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New York Timesに日本からの報道として、Norimitu Onishiという署名で、人質解放の記事が16日付けで載せられている。
3名の解放のニュースとともに新たな2名の誘拐のことなどが紹介されている。 ぼくが問題にしたいのは最後の二つのパラグラフでOnishi氏が次のように書いているところである。 Relatives of the three hostages — Nahoko Takato, a 34-year-old aid worker; Soichiro Koriyama, a 32-year-old freelance journalist; and Noriaki Imai, an 18-year-old high school graduate who went to Iraq to study the possible effects of depleted uranium ammunition — had asked Tokyo to withdraw its troops. Public opinion is divided over Japan's decision to send troops to Iraq, but the public backed Mr. Koizumi's decision not to yield to the kidnappers' demands. 「3名の人質の家族は自衛隊の撤退を要求した。世論はイラクに自衛隊を派遣する政府の決定に関しては分かれたが、しかし一般の国民は誘拐者の要求を許容するべきでないという小泉の決定を支援した」。最後のパラグラフのセンテンスが曖昧である。こういう風に冷静?に結び付けられるものなのか?butという言葉がここにおかれることによって、「イラクへの自衛隊派遣」が実はこのkidnapの原因であるという重要な側面が隠蔽されるのではないか?そしてbutの前も後も主語はPublicである。こういう書き方により、この人質3名の家族の要求は際立って理不尽なものとしてうけとめられかねない。世論対人質家族という対立構図は今まさに「世論」なるものが陰に陽につくりあげようとしているものである。こういう世論から主体的にのがれること、こういう世論にはっきりと敵対することが今求められている。そういう姿勢が新たに誘拐された2名の解放にも結びつくものであることをぼくは信じている。 確かに日本人だけの救出が求められているのではない。全体の構図を正確におさえるためには、もっとイラクのことを勉強しなければならない。 昨日の朝日の夕刊に早稲田の客員助教授でペルシヤ湾近現代史を専門にしている保坂修司がこの人質事件とその解放について書いている。彼の結論は日本人である「われわれ自身のイラク、アラブ、中東経験」の貧弱さということにある。彼によれば「日本で現代イラクの専門家と呼べる人はわずか数人しかいない。それ以外の自称・他称イラク事情通の多くはイラクにいったこともなければ、アラビア語もできないはずである。」ということだ。イラクの人々の気持など、こういう状況ではだれも正確に理解できるはずはない。保坂の言うように「イラク問題を取り上げながら、実際メディアが関心を持つのは日本人人質の安否だけであった。その間にも多くのイラク人やアメリカ人が死んでいっている事実を決して忘れてはならない」のであるが、「世論」はそこまでには決して開かれようとしないのが現状である。内向きに「世論」を狭めてしまえという操作が政府初め一部のメディアで行われている。 アメリカと日本、日本と日本人、これらのことを考えるだけが日本の「国際貢献」なるもの正体であり、アメリカとイラク、日本とイラク、などの視点はすっぽりと抜け落ちている。先日の報道で、イギリスのブレアが国連に出向き、イラク統治に関する安保理の新たな「決議」の必要性を訴えていた。これに関するアナン国連事務総長の反応は、賛意を示しながら、英米両国だけでないすべての安保理の国の賛意が必要不可欠であると釘をさしていた。このことはブレア政権も自国のイラクへの関わり(例の大量破壊兵器の誇張に端を発する)がここに来て国民からの反発を受けていることに気づき、なんとか新たな打開策を国連中心に軸を移すことで模索しようとしていることの現れに他ならない。スペインの政権交代とそれによるイラク撤兵への政策変更などにともない、近い将来イラク情勢はドラスティックな変化を見せるだろう。そのとき、わが日本の果たす役割はこのままでいけば非常に心もとない。Tokyoは考えるところではなく、「世論」を誘導する末期ファシスト政権屋たちが巣食っているところであるからだ。あるいはブッシュに誉められるだけが取り柄の「坊ちゃん」たちが。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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