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詩人たちの島

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April 13, 2007
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カテゴリ:essay
今日の新聞で、現地時間4月11日の夜に、Kurt Vonnegutが84歳で亡くなったことを知った。昭島に住んでいた頃だから40歳代か、友人の木村君と一緒に熱中して読んだ作家だった。ぼくらにしては遅い時期に愛読の対象とした作家だ。なぜならボネガットはアメリカの60年代後半から70年代にかけてのベストセリングの作家だったからだ。同時代で熱中すべき作家だったにもかかわらず、ぼくらはいつも同時代からずれて、あるいは遅れて、何かに気づいたり覚めたりする、そんな感じの人間に属すようである。いまも覚えているのは、時々二人でボネガットの小説によく出てくる、「そういうものだ」という台詞、これはハヤカワ文庫の訳なのだが、原語ではなんと言うのかなどと話したことだ。木村君がボネガットの何かの原書を求めて、”So it goes”というのだよと発見したこともあった。しかし、これはぼくの錯覚かもしれない。すべて定かではない、それほどその当時から時間が経過した。

仕事から帰って、ニューヨークタイムズのobituary(Dinitia Smithという人が書いたものだが)を眺めていると、次のような記述があった。

――”Slaughterhouse5”provided another stage for his fictional alter ego, Kilgore Trout,a recurring character introduced in “ God Bless You, Mr.Rosewater.” The novel also featured a signature Vonnegut phrase.

“Robert Kennedy, whose summer home is eight miles from the home I live in all year round,” Mr.Vonnegut wrote at the end of the book, “was shot two nights ago. He died last night. So it goes.

“Martin Luther King was shot a month ago. He died, too. So it goes. And every day my Government gives me a count of corpse created by military science in Vietnam. So it goes.”

One of many Zenlike words and phrase that run through Mr.Vonnegut’s books, “So it goes” became a catchphrase for opponents of the Vietnam war. ――

訳してみる、
―「スローターハウス5」はボネガットの仮構された別の自我であるキルゴア・トラウト、彼は「ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを」で紹介された人物であるが、彼が「スローターハウス5」に呼び戻されて、新たな舞台を提供される、それとともに「スローターハウス5」ではボネガットの署名と等しい有名なフレーズを登場させている。

「ロバート・ケネディが銃撃されたのは、二日前のことである。彼の夏の別荘は、わたしが一年中住んでいる家から8マイルのところにある。彼は昨夜亡くなった。そういうものだ。」とその本の終りにボネガットは書いた。おなじく「マーティン・ルーサー・キングが撃たれたのは、一ヶ月前だ。彼も死んだ。そういうものだ。そして毎日私の政府はベトナムで軍事科学が生産する死体の総計をわたしに教えてくれる。そういうものだ。」

ボネガットの本の中には禅的な言葉やフレーズが数あるが、そのなかの一つである”So it goes”はベトナム戦争の反対者たちのキャッチフレーズになったのである。 ――

So it goesがアメリカ人には禅的なニュアンスをもつことをはじめてぼくは知った。

ボネガットの決定的な瞬間ともいうべきものは、彼がドレスデンの大空襲時にドイツ軍の捕虜になり、あの空襲をじかに経験したことにあるというのは疑えない。その経験をもとに「スローターハウス5」は書かれている。読み返してみたいのだが、暇がない。

この記者は、ボネッガトの核を「人間的な優しさ」というところに求めている。ペシミストであったボネガットが「この世界の狂気と存在の意味の無さを救済する」可能的な唯一のものとして考えていたのが、それだというのである。

「スローターハウス」の一作前の作品「ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを」の主人公の台詞をこの記者は引用して、その証しとするのである。とてもすばらしく、せつない言葉だ。
“Hello, babies. Welcome to Earth. It’s hot in the summer and cold in the winter. It’s round and wet and crowded. At the outside, babies, you’ve got about a hundred years here. There’s only one rule that I know of, babies―’ God damn it, you’ve got to be kind.’”

この部分をハヤカワ文庫の朝倉久志訳で引いておく。
「こんにちは、赤ちゃん。地球へようこそ。この星は夏は暑くて、冬は寒い。この星はまんまるくて、濡れていて、人でいっぱいだ。なあ、赤ちゃん、きみたちがこの星で暮らせるのは、長く見積もっても、せいぜい百年ぐらいさ。ただ、ぼくの知っている規則が一つだけあるんだ、いいかい― なんてったって、親切でなきゃいけないよ」。

まさに、そのとおりだ。

ボネガットの最後の本は2005年に出された伝記的なエッセイのコレクション”A Man Without a Country”である。このタイトルもすばらしい。そのなかにはボネガットの詩も収録されているということである。「レクイエム」と題された詩の最終連をこの記事から孫引きして、ぼくのボネガット追悼を終わろう。

When the last living thing
has died on account of us,
how poetical it would be
if Earth could say,
in a voice floating up
perhaps
from the floor
of the Grand Canyon,
“ It is done.”
People did not like it here.

無謀にも訳してみよう。

最後の生物が
われわれのせいで死にゆくとき、
地球がものを言うとすると、どんなにか詩的だろう
浮き上がってくる声
おそらく
グランドキャニオンの谷底から
「よきかな」
人々はここまでその声を愛好することはなかった。

(たぶん、いや絶対に誤訳。全部が読めたらいいのだが)

God Bless You, Mr. Vonnegut





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Last updated  April 14, 2007 12:39:23 AM
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