05年大予測2005年ビジネストレンド大予測
◆アナリストに聞く この産業の今~05年のビジネストレンド大予測 今回は個別業界の分析をいったん離れ、2005年の日本のビジネス界がどのような方向に向かって行くのか、その大きな「ビジネストレンド」を整理してみることにしたい。 まず、経営環境における変化の根底をなす構造変化を、「3つのメガトレンド」として整理した。その上で、2005年において経営の重要なファクターとして浮上すると思われるテーマを10個にまとめた。これをもって本年の最終稿とし、来月からはまた、個別業界の分析に戻ることとする。 ▼【3つのメガトレンド】 現在のビジネス界の底流に流れる大きなトレンドは、次のようにまとめられる。外的環境としては「デフレの終わり」が近づき、企業の内部ではリストラが転換点を迎える。いっぽうでは、「社会的価値のある会社」になろうという動きが強まっている。 1.デフレ経済からの脱却が目前 2004年までの日本経済は、エネルギーの大半をデフレ経済への対応に費やしてきた。その中心的課題は、3つの過剰(過剰債務、過剰雇用、過剰設備)の解消であった。2004年にはようやくトンネルの出口が見える状況にまで到達した。 2005年は、デフレ脱却の最終局面と位置づけられる。金融システムの健全性が高まるなど、経済の基礎体力は回復に向かう。しかしながら、政府の過剰債務や国民負担の増大といった構造的課題は“根雪”として放置されており、潜在リスクは高まる。 2.「削る経営」から「創る経営」への動き 2004年までは、大半の企業がデフレ経済への対応に苦しみ、企業防衛の観点から「聖域なきリストラ」にまい進した。また多くの企業が「選択と集中」戦略を進め、経営資源の効率的な利用と収益体質の強化を進めた。 いっぽう、改革に乗り遅れた企業の脱落も進んだ。 2005年は、デフレ経済を生き抜いた企業同士の競争が新たな局面に入る。もはやリストラ一辺倒の“削る”経営だけでは、時代の変化についていくことはできない。新たな価値を創造できる企業のみが、本格的な成長路線に乗る。 3.「公正で透明な経営」がますます重要に 2004年は、伝統ある大企業の不祥事が相次ぎ、「内輪の論理」による従来型経営の限界が露呈した。企業と経営のあり方が改めて問われた。また環境意識の高まりを背景に、環境に配慮した企業行動の重要性が意識された。 2005年は、企業活動の公正さや透明性がよりいっそう重要になり、コーポレートガバナンス(企業統治)の確立やコンプライアンス(法令遵守)の強化が進む。またCSR(企業の社会的責任)が意識されると同時に、企業行動のバックボーンとなる企業理念の確立が強く求められるようになる。 ▼【経営の10大トレンド】 ビジネストレンド 1 〈価格破壊の時代が終わる〉 ユニクロを展開するファーストリテイリングは「世界品質宣言」を掲げ、低価格路線の撤回を宣言した。過去10年以上続いた「価格破壊=高コスト体質の破壊」の動きは、既に完結したと言える。今後は新たな付加価値を訴求し、高くても売れる商品を作る「価格創造」型マーケティングが主流になる。 ビジネストレンド 2 〈消費者とのきずな形成が重要に〉 不変の消費者ニーズとして、「安さ」と「便利さ」の価値は残る。しかし今後はこれらに加えて、「私らしさ」や「安全・安心」に対するニーズが顕著になる。これらのニーズに対応するカギは、「個客対応」と「信頼のきずな形成」にある。IT(情報技術)を活用し、顧客一人ひとりのニーズに対応することや、顧客との継続的なコミュニケーションを確保するための仕組みづくりが、今後ますます重要になる。 消費者とのきずなという意味では、強いブランドを構築し、顧客との価値観の共有や信頼感の強化を進めることも重要になる。 ビジネストレンド 3 〈ブロードバンドビジネスが離陸する〉 2004年はネット広告の市場規模が急拡大した。家庭向けの光通信網が本格的な普及期に入り、ADSLと合わせたブロードバンドユーザーが急増したことが背景にある。 ブロードバンドの普及により、応答速度をはじめとするネット環境が改善したことから、今後はデジタルコンテンツの需要が高まると見込まれる。ネット系企業がプロ野球球団を持つなど、ブロードバンド向けキラーコンテンツの開発に向けた動きが活発化し、音楽などのパッケージソフトをネット経由で流通させる動きも進む。 ビジネストレンド 4 〈コアビジネス強化の動きが加速〉 勝ち組企業の「選択と集中戦略」が仕上げ段階に入る。例えば武田薬品工業は多角化により進出した事業から全面撤退し、医薬品事業に経営資源を集中する戦略である。このような動きが、さらに広がる。本業の明確化と得意分野の強化により、市場競争力、国際競争力を高めようとする動きが進む。 ビジネストレンド 5 〈コアビジネス以外はアウトソーシングする時代に〉 コアとなる事業に集中化する動きの中で、それ以外の機能を外部委託する「戦略的アウトソーシング」の取り組みがさらに進む。それを受け、システム構築、物流バックオフィス業務などのアウトソーシングビジネスが活性化される。また雇用流動化がさらに進行し、派遣社員などの形で人材雇用を「外部委託」する動きも広がる。 ビジネストレンド 6 〈周回遅れのリストラが始まる〉 ここ数年のリストラによって企業の体質改善は進んだ。しかし、市場競争がますます激化しており、経営効率を追求する手綱を緩めることは許されない。リストラに終着点はないのである。 規制産業や負け組企業の中には、ぬるま湯的体質を温存してきた企業も残っている。これらの企業にとって、改革先送りは限界に来ている。2005年は、追いつめられた企業による「周回遅れのリストラ」が一気に進められる可能性がある。 ビジネストレンド 7 〈経営規律を堅持する企業へ〉 日本ではコーポレートガバナンスが確立できていない企業も多い。こうした企業では、経営者の暴走を抑えられず、深刻な経営問題に発展してしまったところが続出している。 今後は社会の目が厳しくなり、不祥事の代償もますます大きくなる。株主による企業統治・経営監視体制の確立は、企業が存続していくために不可欠だと認識されるようになる。また経営者には、「内輪の論理」に陥らない高い倫理性が求められる。 ビジネストレンド 8 〈コンプライアンス経営が普及する〉 企業の不祥事が相次ぐ中で、不正防止のための制度構築が緊急課題となる。多くの企業では個人情報保護、知的財産権の有効利用、機密管理、その他法令遵守などの体制がまだまだ弱い。今後は社内規程、マニュアルや教育体制の整備が進む。 ただし完全な制度はつくり得ないので、最後の決め手になるのは社員一人ひとりの倫理観である。よって優れた企業理念や企業風土をつくることの重要性がいっそう高まる。 ビジネストレンド 9 〈CSR経営が普及する〉 企業の社会的責任に含まれる範囲を、上の法令遵守だけに限らず、地球環境への貢献や労働環境への配慮、地域貢献などまで幅広く捉えて、それを企業経営の評価軸とするCSR経営の認知がさらに進む。消費者をはじめとするステークホルダー(利害関係者)の目も厳しくなり、企業はより本格的な対応を迫られる。 単なる倫理的な意味だけでなく、「企業の持続的発展のためにはCSRの確立が不可欠である」との認識も広がる。 ビジネストレンド 10 〈公共・公益セクターへの民間企業の参入が広がる〉 郵政、道路、大学、病院、福祉、水道、農業などの分野への市場原理導入が進む。各事業の高コスト構造などにメスが入るとともに市場の活性化が進み、民間企業の活動領域が広がる。 電力、ガスなどのエネルギー分野では規制緩和が着実に進み、そろそろ本格的市場競争が始まる。 (出典:NIKKEI BP)
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