗園のクラブでホステスになる決意を決める ホステスをしながら涼子は、直美が代議士の朝川や病院長の大沢らに可愛がられていたことを知り、同僚のホステスのユリからは、直美が結婚を考えていたのは朝川代議士の秘書を務めている小林であることを知る 涼子は、自分が直美の姉であるということを明かしたうえで、小林に事実を確認すると、直美は大沢の愛人であったこと、大沢との関係に息詰まっていた直美が自分に言い寄ってきたが、はっきりと断ったことを話した 程なくして、大沢が別荘で服毒死体となって発見された 大沢を巡って、直美と、ナンバーワンホステスの麗子が張り合っていたこと 事件当日、別荘近くで麗子らしき女性が目撃されていたことから、麗子に疑いの目が向けられるが、その麗子が、自宅マンションで服毒死体となって発見される 一連の犯行を告白する遺書を残していたことから、麗子の死によって、事件は解決したかのように思えたのだが… …ドラマの感想 だいぶアレンジを加えられてはいるが、女の業など華やかにも醜い世界が描かれていて、賑やかな作品に仕上がっている ◆この原作のドラマ化作品・2◆ 平成18年4月8日放送 土曜ワイド劇場 山村美紗サスペンス 『京都花の艶殺人事件・愛人、ホステス、華やかな女達の戦い!・謎の文字“0”の秘密…』 出演/狩矢和美…藤谷美紀/狩矢警部…田村亮/夏目利彦…原田龍二/沢田涼子…涼風真世/アキ…遠野凪子/山野美野里…山村紅葉/真央…山田まりや/狩矢澄江…中野良子/石丸遼太郎…大出俊/中山清志…渋谷天外/橋口刑事…池田政典/高岡康祐…河西健司 ほか |