『信賞筆罰』　ある在野研究者の記録

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  『日本経済の本当の話』　R.ターガート マーフィー (著)　毎日新聞社

  ​政府・日銀、円買い介入　円安阻止へ24年ぶり　鈴木財務相「過度な変動見過ごせない」（時事通信社）　9/22(木) 17:28配信​​​​​24年ぶりに財務省が円　ドル為替に介入し円高方向へと、​​かなりマスコミやら一般素人投資家の方が騒いでいる。どうも、知ったかぶりの素人さんが日本には多くて、円高になれば外貨預金の利益が減るやら、東証INDEXが下がるなど言いたい放題だ。また　日本政府　特に財務省も為替介入で「行き過ぎた円安に歯止めをかける」と本気で日本の財務大臣が言っているのだから、もう空いた口が塞がらない。あまり　更新しないブログでも「もう少し　為替介入の基礎知識ぐらい知っておいたら？」と思ってしまいます。まず、日本の財務省の為替介入ですが、多くの人が財務省が多くのドルを保有をしていて、円　ドルの為替相場でドル紙幣をしこたま売っていると想像している方。財務省の報告書をしっかり読んでみましょう。​​財務省　関連資料・データ​https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/reference/index.html​日本の財務省がドル資産をもっていて　どんなメリットがあるんでしょう？もし、日本政府がアメリカや諸外国でお買いものを行うんでしょうか？いやいや　日本政府　財務省は、わざわざ為替手数料を払って　円とドルを交換しても手数料を取られるだけで、日本政府がドルを保有しても　メリットは全くありません。海外へ　援助や海外協力でドルをばら撒くことが大好きな岸田さんの資金源ぐらいでしょう。お金の基本なんですが　お金の価値は資本主義では時間が経過すると、どうなるのか？あなたが、10年前の1万円の価値が　2022年でも10年前の1万円と同じ価値だと思っている方は、資本主義　金融の基本を知らない方です。あなたの銀行口座を金融機関へ預けたら、もしくはお金を借りたとき、何が発生しますか＿？それは「利子」です。普通預金も　雀の涙ほどの利子が、時間が経てばつきますし　ローンでも　利子がついた金額を返済していくことになる。日本政府　財務省が、円が余っていても　日本で有効な運用先がない。だから　どうしているのか？というと　円からドルに交換して　アメリカ国債を買っているわけです。なぜなら、アメリカ国債には「利子」がつくから。安全な運用先としてアメリカ国債を買っているわけです。アメリカ国債も　償還（満期）で利子がついて戻ってきます。財務省は今まで償還（満期）になって利子付きで帰ってきたドルを　また　新しいアメリカ国債の購入に当てています。このことを初めて知ったのが　今回ご紹介するこの本なのです。タガートマーフィーさんのこの著作です。日本経済について非常によく取材や調査をしていますし　1996年からヴァンガードのインデックスファインドに投資をしていれば、十分な運用益を得られると　別の書籍で指摘をしており　私もそれを実践して　普通の人よりは資産があります。今回の日本政府　財務省の為替介入。何をしたのか？これを正確に説明できる方は　日本には　ほとんどいません。悲しい方　日本のバカマスコミや　日本の大学の経済学者も　あまり知りません。私は大会計学科卒の学士ですから、公会計も知っていますので、財務省の「外為特会＝外国為替資金特別会計」を見れば　日本政府　財務省が　どれぐらいの海外保有資産をもっているか？がわかります。知りたい方は　ここを見て　エクセルファイルをダウンロードすればいいだけです。・​https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/reference/gaitametokkai/index.htm​ここに何が書いてあるのか？それは　日本政府の海外資産です。日本の海外資産の話については、日本の資本主義をよく研究されている　日本共産党の『赤旗『解説が一番わかりやすい。なんせ、共産主義革命のためには　資本主義の陥穽を研究しておかないとだめですからね。​https://www.jcp.or.jp/akahata/aik20/2020-06-13/2020061306_01_1.html​意外と　日本共産党系のマルクス経済学関係の大学の先生方は　金融　銀行システムについて　非常に面白い研究をされている方が多いです。ただし　マル経の方は数字での分析よりも歴史や法制度の研究が多いです。置塩先生や森嶋通夫先生が対象外ですが。計画経済を行うには　産業連関分析など　数学を結構使用しないと　5カ年計画が作れないですし。彼らは　アメリカの銀行システム　銀行法　金融恐慌政策　金融規制法　大企業研究は　めっぽう強い研究分野のように思います。では、今回の日本政府　財務省の円　ドル為替相場の為替介入で何をしたか？​簡単なことで　財務省が保有しているアメリカ国債を売って　アメリカ国債で売って得たドルを円に変えただけ。​​​​​​​​​​​​円高に振れたなど　はっきりいって　どうでもいいことですし、為替が円高に多少なったからって、結局はまた　円安に戻ります。なんせ、円とドルの総通貨発行量の均衡点が円　ドル為替のレートなんですから。（マネタリスト理論で有名な話）日本政府　財務省が為替介入をした本当の意味を皆さんはご存知ではない。それは、日本政府　財務省が為替介入＝財務省が保有をしていたアメリカ国債を売ったのだから、アメリカ国債の利子+為替益が当然出てくる。財務省がアメリカ国債など海外資産運用の原資となるお金は誰のものですか？それは日本国民のものです。アメリカ国債の利子は　せいぜい　２～３％です。財務省がアメリカ国債を買っていた為替レートは1ドル＝105円が平均レートだそうです。（現在円ドル　相場は　140円ぐらいです）私の予想では　1兆円の規模だろうと思っています。為替益＋運用益では　簡単に見積もって　1兆円×105円＝105兆円1兆円×140円＝140兆円35兆円30兆円は　日本のGDPギャップと同じ。萩生田政調会長も30兆円と積極財政が必要と自民党内で騒がれているのも　明らかにGDPギャップをどう埋めるか？が日本経済の再生にかかっているという認識からであると思います・また。岸田政権は、水際対策緩和とGOTO　トラベルを考えています。安倍国葬問題と統一教会で　内閣支持率が　ただ落ちで　統一地方選挙も危ない状況・そのため、財務省の犬の岸田首相は人気取りのために　大型経済政策を行う必要があり、その原資を今回の為替介入で行ったようにも思います。今回の為替介入は。円高に振れることよりも、アメリカ国債の売却益　為替益が　どれぐらいあるのか？　そして　その売却益の原資をどうするのか？を財務省に問いただし、日本国民にどのように分配をするのか？　秋の臨時国会で　徹底的に岸田政権や財務省を追求する必要がある。増税など　いりません。日本国民に10万円給付も可能電気　ガス料金支払いに関する政府の助成金消費税減税日本国民の社会保障費の減免円安での困っている中小企業の助成金こういう議論に　秋の臨時国会で行う必要があると。この為替介入の報道を見て思ったことです。為替介入の本当の意味を是非皆さんに知っていただき　為替介入＝アメリカ国債の売却益を　日本国民のためにどう使うのか？を　もっと政治家などにいったほうがいいと思います・​​​​​​​

  2022.09.23

• 骨太の方針　2022　緊縮財政　デフレは続く

  本日　自民党本部で15時より自民党の政調全体会議で『骨太の方針』が決まった。結論からいうと　須田慎一郎さんがYOU TUBEでスクープした財務省の巻き返しを自民党　積極財政派が抑えきれなかったことになる。この件はWeb現代の高橋洋一先生の記事でも言及している。産経のこの記事を読んで愕然とした。台湾を初めて明記　自民　骨太方針案を了承この記事で何が重要かというとここだ。「令和５年度予算編成に向けた考え方として、今回の方針と（令和７年度の基礎的財政収支＝プライマリーバランス、ＰＢ＝黒字化目標を明記した）昨年の方針に基づき、「経済・財政一体改革を着実に推進すると明記。」そして　積極財政派が　毒まんじゅうの緩和で追加させた文言が「重要な政策の選択肢を狭めることがあってはならない」である。昨年の方針＝2021年の経済方針であり　これはPBの黒字化が明記され　かつ　財務省の緊縮財政　つまり　ギャップ制（決められた定額予算しか積み上げができない）ことである。要するに　財務省はPBの黒字化は文言では撤回したが　しっかり毒まんじゅうを2022年の自民党の経済指針に盛り込むことに成功し　明日　閣議決定されてしまうわけだ。これは何を意味するのかというと　日本経済はデフレが続くことである。明日の東証の株式市場は売りだろう。たとえ　重要政策の選択肢を狭めることはあってはならないと追記しても、この文言では政府の積極財政政策はできないからだ。たとえば　前回の補正予算が2兆円規模など　その典型である。いったい　自民の積極財政派は　5月30日の紛糾した毒まんじゅうの原因を指摘しているのに　この財務省の毒まんじゅうを受け入れたことが不思議でならない。安倍派は　防衛費の増額に集中しすぎて　防衛費以外の公共投資や政府の財政出動は　重要な政策の選択肢ではないと財務省の言いがかりを　どのように突破することができるのか？重要な政策が　あいまいすぎるのであるし財務省は　ここに漬け込んでくる。ブルームバーグでの積極派の西田議員の記事も全然勢いがない。ポスト黒田も緩和路線継承、骨太原案で示唆－自民・西田氏結局　岸田政権での経済政策は財務省の犬のままである。重要政策とは何か？　それは　私達の日本国民の生活であり　それに直結する経済政策だ。この2022年の骨太の方針で　重要な政策　例えば　防衛関係　経済関係　教育関係などは狭めてが行けないと記述することもできたはずだ。一番の懸念材料は岸田政権の馬鹿な経済政策　金融政策が　失業率増加　日本の社会不安となる試金石を自民党が本日決めてしまったといっても言い過ぎではない。それは　時が証明してくれることになるだろうと思う。

  2022.06.06

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  『経済は「予想外のつながり」で動く――「ネットワーク理論」で読みとく予測不可能な世界のしくみ』　ポール・オームロッド (著), 望月衛 (翻訳)　ダイヤモンド社

  中央大学在学の時から「理論経済学」は役に立たない！！と、ウェブページで散々批判していた私。1994年から2000年にかけて　シカゴ大学のフリードマンの経済学が主流となっていたのに、「人間が合理的に行動することなどありえない」と、散々書いてきました。理論経済学を勉強するにも、人間の非合理性や感情的などに焦点をあてた反主流経済学を中央大学で学んできました。まだ、実験経済学、臨床経済学と言われていた時代で、今では「行動経済学」「実験経済学」として、演繹から帰納法で「人間」の経済活動を見つめる経済学を学んでいました。その当時まケインズ経済学なら、ケインズ→吉川洋→ハイマン・ミンスキー・スティグリッツ。制度派なら、宇沢弘文→ヴィブレン→ガルブレイス。行動経済学ならカネーマン。制度派のヴィブレン、ケインズ経済学、カネーマンの「行動経済学」、スティグリッツの「非対称情報」論と、反主流経済学を学んでいました。そして、アメリカでは当時クリントン政権だったので、民主党の経済ブレーンであるレスター・サローやロバート・ライシュなど「政治経済」からアプローチする経済論も出ていたので、彼らの著作もよく読んでいました。そこから奥村宏先生との出会いで企業論を研究する上で、土台となる組織論や社会心理学、組織の意思決定論を学ぶ上、複雑ネットワーク論、ゲーム理論、社会心理学も最新研究を織り込み統計学もフィッシャーからベイズになり、IT技術やPCの発達で簡単にシュミレーションができるようになり、帰納法＋実証＋統計・確率で、経済を俯瞰的に知ることができつつある時代になってきました。さらには　『ファストアンドフロー』のカネーマンの行動経済学　そして、本年度のノーベル経済学賞は　実験経済学の米カリフォルニア大バークレー校のデービッド・カード　MITのヨシュア・アングリストと米スタンフォード大のグイド・インベンスが受賞した。最低賃金を上げても　失業率は急激には高くならず、そのままを維持する。（これは　どの経済環境でもあてはまることはできない。お隣　K国では　これをやって　さらに失業率が増加し　とんでもないことになっている。経済政策　経済環境が違うと　最低賃金を上げたところで　失業率は高くなる事例もあることに注意が必要）これらのようなアプローチで経済を見ていた欧米の研究者は、なかなか知られていなかったのですが、今回、そのど真ん中を記したものが、この『経済は「予想外のつながり」で動く――「ネットワーク理論」で読みとく予測不可能な世界のしくみ』である。参考文献が非主流経済学のオンパレード。ダンカン・ワッツ、ハーバード・サイモン、スティグリッツ、カネーマン、マクルーハンと、経済学の枠を飛び越えた分野、複雑ネットワーク、産業経営論、情報学、社会心理学。日本の経済学者で、これらの分野を統合して経済を考える学者や研究者は、ほとんどいない。しかし、これらの分野を横断的に積極的に取り入れ、既存の理論経済学に対して真っ向から反論し、新しい経済学の分野を構築しているところが、この本のすごいところなのである。複雑ネットワークと情報学とIT、そしてベイズ統計から組織の意思決定が、経済を大きなダイナミズムとして捉えないと、グローバル経済の一長一短を把握することが非常に難しくなるだろう。そのためにも、日本でも　輸入の理論経済学に頼らない新しい経済学の構築が急務なのであるが、今でも海外で輸入した経済学を学んで　大学教授になることが主流なので　日本で経済学が発展することは　まぁ　将来はないだろうと悲観していますが。

  2021.12.01

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  古典と兵法に学ぶ　『統率』　大橋武夫（著）　三笠知的生き方文庫

  ビジネス書　特に、兵法から経営を考えるにあたり、私が一番参考にしているのは大橋武夫先生の著作群である。最近、PHP文庫が立て続けに大橋武夫さんの著書を復刻している。『経営幹部の１００の兵法』　『マキャベリの兵法』である。立花隆と佐藤優の文春新書でも大橋さんの『兵法　孫子』が取り上げられていた。多分、この２冊以外で続々と復刊されることは非常にうれしい。どうして、今、大橋武夫先生が注目されるようになったのか？やはり、日本企業の経営がガタガタに崩れているからであると私は思っています。日本の経営の悪い所＝旧　日本陸軍の悪い所と全く同じ原因があると、大橋さんも指摘されているし、小室直樹博士の『危機の構造』や、同じく中公文庫の『失敗の本質』でも同様である。つまり、日本企業の経営システムや企業統治機構、さらには、企業風土がガタガタになっているわけだ。だからこそ、最近、パワハラやらブラック企業やら、ギスギスした職場になることが多いことも必然であろうと思えます。経営マネージメントでは、ヒト・モノ・カネ・情報の管理が注目されてきました。人事管理においても、アメリカからの輸入モノばかりで、コーチングやらギスギスした職場の改善などに注目ばかりされ、結局、有効な処方箋もなく、経営コンサルティングの思う壺＝情報商品として消費され、何の改善もなされていません。そのような日本の企業環境の中で、ヒトをマネージメントするための「統率力」の大事さに注目された日本の経営評論家や神戸大　一橋などの大学教授はいませんでした。ただ、唯一、「統率力」について言及されたのが、大橋武夫先生だったわけです。企業のトップとミドルでは、「統率力」について違う。トップが参考するのは、この『統率』です。ミドルには『統率力入門』か、もしくは日本実業出版の『統率力　１０１の法則』があります。この『統率』の中で、大橋さんは次のように書かれています。「統率を本職とする軍隊にも統率の理論が確立しておらず、現在の大学にも統率の講座はなく、一流の企業にも統率錬成について本格的な構えを持っているものはない。また、市井の書店には統率（またはリーダーシップ）の本は数多く出ているが、いずれもたんなる実例や思いつきの羅列に終わっている。統率の本質を捉え、これを的確に実行することが経営の秘訣であり、そのための理論化、系統化が必要であると思って挑戦したのがこの本である。しかし、統率は人の心に関するものだけにこれを理論化し、体系化することは容易なことではない」『統率」　P5あと、『統率力　１０１の原則』では、りーだーシップとヘッドシップの違いについて言及されているところは非常に参考になる。本来、『統率』を読む前に、『統率力入門』や『統率力　１０１の法則』を読まれたほうが、統率の大事さが理解しやすくなるように思います。例えば、号令・訓令・命令の違いをご存知の方はいますか？号令ばかりやっているから、統率できない管理職が多いという大橋さんの指摘は「あ、なるほど」と思うわけです。今こそ、日本の企業経営で十分通じる、大橋武夫さんの著書を是非ご覧になることをおすすめします。初めて大橋さんの著書を読みたいと思うなら、『図解兵法』が、一番大橋さんのエッセンスがつまった作品です。11月30日で　いったん　毎日の読書日記を一旦　終了します。12月　1月と繁盛期で　海外出張などもあり　毎日本を読むこともままならず　会社の企業戦略など　結構な意思決定に関わることが多くなり　それほど自分の時間も取ることが難しくなってきました。時間があったときに　ちょくちょく更新する予定です。

  2021.11.30

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  『グローバリズムという妄想』　ジョングレイ (著), JohnGray (原著), 石塚雅彦 (翻訳)　 日本経済新聞社

  今なお、久しぶりに読み返してみると、彼の予言どおりのことが次から次へと起きている。アメリカのグローバリズム（アメリカ民主党やウォール街派）の批判は、イギリスの論客が非常に鋭い批判をすることで有名だ。その中でもジョン・グレイの指摘は、その当時、１９９８年に『ニューヨーク・タイムズ』や『FT』などで書評され、欧米の経済論壇に衝撃を与えたものなのである。グローバリズム関係の洋書では、この本が必ず引用文献に出てくるほど、反グローバリズムの急先鋒として現在でも影響力をもっているのが、ジョン・グレイの『グローバリズムという妄想』なのだ。この本では非正規労働者の不安定な労働環境の非安定性、労働組合の弱体化（P100）、雇用の不安定性による先進国のブルジョワ生活の崩壊、社会的機関としての産業空洞化など、全て懸念材料として書かれている。１９９９年の段階で、この予言は今の日本の経済状況を全て的中させている。グローバリズムは、日本では輸入経済学者がその旗振り役だった。竹中平蔵氏しかり、御用学者と呼ばれるアメリカで留学をした大学教授たちだ。彼らが行ったグローバリズム＝アメリカの経済政策のゴリ押しによって、日本経済がボロボロになり、日銀の誤った財政政策やら、政府の誤った経済政策によってデフレが２０年も続いたともいってよい。そして、私達は、グレイの批判していたグローバリズムの世界の取り込まれてしまったわけだ。そして、世界市場というメガコンペティション（世界競争）の中で、日本企業が生き残りをかけて存続していけるかどうか＿？のまっただ中に今いるということをもっと私達は認識しないといけないわけです。このグローバリズムの経済政策としてTPPもその一つであり、米中衝突の環太平洋地域の経済連合いか構築することがが勝負になるというのに、岸田親中内閣で　完全に日本が米中にどっちつかずになるということになってきている。グレイの主張するように、グローバリズムやその思想による自由主義経済など妄想で、長続きせずにそのシステム自体がすぐに崩壊する。そして、それが経済社会にとって負の側面しかないという彼の主張を、もう一度、再確認する必要があるように思います。逆に　グローバリズムを逆手に取り　封じ込め施策　ブロック経済の一環として　対中のカウンターの経済政策として利用すべくとも。今こそ、読まれるべき本ではないか？と思います。

  2021.11.29

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  『孫子 戦争の技術』　サミュエル・ブレア・グリフィス（著）　(日経BPクラシックス)

  『孫子』に関して、あまり注釈書は読まないようにしています。評論家の勝手な孫子の解釈でグチャグチャになってしまうからです。唯一、『孫子』の解釈書で参考になるのは、大橋武夫氏と、このグリフィス版だ。グリフィスに関して、あまり日本では知られていないが欧米で『孫子』といえばグリフィスである。それぐらいグリフィスの『孫子』は、欧米では名著として読まれ続けていることが知られていない。グリフィスに関して、毛沢東研究・支那軍の研究について有名であるが、支那　朝鮮に関する研究で戦前は日本が最先端の研究・資料・調査を行っていたことはあまり知られていない。特に、満鉄調査部が行っていた支那の調査研究や朝鮮銀行が行っていた調査などは、今でも研究されていて、ひそやかながら出版されている。さて、最近、自己啓発というか戦略論・インテリジェンス論が巷では流行となっているので、『孫子』が、にわか注目されている。しょうもない『孫子』の解説書の本を買うぐらいなら、講談社学術文庫か、新刊の日経クラシックのグリフィス版の『孫子』を読み比べてみると非常に面白いと思います。グリフィスの場合、太平洋戦争を戦ったことから日本は『孫子』を軽くみていたと断じています。しかし、『孫子』の教えを忠実に従ったとしても、上層部・パワーエリートが『孫子』の教えを理解していなかったら、意味が無い。優秀な部下がいても、実際に組織を動かすパワーエリートが判断を誤ったなら、いくら『孫子』の教えに忠実だったとしてもダメである。もっと積極的に、情報戦・プロパガンダ・戦史・組織論を総合的に把握する必要があるように思います。だからこそ、『孫子』について深く研究する必要があるように思えます。

  2021.11.28

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  『あなたの身近な「困った人たち」の精神分析―パーソナリティそのミクロな狂い』　小此木啓吾（著）　新潮OH!文庫

  精神分析にかんしては、小此木先生のほうが断然良書が多い。ただ、不満点は「困ったひと」に対する対処法が全くと言っていいほど具体的ではない。だから、対処法について知りたいなら、別の著書を参考にしなければいけない。この本の画期的なところは、ある程度の「困った人」の大まかな分類と、その困った人がどのような言動をするのか？ということが具体的に書かれていることなのである。最近、パーソナリティー障害について、様々な書籍が出ているが、1995年では、まだ性格障害が「精神病」として取り扱われている部分が多く、性格障害として、なかなか認知されていない部分が多かった。また、『ココロジー』など、TVの影響で心理学がかなり注目されはじめ、心理学の初歩であるロールシャッハ・テストなどで、かじりだけでも大学で勉強したい学生が集まったものだ。ただ、心理学を勉強したところでカウンセラーになりたい＝人の性格を改善したいというのは、あまりにも無謀だということは、このブログでも何度も指摘していることです。心理学を勉強する目的こそ、本来、自らの人間関係の距離感やコミュニケーションをする方法として活用すべきというのが私の持論です。この本の初版は大和書房から1995年に刊行され、ようやく性格障害について注目された本でした。本来、組織を運営する上、人事部や組織を統括する人にとって、この性格障害をもつ人との関わり合い方、さらに、組織運営で適材適所をどのように活かせるのか？で用いなければいけないわけで。そのように活用している人事部や経営、マネージメント運営こそ、人の性格にもっとフォーカスしなければいけないと私は思います。その上で、文庫本としては、かなりのボリュームですが、古本屋で100円で売っているなら、十分もとがとれる本でもあります。性格障害やパーソナリティー障害の初級者用としては、まだまだ、十分に価値がある本です。

  2021.11.27

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  『こうすれば必ず人は動く　人生成功への必勝ノウハウ』　デ-ル・カ-ネギ- （著）田中孝顕（訳）　きこ書房

  コーチングや、人材教育において、「なぜ、この本があるのに」と思ってしまうことがあります。デール　カーネギーの著作は、ビジネス本でも古典の部類にはいるものですが、さすが、長年多くの人に読み継がれている作品群なので、買って、もしくは読んでも失敗がない数少ない信頼できるビジネス本であると思います。大体、自己啓発本やビジネス本は、ナポレオン・ヒル、そして、デール　カーネギーなどの著作群からパクっている本が非常に多い。これらの類の本は、まず、引用文献や参考文献を書かないことがほとんどなので、これらの作品群のエッセンスと自らの経験や主張を入れて、作り変えることが主流となっているわけです。さて、今回、カーネギーの作品群の中で、一番のオススメは、この本だと思います。数多くの作品の中で、この本が一番実践的であり、カーネギーの数々の著作を「どのように現実に生かしていくのか？」ということ、そして、ラジオ番組を使った台本から増補された作品なので、聴衆者にわかりやすく理解でくるような工夫が数多くなされていることで、具体例が多くさかれており、文字も大きく印刷されているため、スイスイと読みすすむことができます。第二十五章にわたって、「人を動かす」こと、そして、「リーダーとは？」という問いに真正面から見事なまでの具体例に基づく回答・成功談・人を動かす工夫と言い方、接し方についてのアドバイスは、どれも超一級品です。新人研修などに、この本を読めというだけで、十分の内容だと思います。日本の企業で、この本で描かれているリーダーや管理署は、あまりいないのではないでしょうかね。

  2021.11.26

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  『叱らなくても部下の心をつかむ方法』　本間正人 (著) 　フォレスト出版

  本間先生が、いつのまにか京都芸術大学教授になられていました。確か、この大学の学長は浅田彰氏だったように思いますが、なかなか良い人選をされているように思います。かつては　NHK教育で『ビジネス英語』をTVで行っており、非常にためになる英語講師のイメージでしたが　しかし　専門は英語教育ではなく　コーチング。　かつ　松下政経塾の塾生という　かなりの経歴の持ち主です。京都芸術大学には、画材について研究されている先生もいらっしゃり、油絵を描くときの絵の具についても、既存品に頼らない独自の作り方を教えている先生もいるし、芸術大学では京都芸術大学が非常に良い教授陣を揃えてきているように思います。本間先生のビジネスでの指導法・教育法は、教育学と名付けられていました。しかし、コーチングにフォーカスを宛てた著書が多く、教育方法論で本間理論がようやく三部作として刊行されました。その三部作とは『人を育てる「叱り」の技術』　ダイヤモンド社『ほめて!叱って!励まして!―部下が育つ魔法のキメ技』　ぱる『出版社『叱らなくても部下の心をつかむ方法』　フォレスト出版叱りについて、現在、企業内部で問題になっているのは「パワハラ」「セクハラ」問題です。現在、学校の体罰問題やいじめ問題、学級崩壊がクローズアップされていますが、日本の企業内でも全く同じ問題が起こっているのです。しかし、日本のバカマスコミは、それほど注目もしていません。取り上げているのは、日本共産党やブラック企業研究など、大企業に対して広告宣伝などに頼らなくても対抗できる勢力のみが、事実を発信しているような状態です。日本企業で発生している問題は、まさに日本の教育現場で起こっている問題と同じことが現実に起こっているわけです。大企業や中小企業も含め、管理職が部下を教育できる人が少ないという事実に、もっと注目しないといけないのです。裏をかえせば、日本の学校教育においても教師が生徒を管理できない・教育できない問題と同じことなのです。企業再生や企業風土改革を行うのは、まさに管理職の意識改革、さらには教育学の習得が欠かせないようになってきました。また、上からのリーダーシップが部下を管理することだと、勘違いしている上司は首にするべきでしょう。そういう上司ほど、統率力がないバラバラ組織であり、お山の大将、裸の王様状態に必ず陥るからです。部下をどのように教育するのか？どうやって、育てていくのか？その方法論として、アメリカなど海外で利用されているのが、この本で書かれている「フィードバック理論」なのです。外資系の有名企業では、この教育論は常識です。日本企業は、人事部や社員教育の外注先への丸投げ、さらに産業大学などを使っての通信教育などやっていますが、今の時代、彼らの方法論は時代遅れであることを知るべきでしょう。そのような教育制度があるからこそ、管理職がますます部下を教育できなくなる組織へとなっていくのですから。

  2021.11.25

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  『活人術』　中西太（著）　小学館

  子供の頃からサンテレビでプロ野球の阪神戦を試合終了まで見ていて、小学校六年生で阪神　日本一まで見届けると、中学校で近鉄ファンの友達に誘いを受けて、大阪球場でのプロ野球の試合が最後の日だった南海VS近鉄戦を見に行きました。初めての　パ・リーグの試合。鈴木貴久選手のホームランなどで　近鉄のボロ勝ち。ただ、南海ホークスが　もうなくなってしまうので、当たり前のように　南海電車の中吊り広告での南海戦のプロ野球の試合の広告がなくなるのも。南海ホークス　全盛期を知らない子供にとっては　大阪球場に無料で入ることができたことだけでも　「まぁ　よかった」という印象しかありませんでした。そして　『ニュースステーション』で　ぶちぬいた　伝説の　１０．１９　ロッテ　対　近鉄。夏の高校野球中継で　植草さんに継ぐ　名アナウンサー　朝日放送のアベロクの中継で　興奮しないわけがない。ロッテVS近鉄の熱パの試合を　テレビ観戦し　かじりつくように視聴し　中学時代の近鉄ファンだった同級生の誘いで　藤井寺球場の外野スタンドに通いつめ、いてまえ打線の近鉄優勝戦を間近に藤井寺球場で観戦していました。この時の近鉄の首脳陣がすごい。監督　仰木彬打撃コーチ　中西太投手コーチ　権藤博　野球論でいえば野村克也さんは経営者の考え方は非常に的確。しかし、中間管理職としてのコーチ論は野村理論や考え方ではダメ。いろいろな野球論を読んできたが、一番「人を育てる」こと、特に中間管理職の生き方　処世術に関しては中西太さんの考え方が一番しっくりくる。中西太さんといえば西鉄で活躍した怪童丸。野球選手であの当時、ウェイトトレーニングで筋力UPをはかり、打撃コーチとしては名コーチとして日本のプロ野球を知っている人なら知られている方だ、​古田敦也のプロ野球ベストゲーム「近鉄優勝・ブライアント4連発」​中西さんのコーチ論を知るには、上記の西武戦のブライアント四連発のドラマの舞台裏、特に、中西太コーチのブライアントの育て方が一番参考になる。そして、もっと中西さんのコーチ論を知りたいと思い、購入したのが『人を活かす 人を育てる』と『活人術』だ。この『活人術』が書かれた内容は近鉄時代　オリックス時代の戦友だった仰木監督の時代である。どのようにチームを強くするのか？　勝てるチームにするのか？がコーチの視点で書かれているところが、昨今の野球論の中で無かった分野だったわけだ。監督の立場　選手の立場ではなく、コーチの立場から見た野球論　組織論は、たぶん、この『活人術』が初めてだろうと思う。ただ、『人を活かす 人を育てる』と『活人術』は構成は、ほぼ同じで内容も似たり寄ったりである。多少、『人を活かす』のほうが写真や、エピソードが細かく書かれている。これらの本の中で、「人を育てる」という視点での中西流の考えは、かなり革新的であり、現在の組織論でもTOPレベルの考え方だ。柔軟にかつ大胆に。そして、創意工夫と努力。野球人として、もっと中西さんの考えが注目されてもいいのではないか？と思う。

  2021.11.24

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  『悪いヤツほど出世する』　 ジェフリー・フェファー (著), 村井 章子 (翻訳) 　日本経済新聞出版社

  最近、ビジネス本、特にリーダーシップ論で「誰が信じるものか！」と思えるものが多々ある。ビジネス本、特に、自己啓発系は宮崎学さんの『自己啓発病」社会 「スキルアップ」という病に冒される日本人』（祥伝社黄金文）で指摘されているように、あまり役に立たえないものが多すぎると感じることが多い。会社内ではリーダーシップなど本当にできる人は、あまりにも少ない。これは、私が数多くの有名企業で働いてきた中で「本当のリーダーたる資質を備え、組織を引っ張っているような人は少ない」ということを実感するからだ。会社の企業研修や書籍なども「眉唾」ものでリーダーシップの研修などやらされるが、本当に役にたったと思うことは全くない。また、日本の株式会社論を研究していても、リーダーたる経営者の資質は社内政治でのし上がっているものであり、グローバル化がすすむ資本主義の中で、大企業病が蔓延し企業不祥事や不正会計、経営戦略の失敗、新商品開発　人材不足と活用不足に伴う業績不振で自滅している日本の大企業が、多く見受けられるのも、日本式リーダーシップ論など勉強するものではないと断言できます。すべて、日本の経営方式がグローバリズムでぶっ壊れてしまったという事実を私達は認識すべきだと思う。その中で出てきたのがジェフリー　フェファーのこの本。中身を読んでみると、所詮、会社で出世するヤツは利己心の塊で、会社の利益など、これっぽっちも思っていないヤツが出世し、さらに、リーダーシップの研修どおりバカ正直にやれば、身を滅ぼすという実証例が、これでもか！と書いてあり、自らのサラリーマン人生で思っていたことが実証されたように思えました。さらに、もっとも納得したのが、リーダーシップ論を教えている講師は、リーダーシップなど経験などしていないものがほとんどであること。さらに、企業でV時回復などを成功した経営者や賞賛されている経営者が書いた著作は、ほぼ、自らが行った言動や成功とは違う、理想論、自分でやってきたところのいいどこ取りしか書いていないという指摘である。また、自分がやっていた経営　意思決定が、本に書いていることとまるで違うことや、自らの理想論や飛躍しすぎた表現で講義をしているのだから、もう、自己満足の宣伝のようである。悪いところはフタをし、そして、名声に傷がつかないところしか書かないのも、経営論や経営者論の悪しき学問であるように思う。この本を読んだときは　思わず手を叩いて喜んでしまいました。データも基づいて実証し、論理的に『どんなヤツが出世するのか？』をしっかりリアリストとして指摘できる大学教授がようやく出てきたと。MBAや経営学、組織論、リーダーシップ論。はっきりいいまして、使える知識は、そんなにありません。ただ、経営に成功した＝まぐれの要素のほうが強いわけです。いつも書いているのですが、もし、成功した経営手法を同じようにしたとして、果たして同じように成功するのか？同じことをやって、同じように成功するなら、そりゃ～誰でも真似して、みんな億万長者になれますもんね。しかし、現実はそうではない。その冷酷な事実をしっかり受け入れることができないと、所詮、組織が動かすことができません。ビジネス本を読むぐらいなら、古典の名著を読んだほうが全然いいと思います。

  2021.11.23

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  『やればわかる やればできる―小倉昌男の経営と仕事についての120項』　小倉昌男（著）　講談社プラスアルファ文庫

  もうお亡くなりになってしまったヤマト運輸会長の小倉さんの経営方針について、ヤマト運輸の社内報になっていたコラムを一般書籍化した本が、この本である。 小倉さんはヤマト運輸という運輸会社の経営者。 運輸会社として求められるものは「サービス」だということを、いち早く気が付かれ、そして、お客様に喜ばれるサービスとしてアメリカのUPSを参考にした宅急便を導入したことは有名なお話だ。 私も運輸会社に携わっていたので、小倉さんが社員に伝えたいメッセージがよく理解できました。飲食業やサービス業に従事している人や経営者にとって、この本は非常に有益な書籍であるように思います。 現在、ヤマト運輸は絶好調の業績を上げ、ついに佐川急便や日通、郵政公社を突き放し、ダントツNO1の宅配業者になったことは、小倉さんの経営方針がしっかりヤマト運輸に根付いた結果であろうと思います。 思いやりのサービス・人柄のヤマト運輸のイメージは、まさに小倉さんが社員に何度もメッセージとして伝えられたことで、社員のすみずみまで、その精神を実行にうつした結果ともいってよいのではなかろうか？ ただ、小倉さんが経営者として苦労されていたのは、やはり、組織の硬直化＝大企業病であったことだ。 その原因こそ、この本の第四章　「会社の健康診断」という章で、事細かに記されており、ヤマト運輸でも、現在の日本の大企業が苦しんでいる閉塞感があるのだと。 それをそのまま放置するか、しっかり改善できるか？が、今後のヤマト運輸の業績がダントツの地位を保つことができるかどうか？にかかってくる。 小倉さんが会長の時代でも社員からの匿名の苦情や労働環境の劣悪さを告発する書が数多く届いていた。 まさに、この問題を解決しないと、絶好調の歯車は一気に逆方向に加速度的に向かってしまうようになる。 今、佐川急便や西濃運輸が、その状態になりつつある。 いずれ、ヤマト運輸も、社内改革や企業風土改革にメスをいれないと同じような状況になると思います。 さらに、最近、ヤマト運輸の新サービスが、社員に負担をかける業務になっていることが気になります。 ECサイトやネット通販大手のAMAZONや楽天など、宅配便会社へ小口便・雑貨便・丸投げにするようなことをせず、運輸会社・物流子会社を作り、自前で物流を行う動きになっています。 これから小倉イズムが、しっかり継承されているか？　これから数年がヤマト運輸の勝負の年になるのではないでしょうか？ ヤマト運輸が運輸会社ではなく「サービス業」の会社であることを認識し、しっかりとした宅配サービスができるのか？ そして、大企業病を克服できるように、企業の閉塞状況、不満、企業風土改革・組織改革を行わないと、大企業病が蔓延し、ヤマト運輸が没落する可能性さえあると思います

  2021.11.22

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  『戦後20年の遍歴―シリーズ戦後史の証言・占領と講和〈6〉』　岡崎勝男（著）　中公文庫

  この本は日本の戦後史を考える上で非常に面白い視点を提示している。 マッカーサーやSCAP＝GHQの占領統治の裏側について、また、吉田茂や筆者である岡崎氏に関わる日本国政府とマッカーサー元帥とのやり取りにおいて、貴重な証言録ともいってよい。 降伏文書作成時、日本の代表団が沖縄の伊江島を経由して、フィリピンのクラーク基地にて、アメリカ側と交渉をしていたことなど、初めて知りました。 その帰路も駿河湾で不時着をして、そこから飛行機を修理し、東京へ舞い戻る話なども。 「そんなことがあったのか？」と、驚きながら読み進めることができました。 ミズーリでの降伏文書のサインをする時、ある国の代表がサインをするところを間違え、降伏文書が再度作られた話や、日本占領時にアメリカの軍票を使用することによる、日本経済が大混乱になるとの危機で、筆者である岡崎氏が外務省～マッカーサーがいた横浜まで、交渉のためにいったりきたりし、最終的には重光外務大臣まで一緒に行って、アメリカの軍票を使わないようにした話など。 当時のアメリカ占領軍は、日本に対して非常に柔軟に占領政策が行われていたことを知りました。 しかし、アメリカ政府には内緒でマッカーサーが独断で日本占領政策を変更したことが、のちのち、トルーマン大統領とマッカーサーの確執になり、マッカーサーが陸軍から追われる立場になる。、筆者のマッカーサーに対する洞察は、何度も彼と直接交渉した経験によるもので、「マッカーサーとは？」を考える上で非常に参考になりました。 また、台湾が中華人民共和国の「１つの中国」によって併合された場合の東シナ海・日本のシーレーン問題についての、筆者の先見の明は素晴らしいです。 日本の安全保障問題も、早くから自国で独自の軍隊をもつことの必要性もしっかり記述してあり、さすが、外交のスペシャリストとしての日本の方向性を指し示しています。外務省、降伏文書作成、吉田茂の懐刀、アラビア石油顧問、外務大臣・内閣官房長官、国連大使と、日本の行政機関で責任ある職ををかけもった稀有な方の回想録ですから、これほど面白い本はないと思います。

  2021.11.21

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  『南極の氷に何が起きているか』　杉山慎 （著）　中公新書

  南極大陸に　地球上の淡水の６０％もある。それは　氷　雪で　閉じ込められている状態だ。最近、気候変動がCOP26で話し合われ　石炭使用制限　廃止などの枠組みが決められた。ただし、主要な大国は　石炭は火力発電などエネルギー源として　まだまだ重要視しており　石炭制限の枠組みには入っていない。日本もその枠組に入っていない（石炭発電によるクリーン石炭発電を推進しているため）である。しかし　お笑いなのが　韓国で　できもしないのに　その石炭制限　廃止の枠組みにサインをしてしまったのである。その言い訳も　しくじり韓国らしい言い訳で　世界中の笑いものになっている。　協定書の中身を理解せずにサインをするというのも　国際法すら理解していないのだろうと思う。さて、この新刊を予約していたのは　実際、「南極の氷　雪はどうなっているのか？」と知りたかったからである。過去の気候変動　南極の気候については　北極の氷は相当溶けている。しかし　南極の氷は増えているというレポートを読んでいたので　では　今は南極はどうなっているのか？と。南極に関して　日本は南極の観測隊を送っているので南極観測は他の国比べて優位性がある。ただ、南極について　この本を読んで初めて知ったことが多い。例えば　南極の降雪量は？なぜ　南極大陸の上に氷が覆っているのか？（南極で氷が積もった最高点は４０００Mである。富士山よりも高い）南極の氷が溶けているのは　どこから溶けているのか？南極大陸の降雪量は非常に少なく　砂漠並みであるらしい。少ない降雪量なのに　南極大陸を覆う　氷や雪があるということは　長い年月で　コツコツ　積雪と寒さの凍りつくの積み重ねで生まれたものだということは簡単に想像できる。また　南極大陸の氷や雪は　南極大陸を囲む海のヘリから　南極大陸から押し出された　氷床が切り離され　海へ流れていき　溶けていく。もしくは　海に突き出たところは下から海水で溶けていく。これが科学的にわかったのは　ほんの数十年前というだから　南極ほど　謎だらけな場所なわけなのだ。ただし　この本で気になることは　温室効果ガスを二酸化炭素のみの濃度を参考にしている。温室効果ガスは　人工的には排出されたもの（これは石炭　エネルギーによるCO2排出も当然だが　森林伐採なども当然入る。）また　人工的ではなく　自然発生する　火山　海底火山　家畜がゲップなどで排出する二酸化炭素もある。特に　日本近海など太平洋地域の火山活動の活発化はCO2排出増加に相当影響があると私は考えています。さらに　二酸化炭素以外にも温室効果ガスは　たくさんある。水蒸気　メタン、一酸化二窒素、フロンガスなど。いつも思うことだが　二酸化炭素を人工的に減らしても　正直　温暖化を抑えることは科学的にできないのは科学者の中では常識である。カーボンニュートラル　COP26など　前回紹介した『なぜ欧米人は平気でルールを変えるのか』でも解説したが　科学的に正しくなくても　経済　産業　各分野のの主導権をにぎっていくために　欧米ではルールを自分たちの都合の良いように変えていくのである。それが「標準化」「規格」なのである。ISOしかり　HASSAPしかり　医薬品の規格であるGMP　GDPしかり。もう　デファクトスタンダードということは不可能であり　必ず　規格　標準化を前もって世界で決めてから　行うわけだ。要するに　グローバリズムによる標準化を制すれば　世界を制すのである。なので、温暖化について　二酸化炭素濃度資料を出すには　私には疑問を感じることである。また　IPCCの報告書で　温暖化は太陽活動など　公正な調査が行わているとしているが　筆者が２０１３年など過去のIPCCの報告書に対して　かなり疑問をもった　もしくは　あいまいな表現を書いていると率直に書かれていることは好感がもてました。この２０１０年代　環境活動家はIPCCを水戸の紋所にように「IPCCの報告書が正しいんだ！」と　参考文献　引用文献としていたが、その当時のIPCCの報告書は　あいまいな表現であり　いくら世界の科学者や専門家が議論した内容を表明したものでも　大した報告書ではないのである。また、専門家といっても　筆者のいうように「南極で起こっていることは　まだわかっていない」ことが多いのである。なので、予測を出しても　あたるはずがない。地道に　石油枯渇になるのは将来確実にあるのだから　新エネルギー　クリーンエネルギーを目指すという方針のほうがわかりやすいのではないか？と思うのである。南極で起こっていることは　地球全体に影響はあるのは間違いないだろう。だからこそ　南極で何が起こっているのか？という書籍が新刊で出してきた　中公新書には「あっぱれ」と思えます。こういう科学ものの　新書は　最近少なくなってきているので　こういう本は貴重です。

  2021.11.20

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  『行動経済学　経済は「感情」で動いている』　友野典男（著）　光文社新書

  行動経済学に関しては、１９９５年時点で注目し、まさかノーベル経済学賞に受賞されるとは思いませんでした。私の時は臨床経済学といってまして、実験経済学とは、まだ区別されてませんでした。 私は学生時代は「理論経済学など役にたたない」とウェブページやホームページで主張いましたし、経済人の概念など「そんな人はいない」と思っていましたので、人間らしい理論経済学として、カネーマンの行動経済学に注目していました。 しかし、その当時、日本では行動経済学など注目もされていない時代であり、行動経済学の論文などネットのみ。日本で研究している学者さえいなかったのです。 もし、行動経済学を学ぶにはアメリカへ留学しないとダメでした。本当は行動経済学を学ぼうと留学も考えて勉強していたのですが経済的な理由で断念したことが、今でも悔いが残ります。 行動経済学に関する著書は、２００２年にカネーマンがノーベル経済学賞を受賞してから、行動経済学・行動ファイナンス・実験経済学・行動ゲーム理論など日本にも紹介され、翻訳本がようやく出てきたのですが、日本の翻訳者のレベルが低いというか質が悪すぎて、せっかくの良書を翻訳してもチンプンカンプンの内容だったので洋書や原書を直接アメリカから買い付けて、それらの本を読んで勉強したものです。 カネーマンやセイラー、さらにはモッテオリーニの著作もしかり、翻訳家は理論経済学の知識も知らないで翻訳しているから、誤訳・悪訳になっているので、読めたものではない。変な訳のオンパレード。 今回、日本人で行動経済学の入門や初級者を対象にした著作の中では、中公新書と光文社新書の『行動経済学』が、まだ使える、読んで納得出来る本だと思います。 ただ、光文社新書の『行動経済学』は、アメリカなど行動経済学の論文や著作の美味しいところの寄せ集めであり、アマゾンの批評でも指摘どおり双曲割引関数の説明がめちゃくちゃ。 要するに、行動経済学の専門家ではない著者が書いていることに等しい、デタラメなのだ。行動経済学の基本ともいうべき双曲割引関数のモデル式さえ間違えていることはダメである。行動経済学に関して、日本には専門家がいないともいってよい。 唯一、多田洋介氏の『行動経済学入門』が、本格的に行動経済学を学ぶ方には唯一の学術的な著書であろうと思います。 幸いカネーマンのプロスペクト理論、ノーベル経済学賞受賞理論を解説した、『ファスト＆スロー』が村井さんの翻訳で出たことが非常に救いである。 カネーマンの翻訳本で良書といってもよく、カネーマンの代表作が村井さんの翻訳から出版されたことで、日本人もようやく行動経済学のどまんなかを理解できるようになったわけだ。 もう少し、理論経済学がわかる翻訳者や日本の行動経済学を専門とする研究者がいないと、行動経済学の専門にする日本人研究者は育たないであろうと思います。 もし、本格的に行動経済学、ならびに実験経済学を学ぶなら、セイラー・カネーマンなどのアメリカの第一線級の行動経済学者の英語の原書を読むほうがいいでしょう。 それかネットで、行動経済学に関する論文が無料で出てますから、それを読んだほうが有益です。 日本語の翻訳は読まないほうがいいです。 ケインズの『一般理論』もそうなのですが、第一級の経済学の著作が、翻訳者の誤訳や悪訳、そして翻訳家の質が低ければ低いほど、、その学問分野が日本では発展しないことは大問題だと思うのですがね。 理論経済学ほど、その誤訳による研究者の質的劣化がひどいです。

  2021.11.19

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  『ずるい！？　なぜ欧米人は平気でルールを変えるのか』　青木高夫（著）　ディスカヴァー・トゥエンティワン

  日本人が世界を席巻することになると、欧米からルールの改訂が起きる。黄禍論など一種の人種差別ではないか？と思ったことがあるのではないだろうか？しかし、世界で一番になるために、そのルールを誰が作るのか？ということを、もっと意識しなければいけない。例えば。国際会計基準。京都議定書、COP26，国際試合でのルール。全て、国際的な委員会や組織で作られる。つまり、ルールを作るということは、公平だけでなく、ある意味。競争なのである。それを最初に知ったのが、私は国際会計基準のIASCの議長だった白鳥栄一先生が、たまたま大学の担任の先生だったので、世界の熾烈な競争や国際会計基準のルール作りにおける駆け引きを、先生から直に聞いていたのである。まさか、その議長になっている先生が、私の大学のクラス担任の先生だったことこそ、奇跡に近いし、どうして、そんな人と出会えたのか？というのも、本当に縁のように思えたのである。その当時、大学生だった私には「みんな仲良くではなく、ルール作りも戦いなのか？」と。その当時の状況、背景、その裏面史については、日本経済新聞の『国際会計基準戦争』に詳しい。はっきりいって、壮絶な戦いの場であったのだ。そのなかで、IASC、そして国際会計基準は、ヨーロッパ主導で動き、アメリカや日本の独自の会計基準は、国際標準にはならなかったのである。その当時は、国際会計基準はアメリカ主導であると、お馬鹿なことを書いていた経済誌や新聞。先生たちが数多くいた。私はWEBページで、ヨーロッパ主導で国際会計基準が作られているということを書いてきたし、経過状況についても白鳥先生から直接お聞きし、将来、どのようになっていくのか？という展望も、よくお話してくれたので、国際会計基準だけは真剣に学んだ記憶がある。だから、この本を読んだとき「やっぱり、欧米人はルール作りから戦いの場なのであり、さらに、国際的な会議や組織では、必ず、名誉とカネ、そして、権力の争いが、そのままルール作りに反映されるのだ」と。この本では、非常に説得力のある解説で書かれている。グローバルスタンダードや国際標準規格など、特許、知的財産など、全て「国際ルール」が根本となり決められている。その基本のルール作りに、積極的にならないと、必ず、自分たちに跳ね返ってくる。世界の中の日本を考える上で、語学を勉強するよりも前に、まず、この本を読んで、国際的な視野と感覚をもつ人が多く日本で生まれることを願うばかりである。「ずるい」ではなく、ルール作りから戦わない限りは、いくら日本人の美徳を貫いても、井の中の蛙　大海知らず　になってしまうわけなのだ。COP26でも　カーボンニュートラルなどヨーロッパ主導で　二酸化炭素　削減のため　電気自動車など環境にやさしい車を目指そうとしているフランス。そのフランスの電力の80％が原子力発電であることを日本人で知っている人は　まずいない。逆に　日本が電気自動車など普及させれば　電力は　ほぼ　火力発電なので　電気を作るために　石油や天然ガス　石炭を使用して電気をつくらないとやっていけないのである。だから、国際基準とは　ルールを作ったもの勝ち。また　二酸化炭素が温暖化の主因ではないのに、二酸化炭素を排出する国が悪いというのも科学的におかしい。水蒸気などのほうが二酸化炭素よりも温暖効果ガスであるとも　火山　海底火山による水蒸気二酸化炭素の排出のほうが大きいわけで。調略、戦略、知恵、交渉術、人柄、コミュニケーション能力。全ての叡智を尽くした「頭脳」勝負。これからの時代、この頭脳勝負に勝てるか？が、日本の将来を占う上で非常に重要なことなのだ。現在の政治家では、まず不可能。そして、産業政策も立案できない経済産業省。増税　緊縮財政で　自公政権の政治家を操っている財務省。こんな国に、果たして未来があるのであろうか？と思います。

  2021.11.18

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  『最終戦争論』　石原莞爾（著）　中公文庫BIBURO

  数年前まで「戦略論」ブームだったのが、嘘のように鳴りを潜めている。「インテリジェンス」しかり、「ロジカルシンキング」しかり「見える化（可視化）しかり。まぁ～、これこそ日本の読者が宣伝という名のマインドコントロールにかかりやすい気質ももっているとしかいえないし、あるいは社会心理学でいう「群集心理」にのせられているだけなのかもしれない。日本人の怖いところは、短時間で一気に180度　何事もなかったように考えや方向性を全体主義的に変化することができることだ。この理由を白州は「プリンシプルがない」と言い放っていたことも、うなづける。さて、最近、戦略論に関して、奥山真司さんの本格的な啓蒙活動によって地政学やアカデミックな戦略論・戦争論が翻訳され、ようやく興味のある方でも読める時代になってきました。また、絶版になっていた戦争論や国際政治、地政学に関する本が復刊されたり、新しい最新の研究も知られるようになってきたことは、うれしい限りです。西洋や中国の古典戦略論も勉強にはなるのですが、「戦前の日本軍の首脳は何を考えていたのか？」ということも、徐々に明らかになってきました。特に、NHKが『日本人はなぜ戦争へと向かったのか』や、『日本海軍400時間の証言―軍令部・参謀たちが語った敗戦 』など、実証的な研究成果が明らかになり、今までの常識だったことが、全く違った考え方や誤解、情報の取り方の違いや解釈の違い、まさに官僚的な政治決定が上部では行われていたという史実が判明してきました。その中で、彼らのプリンシプルな思想は何だったのか？それが、私には石原莞爾の著書を読むことで、彼らの考え方を垣間見れるのでは？と思い読み始めました。石原莞爾の著作集は文庫本で復刊されていますが、青空文庫を読める方なら無料で読むことができます。石原莞爾の戦争に関する考え方は、さすが、子供の頃から戦史や軍事史、社会科学、さらにはドイツへ留学していたので、ヨーロッパ戦史に関して、相当な研究をしていたのだなぁ～と思わせるぐらい、わかりやすく解説しているのである。この難しいことをわかりやすく説明する技術というのは、相当な勉強をして体得してからでないと、なかなか、この書物のようにはかけない。有名な一説では、制空圏の重要性。原子爆弾の予言。そして、冷戦時代の到来の予言。さらに、EU成立の予言。（ヨーロッパ共同体を正確に言い当てているのは、驚嘆しました。）また、決戦戦争と持久戦争において、交互に戦争形態が変わっていることも指摘しており、現在は、持久戦に重心があるけれども、この持久戦もロボット兵器・無人探査兵器と出現によって、戦争形態が確実に決戦戦争へと変わってきています。要するに、大将の首を真っ先にとって決着をつけるやり方へと。これは、機甲戦の提唱者であるフラーの『制限戦争指導論』の中で述べられている「戦争が平和をもたらす」ようになってきているのである。つまり、核兵器による最終戦争ができない上、それが抑止力になっている現在において、戦争の形態が総力戦からロボットを使ったピンポイント爆撃や工作員の暗殺などによって、制限戦争へと戻ってきていることを意味している。つまり、民間人が犠牲にならない最小限の攻撃へと限定しているわけだ。フラーが著書『戦争の再構成』で述べている「戦争の目的」どおりになってきているのだ。多くの戦略論に関する書物を読んでいくと、流れがわかってくる。もう戦争によって、総力戦で国民が耐え忍ぶ時代ではないのだ。総力戦こそ時代遅れになりつつあるのだ。だからこそ、フラーの、この一説の意味を我々は理解しなければいけないのである。「将来においては、戦争はよりよい平和を構築する方法としてみなされるであろうし、逆に消耗し尽くした平和を生む方法として考えることはないであろう」（参考）『名著で学ぶ戦争論』　石津朋之（編著）　日経ビジネス人文庫　P164

  2021.11.17

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  『チャップリン再入門』　大野裕之（著）　NHK出版

  仕事に疲れたときや、退屈で何もしたくない時は、私の最高のやすらぎを与えてくれるのが、チャップリン映画である。チャップリン映画に関しては、「ただ、彼の映画を見ているだけで、笑いと涙ありの、頭の中がリフレッシュできる」もので、疲れや悩みを抱いていても、彼の映画を見ていれば、「笑い飛ばしてくれる」処方箋のようなものがある。確かに、この本の著者のようにチャップリンの生い立ちや作品の作り方、構成、アイデアなど研究・分析して、それを頭に入れながら、チャップリン映画を見ても楽しめるとは思う。ただ、頭でっかちの知識をもったところで、本来の「エンターティメント」＝「人を楽しませる」ことが、チャップリン映画の最大の目的であり、そのような知識を一切なしで、ただ素直に彼の映画を見ていたほうが良いと思えるのである。夏目漱石の著作集でも同じことだ。漱石の研究でわかったことや評論を読んでから、実際に漱石の著作を読んで、「本当に面白いものなのか？」ということと同じである。チャップリン映画も「チャップリン」というステレオタイプな固定観念や評論など一切無視し、ただ、ひたすら、彼の映画を素直に見たほうが、数倍楽しめることは間違いない。この方法論は、歌謡曲の聴き方で、半田健人氏の聞き方と同じだ。最初は、普通に何の知識もなく、聞いていればいいのだ。しかし、そこから、「なぜ、このような歌詞・作曲なのか？」を深く突っ込んでいったら、彼のように自主的に研究するようになるのである。最近、半田健人君が全然、TVに出演していいのも、『サイゾー」　のこの記事を読んで、理解ができました。彼ほどの実力をもったタレントがTV出演ができないのも、もったいないですよ。チャップリン映画を何度も何度も見ていると、必ず、「なぜ、こういうストーリー展開になっているのか？」「このギャグの意味は何をいっているのか？」など、疑問を感じるはずだ。そういうときこそ、大野さんの著作集を読めばいいのである。その最初のきっかけとしてお勧めするのが、この本である。チャップリンの生い立ちから思想、映画作りの取り組み方、NG集から見たチャップリンの映画の作り方など。非常に起承転結がはっきりし、文献・引用文献など、しっかりかかれたチャップリン研究の入門書の傑作ですね。ここから、自分の知りたいチャップリンを知ることができる羅針盤のような作品でもあります。もう、この本が絶版になっているのが惜しい。日本人ほど、「熱しやすくて冷めやすい」人種ですからね。チャップリン映画も、必ず、ブームになると思いますし、世界中で、チャップリンのリバイバルブームが巻き起こるでしょう。日本も、チャップリン研究が相当発達している国です。親日家だったチャップリンも、さぞ、あちらでも喜んでいると思います。

  2021.11.16

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  『睡眠の科学・改訂新版 なぜ眠るのか なぜ目覚めるのか　改訂新版』　櫻井武 (著)　 講談社ブルーバックス)

  最近　「質の良い睡眠」が注目されはじめている。無呼吸症候群、不眠症、過労など　睡眠不足が原因で体調を崩す人が多くなっている傾向だからだろう。日本のプロ野球でも　選手時代　監督時代の落合博満さんも　著書の中で　疲れが溜まったら、「寝る」ことと　食事のバランスなど　体調管理をしっかりしないと　プロでは生きていけないと。特に　オフシーズン　どのように身体を休めるか　疲れなどを取るかも　睡眠にかかっていることを力説していた。なぜなら　落合さんは　「人間　寝ることしか疲れをとることができないから」と　断言されているのである。メジャーリーグの大谷選手も、睡眠時間は最低でも7時間から8時間は必ず取るようにしていると　NHKスペシャルの特集でも解説されていた。睡眠の重要性について　最近では多くの書籍が出てきているが　元祖は2010年の初版であるブルーバックスの『睡眠の科学』である。睡眠のメカニズムは、おおよそ脳科学の分野といってもいいだろう。20世紀は　脳科学に関しては　まだまだ序章にすぎず　21世紀から脳科学の研究の発展が凄まじく　睡眠に関する脳内物質の発見や脳ネットワークの伝達系統　脳神経細胞の詳細な研究など　かつての常識が　ことごとく塗り替わっている分野でもある。私が睡眠に関して　深く興味をもったのは　立花隆の『文明の逆説』で　「人間はどこまで睡眠を耐えることができるのか？」など素朴な疑問を理路整然とわかりやすい解説を読んでからである。人間が一番きつい拷問は「寝させないこと」「小便　大便などをさせないこと」である。特に　『寝させないという拷問』が　一番過酷らしく、精神錯乱状態になり　最終的には免疫力も落ち込み　敗血症まで死に至る。拷問器具で身体を傷つけたり、痛みを与えるよりも、非常に単純な方法＝寝させないほうが拷問は有効であることを知ったときだ。そこまで　睡眠は人間にとって　重要な働きがあるのか？と　思ってから　睡眠に関する書籍をいろいろ読みだしたわけです。この本で解説しているのは１　睡眠が記憶を強化する２　レム睡眠とノンレム睡眠の大きな違い３　視床下部が何をしているのか？　最新の研究でわかったこと４　睡眠は精神疾患に似た状況になり、精神のバランスを保つメンテナンスを行っていること５　オレキシンの発見とその展望６　睡眠をコントロールできるのかどうか？　７　なぜ　眠るのか？という素朴な疑問への仮説読めば読むほど　おもしろい。睡眠改善法というよりは　睡眠は　どのようなメカニズムなのか？睡眠は　何をしているのか？上記　睡眠メカニズムを基本から最新研究まで知ることができる　非常に参考になる本だと思います。

  2021.11.15

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  『坐骨神経痛は自分で治せる!』　酒井慎太郎（著）　学研プラス

  中年の年になってくると　身体のガタがくるものである。在宅勤務　デスクワークを長時間行っていると、運動不足やら腰痛、そして　坐骨神経痛まで引き起こしてしまいました。座っていると、「お尻が針を刺したような痛みが走る」。筋肉痛ではなく、明らかに　神経にふれて痛み信号が走っている。考えられる原因は下記である。太り過ぎ食べすぎ運動不足自宅で短パン在宅勤務になってから　通勤をしなくなったことによる運動不足は　かなり影響がある。ウエラブル　ウォッチなどで　通勤をしているときは　軽く1万歩は歩いているのに、在宅勤務になると、自宅で業務が完結し　外出もしなくなる。また　外出もしないから、服装もラフな格好で　短パン　パジャマ姿で　1日自宅にいると　身体が冷えることになる。さらに、長時間　椅子に座っていたら　お尻への負担は　相当のものだ。それらの積み重ねがたたって、お尻の筋肉　神経　また　腰痛などへつながっていくことになる。腰痛対策は、柔軟体操とストレッチ、股関節のストレッチである。特に　腰痛に対しては　下記の方法が有効だ。「机の前で足を肩幅に広げて立つ。両手も肩幅に広げて机につき、体重を腕にかけるようにする。背筋を伸ばし、顔はまっすぐ前を向いて肩とお腹の力を抜く。」そして、椅子にはジェルクッション。特に　大きな5,000円ぐらいのほうがよい。あと　首こり用に使っていた、首マッサージャーの両端を腰や観光骨のツボにあてて　寝ながら体重をかける。腰の筋肉をゴリゴリして　ほぐしていく。そして　背筋をひねったり　伸ばしたりすることである。あと、筋肉を休めるには2つ方法がある。冷やすこと温めることプロ野球でも投手が試合で投げ終わったとき　かつて　冷やす方法か　温めるか？　別れていた。現在ではアイシング（＝冷やすこと）が主流となっている。ただし、腰痛や坐骨神経痛に関しては　絶対冷やしてはいけない。温めることが重要だ。温めることとは、温泉やお風呂で身体を温めること白湯や温かい飲み物で身体を温めること服やサポーター　カイロなど補助道具で温めることこの３つである。逆に　秋から冬にかけて下記をやっている人は要注意である。冷蔵庫で冷えた　氷の飲み物や炭酸飲料冷たい食べ物薄着風呂は　ぬるめで　カラスの行水今回　『坐骨神経痛は自分で治せる』という　思い切ったタイトルの本ですが、坐骨神経痛を早期発見できている人には　有効な方法が書いています。特に　テニスボールやゴルフボールを使って　背中やお尻　足の裏でゴロゴロするのは　非常に有効のように思います。あと、ストレッチの方法も　非常に有益のように思います。なぜなら、通院していた外科医や整骨の先生からも同じように　ストレッチや体操をすすめられたからです。坐骨神経痛や腰痛を抑えるには、日頃の努力と　毎日続けることが大切です。また　日常生活でも　身体をなるべく冷やさない食生活や服装、体調管理も大事です。身体を温めることは　結局　免疫力を高めたり　心臓などの筋肉も活発化させ　かつ　睡眠導入を促すことで　長時間睡眠をも可能にします。腰痛持ちは　坐骨神経痛も発症する可能性がある。太り過ぎも　運動だけではなく　食べる量をへらす　そして　なるべく朝や午前中の食べて　昼や夜はなるべく抑えることだ。運動でカロリーをへらすことよりも　食事制限をしたほうがダイエット効果は大きい。運動など　2時間歩いても　ハンバーガー2個分のカロリー消費にしかならない。食べないほうが痩せるのは当たり前だ。そして　朝　午前中にたくさん食べて　昼　夜は抑えるほうが　体重は減りやすいのは　すでに実験で証明済みだ、なので、自分の身体は　自分でケアーできるようにしなければ　老化現象は避けられないので　早めにメンテナンスを自分で行う必要があるということは　肝に銘じないといけないでしょう。

  2021.11.14

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  『なぜ上司とは、かくも理不尽なものなのか』　菊澤研宗 (著) 　扶桑社新書

  日本の組織の閉塞状況は、全て何かしらの非合理性がある。しかし、どんなに愚かな組織でも、一流企業であっても、愚かな行動やバカ上司がはびこり、組織の硬直化や大企業病に陥るわけだ。私達が昼食で外食する時、「いきつけ」の知っているお店しかいかないのも、あえて新しいお店でまずいものを食べるリスクと、いきつけのいつも食べている料理を普通に食べることと、天秤に比べて、「リスクのない」、いきつけのお店を選ぶことと、似ている。これこそ、合理的な行動だと。その理論を、バカ上司、馬鹿社長、文句が言えない社員の関係と同じだと解説しているのが、この本なのである。つまり、組織の閉塞状況は、何かしらの合理性があるということなのだ。組織運営を行う上、日本企業や外資系の企業では、TOPダウンのマネージメントが最適だと思われるフシがある。だから、本屋では自己啓発本がはびこり、「やれ、リーダーシップだ」「やれ、マネージメントだ」、「コーチングだ」と、まぁ～サラリーマンになったことがない　自称　経済評論家や経営学者、コンサルタントがかきたてて、ベストセラーになっているのが、その表れであろうと思う。組織でも誤った方向に行ってしまえば、誰も修正するわけもなく、ただ惰性的にその組織が崩壊するリスクもある。例えれば、惰性的に嵐の海の中に、船を突っ込もうとしている状況なのが明白なのに、誰も船長に具申もせず、「船が転覆するかどうか？」を、成り行きで任せてしまうのが、今の日本の国家であり、企業だ。要するに、運命共同体で『死ぬときは一緒だ』と。その誤った進路に自滅していく船から飛び降りる社員は、やはり優秀な社員しかいないのだろうと思う。逆に、全くアホな社員ほど、会社にとどまるからこそ、運命共同体の中の一員で、船が転覆しないことを祈りながら希望的観測で「なんとかなるだろう」という甘い認識が、新たな災難を生み出す。その甘い考えが組織全体に広がり、一度、危ない状況になると、ようやくその危機意識が芽生え始め、右往左往するし、後手後手の行動になってしまい、大きな災いを起こしてしまうのが日本人の特徴ともいっていいだろう。今、日本企業、そして、国家は、まさに、この負の「合理性」の中に、「なんとなるだろう」と惰性の中で動いているわけだ。その惰性を改革する、船の方向を変えることは相当なエネルギーとコストがかかる。しかし、それらを避けていけば、組織はそのまま全滅することが避けられない。今、まさに、その最後の瀬戸際にたたされているということを私達は認識しなければいけないでしょう。何も決められない、かつリスクを負わない経営陣やエスタブリッシュメント。彼らは嵐の中に突入すれば、真っ先に救命ボートで逃げ出すにきまっている。私達は彼らの首根っこをつかまえて、道連れにする覚悟が必要だ。全滅するのが嫌なら、命令違反を行なって、組織を無理矢理にでもバカ上司と一戦交えていくしかない。その勇気と志が、今後の将来の組織の方向性を決めていくように思えます。それができなければ、潔くその組織から去ったほうが良いと私は思うのですが。出ていくも地獄。居残るのも地獄。果たして、どちらをあなたは選択しますか？

  2021.11.13

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  『パーソナリティを科学する　特性5因子であなたがわかる』　ダニエル・ネトル（著） 白揚社

  最近　ダニエル　ネトルが新刊で『幸福の意外な正体』が出てきている。ネトルといえば、『パーソナリティーを科学する』は　非常に面白い、特に人間観察が好きな人や　カジノで対面でギャンブルするときなど「パーソナリティーは行動に出る」のである。また、この本で一番注意しなくてはならないのは、巻末の「性格テスト」から行うことである。巻末の性格テストをせずに　そのまま読み進めている人が多く「ちゃんと　筆者の序章で書いているところを読め！」といいたい。なぜ　「パーソナリティーが５因子で　なぜ区別ができるのか？」ということと、「パーソナリティーの特性」かつ「なぜ　パーソナリティーが多様性になるのか？」という２つの重要な点を論証されていく。なので、「性格テスト」をやらずに　読みすすめるほど　もったいない思いをするのは確実である。この本の中で　一番おもしろいのは「人間は興味もった事柄だと、行動は制限され　動かない」。「興味のないものを　見せられたり　やらせたりすると、人間は何かしら行動的になる」という事実だ。いちばん有名なのは、校長先生の講話、演説が下手な政治家、そして授業が下手な教師ほど、聞いている人は　何かしら　じっとすることができず　なにかしらの行動を引き起こす。これは人間観察をしていると、子供でも大人でもあてはまることだし　多くの人が賛同してくれるだろう。このダニエル　ネトルの「人間の行動から　性格を特定していく」というのは『行動科学＝behavior　Science』と言われる。経済学でも　行動経済学、心理学でも行動心理学　行動分析学と言われているが、その元祖は「行動科学＝behavior　Science」である。人間や動物の行動を、観察し、行動の原因を探っていく。そして、行動のパターン化を見出すことで原因→結果を観察や統計によって導きだす帰納法的な学問である。人間観察が好きな人は、行動科学を基礎を行っているといっても過言ではない。つまり　人々の行動から「意図」や「性格」など共通性＝行動パターンを探していくことが好きな人といってもいいだろう。その共通性＝行動パターンを見つけ出したとき　知的な快感があるからこそ　人間観察が好きな人は結構多いと思います。また　ADHD(注意欠如多動性障害)とOCD（強迫性障害）の関係である。人間が狩猟時代のころ、ADHDの人間のほうが優秀だったという説が書かれている。狩猟など突拍子もない行動をすればするほど　獲物の仕留める確率は高くなるという考察はおもしろい。逆に　強迫性障害のような人間が　絶えず　細かいことや考えた筋道通りでないと不安を覚える人は、狩猟よりもワナを仕掛けて獲物を獲得する技術があれば　十分　活動的でなくても生きることができたはずだ。現代社会では非常に生きにくい性格が　原始時代では優秀な面を持ち合わせていたという逆説。現代は、狩猟経済ではない。資本主義経済を動かすためには　事務作業や肉体労働などを行うが　それは　ほぼルーティン（定型業務）か　人を動かすマネージメント　もしくは　新しい技術や美術、発明など新しいアイデアを生み出すことになっており　ADHD(注意欠如多動性障害)とOCD（強迫性障害）人たちにとっては　生きツラい社会になっているように思います。人間のパーソナリティーとは　遺伝も少し影響があり　また生まれた環境など　いろいろな要素で培われています。多様性という意味で、なぜ人間はこんなに様々な性格＝パーソナリティのある人がいるのか？というのも　人間が持つDNAの多様性が原因の１つであることは間違いなく、DNAの様々な情報をもつ意味＝生物の多様性の要因の１つとして、また、人間以外にも動物や植物にも　DNAがあるのなら、当然　それぞれの種にパーソナリティーがあるのではないか？　それも５つの要素で分けることができるのではないか？と思ってしまいます。科学的にパーソナリティーを分析するという意味で　今でも十分活用できる名著だと思います。

  2021.11.12

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  『橋爪大三郎のマルクス講義　現代を読み解く『資本論』』　橋爪大三郎（著）　（飢餓陣営叢書）

  中央大学商学部は、日本の大学では珍しく日本共産党の牙城でもあります。商学部の学生は、あまりそのことを知らなかったみたいですが、教授陣では鶴田　高田　市村など、マルクス経済学では、かなり有名教授が揃っていたと思います。なので、マルクス経済学と近代経済学をバランスよく学ぶことができる環境でした。ただ、初歩的なマルクス経済学を学んだところで、あまり意味が無いと思い、日本共産党が出している『資本論』などを読みながら考えていたことがありました。資本主義批判に関しては、「なるほど」と思う箇所が多く、ある種、階級論や唯物論、労働価値説も、「そういう考え方もあるのね」と、客観的に考えていたものでした。しかし、下北沢の古本屋で、社会学で有名だった橋爪先生の『現代思想はいま何を考えればよいのか』を発見し、ソ連崩壊の原因の根拠が、数学で証明されていた。それも、日本のロンドン大学　LSEの森嶋通夫先生が『マルクスの経済学』で証明されていたことを知り、驚嘆したことを今でも覚えています。実は私の師匠は奥村宏先生ですが、森嶋先生とも交流がありまして、いろいろお話を伺ったことがあります。さらに、毎日新聞の週刊誌　『エコノミスト』の講演会で、『ケインズは死んだのか』というお題で、神戸大学の置塩先生が、たまたま東京で講演されることになり、そこでお会いした時、森嶋先生の『マルクスの経済学』について、数学的に証明できるか？ということを、わかりやすく解説して頂いたこともありました。小室直樹先生の著書でも「マルクスが連立方程式さえ知っていれば」という解説の意味が最初全然理解できなかったのですが、要するに、規模の経済や技術革新など、現実の経済社会でマルクスの理論を演繹的に表現することは不可能である。資本、土地、労働力を投下し、一つのモノを作り出す資本、土地、労働力を投下すれば、製品、ゴミ、複数の付加価値をもつ商品が同時に出来るマルクスは、同時に製品ができる産業経済の資本主義システムを単純化しすぎたわけで、だからこそ、もし、マルクスが連立方程式を知っていれば、もっと違った資本主義批判ができたわけでして。現在のデフレ期において、単純労働、人材派遣、ブラック企業は、まさにマルクスが想定した単純な労働　経済モデルですし、彼らが労働サービスをモノして扱っていること、その状況がマルクスの資本主義批判で指摘されていることと、ズバリ的を射ているので、かなり注目されています。ただ、マルクス経済学を本当に理解するためには、「ソ連が崩壊した」＝「マルクスの理論体系が崩壊したわけです。だからこそ、マルクスの『資本論』が、必ずしも正しいわけではないという考え方をしたほうがいいでしょう。ただし、彼の資本主義批判は非常に参考にすべきものであるともいえます。彼の資本主義批判から社会福祉や銀行救済など、資本主義を是正する考え方が生まれ、その知恵を私達は享受している現実も知らないといけないでしょう。どうも、日本のマルクス系の学者は、言葉遊びばかりというか、法律解釈学のような感じがします。未だに、労働価値説を信じているんですからね。もう少し、森嶋先生の『マルクスの経済学』を、しっかり読みこなして批判できないのでしょうか？いや、数学で証明されてしまって、ソ連が崩壊してしまえば、彼らは何の反論もできないと思います。（要するに、マルクス系の学者さんは数学がお嫌いなんですよね、計量経済学では神戸大学の置塩先生ぐらいしかいなかったですし）マルクスは、よく読めば非常に面白いと思いますし、『資本論』は大学では絶対読んでおいたほうが良いと思います。特に、新日本出版のほうが読みやすいです。ただ、鵜呑みにせず、批判的に読めることができないとダメですけど、そういう体力のいる読者がお嫌いなら、橋爪先生の『労働者の味方　マルクス』をオススメします。佐藤優さんのマルクス本は、宇野系ですから、あまり参考にならないと思います。初心者の方が読んでも、多分、チンプンカンプンになってしまうことが確実です。

  2021.11.11

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  『中国社会の見えない掟─潜規則とは何か』　加藤隆則（著）　講談社現代新書

  最近、中国関係の本で、非常に説得力のある本が出てきている。「中国とは？　中国人は？」という問いには、以下の著書が参考になると思う。まずは、岡田先生の『この厄介な国　中国』、小室先生の『中国原論』、そして、富坂さんの『中国の地下経済』、そして、この加藤さんの『中国社会の見えない掟』を読めば、中国という国の概要がわかってくるはずだ。特に、中国に厳しい評論をする日本では保守系のメディアのほうがチェックすると、甘ったれた日本の左翼メディアよりも良い情報が得られるし、アメリカやイギリスの高級紙を読めば、中国の新華社通信では報道されないニュースをしっかりチェックすると良いと思う。今回は、この本を取り上げるのも、中国人の行動様式、特に「メンツ」に焦点をあてた良書。最近、日本の行動様式も「恥」よりも「メンツ」へとかわり、アメリカナイズされた行動よりも中国の行動様式に似た企業不祥事や事件が多いと思える。例えば、日本のキャリア官僚や政治家、警察組織が、この本で書かれている特異な中国人の行動様式とよく似ているのだ。冤罪事件があっても、メンツを保つために、裁判官→検察→警察へと責任のなすりあい。政治家も同様。さらに、日本の大企業でも、重大問題が発覚すれば、上部から下部への責任のなすりあい。究極の対処法はトカゲのしっぽ切りのように辞任させるか、強制的に解雇させるのは、紛れもなく中国化といってもいいのではないか？欧米の行き過ぎた個人主義が、日本でも蔓延すると、結局、中国人の行動様式や行動原理に接近しつつあると思えるのだ。特に　日本の左翼さん　若者は　もうリベラルではなく反権力や環境問題などを大義名分にした　何でも反対です！で成り立っているもので　新しい代案など出てきやしない。主張するなら　代案を出せ！と。揚げ足取るばかりで　なんの進歩もない。中国人の行動様式について、実際、筆者が中国国内で足を使って取材したこの本は、多くの中国関連の本よりも説得力があり、なおかつ、中国ウォチングする上で、非常に参考になる文献であると思います。

  2021.11.10

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  『神保町公式ガイド』　Vol.2　神田古書店連盟 (監修) メディアパルムック

  やっぱり、ネタ切れか？『神保町　公式ガイドブック　2001-2002　VOL1』　毎日ムック　で一世風靡し注目され、毎日新聞の神保町ムックよりも内容があることで、VOL2を出してきた。 結論からいえば、毎日新聞のムックと同じ方向になっている。 神保町に通う人々は、ある程度、本・音楽など　こだわりをもっている人が多いと思う。初心者をターゲットにすれば、確かに、部数は伸びるであろう。 ただ、内容がカラーページや有名人などを出しても意味が無い。これをわかっている人はわかっているのだが、わかっていない人はわかってないのである。 それは編集者が「神田神保町」というタウン誌の延長として見ているからだと思います。 はっきりいえば、このような本やムックに興味のある人は、神田神保町にあまり行けない人、もしくは、よく通っていて「こんな店があったのか？」という情報。 さらには、お店のDEEPなエピソードやお客さんとのやり取りなど思い出話。 つまり、神田神保町のことを「活字」情報で読みたいのである。 写真やカラーのページなどどうでもいい。さらに、有名人がおすすめなどどうでもいい。まだ、作家や学者、雑誌・書籍関係の編集者など神保町にいる常連さんのお客さんの本棚やおすすめの一冊のほうが、よっぽどためになる。 本といっても、文学だけではないのである。科学と呼ばれる学術系の本しかり、歴史、理工、洋書、アイドル。古地図、専門分野の書店などがあり、活字でその本屋さんの情報を知りたいということが、全然わかっていないように思えるのだ。 有名人にカネをかけて「好きな一冊」など、毎日新聞の神田神保町特集と大差はない。単なる「ぱくり」ではないか？ つまり、ネタ切れが、VOL２で、もう出てきているのである。 せっかく神田古書店連盟のから協力をもらっているのに、取材力のなさに愕然としたムックになってしまっている。 神保町の良さが伝わるというのは、情報収集力と分析・編集のセンスである。 タウン誌はタウン誌なりの方向性があるが、それなら、古書店がつくった公式本など名乗らないほうが無難であるように思える。 毎日新聞の神保町ムックもしかり、メディアパルのムックもしかり。 どんぐりの背比べですわ。どちらも　全く　神保町のムックが出版されないのも　ネタ切れか　神保町のDEEPなところを知らないからだろうなぁと思います。神保町は世界一の古本屋街なので　DEEPな世界は　まだまだ至るところにあるのにと。逆に　足繁く通っている人しかわからない　秘密基地であってほしいようにも思います。

  2021.11.09

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  『情報操作のトリック　その歴史と方法』　川上和久（著）　講談社現代新書

  最近、日本国民の情報戦での対応が　お粗末にもほどがある。なぜなら　情報発信者に対して　その情報を鵜呑みにしがちだからだ。お上意識というか　偉い人が　「なんとかしてくれるだろう」という精神と　日本の国民が情報に対する甘さをツケイルことで、情報強者　もしくは　権力者が　情報操作　世論操作を堂々と日本の社会に蔓延っている感じがするのである。日本のマスコミの情報操作や意図をもったニュースの垂れ流し。また、日本の隣国のプロパガンダ情報や日本を非難する声明、左翼系　リベラル系の反権力　環境問題など、傘にした政府批判。サブリミナル、ミランダ、クレテンダ、アナウンスメント効果、洗脳、やらせ。扇動　フェイクニュース（嘘情報）など　まぁ～　権力者や反権力者は　これでもか！いうぐらいに使ってくる。彼らが発する情報に対し　日本国民は　「裏とり」「ニュースソース」「情報検証」を行うことは　ほぼないといってよい。そして　その垂れ流したニュース　情報を検証する　サポートする情報機関　情報組織もない。新聞がまだ読まれた時代には、産経新聞と朝日新聞の記事を比較し　どっちも書いていることが　事実だとわかりやすく情報検証ができるテクニックもあったが、今は　そのような検証方法もできない。テレビはもっとひどく　淡々とニュース番組で事実を伝えればいいのに　コメンテーターやら記者やら　司会者までは　私見を言いたい放題言っている。唯一、日本のTVニュースで優秀なのは　NHKBS1の　50分から始まる10分ニュースぐらいだ。それ以外だと　テレビ東京の『ワールドビジネスサテライト』ぐらいである。この本では、社会心理学を通して、いろいろな情報操作の方法と歴史に焦点をあてているのだが、あまりにも詰め込みすぎである。この本のお触りを本格的に知りたいのなら、下記のような専門書を読まないと　全く理解できないからだ。説得ならチャルディーニの『影響力の武器』服従と権利主義支配ならミルグラムの『服従の心理』プロパガンダなら　プラトカニスの『プロパガンダ』や池田さんの『プロパガンダ戦史』サブリミナル　洗脳ならハッサンの『マインドコントロールからの脱出』や苫米地博士の『洗脳護身術』世論なら　ウォルター・リップマンフェイクニュースなら　サムウェル　ウーリーの『操作される現実』メディア論　デビットハルバースタム　『メディアの権力』などこの本　一冊で　「情報操作とは？」ということは理解できない。「情報操作とは？」を知るための　目次集　ダイジェスト版として読んでいくとよい。そして、この本で興味のあるところは　筆者はしっかり引用文献　参考文献を示しているので、メディア論　社会心理学の古典では有名なものばかりなので　それを蜘蛛の糸のようにたどっていけばよい。

  2021.11.08

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  『社会人類学―アジア諸社会の考察』　中根千枝（著）　講談社学術文庫

  先日　東京大学名誉教授だった　中根千枝先生が　お亡くなりになった。中根社会学は　日本でも金字塔となるもので　講談社現代新書など　中根先生の著書は　中高年が大学生時代に　多く読まれていたものである。が　今　中根先生の著作を読む若者はどれだけいるのだろうか？と思う。このブログでも　中根先生の『適応の条件』など紹介したが、中根先生は非常にオーソドックスで正統派の社会学者で　アジア　社会人類学の考察の業績は必見のように思います。 中根先生の研究手法も、社会学の王道の「システム論」。フィールドワークから帰納法的に解析し、ぶれない芯を見つける作業でもある。 この「システム」論は、一度、しっかり確立されれば、よほどの社会変革や混乱がなければ、「システム」自体は　よほどのことがない限り　社会変化や時が大幅に進まない限り　変わらない。 つまり、「システム」論で解明すれば、そのシステムで成り立っている諸社会の根本を知ることができるわけだ。 特に、この中根先生の『社会人類学』はアジアの諸社会の「システム」にフォーカスしたもので、アジア各国の社会の成り立ち、人々の考え方をズバリ指摘している。中根先生はインドやフィリピン　インドネシアなどの東南アジアへ行ったり　いろいろな地域をフィールドワークをし、アジア各国の社会の根本（＝システム）をあぶり出しているわけだ。 いずれにしても、今でもアジア社会の　人間関係の「システム」は劇的な変化はしていない。言い換えれば　この本は1987年に出版されたのだが、未だに、中根先生の分析、社会構成の成り立ちなどは変わっていない。 この本の中で　東南アジア地域での　人間関係の考察がすごいのである。東南アジア地域での　人間の二者関係は　その第三者を介すと何もできない。第三者が共通の知人であってもということなのである。つまり、西洋のように　A→B→Cという人間関係は　A→B　B→Cと二者関係がまず基本であり。AがCの性格を知ろうとすると　AはBが介在して「Cのことがわかったような気にさせられる」。東南アジア地域では　AはCの人間性　性格を　A→B　とB→Cの情報伝達で　A→Cで　AはBを介してCのことがわかる　もしくはAはCのことを正しくBを通して正確な情報が伝わる　もしくは動かすことが、不可能だというのが中根先生の見解なのである。例えて言うなら　アメリカのCIA工作員が　東南アジアでスパイ活動を行うとき　芋づる式に人を頼って、そのターゲットとなる張本人や首謀者　関与している人物を発見し　組織の全容を監視をすることをはじめ　もしくは調略を行う。そのため　CIA工作員は　まず　当然　現地の　協力者のネットワーク作りからはじめることになる。ネットワーク作りで情報収集　そして　ターゲットなる首謀者や重要参考人は誰なのか？に　とりかかるのだが　東南アジアでは　このやり方は必ず失敗してしまうのである。芋づる式のヒューミントは　東南アジアではまず不可能なのだ。なぜなら、東南アジアの人間関係は二者関係のみに依存しているからというのが　中根先生のこの本での見解なのである。二者関係を超えるグループ内の第三者の行動をコントロールできる特殊なネットワークは　アジアでは　家族　株仲間　封（ほう）など　非常に少ないことも　中根先生はこの本で指摘している。CIAの工作員とその協力者の関係性がいいのに　その協力者から　また別の協力者の助けをえて　重要情報や諜報活動を行う際　　CIAの工作員が意図した行動　もしくは　CIA工作員が知りたい情報が協力者の協力者から得ることは　東南アジアでは　できないというのである。別の言い方をすれば　CIAの諜報組織ネットワークは　東南アジアでは発揮されないということだ。東南アジアでの人間関係は　二者関係でなりたっているため　二者関係を超えた第三者の協力　もしくは第三者の信頼性が東南アジアでは乏しいのである。日本では　縦社会なので　よほどのコミュ障ではない限り　A→B　B→C　そして　AがCと知り合いになりBを通して　Aが期待していること　やってほしいことをBからCに依頼し　Aの意図した行動をCが行うこと　もしくは　実現することは　それほど困難なことではない。しかしである。これが日本以外の東南アジアの地域だと、うまくいかないのである。これは　東南アジア地域での　国際ビジネスで　コミュニケーションを国境を超えて行うとき　フィリピンやタイ、そして　カンボジアに行ったときに　海外の支店の特定の担当社員と　共通に知っている別の担当者がトラブルになって　日本のビジネスに影響があるときに　お願い事項を　共通の特定の海外社員を介して　お願いしても　トラブルを起こしたスタッフに　うまく情報が伝わらない　もしくは問題解決もせず　放置されることは、非常によくあるケースで　私もよく経験したことだ。つまり　東南アジアでは、この芋づる方式のネットワークが家族や株仲間　「封＝ほう」など特定の共同体のみしか通用しないことを　この本では中根先生は指摘しているわけだ。ちなみにヨーロッパやアメリカは　トラブルを起こしたスタッフの上司に対して　クレームをいえばよい。その代わり　何度もPUSHすれば　上司からその部下に指示をし　動いてくれることが多い。それは　西洋の「契約」「責任と職務」という概念があるからだと推察されます。「契約」「契約概念」の意識は　結局　キリスト教につながっているからであるということも知っておくと　ヨーロッパやアメリカとのコミュニケーションはしやすくなるものなのです。支那やアメリカの契約概念については　中根社会学を東京大学で学んだ小室直樹博士の著書に詳しいです。小室博士の社会学は　中根社会学の要素が　かなり引用されたり　解説されています。東南アジアでは　二者関係が主であり　もう一人入った三者関係以上は　お互いの関係性において断絶されてしまう。四者　五者と言う関係も困難になる。だから　東南アジアでトラブルがあったときには　まず問題を起こした張本人を見つけ出し　直接　その本人にクレームを入れるほうがいいのである。同僚や上司に「仕事でトラブルを起こしている　部下や同僚をなんとかしてくれ！」など言っても　動いてくれない　それは私の業務範囲ではないと断られるのも　そういう東南アジアの人間関係のシステムをわかっていないから　自分に跳ね返ってくるのである。 中根先生は　この本のタイトルでも『社会人類学　アジア諸社会の考察』というタイトルにしているとおり　多様なアジア社会を比較し、各国の社会システム（人間関係のシステム）を研究することで、アジア共通のシステムを見事に抽出しているわけだ。 旅行やビジネスでアジアへ行くのなら、最低限、アジア各国の社会システムや、アジア各国の考え方の違いを知らなければ、意味が無い。 こんな良書があるのに、絶版になってしまうのも、もったいないですね。

  2021.11.07

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  『ポケット版 大阪名物: なにわみやげ』　井上理津子　団田 芳子（著）　新潮文庫

  名古屋　＝　ゆかり　パステル　なめらかプリン福岡　博多　＝　チロリアン　博多通りもん神戸　＝　神戸風月堂　ゴーフル京都　＝　生八ツ橋静岡　＝　うなぎパイ北海道　＝　白い恋人　じゃがぽっくる東京　大阪のお土産というのは　なかなか定番というものがない。東京の友人が大阪出張から戻るときのお土産は「りくろう　おじさんのチーズケーキ」か、「551蓬莱のぶたまん」らしい。いかにも定番なのだが、定番のほうが当たり外れがないので、良い選択だと思う。特に　子供をもつ親ならなおさらだ。では、東京から大阪へ向かうとき　東京のお土産は何がいいか？ひよこ饅頭　東京風月堂のゴーフル　せんべい。ただし、東京の土産ほど　しっくりくるものがない。東京ばな奈　ひよこ饅頭が東京みやげの定番とも言われているが　正直　もらっている側から見れば　あまりうれしいとは思わない一番　東京みやげとして　年代を問わず　子供に喜ばれる土産がある。それは　東京ではなく、鎌倉土産で有名な　「鳩サブレー」である。鳩サブレーほど　コスパの良い土産はない。値段といい　おいしさといい　デザインといい　子供から大人まで　喜ばれる土産はないと思っています。しかし、大阪のお土産で　菓子系の土産が　ほぼない。私が子供の頃は　駅で551の隣に　ヒロタのシュークリームやシューアイスがあり、　551にするか　ヒロタにするか？　究極の選択だった。そして　パルナスのケーキ。タカラブネのシュークリーム。現在　大阪の菓子系で　百貨店にもあるのが、十三の喜八洲総本舗のみたらし団子である。十三などのお店で　おばちゃんが団子を目の前で　しっかり焼き上げてから　みたらしのタレにドボン。出来たてが一番おいしいので　土産には向かないのである。マダムシンコなど　冷えていなければ　保存もできない。常温の長距離移動には耐えることもできないし。箱がトラ柄で　見た目　大阪のおばちゃんそのもの。大阪では受けるが　地方では悪趣味のように思われるようにも。たこ焼きもそうだ。冷凍のたこ焼き、銀だこ、道頓堀の観光客が並ぶタコ焼きよりも、西成の一富久や千日前の赤鬼さんのほうが美味しい。このように、大阪みやげで　定番というものがない。ただし、この本は、その定番のお土産ではないが「大阪名物」を　非常にマニアックに調べてある。特に　大阪でおすすめの土産は　「ソース」「ポン酢」の調味料だ。ソースと言えば　関西人なら「オリバー」「イカリ」「カゴメ」以外にも「ヘルメス」「ハグルマ」「金紋」ぐらいは知っている。粉モンと言われる　お好み焼き　たこ焼き　焼きそばに関して、それらに合う調味料は関西人や大阪人は特にうるさい。また、中濃ソースなどなく、とんかつソース　ウスターソース、焼きそばソースなど使い分ける。サラダやキャベツの千切りなどは、ドレッシングやマヨネーズよりもウスターソースをかけて食べたほうがウマいという人も結構いる。ポン酢も、旭ポンズが　東京にも進出し　高知県の馬路村のポン酢しょうゆも全国展開してきている。ただ、旭ポンズ以外にも　高槻のマナ、日本橋の太政、尼崎のひろたのポン酢も有名で、これは東京では　ほとんど知られていない。また　淡路島の正金のポン酢なども　知っている人は知っている有名なポン酢だ。以前　正金のポン酢のラベルには「唐揚げ」にもあうと書かれていたぐらいだ。餃子にポン酢だけではなく　唐揚げにも　ポン酢で食べる。それだけ　近畿圏や四国のポン酢文化圏といっていいわけである。大阪名物って　中小企業や家族経営で作られて　その地域の人々に愛されて　生き残っているところが多い。意外と　私の地元の堺の　マニアックなところも調べてあり、ほぼ　同じ町内だったので　知り合いか　行きつけである。よく　地域のマニアックなところまで調べてあるなと感心するぐらい　徹底したリサーチをした大阪名物が書かれてあると思います。もし、大阪に観光するなら大阪城やUSJよりも　大阪名物巡りをされてもよいと思います。

  2021.11.06

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  『プロフェッショナルの情報術　なぜネットだけではダメなのか？』　喜多あおい（著）　祥伝社

  情報を扱うに関し、もともと、新聞記者や学者系統をめざしていたので、膨大な情報のストックを、どのようにインプットしアウトプットするのか？というのが最大の課題ではありました。人間の脳は、かなり機能的にできていまして、ある程度の記憶力を頼りに、過去どの本に何が書いてあったか？というのが、大体わかるんです。本棚をみれば、「ここにあったよなぁ～」という自分の頭の中で、理解しているんですよね。書類関係は、超整理法。そして、書籍関係は、本棚では分野別。メモ書きは、全て、PDFへスキャンして保存。今では書類関係もPDF化して、全部HDDかEVERNOTEに入れておけばいい時代になりました。その後、全部、ノートPCとバックアップ用に全部保存しておけば、検索をすれば一発で出てくる便利な時代になってきました。現在では、グーグルデスクトップのおかげで、HTMLやTEXTで書いていたものが、PCのHDDに入れておけば、一発検索できるような時代になりました。さらに、EVERNOTEやGeogelドキュメントなど、クラウドが発達し、USBメモリーを持ち歩いたり、ハンディタイプのHDDなど持ち歩かなくてもよくなってきました。クラウドもネットができなければ、意味がない。さらに、ネットがつながらなければ、バックアップシステムが必ず必要になってくる。最低でも、クラウド、自分のPC（デスクトップとノートPCの２台分）、バックアップ用HDDと、３つぐらいポケットにおかないと、大変なことになる。HDDをクラッシュして、全てのデータをぶっとばした経験のある方とそうでない方の情報管理の差は大きいと思えます。さて、今回のこの情報術。確かに、参考になるところは参考になるが、立花隆の『知のソフトウェアー』と、かぶっているところが多い。情報をどのように扱うのか？というツッコミどころか、初心者にはいいかもしれないが、「これでプロフェッショナル？」と思えるところがある。例えば、ネット情報をどのように保管するのか？というと、私は、FIREFOXの”SCRAPBOOK”を使って保存する。昔は、紙COPIもあったけど、FIREFOXのほうが使いやすい。さらに、PDFの編集なら、アドビのバカ高いソフトを使用するよりも、ジャストシステムのJUST　PDFというソフトや富士ゼロックスのDOCUWORKSを用いて編集し、それをHDDの中に入れておく。分類はフォルダーに日付を書いて、そこに入れるだけ。細かい分類などしなくていい。何でも、HDDに入れて、検索すればよい時代になったのだから。あとは、メモ書きはA6のバインダーをA6サイズの裏紙で挟んでおいて、それで書きまくる。メモ書きしてある程度たまったら、それをPDF化して、また、HDDに入れておけばいいのである。カレンダーなど、グーグルカレンダーをそのまま、紙出ししてA6サイズにはさむだけ。全部書いたら、PDF化して、それをHDDに保存していれば、年間スケジュールの根拠になる。EVERNOTEは、１ギガも有料会員に開放されている。どんなテキスト文書であろうがPDFであろうが、ここにもHDDと同じようにいれておく。EVERなど容量を超えるわけがない。あとは、バックアップのHDDに、全部コピーの上書きで入れてしまえば、おしまい。私のファイルサイズで一番大きいは、私の場合、海外の高級紙の新聞のスクラップファイルである。有料の新聞ほど、スクラップしているほうが多い。海外の新聞は全て有料会員なら、あらゆるところへアクセスできる。新聞紙との最大の違いは、この気楽にスクラップし、すぐに検索して、その記事を再度参考にするときに取り出せるか？が勝負なのである。このアクセス時間の短さが、今では断然早くなったのである。これは1995年に私が大学に通学していた時代とは、もう月とすっぽんぐらいの差である。あと、容量が大きいのは、写真などの画像ファイルと音楽ファイルだ。これが意外と、食うのである。画像ファイルなど全部RAWデータで、とってあるので、でかいのである。この著者がアイデアのひらめきについて、あまり言及なかったのが残念。PCの前でアイデアなど絶対でない。さらに、職場会議のような場所でも絶対でない。漢文で孔子のお話で、『推敲』を学んだ記憶がある。私は推敲するには、紙と鉛筆、もしくは万年筆やペンをもって、書きながら考えるほうがいい。思いつきは、突然ふってわいてくる。それをすぐにかけるメモ帳と鉛筆は絶対必要なのである。いくら、マインドマップなんか作っても、自己満足の世界だと私は思います。逆に、落書き、気楽なおしゃべりの場、ぼけ～とリラックスした状態の時、インプットした情報からアウトプットへ突然、ひらめくことがあるほうが多い。この本を読む前に、立花の『知のソフトウェアー』を読むことをおすすめする。そして、この本は立ち読み程度でよい。なぜなら、私からみれば「あたりまえ」のことしか書いていなかったからです。

  2021.11.05

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  『なぜ危機に気づけなかったのか』　マイケル・Ａ．ロベルト／飯田恒夫（著）　英治出版

  ロジカルシンキングや問題解決法、さらには、フレームワークやら、いろいろなツールが巷にはあふれていますが、この本が一番、大事なポイントをついているように思います。問題解決法よりも、問題をいかに発見し、大きな損害にならないように準備をしておくのか？そのためには、マーケティングなどの知識よりも現場をつぶさに観察し、さらには顧客と一緒に行動し、それらをフィードバックする方法のほうがよいという指摘である。これは、いくら頭で理解したところで、行動をその人が起こした時、無意識、もしくは意識的に全く頭で理解したこととは別の行動を起こすことがあるという説明は、非常に説得力がありました。私はランキングなど信じない人間なんですが、ランキングに従って、そのランキングを頼りに行動することが如何に危険であるか？ということを、この本を読んで再認識しました。例えば、格付け会社によって、投資行動が左右されるというのだが、本来、リーマンショックが発端となった住宅ローン債権をAランクに格付けされていたものだったわけだ。みんな格付け会社のAランクを信じてその債券を購入していたのに、フタをあければ、紙くずへになってしまったこと。さらに、日本航空もつぶさないだろうと思っていたら、つぶしてしまい、日本航空の株式は紙くずになってしまった。これらの教訓は、倒産や債券が紙くずになる可能性になるかもしれないという『問題』以前に、その『問題』を発見できたかどうか？に決めてだったと思います。オリンパス社のゴタゴタに関しても、せっかくウッドフォード社長が問題点を発見したのに、それを公開するどころか、非公開にし、その社長まで辞任させることは、逆に危機を煽るだけのことである。この本では、問題解決を図る前に、問題を発見する７つのスキルが詳しく述べられている。問題を正しく認識し、発見する能力があって、はじめて、問題解決への第一歩にもなるし、あらゆる問題に想定したシュミレーションや段取りへと移行できる。もし、問題を発見できずに自然発火して、加速度的に大きくなれば、いくら問題解決法をこころみても、後の祭りである。その怖さを知っているか知らないか？で、その組織の将来まで決まってしまう。これは企業だけではなく、国家も同じであろうと。

  2021.11.04

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  『無税生活』　大村大次郎（著）　ベスト新書

  みんな誰しも税金など小額がいいに決まっている。震災を利用して、消費税をあげようとしている民主党。消費税を上げたとして、たとえ、それが期間限定であったとしても、震災にあわれた人にも「消費税」をとるのか？と、問い返したい。それも、３％も上乗せしてである。最低でも、震災地域の消費税は据え置き、もしくは、経済特区として消費税を下げることにしなければいけいなのではないか？と思う。未だに　民主党の復興税が　そのままになっていることもおかしい話で、早く復興税は廃止すべきだとも思います。政治家も政治家で財務省の増税政策ばかり賛成で、竹下派が行っていた減税政策は　今の自民党には　ほぼいないのも　おかしな話で。政治家がバカであればあるほど　経済は成長するどころか　停滞　もしくは没落の一途である。原油高で　東京電力も東京電力で、電力料金の値上げを狙っている。都市ガスもそうだ。需給バランスとして、理論経済学を用いた方法なのだが、これもいさかか間違っている。需給バランスよりも、まずは電力の供給をどうするか？が先決であろう。原子力は使えないし、多額の賠償責任も負っている。国も弁償したとして、その財源はどこからとるのか？と。税金を払うことは、国民の義務であることは日本国憲法でも示されている。が、この税金の支払い方によっては、結局、税金を少なく、もしくは、払っていない人たちも多い。つまりは、ずる賢い人ほど税金は払っていないのである。そして、真面目で正直者が、どんどんと税金を支払い、しょうもない連中のためにお金をだしているわけだ。いっそのこと、全員が全員、税金を支払うことをボイコットしたらどうだろう？それか全員、白色申告してしまったほうがいいのではないか？この本では、そのようなずる賢い人が税金でどう対応しているのか？に迫ったものであり、また、どうすれば、税金を少なく支払うのか？というノウハウのようなものが書いてある。税法って、ばかばかしいほど、抜け穴が多いですし、通達も多いので、わけのわからん法律のひとつです。白鳥栄一先生や、富岡幸雄先生など税務会計や税法を学びましたけど、「ほんまにめちゃめちゃな制度やなぁ～」と。この本を読んで「こら、あかんわ」と。私なら、絶対海外で渡り鳥生活をして、税金を払わないようにすると思います。でも、サラリーマンですから、しっかりと税金がとられているわけでして。それにしても、戦前のサラリーマンは税金をとられていなかったとは。さらに、戦中に軍事費にあてがうために考え出されたのが、今サラリーマンが文句もいわずに払っている源泉徴収という制度であるということを、この本を読んで初めて知りました。おそらく、ボーナスに税金　社会保障費がかかっていない時代が、平成まであったなんて、誰も信じてくれないでしょう。なぜ　高齢者がカネをもっているのか？も。それが理由の一つです。巨悪な奴ほど　税務署　国税庁を恐れる。それは　伊丹十三監督の『マルサの女』『マルサの女　2』で　それは実証済です。だから、海外逃亡したり　海外へ資産を移したりするわけですよ　巨悪の皆さんたちは。

  2021.11.03

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  『ゆたかな社会 決定版』　J.K. ガルブレイス (著), John Kenneth Galbraith (原著), 鈴木 哲太郎 (翻訳) 　岩波現代文庫

  経済学者で一番好きな学者といえば、私は先日亡くなったガルブレイスです。異端といえば異端。正統派の理論経済学を真正面から批判し、ケインズ派の一員（この『ゆたかな社会』でもケインズの消費行動理論が参考にされている）として、また、ケネディーのときにはインド大使までなった、アウトローな経済学者かもしれません。彼の英語の文章は非常に、なめらかで読み応えのある文章です。”GREAT　CRASH”など、彼の文章を日本語で読むのなら、非常にもったいない。それほど名文家としても有名な方でした。今回は、『ゆたかな社会』。この本が出て、もう何十年も経つ本なんですが、非常に中身は新鮮です。それにガルブレイス特有の歯に着せぬ文章が、非常におもしろいです。今回、この本の最大のキーワードは何か？それは「バランス」と「通念」でしょう。彼は、この本では「バランス」の重要性を説いていると思っています。バランスが崩れたらどうなるのか？彼はこの本で予言までしているのですから。「消費における社会的バランスの問題と物的・人的資本への投資のバランスの問題との共同の遺産ともいうべき、やや想像上の問題が残っている。・・・・・・　欲望合成の過程は経済の不安定性の潜在的な源泉である。生産も雇用も社会保障も、消費者負債の造出という本質的に不安定な過程に依存している。これが崩れる日がくるかもしれない。そして、見栄による強制が衰えたり、需要を合成する能力が衰えたりすれば、消費が減退し、失業が増加し、再調整という困難な問題が起こるであろう」『同書』　P331さらに、ガルブレイスは教育は『諸刃の剣』であることも指摘しています。ただ、教育をほどこして、それが国力、さらには経済力を強くするのかどうか？というと、そうでもないということなのです。つまり、教育をすればするほど、消費性向が低くなるいう逆説。ただ、単に教育に力を入れたとして、それが、経済成長に直結しないということを示唆していることも。この本は経済学の異端の名著であることは、間違いないでしょう。ガルブレイスの訳本は、意外と多く出版されてそうで、復刊されることは、まれなのです。なぜなら、ガルブレイスの印税が高いからでそうで。日本経済新聞社がガルブレイスの書籍を復刊をしたのは、驚きでした。彼の本は、新刊で出たら、即　購入したほうがいいと思います。この『ゆたかな社会』は最終版ですからね。ガルブレイスも最後の最後までこだわって、筆をいれたらしいですから、この本は買って損はないと思います。

  2021.11.02

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  『野村の「監督ミーティング」』　橋上秀樹 (著) 　日文新書

  野村克也監督の本は、一通り読み、実際に彼の下で、どのようなことが教えられたのか？その愛弟子だった橋上さんの野村理論と実践について書かれた本がこの本である。一番印象に残ったのは「超二流」という存在だ。チームにおいて、終盤戦に、いろいろな場面がある。そのとき「左ピッチャーに強い」選手、そして「足が速くて盗塁の確率やエンドランを使ってホームまで戻ってこれる確率が高い」など、チームの中で、何か際立つ特徴をもった切り札の選手を、ゲームの終盤で監督は使いたいということがある。例えば、ヤクルト時代なら、左にめっぽう強かった著者の橋上選手。代打の切り札だった、ベテランの杉浦選手。阪神時代なら、左打者や巨人　松井に打席がまわってくれば、遠山投手。野村監督は、①超一流②一流③超二流④二流というランク分けを行っていたそうだ。野球人生を長く勤めたいなら、野村監督は「超二流になれ！！」といっていたそうである。超二流とは、チーム内での役割を自分で考え、ある分野では絶対負けないモノをもっている選手であるということだ。その能力で、勝負どころで結果を出せるようになれば、これほど頼もしい選手もいないのではないか？と。そして、、チームを勝利へと導いた功労者であることはいうまでもない。それに気が付いたものと気が付かなかったものの差が、今後の人生にも深くかかわってくる。ただ、自分の能力を過信していていると、またたくまに戦力外通告になってしまう。その具体例がヤクルト時代の苫篠選手を橋上さんはあげていた。チームが優勝するには、イチローのような選手がいても、チーム内での自分の役割を何か？を考えて、プレーしないと、ダメであるように思える。だから、野村監督は「イチローはなぁ～」と、ボヤいていることが、非常に理解できるのである。これは企業でも全く同じことだ。スーパー営業マンなどいらないのである。「会社内で自分の役割が何か？」ということを、自覚し、行動できるような社員が、たくさんいる社員のほうが、強い組織になるのと同じことだ。それを人事考課や人事で、どのように活用したり、教育していくか？ということが重要なのである。だからこそ、組織を強くするためには、一人一人の人間教育に野村監督が力を入れるのは、至極当然といえば当然なんだろうと思います。

  2021.11.01

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  『スパイはなんでも知っている』　春名幹男 (著) 　新潮社

  春名さんといえば『秘密のファイル』が、戦後史関係のおいてズバ抜けて面白い本でした。その春名さんが書いた冷戦時代のCIAの活動内容、そしてホンモノのスパイが何をしていたのか？その疑問に応えてくれたのが、この本です。本屋さんで、「これ、買おうか買うまいか？」と悩んだ時、必ず買ったほうがいいというのが私の経験則です。本屋さんには、いつでもいけるし、在庫も数ヶ月は変わらないのだが、これが半年１年となると、あったはずの本がないような事態が多い。思わず「あ、しまった、買っておけばよかった」と悔しい思いをすることのほうが多い。今でも、立花隆の『論駁』や、絶版本などが数多く、あの時購入しておけばよかったと思うことがある。ペンタゴンペーパーのサイマル出版の本は、いまだに買いそびれることが２回あり、三度目の正直があればと期待している。逆に、買ってよかったと思ったものが時間が経つと、「なんだ～、こんな内容だったのか」と後悔することが多い。よって、読書のする本として、本当に現在出版ラッシュの中で、誰が書いているのか？　どのような内容なのか？ということで、本屋で立ち読みを必ずしている。また、いろいろな新聞の書評欄を見ながら、どんな本を読もうか？という基準にしている。（最近、日本の新聞の書評欄がネットで見ることができるようになり、さらに、書評まで書いてあるので、非常に便利な時代になったものだと思っています。）今回、スパイについて書いた本がこの本であり、内容が非常に面白い。スパイの生活や成功物語、失敗物語、CIAの構造改革と、経済分野への特化によるCIAの生き残り策などがある。特に、アメリカ通商代表（USTR)とCIAの密接な関係があり、CIAが海外の企業や経済官庁の産業スパイを行っていることが、表沙汰になったのはもう過去のことだが、この本で本当にそのようなことがあると確信を持ちました。日米通商会議で、日本側の電話を盗聴していたり、何でもありの秘密工作を指揮したのはCIAであったこと。そして、旧　通産省時代にはそのことが、何気なく「なんでわかるのか？」と不思議に思っていたことがNHKで放送されていた。最近では、アメリカでは、特許技術や相手国側の通商交渉のカードとなる情報を収集、分析を行い、いかにアメリカの国益のために有利な交渉をするか？ということ大前提としているということをもう一度再確認する必要があると思います。外交面や経済問題で、水面下で必ず各国の情報機関が動いている事実。日本政府は何も情報機関をもたず、（ただし、政治面における公安警察、特に、ロシア・中国・韓国・台湾などの周辺各国の情報網やスパイ網は顕在である。これは、旧日本軍の中国や韓国の情報網の遺産はかなりのモノであり、それをアメリカが引き継いだ形だったようだ。それを公安警察とアメリカCIA　アメリカ大使館で情報共有したようなのである。これは、立花隆の『巨悪と言論』や、この本の著者である春名さんの『秘密のファイル』にある。）ただ、日本の内閣直轄の情報機関は新聞のスクラップブック作りが主目的なんて、ちゃんちゃんらおかしいです。情報収集など、今では各新聞社がネットやCD-ROMで情報検索があっというまにPCを使えば集めることができるし、まだ、スクラップをやるなら雑誌のスクラップ作りのほうがいいと思います。しかし、何を目的に内閣の情報機関はスクラップ作りをしているんでしょうか？ただやみくもにそれらを作っても、非常に無駄というか時間をかけて結果や目的が何もわからないようになってしまうと思うのですがね。（笑）CIAなど情報機関の任務は情報収集よりも、海外情勢分析と予測、そして、シュミレーションによる自国の対応でいかに国益を有利にするのか？ということが重要任務です。殺人や盗聴など違法行為による秘密工作がCIAのイメージではないところが重要です。日本の場合、秘密工作などする度胸も人材もいない状況で、いかに、EUやアメリカ、さらには中国などに対抗できるのか？と、思います。情報機関の行き過ぎた行動も問題ですが、なんの策略や戦略もなく、やみくもに日本代表として外交交渉をするのも問題ではないか？と思ってしまいます。戦略を練るには、情報の質と量が第一なんですから。今回、この本の教訓は「スパイは実際にいるし、冷戦後、かなりの人材がスパイという職から離れ、暗中模索している状態である」ということです。特に、ドイツの情報機関VSアメリカのCIA・FBIとの対立関係が、今後どうなっているのか？非常に知りたいところです。

  2021.10.31

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  『描きながら考える力 ~The Doodle Revolution~』　 サニー・ブラウン Sunni Brown (著), 壁谷さくら (翻訳) 　クロスメディア・パブリッシング(インプレス)

  最近、ダン　ロームの「BACK OF THE NAPKIN」などでビジュアルシンキングが自己啓発で、かなり採用されるようになり、その流れでTEDでも、この本の著者であるサニーブラウンがビジュアルシンキングこそ、文字・言語以上に「伝える力」があると、息巻いている。ちょっと待て。よくアイデアや思いつきなどを図解をすればよいとか、図で考えるほうがよいという自己啓発の流れには、私は真っ先に反抗をする。手帳や白紙で、いきなり絵を描くことでビジュアルシンキングなどできるのか？私には、絶対それはできない。なぜなら、知識や知恵のアウトプットは絵ではなく、文字のほうが早くアウトプットができるからだ。思いついたことを、いちいち絵で描くことで思い描くことこそ、時間がもったいないし、アイデアはすぐに忘れるものだ。学校の授業でノートをきれいにとることよりも、どこがわかっていて、どこがわかっていないのか？を区別し、わかっていないところを、汚い文字でもメモで、さらさらと書いたほうがよいのである。要するに、自分さえわかればいいわけだ。だから、トニーブラウンのマインドマップを色とりどりに丁寧に作っても時間の無駄だと私は思っています。私の場合、仕事でも、伝聞情報は白紙に書きなぐる。ポイントだけ書きなぐり、どのように順番にするのか？　抽象から具体、具体から抽象、テーマを分ける、つなげるなどしていれば、十分だ。ビジュアルシンキング関係の本の、大いなる矛盾は、本来の目的はビジュアルで伝えることが大事であることを力説をするのに、ほとんどが文字で説明していることなのである。サニーブラウンのこの著は、実はビジュアルシンキングの本ではない。多くの方は書評でも書かれているが、TEDの解説などもビジュアルシンキングの写しだけで、結局、この本の目的がわかっていない人が多すぎる。この本の最大の目的は、ビジュアルシンキングを使ったグループワークのためのものなのだ。サニーブラウンの前著は『ゲームストーミング』という本があり、グループワークのノウハウが解説されてある。この本はその延長、つまり、グループワークを行うためのビジュアルシンキングを解説した本であると私は思っています。だから、いきなり図解思考＝ビジュアル　シンキングの教科書としては、疑問をもつ方が多いのも納得である。文字というのは、論理＝ロジックで、アウトプットは速い。しかし、インプットは遅いわけだ。逆に、図解＝ビジュアルは、インプットが早い、、アウトプットは遅いという関係なのである。一人で考えるときこそ、図解よりも、文字と図形のロジックで、おおざっぱに書く。そして、そこからビジュアルで考えていくという二段階を踏んだほうがいい。まず、問題解決でも「何のために」というファンクショナル　アプローチを行う。開米さんなどの『大人の説明力』や、Jサターの『図解主義』。ここで、自分で思ったこと、聞いたこと、新しいアイデアを自分で納得したものを文字や図形、その関係性をしっかりかけるのか？がポイントなのである。それができて、初めて、ビジュアルへ伝えたいことを落とし込む。この二つの技法をもっていないと、ビジュアル　シンキングの方法論が何のために使うのか？が、わかっていないことになり、結局、わかったようなわからないような、あいまいなものになってしまうのである。図解＝ビジュアルシンキングが何の目的で行うのか？それを理解しなければ、ビジュアルシンキングなどの本を読んでも意味がないのである。

  2021.10.30

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  『クチコミはこうしてつくられる―おもしろさが伝染するバズ・マーケティング』　Emanuel Rosen (原著), 浜岡豊 (翻訳)　日本経済新聞出版社

  かなり古い作品になっていますが、クチコミを利用したバス　マーケティングの本質を書かれた本の一冊です。この本以外でも、『急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則』　（ソフトバンク文庫）『バイラル　ループ』　（講談社）バズマーケティングは、理論的には複雑ネットワーク理論が中心となります。数年前、書籍でも新刊で大ブームを起こしたのですが、複雑系やゲーム理論同様、今ではあまり取り上げられなくなってきました。ビジネスでいえば、ビックデータが流行のようですが、ビックデータも統計学で考えてみれば、大量のサンプルを高性能のコンピューターで全部　片っ端から調べていくのは、どうかな？と。なぜなら、フィッシャーの統計学を用いればビックデータほどの情報量を使わずに、ある程度の情報量で、そのデータの傾向がわかってしまうのですから。さらに、ベイズ推計を用いれば、事後確率なるものが出てきて主観的に統計を考える方法も、急激に発達しているわけですから、高いお金を出して、ビックデータを扱って分析するのもどうかな？と思います。複雑ネットワーク理論を学ぶ前には、前回紹介した、『プロパガンダ』や『群衆心理』など、社会心理学との協業も必要になってくるように思います。現在、マーケティングや広告戦略において、消費者の心に響く商品というものがあまりない。TV　CMも見ていればわかることだが、インパクト重視のCMが多く、「何を目的に広告を行なっているのか？」というものがないのである。逆に、TV　ショッピングの番組のほうが、売る商品についての詳細な長所、お客が買いたくなるような売り文句、さらに、商品を買えばもれなくついてくる「おまけ」や、セット販売など、非常に頭を使って宣伝しているので、TV　CMよりも効果的な売り方をしているように思えます。日本の自己啓発本やビジネス本の中で、バズマーケティング関係でいえば、この本を参照にしています。いわゆるタネ本というものです。日本人が書いたビジネス本は、私はほとんど購入しません。なぜなら、彼らは先進国で流行したベストセラーを洋書で、エッセンスをパクリ、その自分なりにアレンジして書いているいるのを知っているからです。また、流行した本を出版社や大前研一氏のように監訳や翻訳して、日本語訳にして売る方法もあります。つまり、日本でオリジナルで流行したビジネス本など、ほとんどないに等しい。さらには、パクリだということを知っているからです。TV番組もアメリカで流行した番組を、そのまま、日本にもってきたものが多いですし。『朝まで生テレビ』　➝　アメリカの政治討論番組のパクリ『ズームイン朝』　➝　NBCの『TODAY』のパクリ『ミリオネア』　➝　番組そのまま全部パクリ逆に、日本から輸出したもの『料理の鉄人』　➝　アメリカやEU諸国で大ブーム日本のアニメ番組やマンガ　➝　アメリカではディズニーやハリウッドの映画化のネタとしてパクられている。このように、オリジナルのコンテンツで発展したものというのは、案外少ない。何かしら、パクリパクられているわけで、そのコンテンツを上手に広めたものが、全部総取りしているような構図があるわけです。その方法論のエッセンスが、この本で詳細に書かれていることが重要なので、この本を読んで損はないと思います。

  2021.10.29

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  『21世紀の資本』　トマ・ピケティ (著), 山形浩生 (翻訳), 守岡桜 (翻訳), 森本正史 (翻訳)　みすず書房

  暇な時間にピケティの過去　話題になっている本を読んでみた。もともと、欧米の新聞・雑誌メディアがさかんに書評で書かれ、欧米でもベストセラーになっていることをうけて、日本でもかなり話題になっている。あまりの欧米諸国の人気に、いち早く、翻訳本が発売される前に『週刊　東洋経済』が真っ先に取り上げました。さすが、東洋経済。しっかり論旨を把握した上で、入門書としては一番良い解説をしていると思います。バカ学者やバカ経済評論家の入門書を買うぐらいなら、以下の『週刊東洋経済』を読んだほうが、よっぽどよい。さて、この本が書かれた経緯について、ほとんどの人が知らないので解説しておこう。まず、このピケティの論考はフランスの『リ　ベラシオン』という新聞で連載で書かれたものを加筆されたものだ。『リ　ベラシオン』といえば、このブログでも「フランス　新聞業界の葛藤について」で取り上げたのだが、中道左派で有名な新聞だ。サルトルが関わった新聞社として、知っている人は知っている新聞社で、最近、かなり部数が減ってきている。この『リ　ベラシオン』のコラムでピケティが書いていたこと＝左翼というイメージがある。しかし、、「21世紀の『資本論』だ！」と、わけのわからんことを言っているひとがいる。それは、浅はかな知識というべきものだ。なぜなら、ピケティはマルクスの『資本論』を読んでいない。『現代思想』　2015年1月臨時増刊号でピケティのインタビューではっきり述べている。つまり、マルクスの『資本論』などピケティーは一切知らないのだ。だから、マルクスの『資本論』の21世紀版などいうこと事態、ナンセンスなのである。どうも、日本の知識人ぶっている人やエセ評論家って、ピケティの言いたいことを本当にわかっているのか？ともいえる。まず、ピケティーの『21世紀の資本』を読むまえに、最低でも、ケインズ・ガルブレイス、ロバート　ライシュ、そしてハイマン・ミンスキーぐらい読んでおかないとダメでしょう。特に、ロバート・ライシュの『ワークオブネイションズ』と、ピケティの主張は、かなり重なるものがある。中間層と富の再分配における考察は、ピケティはライシュの影響があるかのようにも思えます。ライシュの本を読めば、大体、ピケティの主張と似通っているのだが、ピケティがなぜ注目されているのか？というと、莫大な裏付けとなるデータがしっかり記載され、論証しているからだ。そして、『週刊東洋経済』『現代思想』の特集を読んでから、次に高橋洋一先生の概要が参考になる。ピケティ本『21世紀の資本』は、この図11枚で理解できるこの図の中で重要なのは「アングロサクソン諸国における所得格差　1910年－2010年」だ。格差の問題に関してアメリカでは富のTOP１％の国民所得が、全体の２０％になっているという点を強調している。あと、「r＞g」だr（資本収益率）がg（経済成長率）を常に上回るという意味なのだが、これは何を意味をしているのか？資本収益率＞所得成長率で、資本収益率は４～５％である。これをわかりやすく説明しているのは労働者の賃金はゼロ成長。『21世紀の資本』が実証「例えば、投資信託やファンドなどの、資産を持っていれば年4％程度の収益を得られるということ。一方、経済成長率が1.5％とすると、所得も全体の平均で1.5％しか伸びない。となると低所得者の所得の伸びは、1％を割り込んでしまう。つまり、働いて得られる収入は、ほぼゼロ成長。ところが、資産を持っている人は、それだけで年4％ほどの収益を得られる。」しかし、先進国では国民年金や厚生年金をプールして、資産運用をしたり、各自生命保険など資産を私達はもっているわけだ。また、普通預金など銀行にあずけているのも資産だ。それを間接金融で銀行が運用しているので、結局、その利潤は銀行では、預金者に利子として分配されているわけだ。なので、資産運用をすれば年４％程度収益が得られるということ＝資本主義のシステムが全体的には機能しているともいってよい。この意味を分かる人がほとんどいない。この本から「資本主義が終わった」とか「資本主義が終焉した」とピケティは言っていないのである。もし、そんな解説本があったら、ドブに捨ててしまったほうがよい。資本収益率というのは投資から生まれる。投資・再投資がまわりにまわって利潤を得られるようになっているから、資本主義が成り立っているわけだし、資本主義が継続できている証拠でもあるのだ。ピケティは、「世界的な税引き後資本収益率と経済成長率 古代から2100年」のグラフで、税引き後の資本収益率が、21世紀にはどんどん上がってきていることに警告を発し、このままでは格差社会が大きくなると指摘している。だからこそ、富の所得再分配を強化するために累進課税の強化を主張しているわけだ。注意が必要なのは、ピケティは資本主義システムを全く否定していないことだ。そして、資本主義のシステムの中で、格差社会を拡大させないことに注目している。つまり、よくいえば、21世紀のケインズであるということなのである。もっと、大胆にいってしまえば「修正資本主義」の論考というべきだろう。ピケティがこのようなことを主張しているということは、ケインズやポストケインズの論調と非常に似ていることが重要だ。ケインズが累進課税制度を強調したのも、まさに、根本は行き過ぎた資本主義システムを修正することが大事であるということと、ピケティの主張は非常に似通っているのである。ロバート・ライシュも同じ主張をしているのだ。このようにしっかり読み込まないと、この本の価値が全くわからない。まず、ピケティの解説本は、私が推薦したの書籍以外は買わないほうがよい。なぜなら、それ以外の本は、ピケティの言いたいことを、全く理解せず解読できない人たちなのだから。よく、ピケティの解説本が書けるよな？と思うような人たちばかりだ。普通に、英語版の『21世紀の資本』が読めるので、こちらを読んだほうがずっとわかりやすい。しかし、みすず書房の山形さんの翻訳は非常に丁寧に訳されている本なので、よくぞ短時間で訳出されたことは偉大な業績だ。ただ、その翻訳を読みこなせないエセ経済学者やエセ経済評論家が日本には多いということをもっと知らないといけないだろう。たまたま、NHKも、この本について注目し、ついに​パリ白熱教室​という番組を放映しはじめた。まさに便乗商売であるが、分厚い本を読むことが嫌いな方なら、こちらを放送を視聴したほうがよっぽどためになる。なんせ、講師がピケティその人なのだから。また、岸田総理や野党の皆さんこそ　この本を精読　熟読するべきだ。この本を根拠にした政策が無いのも　彼らは　要するにこの本を読んでいないからです。こんな本さえ読みこなせない政治家の質が最低ということでしょう。

  2021.10.28

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  『国際会計基準戦争（完結編）』　磯山友幸（著）　日経BP社

  ようやく、IFRSが日本で導入されようとしている。日本で優良企業　もしくはNYSEにも上場している企業は　国際会計基準を必ず採用をしている。 国際会計基準が日本の会社似全て適用されれば、ブラック企業は間違いなく消滅する。 国際会計論を中央大学商学部会計学科で勉強させていただいた先生こそ、白鳥栄一先生だったことは幸運としかいいようがない。それも、入学当初はクラスの担任の先生でもありました。白鳥栄一先生といえば、アーサーアンダーセン日本事務所長。そして　国際会計基準委員会（IASC）の議長を務められた功績は計り知れない。国際会計基準の日本の導入に関し、大蔵省に「けんか腰」で、電話で言い争いしたという伝説が白鳥先生にはあるのだが　入学して最初のオリエンテーションで　にこにことした　心優しい　おじいちゃん先生で　朗らかで　どんな生徒にも　話しかけて　いろいろな世界の状況をはなしてくれたものでした。たまに　「お土産を買ってきてください」と　ねだる生徒にも　にににこしながら、「現地で探してみようっかぁ～」と。しかし、あとで　先生の経歴を知ったときは「こんな大先生が　担任をされてもいいのか？」と思ったほどである。まして、クラスの新入生は　白鳥先生の経歴など知るよしもなく。ただし、３年生になって　白鳥ゼミの入ゼミ希望者は超人気ゼミであり　税理士や公認会計士を目指す学生にとっては　白鳥ゼミが一番の「ブランド」だったことは言うまでもありません。私は　税務会計を学びたかったので　富岡幸雄ゼミに行くと決めていたのに　富岡先生が定年され、たまたま　奥村宏先生が中央大学にいらっしゃったので、証券市場　株式会社も面白そうだなぁ　有名な先生だしという　浅はかな理由で　奥村宏ゼミへ入ゼミしたのでした。 さて　私の師匠である奥村宏先生も、また　担任だった　白鳥栄一先生も、バブル崩壊後の日本の弊害は「政・官・財」の癒着によるトライアングル構造にあると　ともに指摘されていました。 日本の場合、会計基準も、まぁ～　ヘンテコリンなもので、大蔵省の通達、商法会計、証券取引法による会計基準、税法　税務会計など統一性が全くない。 つまり、企業のお金の流れやストックの記録が　超いい加減なのです。わかりやすくいえば、人間ドッグをして、検査結果の数値が、医者の独自の基準や病院基準で判断され、統一性のないグチャグチャ数字　検査結果になっているような状態です さらに、財務諸表の監査もいい加減。山一證券倒産の原因である飛ばしや、拓銀などの　金融恐慌の発端は　公認会計士の監査の適性意見を連発し　経営陣の不正を見逃したことで破綻したともいっていいでしょう。このことに関しては　白鳥先生の教授室でまで行き　公認会計士の監査　監査法人のチェック機能が働いていないことに、いろいろ　対面で教えて頂きました。まず　海外では　刑務所行きであることも。 また、当時の日本の会計基準のいい加減さほど、大学で勉強して思い知らされたことは言うまでもありません。これから金融資本の自由化やTPPなどで、人・物・カネ・情報が世界で飛び回ることになる。 そうなると、日本企業に投資する海外の機関投資家の力は絶大ですし、日本の優良企業の株主は海外の機関投資家や金融資本家　ファンドなどで占められるようになってきています。 まだまだ、日本は間接金融＝銀行からの融資に頼っていますが、日銀の金融緩和をやっていても、銀行は結局、融資などをせず、日銀の当座に０．１％の金利や日本国債を買って利ざやを稼ぐセコい商売をしているからこそ、公共投資頼みの景気回復しかならないことも。 日本は、なぜ、世界のルールに背くことを行うのか？ 特に、会計基準を巡っての争いは、まさに、日本企業や大蔵官僚のダメな部分を如実にあらわれています。 問題の先送り、自己保身、問題をなんとか隠そうとして、問題を逆に大きくすることなど。 まぁ～、お粗末な態度や考え方で、日本がIFRSを導入するのに１０年もかかるなんて、まさに喜劇としかいいようがありません。 その記録が、この本です。まさに　白鳥先生の国際会計基準　日本導入に対する　孤独な戦い、戦史ともいっていいと思います。この本の孤軍奮闘する白鳥先生の記述に「こんなことを　白鳥先生は、やっていたのか？」と。 もう、何度読んでも「日本の組織って、本当　同じことをして、結局、一番損する方向にしかいかないんだよな」と。 なぜ、頭の良い人達が、こんなアホな方向にするのか？と。 一瞬、この本から、ハルバースタムの『覇者の奢り』のアメリカの三大自動車会社の経営陣と全く似たようなことをしているなぁ～と思いました。 しかし、ようやく、白鳥先生の念願だった日本に国際会計基準が導入される時代になってきました。国際派の日本の公認会計士が主導権をにぎり、ようやく、世界基準の財務諸表が作られようとしています。 さらに　国際会計基準は、従業員の労働時間、福利厚生なども規定されています。そして、環境問題への対応なども明記されております。 日本のブラック企業問題や過労死などの問題は、国際会計基準や世界の投資家の目から逃れられない問題になりつつあります。 特に、大企業ほど、投資家の監視が厳しいですから、ちょっとした不祥事や労働問題によって、株式を売却される可能性もあります。 日本の中小企業でも、IFRSで銀行から借りずに、直接、世界の投資家から資金調達できるようになってくるかもしれません。 最後に、白鳥栄一先生が講義で将来の日本についておっしゃっていたことを書いておきます。 １　これからリースの時代がくる２　女性が活躍する時代になってくる３　間接金融（銀行融資）から直接金融（株式市場などで直接資金調達）へのシフトする 国際派の公認会計士として、また、大蔵省や権力、財界などにもゴマすりどころか、正論をぶつけ、堂々と戦っていく姿勢を白鳥先生から研究室でインタビューをした時に教えられたことを、今でも思い出します。 会計学科のくせに、ろくに会計学を勉強しなかったですけど、白鳥先生の国際会計論だけは、一番前の席で座って、質問などをして、しっかり、Aの評価を頂いたことは、今でも私の貴重な財産です。当時　授業でも咳きこみながらも　のど飴を食しながら　一生懸命　大教室で授業をされていました。また　在学時　1998年に白鳥先生が急遽され　お葬式に参列し　「先生のように　国際人として　一人前になれるように　がんばります。先生、ありがとうございました。」と　お別れをしたことを鮮明に覚えています。今　国際ビジネスの最前線で　世界市場を左右するエネルギー　資源業界で活躍していることを墓前に報告できればという気持ちです。

  2021.10.27

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  『南シナ海 中国海洋覇権の野望』　 ロバート.D・カプラン (著), 奥山真司 (翻訳)　講談社

  この本も２０１４年に単行本が出版され　+α文庫で　２０１６年に再刊されている。最近、国際情勢の本も日本の学者や新聞記者が書くものよりも、欧米で評価され、それを輸入されているものが多い。要するに、日本人の国際情勢に関する分析や情報収集が、いかに低いレベルであるか？ということを如実にあらわれているように思います。最近、新刊本をまとめて買うことができるようになり、興味のあるものは「まとめ買い」をしています。カプランの翻訳本がラッシュで出てきています。まさか『地政学の逆襲』まで出てくるとは思いませんでした。今、中国の動静について、各国の有力な国際情勢分析の専門家は、どのように見ているのか？そのタイムリーな話題を出してきたのが、カプランの『『南シナ海 中国海洋覇権の野望』です。南シナ海の争いは、ますます深刻化し、南シナ海に面している各国が中国の侵略に苦慮しているのがよくわかる。NHKでは、フィリピンとアメリカの南シナ海の現状について詳しく報道しているので、参考にすべきでしょう。　　　　　　　　　緊迫南シナ海　フィリピン米軍との連携強化カプランの分析は、スパイクマンやミアシャイマーなど地政学・リアリストの影響を色濃く受けているので、現実的だ。しかし、地政学者でも学者のような理論だけなら、コーリン・フリントの『現代地政学』があるのだが、入門書にはいいが、突っ込んだ内容だと、非常にもの足りない。所詮、国際政治にかかわった国家の政権中枢にいた人と、理論だけの大学教授レベルでは、格段の差があるといえる。地政学とは、所詮、パワーゲームであり、ドロドロとした国際関係である。だから、いくら、地政学の理論を学んでいても、戦略的な地政学ならコリン・グレイなど奥山真司さんの著書のほうが実証的で、誰もが国際政治を分析をするためのツールとして、彼らのほうが重宝されるだろう。逆に、理論的な考察なら、マッキンダーやスパイクマン、マハンのような古典地政学のほうが現実的だ。最近、このような古典地政学も奥山さんや自衛隊OBたちの努力で、数々復刊されたりしているし、日本語で読むことができるのは、非常に良いことだと思います。さて、カプランのこの書では、予言めいたことが様々書かれている。例えば「中国経済は崩壊している」「パックス・アメリカーナは衰退しているが、衰えがあってもアメリカは楽観的に構えてもよい体制がある」「「自由を守る最適な方法は西洋的な価値観よりもバランス　オブ　パワーだ」この著は、当然、中国やオーストラリアなどの国家首脳レベルは確実に読んでいる。特に、オーストラリアが日本と新潜水艦建造に協定を結んだことは、明らかにアボット首相はカプランのオーストラリアの戦略を受け入れていることを示している。そして、中国も、このカプランの主張に非常に積極的に受け入れ、行動へ移してきている。当然、フィリピンやアメリカも、前述したNHKの報道のようにしっかり準備をしているわけだ。しかしながら、日本は全く動けいていないし、多分、この著を読んでいないのだろうと思われる。南シナ海が、パワー　オブ　バランスの一番の中心地となる。日本の生命線こそ、この南シナ海だ。そして、南シナ海・インド洋・日本海、台湾海峡・マラッカ海峡のシーレーンがアメリカで守ることができないなら、やはり、自ら守るしかないし、同盟諸国と一緒に守っていかなければいけない。そのような考えが、今の日本の政治家や官僚　経済界がもっているのか？と思う。

  2021.10.26

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  『賢く決めるリスク思考：ビジネス・投資から、恋愛・健康・買い物まで』　ゲルト・ギーゲレンツァー（著）　インターシフト

  ゲルト・ギーゲレンツァーといえば、『リスク・リテラシーが身につく統計的思考法』などが有名だが、この本も　かなり良い本である。リスクマネージメントを行う上で、「意思決定」は重要だ。いつ　どこで　何を　どのように　いつまでに行うのか？という意思決定の連続が　リスクマネージメントで求められることが多い。正直言えば　リスクマネージメントとは　「恐怖」との戦いでもある。しかし、判断するため　行動するために　恐怖をいかに克服するか？　もしくは　思い切った判断が、経験上、結局、迅速な問題解決につながることが多い。例えば　将棋でも　AIと人間の差は「恐怖があるかないか？」である。ある局面で　AIは失敗を恐れずにドンドン手を進める。それを人間　棋士から見れば「そんなことをすれば　すぐに局面が悪化し、自玉が危なくなり　負けてしまう」と判断されることがある。これを　「この手は人間では指せないですね」という表現をする。要するに　高リスクである手は人間では指せない　または人間には恐怖があるが　AIは恐怖を感じないから指せるという表現を行うことが多い。さて、この本では　P66で　すぐに結論が書いてある、①　リスク　≠　不確実性リスク下における最良の判断は、不確実性下における最良の判断とは異なる②　経験則は役に立つ不確実な世界では　シンプルな経験則のほうが複雑な計算よりも適切な判断につながることがある。③　シンプルのほうがうまくいく複雑な問題に必ずしも複雑な解決策は必要なっわけではない。まずはシンプルな解決策を探るほうがいい。要するに　この本では　上記の３点を論証を長々とと書いているだけの話なのである。もし、投資に興味があるのなら、この本では至極まっとう投資理論を紹介している。言っていることが初心者投資家が投資するときの心構えと同じことを推奨しているし、私も　別に　RやPythonで時系列やテクニカル分析をして株式市場で有利になる　勝てるとは　これっぽっも思っていない。ただ「SP500のヴァンガードの　インデックスファンド」に入れたら良いですよというアドバイスは、ボーゲルの本の解説をしたときのように意見は変わらない。最後に　この本の最後に「リスク・リテラシー」にかかれていることは　非常に重要です。・健康リテラシー・金融リテラシー・デジタル・リスクへの対応能力上記のリスクは結局　下記の知識が必要であることをこの本でも指摘されてる。・統計的思考（特にベイズ）・経験則・リスクの心理学同じ筆者の　名著　『リスク・リテラシーが身につく統計的思考法』は、統計的思考にフォーカスをあてたものだ。経験則は　この本が詳しい。リスクの心理学なら　『リスク 不確実性の中での意思決定』　丸善出版のほうが詳しい。『ファストアンドフロー」など　行動経済学や　意思決定に関する著書も参考になる。リスクマネージメントとは、日本人が　前もってリスクを回避する　リスクが発生しても　いかに問題解決するか？ということが求められるものである。なので、ありとあらゆる経験則や知識をもっていないと対応はできません。今の時代こそ　企業では、情報サイエンティストよりも　リスクマネージメントができる人材のほうが貴重であるように思います。

  2021.10.25

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  『孤独の科学---人はなぜ寂しくなるのか』　ウィリアム・パトリック (著), ジョン・T・カシオポ (著)　河出書房新社

  2018年に河出文庫にもなった『孤独の科学』。サブタイトルが「人はなぜ寂しくなるのか」である。たまたま　１０月２３日のTBS報道特集で「コロナ禍の若者の自殺」を取り上げていたが、デフレが日本で続く中、自宅→通勤→会社→通勤→自宅により、プライベートな共同体や友人がいないと、結局　ネットやSNSに頼りがちになり、孤独化が進むことは有名な話である。2010年に『孤独の科学』の単行本を読み、いろいろと参考になる情報があり　かなり読み込みました。ただし、この本のみで『孤独』を理解することはできません。例えば　下記のような　共同体論　社会心理学　複雑ネットワーク理論　睡眠　脳科学　生物学など　かなり相関的に考えないと理解できないように思います。『空気の研究』　山本七平（著）『自殺論』　エミール　デュルケム（著）『つながり 社会的ネットワークの驚くべき力』　ニコラス・A・クリスタキス（著）『ゾウの時間　ネズミの時間』　本川達雄 （著）『脳メンテナンス』　タラスワート（著）『睡眠の科学』　櫻井 武（著）なので、この本のみで　『孤独』からの脱却や解決法など頼らないほうがよい。ただ、「孤独」に関する実験データ、仮説や推察は、この本がかなり科学的なデータを示してくれているから貴重な本なわけです。例えば、世界の人口の寿命が伸びているのは「医療の発達」「衛生管理」などあげられていますが　この本ではもっと重要な要因があげられています。それは、「週休２日制」である。休暇制度が充実している先進国（日本も　追随するようになってきましたが）は、週休２日制以外に　祝日　さらには　夏休み　クリスマス休暇など　休暇制度が充実することで、疲労回復やストレスの発散など　休む事ができる時間が確保できたことで　寿命が伸びているのだという調査結果は非常に興味深いものでした。また、逆に　孤独以外に「敵意」という感情が、不健康の原因の一つにもなるという指摘である。つまり　「敵意」とは　敵対的行動や攻撃的行動につながる不信や皮肉な考え、怒りの感情を特徴とする。　要するに　敵意を持っている人は心臓や血管が過度に反応し　この過剰な反応が動脈硬化や心臓発作のトリガーともなるのである。特に　第六章「孤独による心身の摩耗」が　非常に参考にある章である。このような結果を見れば、ストレスや敵意など　また社会的環境によって、人間は　生理的に活動的　消極的になったり　冷静になったり　熱狂したり　居心地の良い　悪いにもなる。ということは　『ゾウの時間　ネズミの時間』で指摘されている　心臓の心拍数は、どの生物でも一定の心拍数が来れば死ぬというのなら、心拍数が高い＝高血圧な人ほど早死しやすいということになる。孤独になれば、社会的環境にもよるが、ストレスや敵意などいだきやすくなり　結局　心拍数が高くなるから　不健康になりやすいという仮説もたてることができる。中高年は　孤独についての苦悩と実行機能の衰えにより　気持ちを紛らわそうとして　「喫煙や飲酒、過食、性的行動に走ることがある。また、ストレスを発散するためには、苦悩を解消し　実行の意思決定の速さが重要である。マインドフルネスや睡眠　運動などで疲労やストレス発散が可能と言われているが、この本でも指摘されていることは　「実行制御」の必要性である。「実効制御」とは、体調や日々の健康について　励ましてくれる　頼りになるメンターや友人　家族など会って　コミュニケーションを通して行うほうが　ずっと楽であろうと指摘されている。要するに　規則正しい生活をするにも　運動やストレス発散することにも　結局は社会的環境＝人付きあいで良好な共同体や人間関係が第一歩なのである。一人で　規則正しい生活やストレス発散など　生活改善など　できるわけがないのである。この本のはじめに　アフリカのことわざが記されている。「急いでいきたければ　独りで行くといい。遠くまで行きたければ、いっしょにいくことだ」この　「ことわざ」の意味は　非常に深いし、重要なことを示しているように思えます。

  2021.10.24

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  『日米開戦と情報戦』　森山優 (著) 　講談社現代新書

  静岡県立大の森山優助教授を最初に知ったのは、NHKの歴史検証番組である、​日本人はなぜ戦争へと向かったのか 第4回 ｢開戦･リーダー達の迷走｣​この番組は非常によく調べられていて、今までの山川の歴史教科書や常識、通説などをちゃぶ台返しにし、第一次資料　証言テープなどを通じて非常によく検証した歴史番組で、この番組で書かれなかったことは書籍で新潮文庫で文庫化されている。その中で「なぜ、日米開戦になったのか？」という問いに対しては新潮選書から同じく森山優先生が下記の著書のほうに詳細が書かれている。『日本はなぜ開戦に踏み切ったか―「両論併記」と「非決定」』　新潮選書この本も、第四回の「海戦　リーダー達の迷走」をもっと詳細に歴史資料を駆使して論証した画期的な作品だったが、この本で書かれていなかった各国の情報戦、各国の政策決定のプロセス、そして、最高権力者が何を考えていたのか？が、抜けており、これを補完するために書かれたのが、『日米開戦と情報戦』　（講談社現代新書）である。ゆえに、連続して読めば、なお一層日米開戦に何かあったのか？がよく理解できる。なぜ、新潮選書を出した新潮社が新潮社新書か、新潮選書で次回作として出版すればよかったのにと思う。そういうセンスが新潮社ではなく講談社のほうが上だったのだろう。さて、この本の中身についてはある程度の戦前　戦中の政治体制、軍関係など「誰が何をした　考えた」が一次資料を使って書かれている。したがい、ある程度の国際　国内政治体制や世界の指導者　その取り巻き　さらに日本の軍関係　官僚　政治家などを知っておかないとダメであろう。最低でも、日本史の教科書レベル＋有馬哲夫　早稲田大教授の著作（→特にアメリカ側の考え方）、そして、日本陸軍　海軍　外務省の人事関係の新書　文庫などを読み込んでおかないと、全く理解できないと思います。特に、軍は人事　派閥で政局を左右するものがある。また、外務省の外交工作もこの本を読めば　松岡洋右がいかに状況を大混乱させ、ワンマンプレーによって日米開戦を阻止できたチャンネルまでぶっ潰した経緯が書かれており、「やっぱり、松岡がひっかきまわしたのか！」と思える資料が数多く出てくる。日本のセクショナリズムと優柔不断さ、責任感のなさ、決定力不足が、全て先送り　両論併記、最終的には時間に追い込まれ、しぶしぶ、合意に達する。岸田さん　あなたですよ　あなた。まさに、日本の大企業病とそっくりであり、菅直人の民主党時代の福島原発の対応と全く同じであったことは特筆すべきことだと思う。日本は、このようなアホな意思決定しかできないとなれば、本当にダメだこりゃになる可能性のほうが高い。森嶋通夫先生の『没落』の予言が　が、まさに現実化しているのも　恐ろしいですね、

  2021.10.23

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  『スパイクマン地政学 『世界政治と米国の戦略』』　ニコラス・スパイクマン (著), 渡邉 公太 (翻訳)　芙蓉書房出版

  ニコラス・スパイクマンは、マッキンダーと同様、『地政学』という学問を実学　国際関係論　国際政治でアメリカのエスタブリッシュメントたちにとてつもない影響力を与えたといっても過言ではない。今でもスパイクマンはアメリカの国際政治　国際戦略・軍事戦略に重要な役割を担っているといってよい。しかし、日本の学者というかジャーナリズムは、これっぽっちも地政学の重要性について、また、国際政治の考え方の基礎であることを全くわかっていない。唯一、日本で地政学を再び広めたのはレディング大学で戦略博士号をとった奥山真司さんの皐月書房の『地政学』であることは疑いない事実である。日本の大学の学者たちは、奥山さんが日本に紹介したスパイクマンやマッキンダー、そして、コリン・グレイなど地政学を「古典地政学」『現代地政学　グローバル時代の新しいアプローチ』で名指しで非難しているケツの穴が小さい奴らだ。彼らのほうが地政学に関して、『井のなかの蛙　大海知らず』である。なぜなら、スパイクマン・マッキンダー、そしてコリン・グレイなどの「古典地政学」、さらには『戦争論』のクラウゼヴィッツの戦略論が、まだまだ国際政治の中では中心となっており、彼らの「古典地政学」と揶揄される考え方こそ、国際政治を動かす人かすキーパーソンたちが利用し、それを土台に世界戦略を考えているからだ。これらの考えこそ、「地政学」の中でも『リアリズム』と呼ばれる学派なのである。これを理解している日本の知識人は中野剛志氏ぐらいだ。（彼の『富国と強兵』という最新刊でも地政学に関し、マッキンダー・スパイクマンなど地政学が国際政治の中心であることをしっかり記述している部分がある。彼は、スパイクマンの『リアリズム』をよく理解しているし、マッキンダーも非常に深く理解しているのである。）アメリカだけではない。中国もロシアなどもマッキンダー・スパイクマンを徹底的に調べ上げた上で国際戦略　軍事作戦を決行しているのである。彼らも「リアリズム」を崇める「リアリスト」なのだ。このリアリストたちが世界を動かしているといっても過言ではない。そしてトランプ大統領の取り巻きも、当然、このスパイクマンの系譜である「リアリスト」たちなのである。だからこそ、スパイクマンの著書は地政学を学ぶ上では絶対に欠かせないのである。奥山真司さんが『平和の地政学』を訳出し、スパイクマンのオリジナルの主著である『世界政治と米国の戦略』も、おそらく奥山さんが翻訳本を出版するだろうと思っていたが、別の方が翻訳されてしまったのが残念。というのも、『平和の地政学』の結論は、スパイクマンの結論ではない。彼の秘書だったヘレン　ニコールで、彼女の結論は「米・英・ソ連」の三国関係強化であることを主張しているらだ。これは明らかに間違いだったことは冷戦で証明されているし、ジョージ・ケナンがいたからこそ、この安易なスパイクマンの秘書の結論に便乗しなかったのは救いだった。（フランクリン　ルーズベルトのソ連共産好き　スターリンに対する大幅譲歩でトンデモになったが）。さて、このスパイクマンの主著である『世界政治と米国の戦略』は、今でも十分に通用するし、実際、この本の通りに世界は動いているといっても過言ではない。はっきりいって、国際政治の予言書ともいってもいいぐらい、今でも国際紛争　政治で書かれていることが現実になっているのだ。この本の読み方は、まず結論の章から読むべきだ。読んでいて驚嘆の連続である。結論の中で、重要な一説がある。「中国が強くなればアジアにおいてその経済が浸透し間違いなく政治的意味合いをもつようになる。いずれこの水域がイギリスや米国や日本のシーパワーではなく中国のエア・パワーに支配される日が来るのは十分に予想される」同書　P218この一説でエアーパワーの重要性を説いているのである。このエアーパワーの重要性は、この時代、スパイクマンだけではない。日本では石原莞爾の『世界最終戦論』でエアーパワーの重要性を三次元＝体の戦法で示しています。さらに、このエアー・パワーは、その上にある宇宙領域まで覇権を争っている図式も理解されましょう。中国の東シナ海ではシーパワーではなく、エアー・パワーの行使を現実化しているわけです。だからこそ、無人島に飛行場を作るわけです。この意味を今の日本の政治家や官僚、学者たちはは全く理解していない。彼らこそ、スパイクマンのこの主張を絶対読むべきで中国の本当の狙いを知るべきだと思います。スパイクマンの主著を日本語訳で刊行されたことは本当に日本の知識人にとって非常に重要であり、多くの人がこの本を理解し、そしてスパイクマンの「リアリズム」が国際政治　国際戦略　覇権争いの中心となる考え方になっていることを知れ渡ってほしいと切に願います。

  2021.10.22

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  『シー・シェパードの正体』　佐々木正明 (著)　扶桑社新書

  グリーンピース・シー・シェパードなど、環境保護団体などではない。「環境テロリスト」だ。この環境テロシストは　トム　クライシーの小説にもあるように、民主党の極左リベラル崩れである。彼らは　人権もあるのなら、動物にも『人権』があるはずだと　信じて疑わない人たちであり、彼らを『アニマルライツ』主義とも呼ぶ。人を通り越し　動物にまで　過保護にすることが正義だと信じて疑わないから　厄介な存在なのである。私なら、ペンサムのように「人権とやらを　俺の目の前で見せてみろ！アニマルライツがあるというのなら、俺に　見せてみろ！」と、主張する。グリーンピースは、もともと、「非暴力抗議」を大前提としていた団体だったのに、もう、穏健な団体どころか、過激さを増してきている。これは、日本では面白い事例として、全学連や左翼過激派の歴史を知っていれば良い。左翼というのは、結構、イデオロギーや行動原理などで、いろいろと分派し、内部で内ゲバを起こすものなのである。また、統制も共産党のように一党独裁体制で、ある意味、カルト宗教団体のようなものなのである。そのグリーンピースからスピンアウトしたのが、シー・シェパードだ。非暴力では生ぬるいと、スピンアウトし、抗議相手に過激な行動を起こす団体の一つが、シー・シェパードだったわけである。最近は、活動内容が全然ニュースにもならないし、資金集めも　コロナが原因で集めることもできないポールワトソン。ICPOにも傷害罪で国際手配され、アメリカが匿っている状況なのだが　なかなかアメリカが差し出さない。もし　トランプ時代なら　交渉次第で　日本に引き渡していただろう。いまだに　ギャーギャー騒いているが　ほとんどニュースにもならなくなったということは　もう過去の栄光になってしまったといっていいだろう。あと、シー・シェパードのウェブページを、どれだけの人が見ているのであろう？そして、シー・シェパードの中に、日本人もいる。なぜ、彼らがいるのか？とも。シー・シェパードは、募集要項でも、ボランティアなのである。さらに、怪我をしようが、全て自己責任で、治療費さえも払われないのである。要するに、「いいように使われて、いいように捨てられる」ネジのようなものだ。それでも入ってしまうのは、自分で考える力がないからであろうと思う。または、カルト宗教のように「マインドコントロール」されて洗脳されてしまっているからか、どちらかであろうと。今まで、日本政府は左翼の過激派、オウムなどの過激なカルト集団など、相対してきていたのだが、今では、海外の過激派に対してもその経験を活かせばいいのに、後継者も育てず温室育ちで育ってきた官僚や政治家には何をしていいのか？　わからないのであろう。民主党の某首相も、左翼あがりの市民運動家だが、アジるだけアジて、自分が不利になれば逃げ出す。それか、意地でも権力にしがみつく。SS代表のポールワトソンも、同じような人物のように思える。また、マイケル・クライトンは「エコ　テロリズム」に対して、先見的な予言めいた作品を書いている。特に、中国や韓国などのアジア圏、そして、各国の保守派（保守派は、結構捕鯨に関して、理解されている）ことが多い。孤立主義（自国のことは自国でやればいい、外国のことなど口をはさむな！！という考えが多いからだ。例えば、「エコテロリズム」であると指摘する欧米のメディアは、かなりある。『ウォールストリートジャーナル』や『ワシントン・ポスト』などである。いわゆるアメリカ保守主義のメディアである。逆に、リベラルほどグローバリズムの考え方なので、反捕鯨の考え方が多いのである。ハリウッド俳優やセレブ、リベラルな『ロサンゼルス　タイムズ』などのメディアは、反捕鯨派として有名で資金提供や、理解不能な論調が多い。シー・シェパードとは、どんな団体なのか？日本の書籍でも、それに関してなかなか良い作品がなかったが、『エコ　テロリズム』同様、おすすめの本です。

  2021.10.21

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  『修養』　 新渡戸稲造（著）　角川ソフィア文庫

  何か自分に対して自信がなくなった時、不安なことが思い募る時、立花隆の『青春漂流』と、新渡戸稲造先生の著書を読むことが多い。明治期の啓蒙書は、前回紹介した中村正直の『西国立志伝』も大変な名著であったし、新渡戸稲造先生の『自警録』もそうだ。最近、明治期の啓蒙書や思想書を読むことが多い。人間性、生き方、思想、そして、日本人としての考え方が彼らが重要な役割を果たしてきたし、その影響力は絶大であったであろうと。「なぜ、明治維新と呼ばれる革命が成功したのか？」というのも、士農工商で縛られていた階級社会が崩れ去り、平民による新たな社会階級の誕生によって、多くの傑出した人が「適材適所」で活躍されたからではなかろうか？と思う。『修養』は、どの部分を読んでも、稲造先生の経験からズバリと「こうすればよい」と断言されているのだが、問答無用、「おっしゃるとおりでございます」と。志のある人間になるためには？決意・持続力こそ、花開く克己心（野村克也監督が、よくこの言葉を用いられる）「カネ・体力・知力・徳」の貯蓄法読書術人生目標のコツ目次を見ただけで、「何度も読み返したい本」でもあります。一番印象の残ったところは、逆境と順境により、人の態度はコロコロ変わる。それは、今、自分が逆境時に支えてくれる人、今まで付き合ってきた人が急に遠ざかっていく人たちの差がよくわかる。人生においては「逆境の時こそ、助けてくれる友」がいるかいないか？今の私には、その状況でも大きな支えとなって心配してくれる友人がいることこそ、大きな財産だし、彼らに甘えず、自ら自分の人生をもう一度切り開いていこうという気持ちをもって、前へ進んでいこうと思っています。何か、思いつめたこと、不安なことがあれば、新渡戸稲造先生に書を通して、教えを請い、「自分が社会のために何ができるのか？」を、問いなおしてみたいと思っています。温故知新。明治の大先生の本は、本当に素晴らしい書が多いです。それは、彼らの苦労や経験、そして、後世の日本人のためにという目的があったからではないか？と思っています。また、新渡戸稲造はアントニオ猪木と同じ教訓　語録をいっている。「元気があれば何でもできる」また、この　『修養』の第13章のタイトルは「道」である。この本で一番おもしろい章だ。なにか迷ったり　つまづいたり　生き方を考え直すには　新渡戸稲造の本を読めば良いと思います。

  2021.10.20

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  『台湾に生きている「日本」』　片倉佳史（著）　祥伝社新書

  台湾に旅行へ行くと、必ず　日本がある。それも、昭和を感じさせるものが多い。私と台湾の関係は深く、外資系のアジア本部が台湾にあったり、海外の英語語学学校の友人が台湾人だったり、さらには　親戚まで台湾の人のつながりも。なので、時間があれば　ちょくちょく台湾の台北　台中　台南へ旅行へ行くこともある。台湾を旅行をしていると　必ずといっていいほど、戦前の日本の建築物に出会うことが多い。なぜか　懐かしさと、昭和　大正　明治時代のレトロを感じさせるものが多いのである。台北だけでも　台湾総督府。台湾大学。特に　台湾総督府周辺を散歩していると、「あ　これは日本の戦前の建物だなぁ」と感じるものが非常に多く存在する。そして、台湾は温泉天国なので、温泉宿も日本風のものが　まだ残っているものがあり、和風旅館まで現存するのである。なので、たまたま　新書をCHECKていると、この片倉さんの『台湾に生きている「日本」』に出てくる建築物や鉄道関係に「あ、そうそう　これこれ」と　今まで台湾旅行で発見した　日本をおさらいする、もしくは　まだ見たことがない台湾の中の日本も紹介されているので、それを見たさに　台湾旅行の目的地にすることもある。例えば、彰化扇形庫台中駅集集線彰化扇形庫は　京都の梅小路と同じように扇形車庫で　まさに昭和。また、台中駅も　新しい駅舎になり、旧軌道で気動車に乗車できた時代がなつかしいです。高架橋だと　なんか味がない。集集線は、戦前養昭和のノスタルジックな雰囲気を感じるには最高のローカル線です。また、日月潭もいいところで、台湾旅行でも穴場でもあり、楽しめます。

  2021.10.19

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  『リフレッシュ安全衛生委員会　事例にみるキーポイント33』　中央労働災害防止協会（編）中央労働災害防止協会

  各企業で、50人以上の事業所には衛生委員会の設置義務が　労働安全衛生法　第18条で定められている。いろいろな企業を転職してみて、衛生委員会が形骸化されているところと、しっかり機能しているところの差が激しい。安全衛生委員会も同様である。リスクマネージメント部にいるため、各拠点の安全衛生委員会の活動状況や取りまとめを行う立場なので　運営方法や形骸化、マンネリ化しないように　いろいろな工夫や活動内容をCHECKすることを行ってきました。具体的に　安全衛生委員会で何をしなければいけないのか？　活性化するには、どうするのか？出席率の確認議事録のCHECK月1度の安全衛生委員会でも、前もって、年間計画や議題の落とし込み、産業医との調整など　準備でも一苦労する。しかし、安全衛生委員会がしっかり機能している企業や事業所は、信頼できる企業であると断言してもよい。なので、取引先の選定などを行う上で、安全衛生委員会が機能しているかどうか？を　CHECK項目として入れるといいだろう。安全衛生委員会の議事運営、活動内容　年間計画　および、運営しているときの問題点や改善点に関し、専門書　参考書は　新書や単行本レベルでは　ほとんどない。冊子で発行されているものに、下記3点ぐらいである。『安全衛生委員会の進め方、活かし方』　中央労働災害防止協会『リフレッシュ安全衛生委員会　事例にみるキーポイント33』中央労働災害防止協会『生きた安全衛生委員会の運営のために』　産業医学振興財団冊子レベルしか出版されていないということは、安全衛生委員会が　いかに軽んじられているか？が　よくわかる。今回紹介する　『リフレッシュ安全衛生委員会　事例にみるキーポイント33』は、一番美味しい部分は「安全衛生委員会　活性化　チェックリスト」である。また、組織図、ガイドラインの設定、事前打ち合わせなど　しっかりとしたテンプレートがある。よく　ISO45001で監査される文書類群は、ほぼ　この冊子のテンプレート分をうまくまとめることができれば、良いのである。国際基準の労働安全性基準であるISO45001よりも、日本の労働基準法　労働安全衛生法のほうが　はるかに安全　衛生レベルは　段違いに上である。なので、HSSE関係でISO45001の認証など、日本の労働基準法や労働安全衛生法に従った安全衛生委員会や安全衛生活動、ならびに　監査　記録をしっかり行っていれば　簡単に認証できてしまうといっても過言ではない。よく、ISO45001の認証について　ガイドラインに従えと、外資系の本社サイドから言われるが「日本の労働法のほうが　国際規格である　ISO45001よりも、はるかに上の安全衛生の基準レベルにあるので　問題ない」と回答をしている。実際、日本の安全衛生法の翻訳版を外国の本社に送ったことがあるが、「日本の安全レベルは　ここまでするのか？」と驚かれることもあるぐらいだ。また、指差し確認など　日本独自の安全文化もある。安全衛生活動に関して、日本の労働法　労働安全衛生法をしっかり遵守する活動を継続することで、世界レベルを　はるかに超えた安全衛生活動を行っていることをもっと知ったほうがよいように思います。これから、労働基準監督署は、安全衛生委員会の活動　議事録の査察、ならぶに　働き方改革方に基づく　有給休暇の未消化に対する罰金など、規制強化、特別査察の強化を行ってくるはずである。そのため、安全衛生委員会や産業医との連携をしっかり行う企業でないと、労基署から足元をすくわれる罰金　罰則が課させられる時代になることを　会社の経営陣は肝に銘じたほうがよいと思います。

  2021.10.18

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  『財政破綻の嘘を暴く』　高橋洋一（著）　平凡社新書

  財務事務次官が　ここまでアホだとは。『文藝春秋』の2021年11月号の「財務次官、モノ申す「このままでは国家財政は破綻する」のことである。​https://news.yahoo.co.jp/articles/c1736994977179b941f522435cf7368969eed185​何を隠そう、　私は、会計学　学士です。また、中央大学で、「公会計」制度が、複式簿記ではなく単式簿記（要するに　お小遣い帳や家計簿レベルの経理帳簿の書き方　ルール）で行っていると講義されたとき、驚嘆したことを覚えています。なぜ、世界中の国々では　国家財政をバランスシート　B/Sを作成することが当たり前なのに、日本の公会計だけ単式簿記を維持しているとは。（明治政府時代は複式簿記を採用していたそうですが）大蔵省　財務省が「B/S　バランスシートも知らない」ということを最初に知ったのは、数十年前　高橋洋一先生がお辞めになり、彼が財務官僚で　財務省時代の裏話を話していてくれたとき。まさか、東大法学部卒が　日商簿記３級レベルの知識もないとは。また、今回の事務次官は一橋大卒。一橋大　商学部は会計学でも有名で、まさか、一橋大の経済学部で　会計学や簿記の講義もなかったのか？と思うほどである、あと、国家予算は、一般会計　特別会計などがあり、財務省が「財政破綻する！！」という主張は、ほぼ一般財政の赤字のみ示して主張するのみである。しかし、特別会計で使わなかったカネは？　一般会計で予算をたてて使わなかったカネは？また。国が保有している現金化できる資産は？　現金化できなくても　借金するための担保は？　など、全く知られていないのが実情なのである。企業経営者で、B/S（バランスシート）、P/L（損益計算書）、キャッシュフロー会計の分析　読み方ができないと、経営者失格である。要するに、企業経営で会社の資産、負債、収益、費用、現金保有額は、この３つの指標がないと会社の財務状態が良いのか悪いのか？　投資をすべきか　抑えるべきなのか？　利益は黒字なのか赤字なのか？が　わからないのである。企業では連結会計でグループ企業の（連結会計も、グループ会社＜50％を超える子会社など＞、の財政指標も重要で、国も同様に、日本国全体の中央官庁の資産　負債をまとめたものが下記である。要するに　負債があるが、資産も負債と同様の金額があるので、赤字ではない。バランスシートの見方は、資産＞負債だと、黒字（利益）がある資産＜負債であると赤字（負債がある）と考えるのである。下記の日本銀行券　450兆円は、負債の部に入れているが　別に負債ではない。日本銀行が発行した銀行券を日本政府が借り受けて　利子をつけて返す必要がないからだ。もし　日本政府が日銀から発行された日本銀行券を償還してしまえば、日本銀行券は日本政府が独り占めし、日本国内に日本銀行券が流通しない状態になってしまう。そうなると、日本国民はお金　現金が使えない状態になってしまうわけだ。なので、日本国が日本銀行券の信用を付与するために、便宜的に　負債の部に入れているだけなのである。だから、銀行券の負債の部は無視してもよい。高橋洋一　国会公聴会で話した「アベノミクス擁護」の理由​https://diamond.jp/articles/-/160837?page=7​まさか、国家予算の　資産の部をすっ飛ばして、負債の部だけ見せて、「日本が借金かかえて　財政破綻します！」など、会計学　学士は　もとより、日商簿記３級レベルでも「アホですね」と一喝して終わりである。もし、財務省が財務破綻をするというのなら、資産の部が　とんでもなく低い金額で　負債の部が資産よりも大きい場合のことを指す。つまり　下記の図の青枠の部分が「純負債額」である。もし、財務省が、下記の図のように負債の部が大きく膨れて、純負債額が大きくなっています！というのなら、まだ話はわかる。だが、そうなっていないのである。あと、日本の財務省は、「日本の国債はデフォルトしない」と下記　「外国格付け会社宛て意見書要旨等について」（財務省）に、しっかり表明している。これを書いたのは、財務官僚時代の高橋洋一先生である。注）　この要旨は、高橋先生の私見　個人的な意見ではなく　これは財務省全体の総意で作られているので　日本国政府の公式見解であることが重要）​​外国格付け会社宛意見書要旨等について（財務省）​​この本で、面白いのは　減税の際によく言われる「財源は？」という問いに「特別会計の埋蔵金」があることだ。具体的には　下記の特別会計は、積み立てているのに使っていないのである。おおよそ特別会計の「外国為替特別会計」＝20兆円特別会計の「労働保険特別会計」＝5兆円特別会計の「財政投融資特別会計」＝4.8兆円あと、民主党がどさくさまぐれにいれた復興税＝毎年4000億円　累積で9兆円まだまだ、埋蔵金は掘れば掘るほど出てくる可能性が高いのである。なぜ、この件を予算委員会で政治家は指摘できないのか？というのも、要するに、国家財政の基本である国家予算のバランスシートが公にされていないこと。そして、政治家は国家財政を全く把握する指標となる情報さえ理解できない　いや知らないからということになる。なので、政治家がばら撒くというのなら、累積された埋蔵金からドンドンばら撒けばいいのである。さらに、赤字国債ではなく建設国債を発行し、社会インフラ、港湾　空港　道路　水道管　河川治水　ガス管　電線　情報通信技術　通信回線　通信衛星増強、宇宙開発、通信セキュリティ、国有林維持　橋梁　トンネル　ダム建設やメンテナンスなどににつかえばいいのである。土建屋や素材産業　鉄鋼業など　ドンドン　公共投資をすればいいのである。別に　建設国債をどんどん発行したところで　建設国債は国の借金ではないため、世界中の国からだぶついたお金や　民間の日本の銀行が金融緩和でダブついたお金、高齢者のタンス預金から　お金を集めることができる、建設国債なので利子をつけて還元できるのである。もし　これらを税金で行えという　バカ財務次官の主張通りにするのは馬鹿　阿呆である。財政法という法律で将来の先行投資は国債で行うことが明記されているからだ。財務省の事務方TOPが財政法も知らないとは。よく　TOPが務まるものだ。建設国債が駄目でも赤字国債で　将来設備投資を財政法に従い　粛々と行えばいいのである。なぜなら、日本国債は破綻する確率がCDSや円ドル為替　日本国債の長期金利の指標を見れば　破綻するなどありえないからだ。社会インフラこそ、私達の生活や経済成長にかかせないものだ。新しく作るだけではなく　維持する費用　新しく交換することで、あと100年　国家が維持できる基盤を作ることで、初めて経済成長　景気がよくなるのである。マクロ経済学＝ケインズ経済学の基本、有効需要論や乗数効果を知っていれば　ごく当たり前の経済政策なのに、こういうことを考えることができない政治家　官僚がいないことこそ、日本の没落を加速させる一因なのだろうと思います。ま、岸田内閣では、上記のような経済政策はしないでしょうけどね。

  2021.10.17

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  『歌謡曲の構造』　小泉文夫（著）　平凡社ライブラリー

  高校時代から音楽フリークの奴らに　言ってきたことがある。「昭和歌謡曲　ナメるなよ！」。1990年代　時代は渋谷系、ユーロビート、テクノサウンドなど一世風靡をし、昭和ムード歌謡　昭和歌謡曲よりも「かっこいい」「踊れる」曲、もしくは、シンガーソングライターで　身の丈を歌詞にすることで共感を抱かせる曲、最後には小室哲哉の台頭で、なんでもかんでも　ループ調。この小室哲哉のループ調を　完全にパロディー化したのが、ユニコーンの『大迷惑』であることを知る人もいない。一番記憶に新しいのは　由紀さおり＆ピンク・マルティーニ『1969』、日本の歌謡曲でiTunes全米ジャズチャートで1位獲得である。最近、由紀さおりの歌謡曲が”COOL　JAPAN”ブームにのっかって、イケイケドンドンで売れに売れまくっていた。世界でようやく日本の歌謡曲が50年ぶりに認められたともいえよう。そう、ビルボード総合チャート第一位をとった坂本九の『上を向いて歩こう』＝”SUKIYAKI"から50年もかかって、ようやく、日本の歌謡曲の良さが認められたことになる。歌謡曲と演歌、さらにはJ-POPなどとは、全く異質なものだ。歌謡曲は歌謡曲。この本の著者である小泉文夫先生は、何を隠そう　坂本龍一の先生だった人である。小泉先生の音楽の解説は本当に面白い。平凡社ライブラリーの『歌謡曲の構造』で、歌謡曲の面白さを明らかにしているが、歌謡曲にはオリジナル音階なるものがあるのである。演歌は7・5調沖縄民謡でも「琉球音階」があるように、日本の歌謡曲にもオリジナルの音階があるわけなのだ。小泉先生は、その起源を平安時代の音楽。そして、今でも伝承している日本の「わらべうた」によく似ているということを指摘をされています。演歌と歌謡曲の違いは、阿久悠先生がTVで解説したように　歌詞を「五・七調にするかどうか？」になる。音階も、結構、演歌と歌謡曲では全然違うのだが、どうも、同じと思っている人が非常に多い。私の世代なら、ちょうどアイドル歌謡曲がまだ生きていた時代。そう、アイドル歌謡なら　沢田研二、ピンクレディーやキャンディーズ全盛。そして昭和ムード歌謡なら　クールファイブ、フランク永井、ロス・プリモス、年少の頃、歌謡曲をつぶやいていた時代である。歌謡曲の洗礼を受けた時代に私は生きてきました。昭和歌謡曲の良さというものを享受できた最後の世代になるかもしれません。これ以降、アイドル歌謡やジャニーズやJ-POP、シンガーソングライター、シンセサイザーやシーケンサーに打ち込みによる、循環コード多用、さらには洋楽や日本のヒット曲の「パクリ」まがいものが徐々に増えていき、オリジナリティーに欠けるデジタルサウンドへ進んでいきました。最近、日本の曲が売れないのも「それは、ヒット曲が同じ作りのものばかりでしょ？」と。デジタルデータのように「大量生産・大量消費」で、名曲・名作詞が生まれないのも。昭和の懐メロばかりTVやラジオ放送しているほうが多いのではないでしょうか？歌謡曲やアイドル歌謡については、こちらの記事を参考にしただければ、かなり細かいところまで歌謡曲については、わかるように説明をしています。一番おいしい部分は　最後の最後、『年表・戦後ヒットソング小史』である。ヒットソングにはある程度の理屈があるし、流行の音階がある。だから、「歌謡曲をナメるなよ！」というのは　結局　日本人は日本のオリジナルの音階が　古くから心地よいと感じるDNAをもっているとしか思えないほど、ある程度のヒットの法則性があることを　この本を読んでわかるのである。逆に言えば、今の流行歌は　この法則性から逸脱しているか　もしくは　全く　日本人のDNAに心を打たない曲調だから　日本の音楽が売れないといっても言い過ぎではないと思います。昭和歌謡を若者が注目されているのも　斬新さではなく　心に残る「何か」があるのだろうと。

  2021.10.16

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  『その病気、市販薬で治せます』　久里建人（著）　新潮新書

  最近、薬局　薬店で、いろいろな薬が購入できるようになった。薬局＝薬剤師が常駐しているお店薬店＝薬剤師がいない市販薬のみ販売している店今までは、医者から処方箋を書いてもらい　薬局で提供される薬のほうが　健康保険が利用でき　効き目も強いものが多かった。しかし、最近では市販薬でも　薬局で提供されるような効き目のある薬が出てきている。巻頭で、風邪薬の話が出てくる。風邪薬に関して、特効薬はない。この事実を知っている人は　案外少ない。そもそも　ガゼの原因は　今でもわからないのである。おそらく　カゼの特効薬を作れば　ノーベル賞は間違いない。また、カゼごときで抗生物質など処方箋で書く医者は「ヤブ医者」のレッテルを貼っても良い。だが　カゼによく似た　マイコプラズマ肺炎や逆流性食道炎で咳をこじらせる場合は　別の処方箋が必要だ。医者は　どの症状なのか？を　見極めが行えるかどうか？が、名医かどうかの基準といっていいだろう。もし市販薬を購入するなら、医者の助けを借りずに　自分で　自らの症状を把握する必要がある。その症状にあわない市販薬を飲んでしまうと、とんでもないリスクが可能性もあるわけだ。だから、たとえ　薬剤師がいる薬局で　市販薬の相談をしたとしても　自分の症状にあわない市販薬を選択してしまうリスクもあると考えたほうがいいだろう。私の母は花粉症なので、病院へいき　処方箋の花粉症薬を飲んでも　市販薬の花粉症を飲んでも同じ効き目であることを　よく言っていた。最初　効き目が同じであるわけがないと思ったが　よくよく調べてみると　「アレグラ」が市販薬として販売し　それを母が購入していたので同じ効能とわかったわけである。また、花粉症の薬は１日１回でいいものと　１日数回　飲まなければいけないものがある。花粉症で効き目のあるのは１日１回の市販の花粉症薬であることはあまり知られていない。かつ　花粉症の症状や　体質によってあうものと　あわない市販の花粉症薬もある。なので　市販薬の花粉症の場合　最初は　個数が最小ロットのものを購入し　自分に効き目があるかどうか確認することが一番重要なのである。効き目がなければ、はっきりいえば、用なしの薬になってしまうが仕方がない。これは　市販薬以外に　薬局で購入する薬も同様である。これをわかっていないので、効き目がないと文句を言う人もいるが、効き目がない　あるいは　人によって違うから　いかに自分にあった薬を探し出すかか重要ということになるのである。この件で　一番わかりやすいのは　頭痛薬である。頭痛薬では日本市場では3大巨頭は下記である。バファリン（＝アスピリン）イヴロキソニン上記３つ中で　自分の体質にあう頭痛薬　鎮痛薬を試された方は　ほとんどいないだろう。なぜなら、家庭の常備薬は「これ！」と　すでに決めてあり　他の市販薬を試すことがほとんどないからである。ちなみに　私はイブが一番体質にあっていることを　高校時代　首コリによる頭痛で　処方箋や市販されている鎮痛剤をいろいろ試してわかったことなので、イブしか買っていない。当然、母もイブしか飲んでいない。これも比較した結果の選択である。ただし、鎮痛薬にも　アスピリン　バファリンは同じ薬であることも知られていないし、アスピリンは　実は　高血圧や心臓病　脳梗塞など予防的に効く薬であることも　あまり知られていない。つまり　鎮痛剤でも効能が違うのである。イヴ　ロキソニン　＝　高血圧を増長させるアスピリン　バファリン　＝　高血圧を下げる　脳梗塞の予防薬にも活用されている今まで　市販薬でも、同じ効能と思われていたものが、他の効能に関して　全く反対の効能をもつものもあるのである。だからこそ、市販薬でも　薬剤師に質問するよりも　くずり辞典をひっぱり出して、その薬の効能をしっかり調べることも必要になってくるのである。この本では　ここまで突っ込んで　薬の効能を全て説明しきれていない。ただし、市販薬でも、医者で処方箋をもらって薬局で購入する薬と　同等の効能がある薬がドンドン出てきている。また　ジェネリック医薬品も出てきている。医者は自分が病気になったとき、ジェネリック医薬品は使わない人が多い。彼らは正規品とジェネリックの効能の違いを知っているためだ。ジェネリック医薬品は正規品と同じではないことも重要だ。安いにも理由があるのである。この本は　その市販薬のどんな効能があるのか？という「入り口」としての入門書として参考にはなる。ただし　入門書の類なので、より深く知りたいなら　やはり　薬の辞典を購入したほうがよい。医者も薬の効能をあまり知らないので、薬の辞典を患者の前で調べて、処方箋を決定する医者のほうが信頼できる。調べず、そのまま今までの経験で処方箋を出す医者のほうがリスクがあるように思います。

  2021.10.15

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