2021年10月の記事一覧 | わんにゃんかんぱにぃ

エリゴロウとおじゃの物語

私が物心ついたとき、自然と動物が好きになっていました。でも、家はケーキ屋で、飲食業にとって、動物の毛はタブー。だから、家で動物を飼うことはNG。動物が飼いたいのに飼えない。動物と暮らしたいのに暮らせない。動物が好きなのにそばにいない。だから、近所の犬を散歩したり、公園の鳩にエサをあげたり、周りにいる生き物で気をまぎらわしていました。とにかく動物が好きでした。一番の影響は、まぎれもなくムツゴロウさん。「ムツゴロウとゆかいな仲間たち」をテレビでいつも観ていました。広大な大地で、人とさまざまな動物たちが共存して、たくさんのドラマチックな物語が繰り広げられる。自分の日常生活とかけ離れた嘘のようなホントの物語の数々で、テレビ越しに毎回感動していました。ムツゴロウさんのようになりたい、ムツゴロウさんのように広い広い大草原で動物たちと暮らしたい、子供心にそう思っていました。動物はすぅ～っと心の中に入ってきてくれます。うれしいときも悲しいときも寂しいときも腹が立つときも、いつも変わらない対応をしてくれます。いつもとびっきりの「お・も・て・な・し」で出迎えてくれます。そんなストレートで混じりっ気のない、無邪気な動物が私は大好きです。大学生になって、親元を離れ、一人暮らしをするようになったと同時に、たくさんの動物を飼い始めました。犬、インコ、鶏、ウサギ、モルモット、ワラビー、カメ、チンチラ、フェレット、、、、ありとあらゆる動物を招き入れました。まるで、いままで飼いたくても飼えなかった欲求が一気に爆発したかのように。動物たちとの生活はとても幸せです。背丈、格好、性格、気質の違う多種多様の動物たちがいっしょに共存する生活はとても幸せです。動物や人間がいっしょに、ぐちゃぐちゃ、もみくちゃに共存できる社会はとても幸せだと思います。大学生のときに１匹の犬に出会いました。ブラックタンのスムースチワワ、女の子です。今から２０年以上前の話です。見た瞬間、“ビビビッときた”というのが、まさにこのときです。私は、この子に「おじゃ」と名付けました。そこから１７年間、おじゃとの生活が続きました。学校に通うのもいっしょ、お出かけもいっしょ、寝るのもいっしょ、生活のすべて、いっしょに過ごしていました。勉強につかれたときや嫌なことがあったとき、おじゃはいつも私の顔や手をペロペロなめてくれました。なんだか励ましてくれているような気がしました。嬉しいことがあったときや楽しいことがあったときも、おじゃは私の顔や手をペロペロなめて、いっしょに喜んでくれました。無茶苦茶にペロペロ舐めてくれて、くすぐったくて、やめてやめてと抵抗すればするほど、おじゃはむきになって、余計にペロペロしてきました。おじゃとの楽しい生活のおかげで、励まし励まされ、勉強をがんばることができました。私の横に、いっつもおじゃがくっついていてくれたおかげで、元気をもらいながら学校に通うことができました。いっしょに歩いて、いっしょに自転車に乗って、いっしょに車に乗って、いっしょに電車に乗って、６年間通学することができました。おじゃがいてくれたおかげで、獣医師になれました。おじゃが獣医師になる壁を乗り越えさせてくれました。背中を押してくれました。社会人になって、慣れない地で頑張れたのもおじゃがいてくれたから。仕事が終わりアパートに帰ると、おじゃがいつも玄関先で出迎えてくれました。疲れきったときも元気がないときも、いつもいつも変わることのない笑顔でしっぽをぶるんぶるん振りながら「おかえり」と言ってくれました。おじゃの屈託のない笑顔と仕草に癒され、励まされました。「社会人」という迷いと希望と挫折と挑戦に満ち溢れた不安定な世界で、やりこなせてこれたのは、おじゃのおかげです。少しずつ新しい生活にも慣れて、やりがいと夢をもって働けました。ある日、自分に子供が産まれました。はじめての子です。周りには、子育てを教えてくれる人も手伝ってくれる人もいなく、孤独の日々でした。どうやって育てていいか、なにもかもわからないところからのスタートで、泣き続けるわが子をどうしてあげたらいいのか、そのときの私の器ではとても受け止めきれない日々でした。今思い出せば、あんなときもあったなと笑い話になりますが、当時の私は暗いトンネルの中にいた、そんな感じです。そして、子供が産まれて間もなくして、おじゃがガンを患いました。そのとき、おじゃは17歳です。子育てに相当苦労していた私は、余命幾ばくもないおじゃとの時間を十分にとることができませんでした。本当は、ガンで苦しそうにしているおじゃとの時間をもっともっと大切にして、最後の時間をふたりきりで過ごしたかった。いっしょにいて、痛み、苦しみ、悲しみを少しでもとってあげたかった。昔、おじゃにそうしてもらったように。今度は、私が、おじゃの寂しさを癒してあげたかった。傍らで泣き続ける我が子をほっとくこともできず、おじゃに十分な治療を施してあげることもできず、おじゃとの時間と赤ちゃんとの時間の両方を天秤にかけては、苦しい日々でした。「おじゃ、ごめんね。ごめんね。」と謝ってばかりの日々でした。でも、そんな私をおじゃは察しているかのように、いつも私が動くたびに横にくっついて歩いては、力尽きてぐたっと横になっていました。歩くのも、息をするのもつらいだろうに、私の心を支えるかのように、傍にぴったりくっついて離れませんでした。最後の最後に、おじゃを手術しました。イチかバチか、自分で決めました。そして、ごはんの食べれないおじゃに、食道カテーテルを装着して、流動食を食べさせてあげました。それから数日して、おじゃは天国に逝きました。そのときはじめて、最愛の宝物が天国に逝ってしまうことの悲しみを実感しました。天国に逝ってしまうと、もう二度と会えないんだということも思い知らされました。会いたくても会えない、もう一度だけお願い！会いたい！とどんなに願っても、決して会うことができないんだと知りました。身近にいた存在がなくなることの悲しみ、苦しみを知りました。こんなにも心が痛いんだと思い知らされました。何度も何度も、もしかしてまだどこかにいるんじゃないか？ひょっとして生きているんじゃないか？と勝手な思い込みが頭の中を占領しました。おじゃの死体と３日間、いっしょに寝ました。一日経っても二日経っても、おじゃは動きませんでした。何日も何日も経って、おじゃが本当に死んだんだと、心にすとんと落ちました。おじゃは、はじめから終わりまで、たくさんのことを私に教えてくれました。たくさんのものを与えてくれました。１７年間、私のことを信頼し続けてくれました。私が泣いても笑っても、すべてを受け入れてくれる大きな大きな器を持っていました。私がどれだけおじゃを叱っても、どれだけ都合よく扱っても、おじゃは怒りませんでした。いつも優しく微笑んで、横にくっついていてくれました。あれから７年の歳月が流れ、私も少しだけ大人になりました。おじゃのいない生活は寂しいですが、少しずつ慣れました。今でもおじゃと過ごした日々のことを思い出します。おじゃとの思い出は今も私の中で生きています。おじゃと過ごした日々のひとつひとつを覚えています。おじゃと出会ってから２０年以上もの間、私の心の中でおじゃとの思い出が生き続けるなんて、こんな幸せなことはありません。今は、おじゃに教えてもらったことを大事にしながら生活をしています。おじゃに直接教えてもらったことを伝えられるのは私だけです。おじゃに教えてもらった、動物の優しさとか愛おしさとかすばらしさを伝えられるのは、私だけです。おじゃに教えてもらった大切なこと、それを大事に大事にあたためながら日々、生活しています。私が動物のことを語りだすと胸が熱くなります。動物を飼うことには、困難や苦労もありますが、動物たちが与えてくれる感動や喜びには代えられません。私は動物が大好きです。それは、子供心にムツゴロウさんにあこがれて幼少時代を過ごし、大事な人生の大半をおじゃというすばらしいパートナーと暮らせたおかげです。こんなにもすばらしい『感動』の数々をひとりでも多くの人に知ってもらいたい。ひとりでも多くの人に共感してもらいたい。動物のすばらしさ、動物との感動をひとつでも多く伝えるべく、これからも動物に関わる事をしていきたいと思います。そして、おじゃとの思い出を大事にしながら、これからもたくさんの動物たちに囲まれて暮らしていきたいと思います。私には子供がいます。家族がいます。周りには動物が好きな仲間たちがいます。動物との縁があって知り合った人たちがいます。子育ても人との付き合いも大変なことがありますが、動物を通して、子供も大人もどんな人も、みんなの心が豊かになっていくのを見ると、昔の自分とおじゃとの関係を思い出して胸が熱くなります。もっとたくさんの人に、動物と出会ってもらいたくて、動物を好きになってもらいたくて、動物からいろんなことを感じてもらいたくて、日々、さまざまな活動をしています。活動を通して、少しでも共感してもらえることがあったら嬉しいです。私は、動物たちの純粋無垢な心とまっすぐに思いのままに表現する姿勢と屈託のない無邪気な笑顔が　大好きです。おじゃ、ありがとう。おじゃにまたいつか会いたいな。ひとつだけ願いが叶うとしたら、おじゃに会いたい。そして、思いっきりハグして伝えたい。「ありがとう」って。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（byエリゴロウ）

わんにゃんかんぱにぃ

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移動動物園「エリゴロウとゆかいな仲間たち」開催

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