低コストの地中熱利用 「安い」と「省エネ」の両立
省エネ技術の採用を考えるとき、一般的に、次のようなことが起こります。•省エネを目指すと導入の費用が高くなる。•導入も費用を安く抑えようとすると省エネにはならない。この二律背反の現象は、車でも、家電でも同じでしょう。では、建築の場合どうでしょう?多分、製品としての省エネ設備をつけただけの場合は、車や家電と同じように、「省エネ」か「安い」かの選択を迫られるかもしれません。しかし、建築は、多くの要素から出来上がっています。それぞれの要素の思いがけない組み合わせをすることで、「省エネ」と「安い」という二律背反に見える要求の両方を満たすことができます。「省エネ」はプロジェクトの中の一要素建築の場合、ランニングコスト(水道光熱費)は、建物が完成してから、ずう〜っとのことなので省エネは諦めきれない要求事項です。一方、イニシャルコスト(建設費)は、諸々の要素の積み上げであり、各要素が少しづつでも標準より高くなると総工事費が大幅に予算を超えてしまいますので、どの要素も標準に収めておかなければプロジェクト全体が破たんしていまします。バリアフリーも、清潔さも、耐震性も、また、建築以外では、良質なスタッフの確保も、電子カルテetc. 大切なものはたくさんあります。省エネももちろん大切ですが、他の分野の予算配分を侵食してはなりません。ですから、「省エネ」と「(建設費の)安さ」は両立させなければならないのです。そういった観点で考えると、地中熱がいかに素晴らしい省エネ手法だとしても、特別扱いはできないのです。費用対効果をシミュレーションし、導入するに値する技術なのかどうかの見極めが必要です。無批判に受け入れ、金銭的な負担を負った先に、わずかながらの電気代の節約では目も当てられません。下のグラフは、今回のシステムの採算シミュレーションです。今回、導入した方式では、杭を地中熱の採熱部分として使ったり、室内の間仕切り部分を放射冷暖房部分と兼用したり、工事費全体のUPを極力抑え、採算の合うシステムとなっています。試験的に導入し、採算度外視のプロジェクトは違い、本当に元の取れる地中熱利用が完成しました。かなや設計 環境建築家 金谷直政