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そのあとのメールで、きみはアメリカに渡ってからの20年余りの物語を簡単に要約してくれたね。
ぼくのおぼつかない英語力で正確に訳すことはできないが、再びの出会いの記念にやってみようと思う。 Ph.Dの学位をとったきみは、ある会社の研究と開発部門に就職して、さまざまな国際会議にも出た。今でもその席はきみのために設けられているということだ。今でもといったのは、9年間会社に勤めたきみは、そこをやめたからだ。その理由がとてもきみらしい。先端のテクノロジーの研究と開発ということは、とてもエキサイティングなものだったけど、アメリカの会社で働くということの裏面を思いしらされもしたというものだ。つまり、いわゆる「株主」の価値を最大限に重要視するべくたえず駆り立てられている、それがアメリカの民間会社で働くということだ。それに、これはぼくも初めて知ったことだが、1999年から2002年の間、アメリカ経済の下降転回のせいで、会社の研究と開発部門の仕事はアメリカ全体の規模で干上がってしまったということ。きみが書いた次の英文はきみが会社をやめたこれ以上的確な理由はないと思えるほどのものだが、それ以上に、Mよ、いかにもきみらしい。経済状況や会社で働くことの裏面を述べたあとに、きみは書く。 I basically saw the writing on the wall. これは旧約のダニエル書にある言葉だね。くわしいことは知らないけれど、辞書によると an omen of one’s unpleasant fateとある。つまり、きみは災いの前兆を見てとったというわけだ。そこからの転身について、これはまたいかにも過酷な道を選んだことか。きみは仕事をやめて、ある大学のロースクールに入ったのだった。何年かかったのかしら。メールによると、この1週間以内に最後の試験があるという。そして、すべてがうまくいけば、いやきみのことだから絶対大丈夫と確信しているが、この9月からニューヨークで弁護士として働くことになるということだ。この9月にはぼくはいけないが、そのうち必ずきみのいうようにニューヨークに行き、弁護士としてのきみに会うつもりだ。 きみのメールのなかの次のようなフレーズも、ぼくには忘れることのできないものになった。なまけ心がぼくを誘いそうになるとき、ぼくはこれから何度もこの言葉を口にするだろう。 As you can see, I haven’t had easy life. I should go back to study now. こう書いて、きみは勉強にもどる。ぼくも自分の小さな場所で、このような熱を燃やしていきたい。 きみのことを誇りに思っている。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
April 25, 2005 10:15:13 PM
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