プラスティックのない時代、入れ物は「一閑張り」。穴があいたら和紙を貼って再利用。
染料でもあり、また塗料でもあるという希有な着色剤「柿渋」は柿を圧搾したできたものです。かつて紙と木の生活をしていた日本人にとって柿ほど身近な樹木はなかったでしょう。食べられる柿は食用にし、そうでないシブ柿からは「柿渋」が作られます。「柿渋」には防腐・防水の効果があるところから、漁網や番傘などに使われたり、和紙に塗ることでより丈夫になることから、一閑張り(いっかんばり)が作られたりもしました。最近では室内の化学物質による空気汚染が原因とされるシックハウス症候群対策のひとつとして、できるだけ自然素材を使おうということから、「柿渋」をフローリングの塗装に使うということもあります。この場合、従来の「柿渋」ではそれ自体のにおいが強いことから室内の塗装には敬遠されることがありましたが、最近では不純物を取り除いた「無臭柿渋」が注目されています。他にも血圧を下げる効用もありますので、「柿渋」で染色したストールを首にまくこともあるようですし、また、「柿渋石鹸」として消臭効果をうたう商品もでてきました。さらに若い方の間では、スニーカーや帽子を柿渋で塗ったり、ジーンズを柿渋で染めたりすることも流行っているようです。温故知新ですね。このように健康や環境にたいする配慮から、またファッションとしても「柿渋」に注目が集まっていますが、それ以外にも趣味として「柿渋」を利用される方もいます。それは一閑張りといって、カゴに和紙を貼って柿渋を塗ったものです。何度も塗り重ねることでカゴが丈夫になります。また、日光にあてたり、時間が経過することで、「柿渋」が色濃く変化するのも楽しみのひとつでもあります。100円ショップで竹カゴを購入し、それを一閑張りにすると、その価値が何倍にも上がります。いや、何十倍にもなります。そのくらい立派なカゴに変身させることができるのです。↑100円ショップのざる ↑立派な干菓子器に変身上の2点は楮の繊維を和紙の上においたもの野菜は冷蔵庫にしまわずにカゴにいれてもよいのでは現代ではプラスティック製品に代用されていますが、かつては一閑張りが入れ物として使われ、さまざまな生活シーンの中で大事に扱われてきたのではないでしょうか。破れたら、そこに和紙をあて「柿渋」を塗って、また使う。モノがあふれ、ともすれば消費社会に流される今、先人の知恵であるこの一閑張りをもっと見直したいものです。このように様々な用途に使われる「柿渋」はわりと容易に作ることができます。ただし出来上がるまでには時間が必要ですが…。「柿渋」には、本来は豆柿を使いますが、普通のシブ柿でも大丈夫。7月から8月にかけて、柿がまだ青いうちに採取し、圧搾して、発酵させるわけですが、個人的に使うのであれば、ミキサーにかけたり、棒で叩いてこまかくし、布で濾すといいでしょう。それを保存容器にいれ、何年か寝かせます。早くても1年は寝かせたほうがいいです。3年ものとか5年ものもあるくらいですから。ただしこれは非常に臭いです。密集した住宅地やマンションでは注意が必要です。私はそんなに嫌いなにおいではないのですが…。竹紙の繊維をとりだすときのにおいの方がもっと臭いです。鼻が曲がるとはこういうことかと思ったほどです。可能な方は、この夏、柿渋作りをためしてみてはいかがでしょうか。やけど・しもやけなどにも効くらしいですよ。臭くなるのは1年後です。今日はこのへんで。臭い話で終わってしまいましたが、次回は臭くない話を…。読んでいただいてありがとうございます。毎月1回開催しています「和紙造形アートスクール」では、紙漉きで絵を描く本科コースとは別にクラフト工芸コースもあり、その中で一閑張りも制作します。↓冒頭で紹介した無臭柿渋カキタフ。よろしければ、上の「blog Ranking」のバナーをクリックしてください。1日1回クリックしていただけると、たいへんうれしいです。お手数ですが、よろしくお願いします。参考までに、上の「blog Ranking」のバナーをクリックしても、ブログランキングのページが表示されるだけです。なにかを記入したりする必要などはまったくありません。ブログランキングのページが表示されたら、他のページをのぞいてもいいですし、終了するのも自由です。●yunさんの運営する「和紙造形のコミュニティ」がMixiにあります。Mixi会員の方だけになりますが、ぜひのぞいてみてください。