カテゴリ:民泊
前回、前々回に引き続き、肥大化した行政のコストの結果、問題が起こっていることについて考えていきます。
民泊は建築基準法上は「ホテル」「旅館」「簡易宿所」(以下ホテル等)になります。ここから行政の建築確認審査の裁量行為の問題について書いてみます。 建築に係る法律は、建築基準法だけではなく、建築基準法施行令、さらに各都道府県の条例等があり、その全てに適合しなければなりません。以前も書きましたが、一番大本の建築基準法でさえも解釈に差があり、本来「羈束行為(きそくこうい)」であるはずの確認申請において「裁量」により解釈にブレが起こると書きましたが、これが、条令になるとさらに各自治体によって解釈が分かれてきます。話が専門的になりますが、問題の本質の部分なので正確に書きたいと思います。 東京の条例で東京建築安全条令というのがあります。この中に東京都建築安全条令10条の4という条令があります。ここではホテル等の場合、「直通階段の出入口」が道路に面していなければならないとなっています。 そして東京都建築完全条例17条において、共同住宅の場合「主要な出入口」が道路に面していなければならないとなっています。 微妙に違うのは、道路に面して設けるのが10条の4の場合「直通階段の出入口」となっているのが17条では「主要な出入口」となっているところです。ここで、条令の解説の部分には、建物の避難の形態によっては「直通階段の出入口」が「主要な出入口」として考えることがあると書いています。つまり共同住宅として計画され「直通階段の出入口」を「主要な出入口」と考える取り扱いをし、17条に適合した建物の場合は道路に対して避難が成り立っているので、ホテル等としても適合することになります。 この判断は、建築の設計、審査に関わる者が避難の主旨を考えれば当然に行きつく判断だと思うのですが、そうではないと判断する行政が出てくるので困ります。その結果、共同住宅として計画された建物をホテル等に用途変更することができなくなってしまいます。 これが、私一人の勝手な解釈であれば、私が改めなければならないとは思いますが、民間検査機関3社に聞いてみましたが、そのいづれもが私と同様な解釈をしています。その中の一社は国交省のガイドラインに沿って適合している旨の証明書まで出しています。 何度も言いますが建築基準法は誰が判断しても同様の結論がでる羈束行為のはずです。それが実際にはこのようなブレが生じます。しかも 一級建築士、民間検査機関3社が合法というものを行政は違法と言い続けるのです。 そして先にも書いたように、このただ一者だけ違法と言い続ける行政は肥大化した組織であることを指摘していましたが、これが、この問題を根深く深刻なものにしています。 肥大化した行政による建築確認→一人当たりの経験が少ない→法律の読み込みにブレが生じる→民間の判断とのかい離が生じる→確認申請はますます民間に出す→ますますヒマになる→ますます肥大化しヒマを持て余し民間検査機関にも圧力をかける→民間が行う確認申請にもブレが出てくる。 肥大化した建築行政が地域経済にブレーキをかける という悪循環の構図が出来上がるのです。 と、正当な建築行為を制限するような悪循環が続くのですが、次回はさらに地域経済にブレーキをかける取り扱いについて紹介したいと思います。 かなや設計 環境建築家 金谷直政 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2017年07月18日 18時03分41秒
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