詩人たちの島

2007/02/06(火)21:16

いづくにか

essay(268)

一人酒。なんか演歌のタイトルみたいだが、最近はみんなで飲むのが苦痛になってきた。昔はこういうことはなかったが、酒もだいぶ弱くなってきたということだ。帰り、一人で、途中下車してA駅で降りて、立ち飲みの店にゆく。みょうに混んでいた。大学が近くにある。その学生たちが今日は普段より多かった。それにくわえて大声で喋る二人連れの客。最悪。疲れていたし、喉が渇いていたので、とにかく一杯ひっかけようと思って下車したのだが、そうそうに帰る。ビール一杯と酎ハイ一杯、それに焼き鳥を少々、しめて千円以内。 今日はイライラしていた。電車の中で気持が悪かった。傍若無人が一人、二人。こういうのを見たり、また聞こえてきたりすると、通勤自体が地獄のように思えて、飛びおりたくなる。 総じて、人間関係がとても苦手になりつつある。支離滅裂だと自分でも思う。矛盾しているとも思う。この年になって、昔の自分のなじみの感覚を味わうのは厭だ。いろんな場所から「脱出」したい。 なるべく、おだやかな心持ちでいたい。だが、ぼくにとって2月は「もっとも残酷な月」である。きらいだった。昔から。 倉田良成の新詩集「東京ボエーム抄」(非売品)を時々拾い読みしている。「舟泊て」という散文詩(こうした区分けに意味があるのか、とくに倉田良成の世界では、とも思う。迫力ある、そして切ない本物の文章と言ったっていいではないか)。その最後に載せられた黒人の一首がぼくをひきつけてやまない。もちろん倉田の文章と高市黒人の一首との格別のコラボレーションになっているのだが。この歌はもとから好きだった、倉田の詩によって、また現在に生きかえったのでもある。ぼくの心のなかにも。 ― いづくにか舟泊てすらむ安礼の埼こぎたみゆきし棚なし小舟 ―

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