2021.10.24

『孤独の科学---人はなぜ寂しくなるのか』 ウィリアム・パトリック (著), ジョン・T・カシオポ (著) 河出書房新社

カテゴリ:読書日記


2018年に河出文庫にもなった『孤独の科学』。

サブタイトルが「人はなぜ寂しくなるのか」である。

たまたま 10月23日のTBS報道特集で「コロナ禍の若者の自殺」を取り上げていたが、デフレが日本で続く中、自宅→通勤→会社→通勤→自宅により、プライベートな共同体や友人がいないと、結局 ネットやSNSに頼りがちになり、孤独化が進むことは有名な話である。

2010年に『孤独の科学』の単行本を読み、いろいろと参考になる情報があり かなり読み込みました。

ただし、この本のみで『孤独』を理解することはできません。

例えば 下記のような 共同体論 社会心理学 複雑ネットワーク理論 睡眠 脳科学 生物学など かなり相関的に考えないと理解できないように思います。

『空気の研究』 山本七平(著)
『自殺論』 エミール デュルケム(著)
『つながり 社会的ネットワークの驚くべき力』 ニコラス・A・クリスタキス(著)
『ゾウの時間 ネズミの時間』 本川達雄 (著)
『脳メンテナンス』 タラスワート(著)
『睡眠の科学』 櫻井 武(著)


なので、この本のみで 『孤独』からの脱却や解決法など頼らないほうがよい。

ただ、「孤独」に関する実験データ、仮説や推察は、この本がかなり科学的なデータを示してくれているから貴重な本なわけです。

例えば、世界の人口の寿命が伸びているのは「医療の発達」「衛生管理」などあげられていますが この本ではもっと重要な要因があげられています。

それは、「週休2日制」である。

休暇制度が充実している先進国(日本も 追随するようになってきましたが)は、週休2日制以外に 祝日 さらには 夏休み クリスマス休暇など 休暇制度が充実することで、疲労回復やストレスの発散など 休む事ができる時間が確保できたことで 寿命が伸びているのだという調査結果は非常に興味深いものでした。

また、逆に 孤独以外に「敵意」という感情が、不健康の原因の一つにもなるという指摘である。つまり 「敵意」とは 敵対的行動や攻撃的行動につながる不信や皮肉な考え、怒りの感情を特徴とする。 要するに 敵意を持っている人は心臓や血管が過度に反応し この過剰な反応が動脈硬化や心臓発作のトリガーともなるのである。

特に 第六章「孤独による心身の摩耗」が 非常に参考にある章である。


このような結果を見れば、ストレスや敵意など また社会的環境によって、人間は 生理的に活動的 消極的になったり 冷静になったり 熱狂したり 居心地の良い 悪いにもなる。

ということは 『ゾウの時間 ネズミの時間』で指摘されている 心臓の心拍数は、どの生物でも一定の心拍数が来れば死ぬというのなら、心拍数が高い=高血圧な人ほど早死しやすいということになる。

孤独になれば、社会的環境にもよるが、ストレスや敵意などいだきやすくなり 結局 心拍数が高くなるから 不健康になりやすいという仮説もたてることができる。

中高年は 孤独についての苦悩と実行機能の衰えにより 気持ちを紛らわそうとして 「喫煙や飲酒、過食、性的行動に走ることがある。

また、ストレスを発散するためには、苦悩を解消し 実行の意思決定の速さが重要である。
マインドフルネスや睡眠 運動などで疲労やストレス発散が可能と言われているが、この本でも指摘されていることは 「実行制御」の必要性である。

「実効制御」とは、体調や日々の健康について 励ましてくれる 頼りになるメンターや友人 家族など会って コミュニケーションを通して行うほうが ずっと楽であろうと指摘されている。

要するに 規則正しい生活をするにも 運動やストレス発散することにも 結局は社会的環境=人付きあいで良好な共同体や人間関係が第一歩なのである。

一人で 規則正しい生活やストレス発散など 生活改善など できるわけがないのである。

この本のはじめに アフリカのことわざが記されている。

「急いでいきたければ 独りで行くといい。遠くまで行きたければ、いっしょにいくことだ」

この 「ことわざ」の意味は 非常に深いし、重要なことを示しているように思えます。





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最終更新日  2021.10.24 00:30:05