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カテゴリ:好きな本について
第四弾は、これまでのようなゲドの活躍は、残念ながら見られません・・・。
なぜかというと、ゲドはクモが開いた扉を閉じるために、魔法を使い果たし、若いころの傲慢なまでの自信も、竜王となって大賢人となった大魔法使いとしての力も、全て失っているからです。 失意のゲドは、故郷のゴント島に帰ります。 ゴント島には、テナーがおり、ひとりの女ゴハとして、平凡な日々を送っていました。 テナーは子どもを育て上げて夫を亡くした後は、ひとりで農園をきりもりしていました。 しかし、もう若くないゲドとテナーは自分たちの果たすべき課題を既になし終えてしまっており、さらに社会的地位や権威や力をも、失っていたのです。 彼らは、あるがままのひとりの人間として、これまでとは違った人生に向かって、歩き出します。 テナーは、夫を亡くして、子供が独立した後は、自分には、女としての価値がないように感じています。 なので、養女テルーの教育でも、男のものの魔法をテルーに授けて、ただのまじない師として生きることではなく、他の道を探してあげたいと思っています。 テルーを育てることが、テナーの転換期でもありました。 テルーは、肉体的にも性的にも、また心理的にも、虐待された少女でした。 そして、それゆえに、内気で恐がりで、とつとつと話す子です。 亡き魔法使いオジオンは、テルーに優れた素質を見いだして、テナーに彼女の将来を頼んだのです。 そして確かに、テルーには優れた素質がありました。 なぜなら、魔法使いになるために学ぶ真の言葉やさまざまな術が、テルーには不要であり、彼女は学ぶ必要もなく、すでに真実を知っていたのです。 テルーは、魔法使いのように何かを「なす者」ではなく、竜のように「在る者」として存在しています。 彼女の存在は、竜人を思わせます。 そして、彼女の存在は、世界の変化のきざしのひとつでもあったようです。 ・・・話をゲドに戻すと、彼は魔法を失い、魔法使いでもなく、ローク島の大賢人でもない、ただひとりの人間として生きていくのですが、素の人間となって初めて、テナーを愛し、結婚するわけです。 この、原作第4巻はこれまでの雰囲気と変わり(正直に言うと暗いの一言)、さらに伏線や暗示がいっぱいあったように感じます。 第五弾に続く・・・。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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