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中島三郎助と蝦夷桜

幕末_WITH_LOVE玄関中島三郎助と蝦夷桜(現在の頁)
中島三郎助と蝦夷桜
No.1No.2No.3(現在の頁)<No.4No.5No.6<・・・No.12(完)
中島三郎助(諱:永胤)文政4(1821) - 明治2/5/16(1869/6/25),幕臣,蝦夷では「箱館奉行並」,享年49





中島三郎助と蝦夷桜_No.3
五稜郭の打たれ桜


伊藤が帰った後、雪混じりの冷たい雨が降ってきた。
このままやっと、北国の遅い春が到来するのかと思えば、この調子だ。
しぶとい冬が今だにこうして、またしても、ぶり返そうと必死で追いすがる。
こうなってくると、北国の四季には、つくづく呆れるしかない。

中島はふと、五稜郭内に並んだ桜の樹木を思いやった。
木々はきっと、またしてもこの雨雪に打たれ続けていることだろう。

折角褐色の外皮を脱ぎ捨て、
微かに膨らみはじめた桜の蕾。

甲斐なく虚しい。


この前の部分から読む:
中島三郎助と蝦夷桜:
No.1No.2<No.3(現在の頁)

雨雪の音
中島三郎助えとせとら資料編】:No.1No.2No.3


雨は嫌いだ。

雨音に混じって、微かに蹄の音が、
だんだん近づいてくるからだった。

毎日、必ず何かが起きる。
傷に病んでいた者のうち、誰かが逝く。
雨の日の伝令は不吉だ。

雨音に誰かの命が奪い去られて、消えて無くなる。

しかし、今宵に限っては、今のところ、
早馬が入ってくる様子もなく、中島の陣屋は極めて静寂だ。
何事も無い限り、中島隊の番兵交代は極めて静かだ。
黙して迅速に行われるのが常だった。

言ってみれば、これも、今は我が子の看病の為に
立ち去ったあの男、柴田の躾のおかげだ。
よくできた年配の男、柴田は、喘息持ちの中島の体を気遣い、
若手隊士に煩く躾済みだった。
おかげで、十代の者も多い中、皆みだりに大声を出したりしないのだ。


『雨を聴く』・・・と気が、めいる。
・・・・中島は、筆を持つと、妻に手紙を書き始めていた。


年老いた母にまず詫びておかねばならぬ。奇跡を祈って待っているであろう母。
如何なる賢母とて、我が子を思えば愚かしくも祈るだけなのだ。
徳川報恩の為なれば、親より先立つ親不孝の己を予測した。

おそらく最後の手紙になることだろう。
母とは中島三郎助を生んだ実の母ではないが古風な家柄
と秩序。実の親子同然の絆で結ばれている。中島の血縁迷路

『天幸』妻と与曾八への手紙


宛名は連名型で書いたものの、一番先頭には、あえて
幼少の与曾八の名を書いた。与曾八殿に始まり、老母、娘、
そして妻(錫)、親族。
与曾八は、幼少どころではない。昨年生まれたばかりの
赤ん坊だ。(生:慶応4/2/19=1868/3/12)


中島は、この赤ん坊に対して、堂々、
「与曾八殿」と手紙で呼びかけている。




幼い末っ子、与曾八が、やがて物心ついた折、書に目を通せる程に育った頃に・・・
その時の彼に、直接この「父の響き」を伝えたい。中島は常に、先々気配りをする性分なのだった。

喘息の彼は、何度も死の境地を彷徨っている。
かつて発作が悪化した際、中島家が断絶になる前にと気がせいて、
早くも長男、恒太郎に現職を譲り、引退を決意した。しかし、世はそれを許さず、復活したのだ。

また、今回に至るに及び、長男は、あくまで己と共になるであろうことが前提だったことから、
次男の英次郎(房次郎)に家督相続の手配までしておいた。
しかし、やはり彼も男だ。中島家の子なのだ。思いは父と変わらない。
徳川の為、己も命に殉ずる意思を露にした。それ故、彼まで、今この群れの中に居る。



中島は、文末に『これぞ誠の天幸』・・・と結んだ。



喘息発作で、幾度も妻を泣かせた。幾度も夫の死の境地に立たされた妻。
しかし、中島は天幸と記した。とうの昔に落命していてもおかしくないこの体。
それでいて、今日まで幸いにして、生き永らえた。

高齢出産の妻(錫)は、流石に大変だった。
しかし、なんとしてでも、中島には、もう一人子が必要だった。彼女は、そんな中島の本望を見事
叶えてくれた。彼女もまた、武士の妻として、まさしく戦闘に挑んだも同然だ。
見事、男児を出産してくれたのである。

この時、江戸では、将軍_慶喜は、既に謹慎。上野寛永寺大慈院に入った。
上野の山に、ぞくぞくと彰義隊分子が結集しており、2/19与曾八誕生のわずか四日後の
23日にはシュプレヒコールをあげる。

慶応4年2月19日、動乱の真っ最中、一人の男児が産声をあげた。「あっぱれ!錫よ!」絶賛。
感無量。武士の妻、錫は大手柄をあげた。

これが、天幸以外の何ものだろうか!!!

たった二文字、『天幸』というあっけない文字列の中に、中島は妻への報恩と謝罪を尽くした。
そして、幼い与曾八の成長と中島家の無事存続を、一心に祈った。

ふと、我に返った。
・・・いつしか、雨はあがっている。

港の香り、従者「吉之助」
中島三郎助(諱:永胤)文政4(1821) - 明治2/5/16(1869/6/25),幕臣,蝦夷では「箱館奉行並」,享年49


雨にすっかり圧迫された。
ふと、外の空気が吸いたくなった。立ち上がった中島は、そのまま陣屋の外に出た。

折角出たというのに、いきなり若い兵につかまった。といっても、自隊の者である。
「ご主人様、如何なされました!!」・・・血相を変えている。
聞き覚えのあるその声。そもそも、ご主人様と呼んだ。

振り返った中島は、笑顔をつくってみせた。丁度、その晩、陣屋口の番は中島家に
代々仕えた家の下僕、吉之助だったのだ。

「吉之助、そなた、年はいくつになったかのぅ?」
「・・・!!」


突拍子もない質問に、この若者はたじろいで、一瞬言葉を失った。
しかし、ただちに体勢を取り戻すや否や、一丁前に説教に出た。

「一体、何を仰せでしょう。そんなことより、外はお寒うござりまする。
・・・お体をご静養なされませぬことには、恒太郎殿がお帰りになられた際、
この吉之助、またしても、きつくお叱りを受けまする!!」


再び、中島は笑った。
「あやつには、黙っておけばよいではないか。逐一申すから悪いのじゃ。
あれは、ちょいと煩い。気にするな。
うむ、それよりも、おぬし!達者な腕前ぞ!見事に、はぐらかしたものだのう。」

「えっ?!!!」


やはり、察したとおり、吉之助はまだ若い。次男の英次郎と同じような反応を見せるではないか。
年齢の話をすれば、本気でムカッ!とする。それは、まさに、十代の証といえよう。
胸が痛かった。途端に咳付いた。

迅速な吉之助。あっという間に陣屋に駆け戻り、陣羽織と中島の革靴を持ってきた。

「お足元が危のうござりまする。路面がたちまち凍ります。滑りますゆえ・・・」

中島は遠くに行くわけではないからと靴は断ったものの、陣羽織のほうは、素直に
受け取り、そのまま羽織って見せた。安心したのか、吉之助は人懐っこい笑顔を見せて笑った。

幼少より長身の兆しを見せた彼。案の定、こうしてみると、いつの間にやらすっかり立派に
育ち、みるからに精悍そうな若者ではないか。ほんの一瞬ながら、一種眩しいような錯覚さえ覚えた。
下の倅、英次郎は、こんな体格じゃない。己の持病が遺伝したがごとく痩身だ。
やはり、吉之助は眩しい。

中島は、海辺の方向へゆっくりと歩き始めていた。この街は潮の香りがする。
海は、陣屋から少々離れている。それでも、この香りはまさしく港町だ。

同じ海でも、ここは、遥か蝦夷地。箱館の海だった。

ふと、中島は、久しく気にも留めていなかった「波の音」を聞いていた。



吉之助(通称)について≒多謎の人物
ちぐはぐな部品と光の分子達


夜も深まった。街の明かりもひとつ、またひとつと消えてゆく。雨の後だけあって、
ガスがかった空に星はない。中島の脳裏を皆の顔が通り過ぎてゆく。

hag.jpg若者達は皆、原石の輝きを秘めていた。でこぼこで不揃いな部品達。

断トツに秀でた突起物が微妙な端境期にあって、それが時に
及んで命取りとなってしまった。しかも、方向性が瞬時に転じて、
どちらに転がってゆくのか定まらない。
歪な球体はひとたびバウンドすると、予想だにしなかった
方向へ跳ね返る。皆結集して総括されるなれば限りなく
強力な力となりえるものが、個々ばらばらに散らかって、
無謀に滅び逝く。

それぞれの歯車は何ひとつ欠陥はない。
原因は本体なのだ。個々の部品を総括できるシステムがない。

それだというのに、部品達は待ちきれず、それぞれ勝手に動き出す。
噛み合うはずのない異種の歯車達が皆、欠損して火花が飛び散る。

機械好きの中島が集めた「部品のコレクション」は「ちぐはぐな部品」。そっと、大切に風呂敷
包みの中にしまっておいたはずだった。それだというのに、磨いて組み立てて一つのマシーンに
仕上げる前に破裂した。それらのコレクションは皆、中島の許可なく、勝手に中島の
風呂敷包みから飛び出して、勝手に爆裂した。木端微塵!その残骸すら残らない。


皆の顔が浮かんでくる。惜しくも刑死した吉田松陰にせよ、
昨年の六月、池田屋の事変で命を落とした宮部鼎蔵とて、皆そうだ。


教示を仰ぎたいと泣きついてきた。幕臣の中島ながら、意を決して密かに面談をした。
会って話せば皆輝きを秘めた原石だ。実に見所のある若者達だったのだ。

むしろ、翼を断ち切るべきだったのか?
ふと、後悔ともいいきれぬ複雑な思いが、己の中を通り過ぎてゆく。
危険物に転じる可能性がある部品は、「言語道断だ!」と、
一挙に滅却すべきだったのだろうか。放置したが故、こうなったかもしれぬ。


それらの光の分子達は、皆、目に見えぬそれぞれの反射板に
ぶつかって、全く予期しえない方向に跳ね返り、無残な残骸と
なって、動乱期の星屑になった。

本当につくづく、星屑だ。
尊い人の命だというのに、無数に飛び散らかって、数えれば、きりがない。

次なる微粒子達もなんら方向性に統一が得られず、
つまり進化することなく、錯乱するばかりなのだ。





官軍とやら、新政府とやら・・・考えた。しかし、どう考えてもおそまつなのだ。
完全に統一されて、しっかと方向性が定まった組織なれば、それは、それなりに認めよう。

敬謙なる徳川家臣の中島なれば、たとえ己が義に殉じようとも、 惜しくない。
この日の本、国を思うなれば、己が攻め滅ぼされてそれが、仮に成り立つものなれば、
むしろ、好んで散ろうではないか。 潔く殉じるなれば、むしろ本望だ。

しかし、彼らの持つ知識にはつくづく疑問符だ。国を守る。未来を担うと豪語するには、あまりに
稚拙すぎる。清国の屈辱を知ったところに、そもそも彼らの尊王攘夷が爆裂した。
それでいながら、今の薩長はどうだ。まるごとその張本人、英国の支援で動いてるではないか。

まず、海軍のレベルが低すぎる。開陽を失ったことは不本意ながら、彼らの操艦術は幕臣達の
足元にも及ばない。まともな者といえば、長崎伝習所で共に学んだ一部の士官達だけではないか。

しかし、これ以上官軍のことを考えてみたところで、馬鹿々してくて、苛立つばかりだ。

風呂敷包みを勝手に飛び出した若者、つまり「死んだ男達」のことを
考えるのはもう止そう。中島は、己にそう言い聞かせるなり、帰路を歩んだ。

躍動の原動力、蒸気機関


道々、ふと、気がついた。
ん?!己こそ、最も著しく『壊れた部品』だったのではあるまいか?


我が軍総督、榎本といい、長州の木戸といい・・・
人様の子には、結果がどうあれ、こうして精一杯に躍動の原動力、「活性の蒸気」を送り込んだ

しかし、よくよく考えてみるなれば、それは
子という年代ではなく、いわば年の離れた弟世代達へのことだった。

中島は蒸気機関が熱を帯びて、シュッシュッと特有の音を放っては、黒煙をあげて、
巧みに動き始めるあの躍動感がたまらない。大人気なく、胸が高鳴り、興奮してくる。
榎本達には、それを存分に教え込んだ。

それでいながら、父としての己はどうだ!!
己は父として、我が子に対して、同じように「活性の蒸気」を送り込んだことが
かつてあっただろうか?

中島は、客観的に己を糺すなれば、我が子に対して、実は負い目があった。



この地独特の暴風がやってきた。
うねくり返して、巻きつける。たちまち人を地べたに叩きつけては嘲笑う。
吉之助の言ったとおりになってきた。凍てついた路面。確かに危ない。

痩身の中島は、風に吹き飛ばされる前に、さっさと陣屋に引き上げた。


下僕、吉之助との距離


陣羽織の襟をぐっと寄せて、寒々陣屋に入った中島。
入るなり、吉之助に笑われた。
「ですから、ご主人様、この吉之助が申したではありまぬか。」

気の効く彼は、早速酒の準備を怠らない。
「熱燗になされますか?」彼はとっくりをちょいと掴んだ指を
離すなり、耳たぶに持っていった。既に準備万端だ。

そして、こうも言う。
「ご主人様、波の音なれば、お部屋でも充分聞こえます。」
・・・中島は一瞬ぎょっとした。この若者は、いちいち人の心をよむ。

「この寒い中、ご主人様がお立ちになられた側は北向きでござりまする。
そりゃ、お寒いにきまっております。」
・・・そう言ってまた笑った。

中島の部屋は南側に面した床の間のある立派な部屋だ。かつて、ここが津軽陣屋として
使われていた頃の名残である。

吉之助は言う。こんな夜は南側よりも、むしろ西側の部屋が風もなく、波静かで
心地良いというのだ。たとえ南であっても、風が北南に吹くならば、この巻きつけるような暴風は
なんとか吹き抜けようと、結局騒々しい。対して、東西の角度なれば、風神の盲点になるのだという。



「まさか!」と一蹴して笑った中島ながら、そもそも若者の新説には、本能的に耳が傾く質だ。

「どれ、吉之助殿のご意見、有難く承りましょうか!」口ではちょいと嫌味を言いつつ、
体は勝手に素直に従う。

西部屋は、あまり上等な部屋ではないため、兵が多い折には、彼らがここに雑居する。
しかし、この段階、史実上では、まだ嵐の前の静けさである。
大勢がたむろしているわけでなく、ちょいと片つければ、他の部屋に比べると、だいぶマシだった。

「ご主人様、西のお部屋を片付けてございます。
 酒はそちらに運びます故、少しはゆっくりなさって下さいませ。」


中島は彼に言われるままに、部屋へ足を運んだ。酒と質素な肴を持って、吉之助が追ってきた。
彼はにっこり笑うと、障子を開けて見せた。

「嘘のようでございましょう?宵は、こちらの部屋なれば、
風が吹き付けるでなく、波音も静かでござります。何かと不思議な街でござります。」


中島はさっそく手酌で一杯やり始めていた。

「なるほど、そなたの申すとおりじゃのぅ。これは良い。」

吉之助は、この後、五稜郭までひとっ走り使いに行く予定になっている。

「風はなくとも、部屋が冷えます。こうしても、ちゃんと波音は聞こえますゆえ・・・」
そう言うなり、彼はぴしゃりと障子を閉じて、出かける体勢に入った。

行儀良く畳に両手をついて礼をした。
「されば、ご主人様、行ってまいります。番の兵は、きちんと陣屋の外に
 数名立っております故 ご安心下さいませ。」

「吉之助、すまぬのう。房には、くれぐれも、釜さんのお役に立てるよう
何事にも精進せよと伝えてまいるが良い。」

※房=房次郎=英次郎=中島の次男

ついつい余計な説教モードが出てしまった。倅のこととなると、なぜかこうなる。
それは、中島自身、自分でも呆れるほどだった。

吉之助使いの用件とは、これだった。
中島の次男、英次郎は、榎本にとって、なんといっても大先輩、中島の子である。
その上、まだ十代ということもあり、一応、彼の小姓という扱いで五稜郭に置いているのだった。
名目はそうであっても、実のところ、束縛する気はない。

帰りたいならいつでもかまわない。だからといってそうしないのは英次郎の意地もあれば、
子にだけは、なぜか口喧しい中島本人の発想からくる。

実際榎本が心地よく使う少年達は別に数名居る。まさか中島の倅をこき使うことはない。
あくまで形式なのだ。日々戦闘に命を落とす部隊に紛れぬように榎本の配慮だった。

本来なら、中島としては、海軍に預けたいところだが、あいにく、
余計なところを父に似てしまった。時折、力の無い空咳を打つ。
長男の恒太郎に比べ、線が細い彼。本格的な発作はないものの、やはり喘息の気があった。
そこで、中島は榎本の好意に甘えていたのだった。

吉之助の使いとは、英次郎の様子を見に行ってくるというのが本音だ。
機敏な動作でさっさと玄関口へ向かう吉之助。中島は、その背中を見送った。

長身でがっちりとした背肩幅。そして、気配りといい、作法といい、いつ士分取立て
してやってもおかしくない。身分を下僕のままでは、むしろ不釣合いだ。
不思議なものだ。この鄙の地、蝦夷に来たことによって、吉之助との距離がぐんと近まっていた。




浦賀に居た頃の中島は、この吉之助に対して、用事を申し付けるのみで、それ以外の目的では、
ものを語ることなど全くなかった。屋敷に居た頃、下僕として畏まっていただけの少年は、
今、召使もやれば、女中の仕事もこなす。堂々兵並に護衛もする。
創意工夫を要するこの環境は彼を見違える程大きくした。

「ほう、鄙の地にあっては、己もついに成長したものだ。」 独り言が口をついて出た。
ここに来なければ、彼ほどの人材を見落としたままに、ぬけぬけと世を去ったのだろう。



海が見えぬのでは、やはりつまらぬ。中島は、ふと思い立つと、
折角吉之助が閉めた障子を再び開き放して、座りなおした。

一人になった中島は、再び杯を口に運んでいた。
ちびりちびりとやりながら、視線はゆっくりと海へと注がれてゆく。

なるほど、潮騒の音が心地よい。
それは、極めて安らかに、
乾いた心に浸透してくる。


next_car潮騒、父としての己
中島三郎助と蝦夷桜
No.1No.2No.3(現在の頁)<No.4No.5No.6<・・・No.12(完)
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文章解説(c)by rankten_@piyo
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