ブック・バトンに挑戦
ayakawaさんのところからブック・バトンをいただいてきました。この半年ほどは「オペラ座の怪人」以外に目が届かない私ですが、以前を辿って考えてみました。-----1.持っている本の冊数150冊くらいか。本は出来るだけ溜めない主義です。どうしても手元に置きたいものだけ、嵩の低い文庫版で。2.読みかけの本または読もうと思っている本☆読みかけで置くことは滅多にありませんが「ハリーポッターと不死鳥の騎士団」は、どうしても当時入り込めずに途中で置いてしまいました。☆「源氏物語」、谷崎潤一郎の訳を大事に持っていますが、いつも宇治十条にたどり着きません。生涯の課題として読まずに死ぬことがないようにと思っています。(笑)3.最後に買った本(既読または未読問わず)☆「Dearフランキー」「ベーオウルフ―中世イギリス英雄叙事詩」フランキーは映画を観た後に、ベオウルフは映画が来る前に読みたいと思っています。全くのジェリー絡みです。(笑)☆「バベットの晩餐会」アイザック・ディネーセン/岸田今日子訳昔々に観た映画の原作本をシネセゾンが映画に合わせて出版したもので、勿論新品ではもう手に入りませんので、楽天のフリマを利用して手に入れました。4.特別な思い入れのある本☆井上靖「額田女王」近所にありながら意識しなかった大和平野、明日香の地と古代日本の歴史に興味を湧かせてくれました。数年ごとに何度も読み返し、関西一円にわたる歴史の舞台を思い描きながら、万葉の壮大なロマンに憧れ、胸を焦がしました。数年前にはとうとうこの小説の山場の一つ、「あかねさす むらさき野行き しめの行き 野守はみずや 君が袖ふる」とあるその地を訪ねてきました。額田を巡る中大兄皇子と大海人皇子の兄弟それぞれの描写がとても魅力的です。☆ガルトン・ルルー「オペラ座の怪人」・オペラ座の怪人(日影丈吉訳)・オペラ座の怪人(長島良三訳)映画「オペラ座の怪人」に嵌ったことで、まず日影訳を手に入れたのに、文体に馴染めず長島訳を読みました。その後再び日影訳に挑戦したら、こんどはこの古いと思った文体の持つ風格にすっかり捕らわれました。映画のリピートと同様、今や日影訳のこの文庫本は、私の通勤バッグの住人になっていて、ときに引っ張り出しては、ファントムの姿を追い求めています。☆マーガレット・ミッチェル「風とともに去りぬ」中学から高校への多感な時期に、私としてはかつてなかった程の長編小説にも関わらず、1週間とかからずに読み終えました。最初の数ページ目から一気に引き込まれ、主人公のスカーレットに感情移入しながら、アシュレーに憧れレッド・バトラー(あ、ここでもバトラー笑)に惹かれていくのを、どうしようもなかった記憶があります。その後、映画と出会いキャスティングが小説から描く印象とピッタリだったのに感動しました。映画も小説も、名作中の名作です。☆ベルンハルト・シュリンク「朗読者」最近読んだ中ではNO1。短い小説ですが、少年の性の目覚めから戦争の痕跡を背景に、人がぎりぎりのプライドを守るために、運命に翻弄されていくさまを哀しく突きつけます。重たいテーマですが、淡々と一人称で語られるので、その重さ深さが憧れや悔恨などで包まれ、最後まで興味を持って読ませ上手いと思いました。とても美しく哀しく、深く心に残っている秀作です。ベルンハルト・シュリンク「朗読者」☆ウィリアム・スタイロン「ソフィーの選択 」丁度子育てをしているときに、映画にまず出会い衝撃を受けました。その後ずっしりした上下の単行本を買い、ほとんど寝るのも忘れて読みました。事実は小説よりも奇なりと言いますので、こんなことが実際にあったとしても不思議ではないのですが、それはあまりに辛い話。ストーリーだけを話すと、とても観たい読みたいとは思えないのに、この小説は魅力に満ち満ちています。ソフィーとネイサンという、大人として熟したカップルの自由奔放さへの青年の憧れ。が見かけと全く違うボロボロに傷ついた人生と、その傷を忘れないように絶えず攻めあい血を流すことに生きる実感をもっているような不思議な関係。青年がソフィーとの関係の中で、性的にも大人への階段を上がる過程。青年を惹きつける、ネイサンの大らかで、どこか狂気を含んだ性格の魅力。壮大で過酷な歴史の中で、それらさまざまなモチーフが、読み進むうちに次第に生き生きと息づいて来て、映画で強調された究極の選択が、青年の心の成長のエッセンスとして注入された逸話になり、衝撃ではありながら少し柔らかく受け止められる感じがします。☆スタインベック・「エデンの東」ハヤカワ文庫・大橋健三郎訳・「怒りの葡萄」新潮文庫・大久保康雄訳・「二十日鼠と人間」新潮文庫・大門一男訳スタインベックの小説は、貧しく真面目に生きる働く人に温かいまなざしと、階級や家族など人間に対置する理不尽さを容赦なく表現しています。いずれもとても重たい話ですが、その緻密でいて美しい描写には印象派の画を思わせるものがあり私は大好きです。特に「エデンの東」の描写。文脈や選ばれた語彙の美しさには、スタインベックを作家というより芸術家にしています。これはどちらかというと、スタインベック得意の階級社会ではなく、キリスト圏特有の宗教的なテーマを背骨に、憎悪、贖罪、罪と罰など普遍的な感情と、深層心理までを引きずり出し晒すような話が、どこまでも美しい文章で緻密に構成され圧巻です。「怒りの葡萄」はそのラストの素晴らしさ(映画とはラストが違う)が一際印象に残っており、思わず嗚咽して泣いたのを思い出します。このラストは私の小説ラストNO1です。「二十日鼠と人間」は短い作品ですが、社会の理不尽さの前に無抵抗な個人を、美しく温かくそして哀しくシビアに描いていて、いつまでも余韻を残します。5.次に回す人5人自分を見つめなおす機会にもなるこのようなテーマ、なかなか楽しいものですが、私のように長らく生きていると思い入れのあるものや好きなものが沢山あり、なかなか選択できません。(笑)しばらくするとまた書き直しをしたくなるかもしれませんね。興味をお持ちのかた、どうぞ引き継いでくださいませ。