物理化学-アントワンの式の解析
蒸気圧の経験的な予測式として、アントワンの式がある。アントワンの式は、一般的に下記のように表せる。LogP = A - B/(T+C) …(1)Pは蒸気圧、Tは温度、A,B,Cをアントワン定数という。実験値をもとに、このアントワン定数を効率的に決定するにはどうしたらいいだろうか。測定結果、(T1,P1),(T2,P2),(T3,P3)があるとする。T1-T2 = T2-T3が成り立つ場合を考える。(T1,P1),(T2,P2),(T3,P3)を(1)に代入しよう。(T1+C)LogP1 = (T1+C)A - B⇔(T1+C)A - B - CLogP1 = T1LogP1…(2)(T2+C)LogP2 = (T2+C)A - B⇔(T2+C)A - B - CLogP2 = T2LogP2…(3)(T3+C)LogP3 = (T3+C)A - B⇔(T3+C)A - B - CLogP3 = T3LogP3…(4)更に、(2)から(4)を式変形していこう。(2)-(3)⇔(T1-T2)A - C(LogP1-LogP2) = T1LogP1 - T2LogP2 ⇔(T1-T2)A + C*Log(P2/P1) = T1LogP1 - T2LogP2…(5)(4)-(3)⇔-(T2-T3)A + C*Log(P2/P3) = -T2LogP2 + T3LogP3…(6)(5)、(6)よりCが解析できるが、計算は困難である。ここでT1-T2 = T2-T3という条件を活かすのが得策である。すなわち、(5)+(6)⇔0+C{Log(P2/P1)+Log(P2/P3)} = T1LogP1 - 2T2LogP2 + T3LogP3 ∴C = (T1LogP1 - 2T2LogP2 + T3LogP3)/Log[(P2*P2)/(P3*P1)]…(7) A = (T1LogP1 - T2LogP2 - CLog(P2/P1))/(T1-T2)…(8) B = (T1+C)A - T1LogP1 - CLogP1 …(9)といった解析解が得られる。アントワンの式を解析するなら、T1-T2 = T2-T3となるようにデータを取って解析するのが簡単だといえる。これを踏まえて、水のA,B,Cを決定していこう。20℃ 17.55 mmHg38℃ 49.75 mmHg56℃ 124.02 mmHgとして(7)~(9)式にそのまま代入するとアントワン定数は下記のように計算できる。C = 235.86A = 7.62B = 1630.56A = 8.02754、B = 1705.616、C = 231.405が文献値だが、大凡の値を求めることができた。ただ、アントワンの式はデータをどう取るか、なかなか難しい式でもあるので蒸気圧解析を行う場合、十分な注意が必要といえる。