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XFROMJAPAN+VIOLET UK

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J-ROCK magazine 1998.12

J-ROCK magazine 1998.12 (Ja,Zoo I.N.A. D.I.E. CHIROLYN)

●ようやくアルバム『Ja,Zoo』がリリースされますが、hideさんが亡くなったときはこのアルバムをどうしようと思いましたか。

I.N.A.(Com&Per):彼が亡くなったときにはね、曲は全部できていたし、残りの部分もかなりできていたし、ファンや葬儀関係で出会った人達やいろんな人から「ぜひ作ってほしい」って言われてたから、「これは作らなきゃいけないな」っていう変な使命感があったっていうか、わりと早い時期に僕の中でも作ることを決めていましたね。やっぱり「なんとかこれをみんなのところに届けてあげたいな」っていう気持ちが強かった。

D.I.E.(Key):でもね、葬儀とかでみんなが最初に集まったときに…ツアーの話はさすがにその2、3日あとなんですけど、「アルバムは作り上げようね」というのが第一声に近い感じで出ていたんですよ。やっぱり「今、まずやるべきことはそれだな」っていうことをみんなが分かってましたね。I.N.A.ちゃんの大変さは…想像だけですけど、すごいことなんだろうなと思います。でも、I.N.A.ちゃんがやんないと絶対にできないものだから、そこは頑張ってもらって(笑)。

●I.N.A.さんは多くの人の期待を受けてレコーディングを再スタートしただけに、プレッシャーはなかったですか。

I.N.A.:プレッシャーというのは別になくて、精神的なつらさですね。今までは僕がコンピュータに向かっていて、僕の後ろにhideくんがいたから、レコーディングの作業を再開したときに彼がいなくなってしまったことを実感したりしてね。アップダウンが激しかったよ、あのころ(笑)。

●1人でレコーディングをしていて煮詰まったりはしませんでした?

I.N.A.:ある程度どういうものにするかっていうのが見えていたから音楽的には特に煮詰まったりはしなかった。要は精神的な部分だけでしたね。そんなこと言ってもしょうがないんだけど、それが一番つらかったかな。

●再スタートしたレコーディングというのは、hideさんが「この曲はこうしたい」って言っていたことを思い出しながら進めていったのですか。

I.N.A.:制作途中だった部分でも、「これはこういうふうにしたいね」ってかなり話を煮詰めていたんですよ。それを忠実に焼き直して、例えばKIYOSHIにギターを弾いてもらったりとかして、みんなに手伝ってもらって完成にいたったんですけどね。

●曲に対するミュージシャンの選出もhideさんから聞いた通りに?

I.N.A.:例えば「HURRY GO ROUND」だとベースはCHIROLYNでドラムはJOEっていう話をしてたし…あといろんな人に会うたびに「俺も手伝わせてくれ」とか「何か力になることはない?」って言われて、それこそその人達を全員呼んできたらエライことになってしまう状況でもあったんですよ(笑)。だからほんとに”hide with Spread Beaver“の中で作り上げようっていうのと、Pataにも手伝ってもらったのは、やっぱりhideくんのギターのフレーズを世の中で一番多く彼は弾いてるわけじゃないですか。だからどうしてもPataには手伝ってもらいたかった。

●アルバムの方向性もhideさんと話し合っていたものを引き継いだのですか。

I.N.A.:何年も一緒にやってきた中で、特に「このアルバムはこういう方向性でいこう」って決めては作っていなかったから、姿勢ですね。曲を作ったり、完成させていく上での姿勢をそのまんま貫いた。

●では、hideさんが言われてた”サイボーグロック“というのは?

I.N.A.:それは結果としてテーマになった部分があるし…”日本で育ったロック“というのも、やってみた結果としてできたから、「それを言うなればこうだ」って。

●では、すでにシングルとして発表された「ROCKET DIVE」「ピンク スパイダー」「ever free」以外の収録曲についてうかがいたいと思います。まずオープニングの「SPREAD BEAVER」なのですが、SE的にキーボードをパンチしてモデムを接続させた音が入っているのは、スプレッド・ビーバーにアクセスしたってことですか。

I.N.A.:うん。そんなSEを入れたのも最初からhideくんが言ってたことなんで、そのまま音にしたっていうかね。

●この曲ではD.I.E.さんがオルガンを弾かれてますけど、hideさんに「D.I.E.ちゃん弾いてね」と言われていたのですか。

D.I.E.:そうですね。やっとレコーディングの場でもね、コラボレーションできるんだなってすごくうれしい反面、I.N.A.ちゃんもhideちゃんもきっちりと作っていく人達だけど、俺っていい加減じゃないですか(笑)。その場その場で「いいやこれで」みたいな感じだから緊張していましたね。

●この曲に限らずなのですが、スプレッド・ビーバーの曲はテクノロジーが駆使されているだけに、D.I.E.さんの鍵盤の音に人間っぽい温もりを感じるんですよ。

D.I.E.:最近はマニピュレーターができるようなことじゃなくて、逆に人間臭いところでレコーディングとかに呼ばれたりしますね。だから、時代が変わって良かったなと思いますよ。続けてて良かったなって(笑)。コンピュータができる前まではピアノできっちりできることがステイタスだったんだけど、コンピュータできっちりすることができちゃうと、逆に人間っぽさが求められますね。いいときに呼ばれて良かった(笑)。

●「LEATHER FACE」ですが、これはヂルチの曲のセルフカバーになるんですよね。

I.N.A.:そうですね。ヂルチでやったものがバンド色が強くて、ちょっと思っていた部分とは違うところもあったんで、僕らがオリジナルでやったらこうなるっていう。

●この曲を聴けば洋楽と邦楽に違いがないことが分かりますよね。単純に歌詞が英語と日本語だという違いでしかない。

I.N.A.:そうですよね。ヂルチでもhideちゃんの日本語の曲を英語でやっているし、今回ヂルチの英語の曲を日本語でやっているっていう部分でもね。

●また、他の曲ではhideさんがベースも弾いているのですが、この曲ではCHIROLYNさんが弾いていますよね。

I.N.A.:それはね、(L.A.で)「ピンク スパイダー」のプロモーションビデオを撮ったときに、CHIROLYNだけ残って…1週間ぐらいかな? 一緒に遊んでたんですよ。で、「遊んでないでベース弾け」って弾いてもらったんです(笑)。

●やっぱりベーシストのグルーブは違いましたか。

I.N.A.:やっぱりhideくんはベーシストだと自分では言いつつも、ベーシストとしてはかなり異端児だからね(笑)。

D.I.E.:でも、俺、「BREEDING」のベースは好きだな。

●次に「DOUBT」のリミックス「DOUBT '97 (MIXED LE-MONed JELLY MIX)」ですが、「DOUBT」はhideさんが自分自身のアンセムだと言っていただけに、hideさんにとって大事な曲になっていました?

I.N.A.:すごく大切にしていましたね。何かとやりたがるからね(笑)。衝動でできた曲…作り込まなくても曲ができるんだっていう、彼にとっての教科書じゃないけど、それの見本でもあって、これでレコードになるのが3バージョン目なんですよね。メロディーはそのまんまで変わらないけども、色付けでずいぶん変わるんだよってことでもあるのかもしれない。

●D.I.E.さんは、そんな変わっていく「DOUBT」をどう思いますか。

D.I.E.:セルフリミックスみたいな感じですよね。I.N.A.hide職人…リサイクル職人っていうか(笑)、ほんとにカッコいいなと思います。時代に流れるものをしっかり吸収して、ちゃんと自分の曲に取り入れられていて、歌い方もちょっと違ったりしてて…あの上がり下がりがカッコいいじゃないですか(笑)。

I.N.A.:セルフリミックスっていう意味合いもあるんですよ。もともとこの基盤ができたのは去年の『MIX LEMONed JELLY』のライブでやるためで、ちょうどhideの『PSYE-NCE』のリミックス盤が出た直後だったから、「俺が自分の曲をリミックスすりゃこうなるよ」っていう提示でもあった。

●「FISH SCRATCH FEVER」ではコーラスでCRAZEのTETSUさんをはじめ、いろんな方が参加していますが、この曲のレコーディングは楽しかったですか。

I.N.A.:コーラス入れはおもしろかったですね。いろんな人がスタジオに来てくれるから、コーラス用のマルチテープを作っておいて、来る人来る人に入れてもらって…1人で何回もやったりするから、30人分ぐらいのコーラスになったりしておもしろかったです。

●この曲のイントロとエンディングにhideさんとJOEさんの会話が入ってましたけど、これは?

I.N.A.:他の曲で何かやってるときにたまたまテープに入っていて、僕、それをコンピュータにもらって、ドラムのループに乗っけて遊んでたんですよ。そしたらhideくんが「何これ? カッコいい! 使おう」って(笑)。

D.I.E.:今までにないアバウトな遊び方じゃないですか。だからびっくりしましたね。それにまたバランスがデカイから、毎回気になって気になってしょうがない(笑)。

I.N.A.:Pataはね、ギターを録るときにあれをカウントにしてたよ。「『聴こえない』、ワン、ツー、スリー、フォーってのがちょうどいい」って(笑)。

●では、次に「HURRY GO ROUND」なんですけど…。

I.N.A.:あれ? 「BREEDING」は? 

●すみません、飛ばしてしまいました。

I.N.A.:「BREEDING」はD.I.E.ちゃんに。

D.I.E.:「BREEDING」を語らせるとうるさいですよ(笑)。「BREEDING」はレコーディングに行ったときにもうできていて、「LEATHER FACE」と2曲聴かせてもらったんですけど、「BREEDING」のイントロが始まった瞬間に鳥肌が立ったっていうか、ほんとびっくりしてね。

●ギターがザクってきますからね。

D.I.E.:うん、あのミッド・ローのザックリしたギターが始まった瞬間にね…洋楽も含めて、最近聴いてるどんなバンドでもこんなカッコいい鳥肌イントロはなかったな。サビはすごいhideちゃんっぽいところを押さえているし、歌詞も訳分かんなくてすごいですね(笑)。一番衝撃を受けた曲です。カッコいいですね。

●もう「BREEDING」については質問するまでもなく、十分に語ってもらえましたよ(笑)。では、「HURRY GO ROUND」ですが、ボーカルがhideさんじゃないと思ってしまったし、曲調も今までにない異色の曲ですよね。

I.N.A.:それはね、去年の10月に山中湖のスタジオに合宿に行ったときに基本形はできてたんですけど、4月の末に歌詞ができて歌を録る段階でちょっとアレンジを変えたんですよ。歌をメインにしたアレンジに作り直したのが今の形なんです。

●歌のキーも最初から高かったのですか。

I.N.A.:うん、あのまんまで少年のように。

D.I.E.:俺もびっくりしましたよ、最初。「だれの声だろう?」って思った。

●でも、歌い癖がhideさんなんですよね(笑)。

D.I.E.:そうそう(笑)。

●この曲はストリングスがすごくマッチしていますが、これも最初から入れる予定だったのですか。

I.N.A.:ストリングスは歌を録った段階では入ってなかったんですけど、入れることは決まっていて、「斉藤ネコさんにやってもらいたいね」って話してたんで、その言葉のままやってみたんですけどね。で、あのストリングスのフレーズは、去年の曲を作った段階でhideくんが口ずさんでいたものを僕が覚えてて、それを入れたっていう(笑)。

●最後の曲の「PINK CLOUD ASSEMBLY」ですが、これは「ピンク スパイダー」の続編なんですよね。

I.N.A.:詞が「ピンク スパイダー」の続きになってて、詞自体ができてたんで「これは発表したいな」っていうのと、曲の構想もできていたんですよ。「ピンク スパイダー」の後半の部分を使って、D.I.E.ちゃんにピアノを入れてもらってっていうね。要は歌だけ録れてなかった。でも、詞は発表したい。っていうことでリーディング(朗読)したんですけど。その詞を読む人の人選はいろいろ僕も考えて、自分でも試してみたし、だれにやってもらおうかって考えたんですけど、やっぱり僕の頭の中でhideくんの声しか鳴ってないんですね。で、多少声が似てるから弟さんに試しにやってもらったんですよ。使うとか使わないとか関係なしに、「ちょっとやってみて」って。でも、弟さん自身の詞に対する気持ちがすごく入っていていいものが録れたから、「これはこれでいいんだな」と思って。

●この結末は「主人公の蜘蛛はあこがれの雲になって空を飛んだけど、結局空という大きなものの一つにすぎなかった」ということでしたが、D.I.E.さんはどういう気持ちでピアノを弾いたのですか。

D.I.E.:僕はね、詞が入ってる前に、メロディーに合わせる感じでピアノを入れたんですよ。だから、申し訳ないんだけど、そういうコンセプト的なところは演奏には入ってなくて…「YOSHIKIに負けないようなピアノを弾かなくちゃ」って(笑)。これはウソですけど(笑)。

I.N.A.:ある意味、アルバムの中でコンセプトのある曲って、この「PINK CLOUD ASSEMBLY」だけかもしれない。

●だからこそhideさんが言っていたように、1曲ずつが強い個性を持っていて、その印象に残るアルバムに仕上がっているんでしょうね。

I.N.A.:そうかもしれないですね。

●I.N.A.さんはこのアルバムが完成したときはどんな気持ちでしたか。

I.N.A.:完成したのは6月の15日ぐらいで、彼のお葬式の直後からレコーディングを再開して、精神的にも不安定な状態でやっていたし、いざアルバムが完成しても一緒に聴いて喜ぶ人もいないから、うれしいのと寂しいのとですごく複雑な気分になったりとかもして…。でも、今、時間を置いてるからそういうことも平気で言えるようになったんですけどね(笑)。

D.I.E.:きっと終わったときに空を見上げて「やったぜ、俺は」っていう瞬間があったと思います(笑)。それぐらいの達成感はあったと。

●そういう意味では、アルバムが完成したときにhideさんのホームページの掲示板にアルバムが完成したことを書き込んでましたよね。

I.N.A.:(L.A.から)盤を持って帰ってきて、すぐにhideくんの実家にお届けして、そのままメッセージボードに「完成しました」って書いたらパニックになったという(笑)。

●D.I.E.さんはこのアルバムを最初に聴いたときはどうでしたか。

D.I.E.:ヂルチぐらいからそうなんですけど、驚かされっぱなしですね。だから、”光栄“とか”誇り“という感じです。こういう取材を受ける側の人間としていられるとか、一緒にスプレッド・ビーバーのメンバーとしてやってこれたことがほんとにうれしくてしょうがないです。

●スプレッド・ビーバーのツアーがいよいよスタートしますが、ツアーに対する不安はもうなくなりましたか。

D.I.E.:やっぱり歌のことが…自分の曲でもままならないのに人の曲を歌ったりするわけですからね。今までのツアーとは取り組み方も変わってきてるから、そこはみんな「もう一つ頑張んなきゃ」って感じてるんじゃないですか。

●でも、個性の強いメンバーばっかりなだけに1つにまとまると、ものすごく強いものができるんじゃないですか。

D.I.E.:大きなところでガンとまとめてた人がいないから、バラバラになったら大変ですよ(笑)。でも、ツアーも全部そうですけど、ああいうことがあったのは悲しいことなんだけど、それによって分かるものも実はあったりするんですよね。本当に気持ちを分かってくれる人がいたりとか、電話してきても言うことが見当違いで「この人はこんな感じの接し方なのか」とかいろいろ見えてきたことも含めて。ああいうつらいことがあったからこそ、それが乗り越えるパワーにもなっているんだなって思うし。

●I.N.A.さんはどうですか。

I.N.A.:まだツアーのリハーサルに入ってないんですけど、この間のD.I.E.ちゃんのソロのライブを観て安心した部分がすごく大きかったし(笑)、KIYOSHIがやっていたヤツ(マッド・ビーバーズ)のビデオを見せてもらって「これだったら安心だな」と思いましたね。

●D.I.E.さんに関してはKIYOSHIさんも「hideが目指していたのは一大ロックスペクタクルだから、絶対にそういうものにしたいし…でも、ほっといてもそうなるんだよね。なぜかって言えば、D.I.E.ちゃんがいるから」って言ってましたよ(笑)。

D.I.E.:そんなキャラクターじゃないんですよ(笑)。マジメなんですから。

●では、どんなライブが期待できそうですか。

I.N.A.:始まってみないと分からない部分ってすごいあると思うし、今までのツアーも始まってみてからどんどん進化していくというか、形ができていったからね。

D.I.E.:正直言ってね、俺とかCHIROLYNっていうのはネタが割れてるじゃないですか。だから逆にKAZくんとかの正体不明な人が変なふうに変わっていくとめちゃくちゃおもしろいんじゃないかな(笑)。

I.N.A.:あんまり仕込んでやると、逆につまんないものになったりするんじゃないかなっていう気もするしね。ツアーではJOEが見ものですよ(笑)。

●JOEさんは、KIYOSHIさんのツアーでもカメの着ぐるみを着てましたしね(笑)。

D.I.E.:なんかあの人ね、今年になってから変わってるんですよ(笑)。今までは絶対に怒りながら「イヤだよ」って言っていたようなことを…。

I.N.A.:自分から率先してやってる(笑)。

D.I.E.:そうそう(笑)。喜んでる節があったりするから、持っていき方次第だな。

●ツアーではその辺が楽しみですね。今度はスプレッド・ビーバーから離れた部分での活動に注目したいと思います。まず、I.N.A.さんは内田有紀さんのプロデュースをやられていますよね。

I.N.A.:この話は3月ぐらいにあって、hideくんも「そういうところで活躍すれば、スプレッド・ビーバーにもフィードバックされるんだから、絶対にやった方がいいよ」なんて言ってたんだけど、今まで2人でやってたようなことを僕1人でやらないといけないわけですよね。でも、作品のクオリティーを下げたくなかったから、すごく苦労したし、いい勉強にもなりましたね。

●内田有紀さんってかなり洋楽を聴き込んでいる人だけに、一緒にやるかいもあったんじゃないですか。

I.N.A.:あの子自身は自分が聴いてカッコいいと思えるようなものを歌いたいっていうか、「今までアイドルだとか言われていた部分を変えてみたい」って思っていて、自分から何かやってみたいっていう部分があるんですよ。だから、おもしろかったですね。

D.I.E.:でも、I.N.A.ちゃんが女性アーティストのプロデュースをこのまま続けると、ちょっと危ない気がするんだよな(笑)。

●D.I.E.さんはGLAYのサポートを辞めてしまったそうですが、それはソロに専念するためにですか。

D.I.E.:ソロうんぬんじゃなくて、決めたのが5月2日なんですよ。今まで俺は自分の中では「hideちゃんのところで育った」とか「hideファミリーだ」って、そこの船に乗ってる意識があったんだけど、どうしてもスケジュール的な部分ではGLAYという大きな豪華客船になっちゃった船にばかり乗っていて、GLAYの方でもいろいろ「D.I.E.っておもしろい」という声がだんだん上がってきてですね、結構”GLAYのD.I.E.“って感じになってきてたんですよ。で、こっちの船が船長がいなくなって沈没しそうになっているけどツアーをやろうとしているのに、そこと豪華客船との間を行ってまた戻ったりするスタンスっていうのはなんか違うんじゃないかなって。GLAYにいるのは、メンバーとも仲はいいし、新曲も一から一緒に作っていくから作業も楽なんだけど、やっぱりここで白紙に戻りたいなって。

●ある意味で、自分に賭けているところがあるのですか。

D.I.E.:そうですね。どうも甘え症なんでね、甘える保険みたいな場所があるとダメなんですよ。実はスプレッド・ビーバーになった時点で、もしもhideちゃんが「スプレッド・ビーバーをちゃんとしたバンドにするから一緒にやろうぜ」って言ったら、その時点で「俺、やる!」って言うぐらい、いつでもその言葉を待っていたような節があったりするんです。そのスタンスをもっと自分からhideちゃんに見せていれば良かったななんて思ったりもして…だから、hideちゃんがいなくなって、自分がやりたいと思ってることに突き進むべきだなって思ったところもありますね。俺はスプレッド・ビーバーにも賭けているところがあって、今回のツアーだけじゃなくても、メンバーと次につながる何かが見いだせればいいなって。スプレッド・ビーバーでも”KIYOSHI with Spread Beaver“や”I.N.A. with Spread Beaver“みたいな、いろんな形ができたらいいなって思うし、CHIROLYNが最近アコースティックばっかりでライブをやったりしているけど、あれをI.N.A.ちゃんがプロデュースして、みんなでやったら全然違うものができると思うし、そういうことにもすごく興味があったりするんですよね。

●では、そんなスプレッド・ビーバーは自分の中でどんな存在になっていますか。

D.I.E.:すごく未知なもので、今の定義と来年の定義とでは全然変わっちゃうかもしれないですけど、今の段階ではワクワクさせてくれるメンバーであり尊敬できるミュージシャン達と何かを一緒にすることができるし、年齢も近くてみんな子供のようになれて、こんなのって奇跡に近いと思うんで大切にしていきたいなと。やっぱり世代が近いっていうのは重要で、hideちゃんも昔よく言ってたけど、ほんと同級生みたいなときもあったりするし、それでいてお互いを認め合えている不思議な人達ですね。

I.N.A.:僕もそう思います。学校のノリに一番近いよね。個人戦競技もやって、団体戦もやるクラブ活動みたいな感じかな。

●ツアー後のスプレッド・ビーバーの存在に「ツアーが終われば解散してしまうのかな」という不安があったのですが、そういうことはなさそうですね。

D.I.E.:いや、分からないですよ。ツアーで「やっぱりコイツらとは無理だ」って思うかもしんないし(笑)。だからこそワクワクするし、不安だし。

I.N.A.:でも、少なくとも今の段階ですでにKIYOSHIがCHIROLYNとJOEの3人でやったりとか、D.I.E.ちゃんがミッチー(及川光博)のレコーディングでJOEとKIYOSHIと一緒にやったりとか、僕は僕で内田有紀のときにCHIROLYNとかと一緒にやったりして、もうすでに次が始まってる気がする。

D.I.E.:ほんとにいろんな組み合わせができるからおもしろいですよね。それでいてプロフェッショナルなところをすごく持ってる人達だし。俺、他のアーティストのレコーディングでJOEくんやKIYOSHIくんを呼んだのは初めてで、一応主導権握ってやったんですけど、やっぱり全然やりやすいし、すごくプロだなって感じた。

I.N.A.:言いたいことが言える環境でプロの人達と一緒に作れるっていうのが大きいよね。

D.I.E.:その環境があるっていうのは、やっぱりすごいことですね。


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