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詩人たちの島

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April 24, 2007
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カテゴリ:作物
四月の雨
聞いたようなタイトル
仕事帰りの電車のなかで
同じ男と二度座席を隣にして座った
昨日、その男は大きく息を吐き出しながら
時代小説の文庫本を読んでいた
ウーッツといって足をゆする、ゆするその足が
ぼくの膝にさわる
妙な癖の持ち主だ、あるいは鼻が詰まっているのかしれない
ウーッツとうめく

四月の雨だ
おかしなやつばかりが乗っている電車で帰る
「羞恥があるのは、隠したいと思っているものを隠すことができないからだ。
自分を隠すためには逃げなければならない。しかし、この必然性は、自己から
逃げることの不可能性によって挫折させられる。羞恥のなかに現れるもの、
それはしたがって、自己自身に釘付けにされているという事実にほかならない。
…裸が恥ずかしいのは、裸がわれわれの存在、われわれの究極の内奥の
明白性だからである」
レヴィナスの「逃走論」の一節をぼくは読んでいた
恥も外聞もなく、ぼくは読んでいた、時代小説の隣で
自己のうめき声を他者に受け渡すことの必然性はどこにもないから
切り離されたさびしい羞恥が電車のあちこちで
すみつくべき裸の恥知らずを探してうめいていた
見慣れたミニスカートの高校生たちは
限りなく裸に近いことで、限りなく厚着の馬鹿
鎧のような厚化粧、機械のように「われわれの存在」とは疎遠だから

DylanのSAD EYED LADY OF THE LOWLANDSを聞いていた
せめて、ぼくの隣にsilver crossとチャイムのようなあなたの声があれば
この横浜線をローランドの悲しい目の貴婦人と
「ローランドの悲しい目の貴婦人」線と呼ぶことは可能だろう
東神奈川と八王子を結ぶ鉄路にあなたの悲しい眼を埋めることができるなんて
いったい誰が思うだろうか
「あなたの肉は絹のよう、あなたの顔はガラスのよう」

明日も会うだろう
時代小説を読みながら呻く男や
その隣に座ってレヴィナスの「逃走論」を読む男
どこにも逃げられない高校生たち
猫の缶詰をかかえた猫男
はしゃいでいるおばさんたち

「ぼくの倉庫の目、アラビアのドラム
これをあなたの門のそばに置こうか
悲しい目つきのローランドの貴婦人よ
それとも ぼくは待つべきか?」
四月の雨に濡れて
ライムを踏まない歌の肉
羞恥(オント)の眼玉は





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Last updated  April 24, 2007 10:33:45 PM
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