詩人たちの島

2006/03/02(木)21:04

ニューヨーク通信 2月号

ニューヨーク通信(湯浅ましほ)(11)

水島先生 “I do solemnly swear that I will support the constitution of the United States and the constitution of the state of New York, and that I will faithfully discharge the duties of the office of attorney and counselor at law, according to the best of my ability. So help me God.” 今日の午後、この誓いを言い終えると同時に、私はニューヨーク州のAttorneyに成りました。神を証人にして、忠誠と忠実な公務の執行を約束する、この古代からの儀式は、苦難を乗り越えて、トロフィーを手にする歓びとは程遠い、厳粛な気持ちを誘います。このようなoath of officeの歴史は古く、現在でも使われている医者の宣誓、Hippocratic Oathはもともとアポロを始め、古代ギリシャの神々の名においての誓いだったという事です。法に関わる者の宣誓も、イギリスでは1402年には行われていました。その伝統を引き継いで、ニューヨーク州でも植民地時代からattorney oathが使われました。私の前に幾万の者が厳かに正義を行うことを誓い、私の後に、また、幾万の者が謹んで法を擁護することを約束する、その過去から未来につながる鎖のひとつの輪になること、謙虚な気持ちにならずにはおられません。伝統的な形式の中に、ある種の価値の不変を感じます。アメリカ合衆国憲法とニューヨーク州の憲法とに躊躇することなく忠誠を誓うことができる、そういった対象ある国を不思議に思います。 神に誓うということが、普通の約束や法的に強制できる契約よりも重みを持っているという事、つまり神を恐れる気持ちが存在するということ、適者生存、“the end justifies the means”という世の中で、かえって新鮮に思えます。 宣誓の儀式はMadison Squareに面したニューヨーク州裁判所控訴審部門第一部(New York State Supreme Court, Appellate Division -First Department)で行われました。1900年に完成した白い大理石のBeaux Arts式の建物は、高層建築に囲まれ、小さく可憐に見えます。しかし、正面とMadison Avenueに接した側面は、堂々とした白いコリント式の円柱に支えられ、玄関の両脇には、いかめしい知識と平和を表した像が座り、屋根には、正義の女神を中心に、モーゼ、ハムラビ王、孔子、Justinian皇帝といった、法律史上、重要な人物の像が並んでいます。内装は華麗なものです。大理石の壁、正義と法を表した壁画、スティンドグラスの窓、シャンデリア、繊細な彫刻を施した大きな家具. . . . 私たちが宣誓をした法廷はMaitland Armstrong作のスティンドグラスのドームを屋根にしています。その大きなドームの中央の、小さな丸い透明なガラスから見える青空、まだ寒いのですが、光に春を感じました。 ましほ New York State Supreme Court

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