2019/10/02(水)22:24
床下仙人 / 原 宏一
一度は小説家を辞めることまで覚悟した著者の、起死回生の一作となった作品。
2007年の啓文堂おすすめ文庫大賞受賞作でもあります。
登場するのは家庭を顧みずに会社のために働き、家族に見放される男達。
今の感覚からすると、さすがに距離感はあるかもしれない。
それでも、日本という国のいわゆる「男社会」で、その男たち自身が密かに抱えてきた不安感や罪悪感、これでいいのだろうかという感覚(その対象は家族であったり、地域社会であったり、会社や自分自身であったりする)をうまく奇譚的な形で描き出している。そこにはやはり普遍的な問題意識があると言っていいでしょう。
ある日、突然見知らぬ男が床下に住みついてしまっていて、いつの間にか家族と談笑している。
タイトル作、「床下仙人」
ある日突然主人公が勤めるデザイン会社に期間限定の社長がやってきて、これまでと真逆の体育会系の運営を始める、「派遣社長」
他、どれも「ある日突然」な五編を収録。
イッセイ尾形氏がカフカに例える推薦文を書いている通り、ストーリーは奇抜だけれどけして笑えない。
ハケン度★★★☆☆