2007/05/24(木)10:29
平癒(へいゆ)
以前も笑店でご紹介させて頂いた杉浦日向子さん。
生前、ご病気だった事を知りませんでしたが、
著書には、病気のことも書かれていた様です。
今日は、「杉浦日向子の食・道・楽」に、
江戸の人たちの病の捉え方が、とても面白く
書かれていたので、そちらをご紹介します。
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江戸のころには「闘病」ということばはありませんでした。
かわりに「平癒」といいました。
病とは、外からやって来るものばかりでなく、もともと体に同居していた、
ちいさな身内だったのかもしれません。
それが突然、訪問者として、「頼もう」と声を荒げた瞬間が「発病」です。
なにか、メッセージがあるから、姿を現したのです。
招かざる客ではあっても、まず用件を丁寧に聞いて、かれがなにものなのか、
自分のどこがいけなかったのかを知り、なるべく、すみやかに、
おひきとりねがいたい。
これが「平癒」の意味するところなんですね。
好きなことばです。
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病は誰にとっても歓迎されざる客だ。 いつの間にか上がり込んで、
身内のような顔で(もっとも身の内だ)居座っている。
なるべくなら穏便に、お帰り願いたいのだけれど、
かれは、なにか用があるから訪れたはずである。
それを用件も聞かず、いきなり「ふてぃ野郎だ とっとと失しゃやがれっ!」と
叩き出しにかかると、逆上して暴れまくることもある。
「なんでございますでしょうか。 なんぞ手前共に不手際がございましたら、
なんなりとおっしゃってくださいまし」と、下手に出て、じっくり先方の要求を効くべきだと思う。
・・・・
気難しい客だけれど、通じる言葉は、きっと見つかる。
長年、病人をやっていると、そんな気がするのです。