他人事じゃない気がした
2月は逃げ月というらしいが、早かった。もう3月かぁろカレンダー見ながら朝、思ったのものです。来月は、ご近所やら親戚、友人等に、引越し、卒業、就職、入学とたくさんあるものだ、と・・・そんな事を思った今朝、いつものように娘を幼稚園へ送り届けてから、帰り道、近所の人が公園のベンチに一人ポツンと座ってたので、なんとなく声をかけてみた。その人は、独身女性で実家の姉と同い年、足の悪いお母さんと少し痴呆のあるお父さんと独身の弟さんと同居してる。声をかけたかわからないけど、疲れた様子で声をかけずにいれなかった。親しいというほどではないのだが、時々プールであったり、以前聞いたところによると姉と同じような病気で姉と同じ病院に月に一度通院してるとのことだった。その女性は、疲れちゃって・・と。最初は涙ぐみながら、毎日、毎日、家のことして、体調悪くて仕事にも行けなくて、また行きたくても、この頃はお父さんが痴呆が出てきたので目は離せないし、お母さんもリハビリを嫌がるし、自分の将来はとっても不安で・・・かといって頼りになる人がいるでなし、先々、自分がどうなるのか、兄弟や兄弟の子に迷惑掛けないように生きていかなければ行けないと思ってるのだが、今のままじゃどうにもならないし、一緒に住んでる弟は家の事も親のことも全く気にしてないし・・・ここまで話されて、彼女は、よほど苦しかったのか、号泣になってきた。彼女の姿に自然と姉の姿が重なってきた、彼女も2年前までは姉と同じように、キャリアと呼ばれるような仕事をしていたらしい、ところが、突然の病気で、休職⇒その頃母親が足を骨折⇒親の看病と自分の治療のため退職、という道を歩んだというのは、姑や旦那からも聞いていた。背中をさすりながら、何か気のきいた言葉をかけてやりたかったが、言葉がみつからなかった。慰めの言葉の一つもかけてやりたかったのだが、どうしようもできなかった。彼女はひとしきり泣いて、ごめんね・・と言って、もう少し話聞いてくれる?というので、その時、私が出来ることは話を聞いてあげることだけ、という気がして、頷いてた。彼女は、また話し出した。隣県に兄夫婦が住んでるらしい。隣市に妹が二人、それぞれに結婚して子供もいるらしい。妹というのは、時々、子供を連れて来てるので知ってたが、息子がもう一人いたというのは初めて知った。その兄夫婦が、今度、嫁の実家近くへ転居するのだ、と。転居先は、北陸のほうで、能登半島の先っちょだと。随分遠いですねぇと思わず言った。彼女は頷きながら、兄夫婦は結婚して15年近くなるのだが、結婚する時、嫁さんとの約束で一番上の子供が学校に入る前に自分の実家近くへ引っ越すという約束だったと。嫁さんの兄弟は、他に男3人いるのだが、どの男兄弟の嫁とも母親がうまくいかないと思うので先々娘である自分を母親が実家近くに置きたいというし、嫁さんも実家近くのほうが気楽だからということで、結婚する時に約束してたのだと。それを兄から宣言されたのは、先月のこと、結婚して長いこと子供が出来なかったので、やっと今年が、最初に約束した一番上の子供の学校入学の年。なんか変な話だな・・・彼女は続けて話した。2年前、自分が倒れて入院した時、そのお兄さんは、見舞いと称して病院の入院費用を全て払ってくれた、その程度の金なら払えたのだが、お見舞いだからいいのだ、と、笑って払ってくれたのだ、と。その時、それまで一度も、そんな事なかったのに、ましてや、仕送りだって一度もしたことない兄なので、妙な気はしたが兄弟の好意に甘えたつもりだった。ところが、先月、転居宣言の際、あの入院費用の支払いが手切れ金代わりだと言いだした。10万前後の金で手切れ金?かとつかみかかったが、嫁の実家近くで家も買うし、今後の生活もあるので、というのが、そのお兄さんの言い分らしい。いよいよ変な話・・・そのお兄さんの嫁さんというのが、転居が決まったら、一切、電話は出ないし、私は関係ないですから、と全く、他人、の状態で、転居する挨拶もないと。で、お兄さんが言うには、小さな事に気のつかない人でねぇ、実家近くに転居するので近所に挨拶周りするために菓子折りぐらい持って行かなきゃと言ったところで、菓子折り一つ買ってくるような性格らしい。いったい、そのお嫁さんって幾つ?と思わず聞いたら、その女性や姉と同い年、ということは、今年2度目の成人式の年にもなって・・・彼女は少し落ち着きを取り戻しながらまた話し続けた。何も親を見てくれとか、金を送ってくれとか、そういう事は言わない、今後も言うつもりもない。確かに、自分の将来は物凄く不安で、食べていけなくなれば餓死すればいいとも思ってると。しかし、それまで頻繁に電話をかけさせてた姪や甥にも電話もさせない、掛けても、電話口にも出させない、電話の向こうで姪や甥が叔母ちゃんと話すといってる声が聞こえるのに、話させてもくれない、電話しても何用ですか、お父さん、今は留守ですよ、ガチャンと切られる、せめて、一言、今度転居するから、と、嫁さんの口からも聞きたかったのだと。今度、自分の実家の近くへ引っ越すんですよ、私の親も年とってですね、の、その一言でいいから嫁さんの口から聞ければ、そう、元気でね、と、笑顔で送り出せるような気がするのだ、と。内心は、ハラワタ煮えくり返るほどの気持ちでも、人が旅立つ時に、笑顔で送り出す術くらいは知ってるのだと。彼女は話し終えてすっきりしたような顔になってた。うまく言えないけど、溜め込むと身体に良くないですよ。うちの姉も同じ病名の病気で、社会復帰できない上に実家の母の調子が悪くて、うちは兄貴や弟は海外赴任で、近くにいないし、姉も先日、検査で姉自身が白血球数が上昇してたって、通常の3倍値ぐらいまで上がってたって。母のこともあるのだろうってお医者様はおっしゃったらしいけど・・・難しいですよね・・・って言うと、彼女は実はね、お宅のお姉さん、現役時代から名前は知ってたし、何度か入札なんかでも顔合わせてたのよ、お姉さん頑張ってたよ、社会に出た頃そういう女性、一気に増えたの。でも、別の道を選択していく人も多かった、勝ち組、負け組なんて言葉で片付けられるほど、簡単なものじゃなかった。何なのかなって突き詰めていくと、淋しい、自分だけが取り残されていくようで淋しい。でも今日は話を聞いてもらえて嬉しかった。忙しいのに時間取らせてごめんなさいねぇ。と、歩いて帰って行かれた。彼女の家とは公園前の三叉路で反対方向になるのだが、距離的にはそう離れてない。時々、妹さんが小さい子連れて遊びに来てるので、うちの子豚娘などは会う人誰でもお友達なので、即、公園でお知り合いに会って遊んでたから妹さんたちは知ってたが、お兄さんがいたとは知らなかった。私も嫁の立場で、確かに別居したいとは思っているが、なんとも変な話のような気がする。嫁さんの親も息子の嫁とうまくやれないと思うから15年前に約束してた、と、いうのも変な話。兄貴のところに電話して兄嫁の声でも・・・と思ったが、話好きの兄嫁に電話なんぞしようものなら1時間は軽く喋られる、うちの実家の兄嫁の場合、本来なら私がもっと世話しなきゃいけないところ・・・の謝罪口調から始まり、近況報告、世間話と続く、電話代もタマラナイ、で、なんとなく実家の姉に電話したら、今日は姉の信心するお不動様の縁日で携帯は留守電になってた。姉は、もしかすると、毎月のお不動様参りが心の拠り所になってるのかもしれない、そんな気もした。言わないだけで本当は泣きたいぐらい苦しんでるのかも、そんな気がして、姉が帰宅した頃、電話すると、姉の携帯なのに、母が出て、「姉ちゃん、寝てるの。コタツで。」「どうしたの、コタツで寝るなんて姉ちゃんらしくない、具合でも悪いの」「違うの、今日、お不動様のご縁日に行って、今日は春の大祭だからって、お土産に桃の節句も近いしって白酒もらってねぇ、それ飲んじゃったら寝ちゃったのよ、なんか楽しいわねぇってケラケラ笑って(笑)」何か楽しかったんだろうな、そう思うことにした。今度、姉の話、一度ゆっくり聞いてあげよう、正面切ってじゃなくて、さらっと何気なく。思えば、姉に私が愚痴こぼすことはあっても、姉ちゃんが私に愚痴こぼしたり、不満言ったりすることは一度もなかった。いつも甘えてきたから、大好きな姉ちゃんにたまには甘えていいよ・・・って言っても頼りないって言われるかな?