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2006/10/20(金)23:07

イルカと自閉症(その3)

イルカの話(15)

...(続き) 海から上がると、特に自閉の子に変化は見られませんでした。 その日の午後は、 家族の要望でショッピングや食事にでかけたのですが、 彼は特に変わったことはなく、いつものようにマイペース。 一人で走り回ったり、同じ独り言を繰り返したり。 いつもの彼らしい姿がありました。 バタバタとその日が過ぎ、 家族と今日あった出来事について話し合う時間はありませんでした。 次の日、 宿舎のゴミの回収としていると、自閉の子の部屋のゴミ箱から、 くしゃくしゃの画用紙が1枚出てきました。 開いて見ると、何色かのクレヨンで描いた模様のような絵。 ...彼の絵じゃないな。 それがボクの第一印象でした。 実はこの自閉症の男の子は、絵が大好きでした。 ただ、色は使いません。 いつも決まったマイ鉛筆でしか絵を描かないのです。 また、生き物を描きません。 自動車、家、電車、自転車、または単なる図形など、 すべて無機質なものばかりです。 ただ、ものすごい直線を書きます。 彼の正三角形は「完璧」です。 円も、コンパスで書いたかのような円を書きます。 遠近法は理解していませんが、 それらの正確な図形を使って独特の絵を描きます。 それ以外は、一切、描きません。 ボクが手にした絵は、クレヨンの色を使い、 ぐちゃぐちゃで、何を描いたのか分からないものでした。 誰だろう...? 他にも同じプログラムに参加していた家族がいました。 でも、その紙は自閉の彼のマイ画用紙。 昨日の参加家族の動きを思い出して記憶をたぐりました。 他のどの子どもも彼の部屋に入るようなことはしそうにありません。 そして、ハッとしました。 いや、彼が描いたのかも...! 宿舎には、いつでも子どもたちが遊べるように、 クレヨンや色鉛筆や画用紙などをたくさん用意していました。 昨夜、彼がその辺りで何かを見ていた姿を思い出しました。 その後、彼は一人、部屋で何かをしていました。 もう一度よくその絵を見てみました。 書き直したような絵や線を頭の中で消して考えみると... これイルカかも! これはヒトデ? じゃ、これはボク!? 見れば見るほどそんな気がしてきました。 彼は昨日海で見た出来事を絵にしようとしたのかも! 感動がこみ上げてきました。 すぐにお母さんのところに行って昨日の話をしました。 そして絵を見せました。 お母さんは驚きながらも静かにうなづきました。 「そう。多分。彼の絵。」 お母さんには、何かそれを確信するものがあったようです。 自閉症はこだわりが強く、行動パターンを変えるのは至難の技です。 自分から自発的に行動パターンを変えることも稀です。 お母さんは、今まで様々なやり方で彼に取り組んできました。 彼の行動パターンを変え、少しでも彼の世界を広げようと いろんなトライ&エラーを繰り返してきたはずです。 彼が拒否し続けてきた色使い。生き物の絵。 それが突然目の前に現れて、 きっと今まで10年ちょっとの努力を思い出したのでしょう。 お母さんの目には涙があふれていました。 自信が無さそうに、 彼にしては小さく、グチャグチャに描いた絵... ヘタなのが嫌で何度も書き直して、書き足して、 それでも途中であきらめずに、 イルカ、ヒトデ、そしてボクの3つを最後まで描こうとした絵... でも結局は気にいらず、 クチャクチャに丸めてゴミ箱に捨てた絵... きっとお母さんには、 心に残った光景を絵にしようとしていた彼の心の動きが すべて分かるんでしょう。 高揚した顔を手で覆いながら、 いつまでも食い入るように絵を見つめていました。 お母さんは次の日、額を買っていました。 きっと今でも家に飾ってあるのかもしれません。 (終わり)

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