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詩人たちの島

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April 29, 2004
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ぼくたちは去年の12月に、『源氏物語』54帖をあしかけ六年かかって読み上げた。「紫会」と名うって、ぼくの前の職場で毎月発表者を決めて首巻「桐壺」から読んでいった。一月に一巻のペースで。例年八月は休んだ。メンバーのほとんどは主婦、一人はジャーナリストの男性。約12名ほどの会だった。

12月の終わりの日に、今日4月29日にメンバーの一人が主催する茶会(茶事)にみんなで参加する約束をしていた。一昨年もあった。そのときは、そこで「横笛」の巻を読んでから、茶事に入った。今日は十一時半からの始まり。

源氏にちなんだ道具の数々。夕顔の絵の茶碗など。お酒は秋田の銘酒。メンバーと会うのも久しぶりだったから、茶事よりは酒のほうが少しメインになって、席亭には迷惑をかけたかもしれない。でも彼女もメンバーだから、「無礼講」でいいという。それでもきちっと和服できめた彼女やメンバーの女性を見るとまぶしい。ぼくとジャーナリストはなかなかいつもの調子が出なかった。でも、すばらしい茶室、新緑の庭、もちろん心のこもった接待を今年も満喫した。

場所は牛浜。福生図書館の隣にある「福庵」という福生市の茶室である。4年前までは拝島という、ここから歩いて20分くらいのところに住んでいたので、よくこの図書館には通った。緑に囲まれた静かな図書館。自分の故郷に帰ったような気分だった。この「福庵」がまた素晴らしい。庭が広い。ジャーナリストに「どうです、こんな家に住みたいでしょう」と言うと、彼は「廊下でダンベルでもあげようか」という無粋な返事。ぼくは「いや、あそこに寝転がって、庭の緑を見るのです」と平凡な感想。

しびれる脚に「お平らに」という声を期待していると、その通りになる。酒の後のお茶はすばらしく美味。濃茶、薄茶と出てくる。何杯平らげても、腹と心は静かに、静かに、平安に向うのである。このマジックは素敵。

それでも飲み足りなさは(お茶でなく、酒の)残るから、ぼくとジャーナリスト夫妻は福生の地ビール製造所へ、お茶会のあと行き、彼は多摩自慢、ぼくはピルスナーで微醺のもう少し上まで酔い、今日の日程を終了した。自宅に帰ってみると、午後の7時であった。

新緑よ、おまえをお茶にして飲む道をわれに教えよ、
この茶碗の濃き緑の香をふくみつつ。

野いばら
by peco's botanical gardens

紀の国の五月なかばは
椎の木のくらき下かげ
うす濁るながれのほとり
野うばらの花のひとむれ
人知れず白く咲くなり、
佇みてものおもふ目に
小さなるなみだもろげの
素直なる花をし見れば
恋人のためいきを聞くここちするかな。

(「ためいき」一  佐藤春夫)










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Last updated  April 29, 2004 09:15:47 PM
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