第2話(楽曲名つき)レンタカーで空港にマエストロカンを迎えに行くルミ。宿所は犬と一緒のところがいい。庭のある一戸建てで散歩もできる環境で、バスルームは二つ、自分とトゥベンの。くれぐれも言っておくがトゥベンを赤いゴムタライで水浴びさせようと思うな。トゥベンちゃんはプラスチックアレルギーなんだから・・・ などど注文つけるカンマエに、愛想笑いでうなづくしかないルミ。 とりあえずコヌの居候している住宅の前で車を止め、家を探しに行くルミ。 なのにカンマエは電子ロックを開けて勝手にコヌの家に入り、一人暮らしの汚い部屋を見て一言「いいね」 「家具はいい趣味だから、汚いものは放り出してしまえばなかなか使える」 「住んでいる人がいるんですよ!」 「公務員は政治力が命じゃないか。ここの主人は知り合いだそうだが、このくらい説得できずにどうするんだ。なにか問題があるんじゃないか?」 「いっそすっきり掃除もしてしまいましょうか!」 そして、主人の変わった家にコヌが帰ってくる。電子ロックの暗証番号も変わってる。 そこへ犬を連れて出てくるカンマエ。 コヌはあのときの記憶が蘇る。『クラッシックは○○だ、の中には何が入ると思いますか?』『少なくとも□は入らないな』 「家主か、連絡もつかずに・・・お前は2階へ行け」 「10年経っても変わりませんね」 「私を知っているのか?」 「クラッシックは何だと思いますか?俺は犬のくそだと思うんですがね」 ルミが買い物から帰ってきてコヌをなだめるも、曲がったつむじは戻らないコヌ。「すぐにたたき出せ!」 何とか先生のご機嫌をとろうとするルミ、必死。 「お前が出て行け、私はこのような者とは一緒に住めない」 そして・・・コヌは2階に追いやられ、静粛を強制させられ・・・ 「コヌ、ごめんね。こんなのないって分かってる・・・そうだよね、なんとか他のところへお連れするから・・・」 などとしんなりしながらコヌをベランダに閉じ込め3日間の猶予をもらうルミ。たいへんだね、あんたも。 いよいよオーケストラの初練習。 楽曲R・シュトラウス『ツァラトウストラはかく語りき』 超緊張状態の団員たちを代表して花束を渡し挨拶するルミに 「なんで練習をこんな夜に行うんだ?」 「皆さん他で活躍しているので・・・」 「じゃあこれは・・・アルバイトなのか?」 「ああ・・・本業なんですが、整理がついていなくて・・・」言葉も終わらぬうちに 「チューニング!」 チューニングの音を聞くや立ち上がるカンマエ。主婦チェリストのチョン女史に向かい「アジュマ!」 「わ・・・わたしですか?」 「楽器を何年ぶりにさわりましたか?」「わたしの名前はチョン・フィウォンで・・・」「20年も触っていないようだが」言い終わるや否や「セカンドバイオリン!二人はどうして弓を強く押すのか?電子楽器をやっているのか?」顔を見合わせる姉妹。 「フルート、お前は何歳だ?」「音大通ってますが」「音高水準なのに何いっているんだ」 「オーボー!ご老人は引退してから運動をしておられましたか?」「裏山で1時間・・」「肺活量を増やさなければならないでしょう。いくらオーボエが大変な楽器でも、呼吸がもたなすぎじゃないですか。それからあなた」 とペットのヨンギを睨み「どこのキャバレー所属だ」「プルグァンドン、トンテルパパ・・・あっ!ゴホンホゴン」 背を向けて帰ってしまうカンマエ。 ルミが追いかけてくる。 「どういうことだ?」「みんなコンディションが悪かったようで・・・」「正直に話してみなさい」という背後にコヌが「話すな!」 「噂を聞いたようだね、大統領の前で演奏放棄したとか。でもすべては昔の話。私だって40なのだから、そんなことはもうできない。さあ、こっちで座って話を聞きましょう」 そしてルミの手を握り「一人で気苦労が多かったようですね。全部話してしまいなさい。私だって10時間も飛行機に乗ってきたのに、手ぶらで帰るわけには行かないじゃないですか」 「実は・・・詐欺に遭って・・・」「どんな?」「それが・・・ク・ジョンエと言って・・・」「ああ、最近有名なあの人。大変だったね」そっと手を離すカンマエ。 「先生の指揮料はお支払いしたんですけど、団員たちの分は事件の後だったので・・・」 「そう、本当に悪い人たちだね、わずかな演奏料を横領するなんて。私たちは自尊心で生きているのに、純粋な人たちをだましたんじゃないか!」「でしょう~!」「それで、あの人たちはどうやって集めたんだ?」 「演奏料を払えないと言ったら最初は誰も集まらなかったんですが、経歴に関係なしとしたら色々な人が集まってきて・・・」うんうんとうなづきながら立ち上がるカンマエ。そして冷たく 「明日発ちます。チケットを用意してください」 引き止めるルミ。 「どうせこうなるのに、いい子ぶる必要なかったじゃないか」とコヌ。 「人間には色々な面がある。私はその一つを見せただけ。それに納得いかない。これをどうしろと!」 必死に引き止めるルミに「放っておけ!あんな人間からいい音楽はうまれない!」と言うコヌ。 「さっき一人でブーブー吹いていたのはどうなんだ?オケは初めてだろう?そんなやつにいい音楽だなんて、コメディだ」 立ち去るカンマエ。 ルミの先輩は思い当たるままに指揮者を探しますが、見つからない・・ 「君、知ってる指揮者いないの?いないくせにどうして追い払ったんだよ」 とコヌに嫌味。 コヌもちょっと申し訳なさそう。明日市長に全部話す、貯金を解約して楽器も売るというルミがかわいそうになるコヌ。 「しようぜ。公演」 と、二人でショッピングモールのようなところでトランペットとバイオリンの掛け合い。 楽曲 ベートーベン 交響曲第9番 悦びの歌 一方カンマエもベッドで自分のCDを聴いている。 コヌの言葉を思い出し「いいじゃないか、楽しいじゃないか」とつぶやき、睡眠薬を一錠飲んで眠りにつく。 睡眠薬はカンマエの手を離れ、床に落ち、散らばる錠剤を口に入れ始める愛犬トゥベン。 第9はコーラス部分に差し掛かり、まどろみから覚めたカンマエは第5番運命にCDを切り替える。 足元のトゥベンの様子がおかしい、口から泡を吹いている。横には空っぽの睡眠薬が。 「トゥベン!目を開けろ!」 こんなお利口そうな犬が薬飲むか・・・ 119に電話しても取り合われない。カンマエは失恋したときにあった子犬のトゥベンを思い出し、涙を流す。 そこにルミとコヌが帰ってきた。 トゥベンを車に乗せたとたんカンマエを置き去りにして走り去るルミ。 コヌがトゥベンをダシに指揮をするよう脅迫。 ルミが連れて行った獣医の下でなんとか命を救ってもらったトゥベン。コヌが与えた時間になってもOKしないカンマエ。「ポシンタンの季節にはまだ早いと思うが・・・」コヌはルミに電話「殺せ!」 その電話を奪い取り「わかった、してやる!」というカンマエに覚書とサインを書かせるコヌ。 カンマエとトゥベン、涙の再開・・・ しかし家に帰ってきてしらばっくれるカンマエ。コヌは「してやる!」と言った録音テープまで持ち出し「醜い態度です」というものの「醜いだと!?この世でいちばん醜いのはゴミみたいなオケを指揮することであり、クラッシックを汚すことだ!それにお前らは家族と同様のトゥベンを使って脅迫までした、許せない!」 「許す必要なんかないから、指揮でもしろよ」 「指揮でも・・・だと・・・?」不快そうなカンマエ。「コヌ、あんたはだまってて」 「誰が仕組んだのか?」「私です」とコヌをかばうルミ。 「契約金も受け取られて、家も準備したのに、指揮されないと言うので、無理とは思いましたが・・・でもトゥベンはどんなことがあっても助けました。ですから、一度だけ広い心で・・・」 「私は運転できない。運転手が必要だ。家政婦も必要だ」「ええ!できます!します!」 「トゥベンのシャワーに散歩、洗濯、掃除、服の整理に・・・」「ええ!しますとも!」 「ええい!」とおもむろに立ち上がるコヌ。台所に行って犬のえさの準備を。 「何してるんだ?」 「仕事しろってんだろ!」 「二人は付き合っているのか?お互い庇いあって、美しいともさ。でもここは公的な場所じゃないか。そういうことは別の場所で思いっきりやれ」 「他に何をすればいいんだよ。目録を上げてみろよ」 「必ずお前一人でやれ。彼女の手を借りてはいけない!」 「わかったよ」 なんか二人ラブラブモードです。 翌日コヌの家政婦仕事を手伝うルミ。でもカンマエに見つかってしまい 「必ずお前一人ですること」と釘刺されている。 さて、練習 「先生が何を言っても笑顔、余裕で!分かりましたか!?」と団員を教育するルミ。 みんなニコニコ、それなりの雰囲気。 「みなさんそれなりにハンデキャップも多いでしょうに、それでも音楽の熱情をつないでいこうと言うその意思は高く評価いたします。まさにそのとおりです。クラッシックは日常の中で楽しむものなのです。さあ、一番目の曲からいたしましょう。さ、楽しみましょう」 楽曲 スッペ 軽騎兵 序曲 指揮しながら横のソファーに座るカンマエ。 「はい結構です。みなさん拍子はお分かりでしょう。そのように、もう一度」 と新聞を広げるカンマエ。仕方なくコンミスのルミが合わせる。 カンマエはそれからも犬の散歩したり、他の音楽を聴いたり、寝たり、本を読んだり・・・ そうやって何日かたったよう(みんなの服が違うから) たまりかねた団員たち。寝ているカンマエを起こそうとするルミ。「先生・・・」起きない。 「あら。もうこんな時間」そそくさと帰ろうとするチョン女史。それに合わせてざわつく一同。 「アジュマ、自分だけ先に帰ろうなんて・・」「わたしはアジュマじゃないのよ。チョン・フィウォンって名前があるのよ」 「フィウォンさんは先に帰って、ほかの人は10時半まで練習ってことで・・・」とルミが言うと、フルートのイドゥンが「時間外給は出してくれるの?」と不満顔。キャバレー出身ヨンギはトランペットをブーブー吹き出し騒然。 「ちょっと待って」とキム老人はたちあがり「これはシステムが整っていないからなんですよ。だから。総務を一人決めて・・・」「なんで、コンマスがいるのに!」「ブー」「ああ、うるさいっていってるだろう!」「じゃあ、お先に~!」「コンマスは音楽的なことを、私が言っているのは取り纏め役としての・・・」「やったー!10時だ。帰ろう!」「お前何言ってるんだ」「ブー」「ちょっと静かにしなさい!」咳き込んで出て行こうとするヨンギはティンパニーにぶつかり倒し・・・「あ~あ~いててて!」 パンパンパンパン・・・ 手をたたき目を開けるカンマエ。 「まさにその音楽だ。ガランガラン、ドシンドシン、ブー。とてもよろしかったです。みなさんの水準にぴったりです。フフフフ。ずーっとその調子で、とてもよろしいですよ」 と出て行ってしまうカンマエ。「先生!」いつものごとく追いかけるルミ。 振り返らずに行くカンマエをさえぎり 「すみませんでした。みんなすぐに落ち着きますから、だから・・・」 「曲を変えたらどうだい?ベートーベンのウェリントンビクトリー、戦争交響曲みたいなのに。大砲の音をバンバンならして、お似合いじゃないか」と言い捨て行こうとするカンマエ。 「いらいらしますよね。わかってます、私だってそうなんですから、でも・・・」 そこに「行かせろよ」と現れるコヌ。 「みんな少しずつよくなってきたじゃないか。俺たちだけでやろうぜ」 「帰ったとしてもソウルくらい・・でもそれは果たしてソウルか?」と言うカンマエの言葉をさえぎり 「指揮者なんて腕だけ動かしてるやつ必要ないじゃないか。公演のときだけ立たせてそいつ入れろよ」 青ざめるルミ。楽曲R・シュトラウス ツァラトウストラはかく語りき 「何も知らない者が勇敢だとは、まさにそのとおりだな。指揮と言うものは・・・」 無視「早く入れよ」と背を向ける。 再び練習場に戻ったコヌ。 帰ろうとしているチョン女史を席に座らせ、ヨンギに「大丈夫ですか」と声をかけ、 「もうちょっと練習しましょう」と前に立ち「ああ、さっき総務って話がでてたでしょ。誰がしますか?」 するすると手を上げるキム老人。 「OK!拍手!」みんな拍手。不満顔なのはルミの先輩ヒョックォン。 「お前が楽長か?なんで前にでて来るんだよ」 「僕はただ交通整理しているだけなんですけど。ヒョンがされますか?」 「整理だけしろよ」 そして続けるコヌ。 「あ~じゃあさっきのところから」 軽快なリズムを刻むオケ。それらしく手を振るコヌ。ん??音が・・・ 「ちょっと待って!・・・・その・・・音があわない感じがしませんか?」 「音も合わないのに、私がどうやって?」 さっきの場所でカンマエとルミが話している。 「さっきチューニングしたんですが」 「まさにそれだ。微妙なところをそのままにしていく自信感、勇気、素晴らしいよ。Good!」 「どこが・・・どの楽器が違ってましたか?」 「いいよ。君たちの水準では聴く耳に耐えないほどのものじゃない」 「でも、あわせてみます」 カンマエはトゥベンのお菓子を割ってみて 「この音と、この音とどこが違う?そうだただのお菓子の音だ。それでいい」 「でも・・・団員たちかわいいと思いませんか?みんな音楽するのが大変なのに・・・」 「したらいい!誰も止めない。でも大舞台じゃなく、家や野原ですればいい。それが嫌なら公園でも、野外劇場だと思えばいいじゃないか!どうして大きい舞台でと思うのか?それは偽りだ!」 「でもこういう機会が与えられたんじゃないですか・・・これを捨てるなんて・・・」 ルミの携帯が鳴り響く。 「いいや捨ててもいい。自分の水準がどうなのか直視して認める勇気!ああ、自分は賤民だ、クラッシックをやる身分ではない、自分は観客にしかなれないのだな、そうだ、音楽会へいこう!有名な人の演奏を自分が演奏する代わりに聴こう。君たちがどうしてでしゃばる?すごい人は別にいるのに!」 怒りをこらえるルミ。携帯はなりっぱなし。 「今だってそうだ、夫の夕飯ださなければならない、会社に行かなければならない、稼がなければならない・・・どうしてしようとするのか!?クラッシックはもともと貴族の音楽だ。時代が変わったからと言って本質が変わると思うのか?電話に出ろ」 「ヨボセヨ・・・」 「こちらは未来ファンドです。有益な投資情報がありお電話さしあげました」 怒り爆発するルミ。 「何だって、このケーシェッキや!」 びっくりするカンマエ。 楽曲 モーツァルト 交響曲25番 「てめえがこの私に教えるだと、黙れこのやろう!何を買うかは私が決める!時代が変わったからって本質が変わると思うのか!?そうだよ!私たちは金も時間も能力もない哀れな庶民さ!じゃあ庶民はゲイジュツしちゃいけないなんて法があるのかよ!賤民、貴族?産業革命がら何年経ったと思ってるんだ。お前一人で朝鮮時代に生まれたのかよ、このセッキ!」 「・・・・電話切れているの分かってるんだが・・・」 「切れてたらなんだよ!関係あんのかよ!モーツァルトが平民だってことしってんのかよ!お前の論理だとモーツァルトは一生畑を耕して牛の乳搾ってチーズ売って死ぬんだよ!お前がその時代の指揮者なら天才を何人も殺してたんだよ!このサリエリ野郎!!」 と叫んで電話を切るルミ。うつむくルミにカンマエ・・・ 「名前・・・トゥ・ルミ・・・?」うなづくルミ 「ご両親は名前を誤ってつけたようだ。トゥルミ(鶴)じゃなくて、タルギ(鶏)」 何もいえないルミ。 「まあ、いいだろう。悪くない。陰口たたかれるよりいい」 「・・・ええ。。。」 「そうだ、モーツァルトは平民だった」歩きながら語るカンマエ。 「ええ、天才でもありました」 振り返りルミを見つめ「そうだ、天才。だから私はモーツァルトが嫌いなのだ」 カンマエの背中を見つめるルミ。 カンマエは練習室の中に入る。コヌの指揮で練習中。 コヌはカンマエの姿を見るや自分の席に戻る。 「平民は平民じゃないのか?音を合わせられる平民もいれば合わせられない平民もいる。チューニングからもう一度」 と言って指揮者室に入るカンマエはトゥベンに語りかける。 「お前だけに言うがな、本当は私もどの楽器がどのくらいはずしているのかなんてよく分からない。ちょっとずれているのを分かるだけだ」 「ん?お前は分かるって?お前は犬じゃないか。耳がいいじゃないか。ははは、トゥベンちゃんがこのオケを振らなきゃならないのに」 チューニングの音を聴きながら突然吠え出すトゥベン。 カンマエもはっとする。 「なにかおかしいですか?」 「どうしたんだ?音が合ったじゃないか、どうやたんだ?」 「エアコンつけたじゃないか」 とコヌが無表情に言う。 「さっき練習室が暑くて、管楽器の音が高かったんだよ。それで下げたんだよ、エアコンで」 「どうやって?音がどれだけ高いのをどうやって合わせたのか」 「ただ・・・8分の1だからこのくらいだ、ってピンと着たんだ」 緊張高まる団員たち。ヨンギたまらず 「早く先生に謝れ」 「いいや」 と言って指揮者室に下がりドアを閉めるカンマエ。 「8分の1だからこのくらいだ」 その言葉で回想する。 「ピンと来ないか?」 そこは音高のピアノ室。 ピアノを調律するチョン・ミョンファンとカンマエ。 「コヌ、これは8分の1下がったからこのくらい。こんなんで今までどうやって弾いてたんだ」 そして美しいピアノの旋律を奏で「調律代として先生にはうまく言っといてくれよ。俺ちょっと遊んでくる」 と言って教室を出て行くミョンファン。 コンクールでの回想。 ショパンの曲を弾くカンマエ、一生懸命に。 楽曲 ショパン 練習曲25番 (おい、カン・コヌ。どうしてそんなに死ぬまで練習するんだ、馬鹿みたいに!ただ楽しめよ。歌じゃないか、音楽・・・) と、ミョンファンの声。 同じ曲を弾くミョンファンは明らかに楽しそう。 「大賞は・・・カン・コヌ!」 みんなに祝福されるカンマエ。しかし 「今年は大賞が二人です、まったく素晴らしいことです。大賞はチョン・ミョンファン!」 もっと祝福されるミョンファン。 ウィーン国立音楽院、指導教授のところへ駆け込むカンマエ。 「どうしてですか!どうして卒業演奏会の指揮をチョン・ミョンファンがするんですか!?」 「あ~それはだね・・・」 「なぜですか!私より指揮の勉強も遅く始めました。お前がやっているのが面白そうだからと、真剣さもなしに・・・適当に指揮に転向した奴なんです」 「コヌ、ここは学校です。お静かに」 「評価も私のほうが上だったと聞きましたそれなのにどうして突然・・・卒業演奏会の指揮者は私です!」 「まさにその君の態度のためだよ。君が教授たちに挨拶だけでもきちんとしていれば・・・もう少し社交性があったら・・・こんな結果にはならなかったでしょう。1点差でした」 そしてテレビを見ているカンマエ。 どこのチャンネルでも世界的指揮者チョン・ミョンファン帰国のニュースであふれかえっている。 カンマエは立ち上がり、寝ているコヌに水を要求。 「水はどこにあるんだ!水!」 「買っときましたよ。冷蔵庫に・・・・」 「生意気言うな、平民なら平民らしくひれ伏せていろ!」 と言って出て行くカンマエ。 「なんだよ・・・」まったく意味のわからないコヌ。 市長に挨拶しにいくカンマエ。 市長芸術オンチらしい、カンマエと話がぜんぜん合わないが 「それでですね、城南市を音楽の都市に作る企画は後ほどじっくり説明することにして、こちらからご覧になってください。今回の公演で招待するお客様の名簿です」 「招待しないほうがいいと思いますよ。あまりにもたいしたことのない演奏ですから」 「またご謙遜を!先生の実力は周知の事実なんですから。大統領の前でも演奏されたとか」 「それはですね、申し上げときますと」というカンマエの言葉をさえぎり興奮気味に続ける市長。 「それで今回先生の名声にふさわしい方を招待したんです。この方です!」 と、ポスターを差し出す市長。それはチョン・ミョンファンだった。 「スケジュールの調整がつかないのに何とか約束してくれました。必ず来られるそうです。なんでもお二人は親しいそうですね」 帰りがけ、ミョンファンの公演ポスターを全部はがして床にたたきつけるカンマエ。 (まだ指揮者の席が見つからないのか?俺が紹介してやろうか?) (申し訳ありません。今回の公演はチョン・ミョンファン先生の指揮で・・・) すごい勢いで練習室に現れるカンマエ。 「何してるんですか!練習しますよ!」 「ヘレンケラーをご存知でしょう。目、耳、口の三重苦をこえ、大学で博士号もとった奇跡の社会運動家。」 一同「・・・???」 「奇跡を作りましょう。私が皆さんのサリバン先生になります」 「その表情はなんです?まさか皆さんがヘレンよりいいとお考えになっているのでは?ヘレンケラーは優秀な頭脳と立派な家柄の後継者でもいたけれど、みなさんはお金もないし、才能もないし、経験もない、手も硬くなったのに・・・たった20日で立派な公演をしよう。これが奇跡ではなくてなんでしょうか?」 「・・・・」 「ヘレンケラーくらいになってください。あの女のように口を閉じて、目も閉じた状態で耳だけこじ開けろと言うんです。そうしたら後で『水』くらいはいえるようにさせてあげます。それが水なのか味噌なのか糞なのかは知らないが・・・さあ、行きますよ!オーボエから!」 楽曲 エンニオ・モレコーネ 映画ミッションから キム老人吹き始めるが・・・何回やっても気に入らないカンマエ。ついには 「違うというのだ!」 と怒鳴りつける始末。 「どこが違うんですか、教えてください」 というコヌを無視して弦楽パート。 チョン女史のところへ向かい「アジュマだけ」 緊張しながら奏でるチョン女史だか 「音大出身なんですよね」うなづく女史。「それでこれはどういうわけですか?」 「長い間、弾いていなくて・・・」 「民弊だってことご存知ですか?」 「・・・」 「チョン・フィウォンと呼ばれたいと言ってたでしょ。どんな意味か知ってますか?自分の名前に責任もつってことですよ。アジュマ責任持っていますか? 私だったらこんな実力で、恐ろしくてそんな風には言えませんね。まったく勇敢です、アジュマ。 練習もしないで来て、音も合わせられない、でも音大出たというプライドはある。演奏も絶対オケでしたい。これは欲張りってものです。 「どこ直せばいいのか言ってください!」 「コヌ、黙ってって。・・・すみませんでした。私が・・・足りませんでした・・・」 「それでどうしろと?見逃せと?」首を振るチョン女史。 「アジュマみたいな人世の中でなんと言われているのか知ってますか?厄介者、迷惑者、いろいろな名前がありますがその中でも私はこう呼びたい。トン・トン・オリ。(くその塊)」 我慢していた涙があふれようとする女史。 「こいつ・・・!」いよいよコヌは立ち上がるが、キム老人に制される。 チョン女史はもう涙がとまらない。凍りつく空気。 指揮者室にルミが訴えにくる。カンマエは窓際に立っている。 「練習しないのか?」 「どうして突然こうされたんですか?」 ルミの言葉を無視し、机に向かってスコアを読むカンマエ。「もうやりたくないか?」 「みんないい人ばかりです。演奏料をもらわないで演奏すると集まった人たちをこんなにばか扱いしなくても・・・」 いきなりスコアをバサッと閉じるカンマエ。 「チョン・ミョンファンが来るからだ・・・」 「え?・・・」 「やつは私の行く道をいつも塞ごうとする。そんなやつの前で私は指揮をしなければならない。あの人たちを率いれて・・・」 そしてルミの顔を見ながら 「こんなことあると思うか?」 「うまくなだめながら引っ張って言ってもいいじゃないですか?北風よりも太陽が旅人の服を脱がせるって言葉もあるじゃ・・・」「知らない!!!」 立ち上がって大声で叫ぶカンマエ、驚くルミ。 「私はいくら上手なプロでも私を気に入らせることはできない人間だ。気に入った音を探すまで何回もオーディションで絞り、それもファースト、セカンド、サードとっかえひっかえするんだ!そんな私が、あの者たちを連れて演奏しなければならない。こんな話があるのか!?」 「練習が楽しければ公演もうまくいくんじゃないですか?こんな方法でしたって」 「人の話をちゃんと聞け!!!」バンと机をたたくカンマエ。 「そんなことを言って最高指揮者になったあいつの前で、私がこんな講演をしなければならないんだ!!!お前のせいで!!!!!」 次回 お茶のティーパックを食べてるカンマエ。 「公演、期待されてもいいでしょう」 |