状差しの言葉
「人間には、悲しみから回復する力が備わっている」我が家のトイレには昔からちょっとした薄めの本を差して置ける 状差しのようなものが設えてある大きな本などは置けないけれど文庫本や小雑誌のようなものを数冊 家族が好き好きに置いている用足しの間に それこそ気が向けば好き好きに読んでいるようである先日 何気なく開いたPHP8月号(娘が置いたのだろう)のとあるページに目が止まったノンフィクション作家の柳田邦男さんが いい言葉、いい人生 のコーナーで特集されていた目に止まったのは冒頭の言葉二年前に妻を亡くしてから悲しみは時が解決してくれるとここでも書いてきた 時という薬に勝るものはないとけれども そうではなかったぺしゃんこになっていた自分の胸のどこかにもがきながらもそういう力が潜んでいたのだ自分のどんな力だったのか どこの器官がどう歯をくいしばったのか破裂しそうな思いの心臓の弁をどう調整したのかまったく自分ではわからないけれども そうやって世間の同じような人々と同様に少しずつ笑みを取り戻せてこれたのは何も無機質な時のおかげではなかった自分のがんばりもあったのだ今日はこの冒頭の言葉にはっとした自分を褒めてやろう PHP令和元年8月号 柳田邦男「人間、死んだら終わり」ではない より