『milk』 (GayComニュース055)10/3掲載(ブログ転載時には終了済み)
真っ白い部屋に、窓から差し込む光、そこに浮かぶ写真。真っ白な背景に、赤ん坊を抱いた男性の写真が並ぶ。 赤ん坊を抱きながら、パートナーとキスをするゲイカップル、母親がわが子に授乳するように、自分の乳を吸わせる男性、赤ん坊にほおずりをするドラァグクイーン。ハスラー・アキラの『milk(2006年作)』はゲイとしての自分自身を受け入れ、結婚をして子どもを生むという生き方ではなく、ゲイとして胸を張って生きていく生き方を選んだ人が、自分たちの中でどのようなミルクを蓄積し、そのミルクを通して次の世代に何を伝えられるのかそんなことを問うている。 しかし、他の写真が幸せそうにしている中で、2枚のドラァグクイーンの写真だけが、まるでトランプのジョーカーのように他の写真とは違う雰囲気をかもし出している。笑っているわけでも、怒っているわけでもない。決して機嫌がよさそうには見えないその写真が「ゲイの人はなんとなく幸せにしている。でも、親や周囲の人に自分のセクシュアリティを伝えられずに“まぁいいか。”などと言う状態で、完全に自分の生き方を受け入れきれずに生活をしている。果たしてそれで本当に幸せなんだろうか。」そんな疑問を私たちに伝えている。 13人の芸術家と1つの工房が参加をしている「lifeライフ」は、障害者や同性愛者など、様々な背景の人が、織物、音、焼き物、写真、絵、彫刻、マンガ、VTRなど様々な作品を作り上げている。それぞれの部屋は独立した作りのようでいて、ちょっとずつ他の部屋に、作品や音や雰囲気がはみ出している。世の中には色々な人がいて、色々な人の間には境界はない。それが障害者であっても、同性愛者であっても。life生きることと芸術の境界が無くなるときに広がる世界。そんな想像が沸き起こる作品展となっている。 この「lifeライフ」は 水戸芸術館現代美術ギャラリー (茨城県。常磐線水戸駅下車後北口よりバス大工町方面行きに乗り和泉町一丁目下車すぐ。あるいは東京駅八重洲南口より三戸行きのバスにて「泉町1丁目」(京成百貨店前)下車。) にて10月9日(祝)まで開催。出品作家(13名)はハスラー・アキラの他に、今村花子(平面)、岡崎京子(マンガ)、川島秀明(平面)、齋藤裕一(平面)、佐々木卓也(平面)、舛次崇(平面)、棚田康司(立体)、西尾康之(立体)、HEARTBEAT DRAWING, SASAKI(ドローイング/インスタレーション)、日野之彦(平面)、山際正巳(立体)、吉永マサユキ(写真)。また、工房「集」が団体として出展している。なお、同性愛者を描いた作品としては、岡崎京子のマンガにも、カミングアウトの1場面が登場している。