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∋(。・"・)_†:*.;".*。彼方野まりあ、世界中で愛を叫ぶ!◆

「朱雀門」

注)以下の文は、「羅生門」の続編として、私が高校生のときの宿題で作ったものです。
そこの高校生、うつしちゃ嫌よ~宿題は自分でかいてね、かならず成長するよ(^_-)
検索していて幾つか、続きを書いたサイトを見つけました。
いろんな作品の続きの考え方の違いに驚きです。
それから、自己発見もあり。
私は、どうも、「性善説的思考」を基本的にするタイプのようだわ。
いや、人間環境論がやはり近いかな?。
人間性が善から始まるとも悪から始まるとも思っていないか・・
遺伝をベースに「無」から始まると考えてるかな
でも、下の文を書いた私を分析すれば、環境が悪くなければ「善」
であるように思ってるように見えるな・・
甘いかな?経営者としてはよくないかも・・・。
 
 下人は朱雀門方面へ小走りで向った。
 といっても、別に行きつく宛があるわけではなかった。
 只、人通りの多そうな朱雀門(ところ)を選んだのである。
 下人は、静かなところで一人になるのが恐かった。
 そこで、冷静になた自分が何を考えるのか、大方察しがついていたから。
 だから、彼はなるだけ人通りの多い朱雀門で
 自分より卑劣ですさんだ好意をする悪人を見、
 つまりは自分のやった行為を改めて肯定するだけの
 理由(いいわけ)を探ろうとしていたのだ。
 ・・・なるほど、このまちの者達は、彼の欲するところを充分に満たしてくれた。

 歩いて行くうちに下人は、道端でそれとやっと分るほどの炎に
 身を寄せている人影をようやく目に捕らえた。
 (今ごろ、こんなあ道端(ところ)にいるやつだ。燃やしているのもきっと何処からか・・・。)
 そういう考えが下人の脳裏に浮かんだ。
 ・・・・と、そのとき一陣の風が吹いてかすかな火の芽を摘んでいった。
 そして、その時はじめて下人は、その夜が全くの闇であることに気がついた。
 しかし、下人は歩くのに不自由はしなかった。
 (歩くのに不自由な何かが落ちていようものならすぐさま誰かが拾っているさ。)
 下人はそう思うと鼻を鳴らした。
 ・・・・?と下人の左足がある堅い物を踏み、
 驚いて身を縮めると同時に素早くその足を引っ込めた。
 震えるほど強く握り締めた両手のこぶしは、自分の胸を痛いほどおさえていた、
 そして、その堅い物から少し離れた位置(とこ)に、
 恐る恐る、そして用心深く再度足を伸ばした。
 ・・また、何かを踏んだ。・・しかし、今度は先程より妙な心持ち柔らかさを感じた。
 下人は、金になるものでは?と考えもう一度、その手を伸ばした。
 ・・・死体であった。裸の死体であった。
 そう気づくや否や下人はそのしたいを突き放し、同時に自分も後ろに飛び跳ねた。
 そして、改めてそれに近づき、今度は蹴飛ばそうとした・・その時である。
 下人は忍び泣く女の声を耳にした。泣き声ではあったが若い女の声だった。
 下人は急に気をとりなおすと、ちょっと気取った調子でその女に話しかけた。
  「何故、ああ、なにゆえ、このような所で泣いておるのだ」
 女がしゃくりあげながらも、泣き止もうとしている間、
 下人は次の言葉(せりふ)を探そうとしていた。

 「わたひ・・・この人は・・わたひの」なかなか声にならない様であった。
 下人は座りこみ、ひざにひじをつい立て、
 その手であご杖をし女のほうに顔を乗り出して次の言葉を待った。
 「この、ひとはわたしの恩人なんです」
 ―下人は目をそらした。女は話しを続ける。
 「このお人は、私が身売りされようとした時に、
 持ち金の全てを出し、私を助けてくださいました。
 おかげで私は、逃げおおせたのですが、
 この人は持ち金を渡すと身包み剥がされて刺されてしまったのです」
 下人は中腰のまま、口を閉めるのも忘れて女を凝視していた。
 「私はこの人の最後の言葉を聞いたのです『帰らなくては』、と」
 女はそこまで話すとまた泪があふれてきたようだった。
 「で、私はこの人を引きずって、このひとの身元を尋ね歩きました。
 でも女の私には重くて・・・だから・・・
 引きずってきたものだから・・・・
 死体はすりきれて、腰のあたりなど骨まで見えるまでになってしまい・・
 土埃にまみれて、そうこうているうちに腐りかかってきてしまいました。」
 下人はさっき堅い物に触れた方の手をとっさに老婆服でぬぐった。
 女はどうにも言葉が続かなくなり、嗚咽を続けた。
 「痛っつ・・・」触りつづけていた下人のにきびがブちっと弾けた。
 「ただでさえ、申し訳無くてならないのに、こんなになっては、
 ご家族にお見せする事さえ気が引けるのでございます。」
 下人は顎に出来た新しいにきびを気にしながらその話しを聞いていた。
 「それにもう、疲れてしまって」女は下人に向って懺悔するかのように話を終えると
 泣きつづけるばかりであった。
 下人は、立ちあがると、持っていた老婆の着物を、それと気づかれないように
 そっと、狭い路地に捨てた。
 下人は長い間、闇のなかで考えつづけた。 

 その後の彼のことは私もよく知らないが、それから数ヶ月後、
 私の宿に泊まった客からある話しを聞いた。
 変な死体がまちの路地に転がっていたという。
 死体なんぞ珍しくも無い・・どう変かと尋ねると
 破れかぶれのぼろをまとい、薄汚れた顔の中に、
 不似合いにもとても満足そうな優しい笑みを浮かべていたというのだ。
 私は、男の顔ににきびは無かったかと尋ねたが、無かったという。



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