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欠陥年金

◆欠陥年金、これで国を信じろと言うのか

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国の財政「財政破綻した夕張より悪い」 財政制度等審議会

消えた年金を追って.gif

年金大崩壊.jpg

一言、“怒”である。

今回の2冊を読み終えて、怒ることなく笑っていられる人は、よほどの人格者か極度の鈍感かのどちらかだ。そろそろ確定申告の時期だが、読み終えて、なおかつ気持ちよく税金を支払える人は聖人君子か、または認知症が始まっているかのどちらかである。

それほどまでに、今回の2冊の読後感は悪い。後に残るのは憤怒の感情のみである。それも今わたしたちが生きている日本という国、わたしたち国民の代表である日本政府に対する、引き裂いてやりたいほどの怒りの感情だ。なにしろ両書とも、はっきりと「国が国民から金銭をくすねていた」「社会保険庁という官僚組織が、国民に金銭的被害を与えていた」という、まがいようのない事実を突きつけてくる。

この気色悪さをどう形容すればいいのだろうか。社会保険庁は、我々の財布の中に直接素手を突っ込んで、少なからぬ金銭をかすめ取っていたのである、

「消えた年金を追って」は、この問題に気が付き、国会において追求の最先鋒を務めてきた民主党議員による現状報告だ。一方、「年金大崩壊」はフリージャーナリストが公開資料と脚とを使い、この問題を追及した本である。

ここで気をつけねばならないのは、「年金大崩壊」が2003年に出版されていることだ。わたしの手元にあるのは、年金問題がクローズアップされてから増刷となった第7刷である。「年金大崩壊」は、出版当時かなりの話題になり、講談社ノンフィクション賞を受賞した。

にも関わらず、2003年の段階では何も動かなかった。2004年になってから「消えた年金を追って」の著者である長妻議員が国会の場での追求を開始し、社会保険庁がしぶしぶデータを公表するようになるまで、目立った動きはなかったのである。

このことはなにを意味するのか。ともあれ2冊の内容を、順に見ていくことにしよう。

◆年金問題は「国民が国を信頼するか」という問題である
「消えた年金を追って」は、冒頭「日本は欠陥国家なのか‥‥。」という問いかけから始まる。

「『消えた年金』問題は、今から50年も前に当時の行政管理庁が『不明の(納付記録)台帳が少なからず残されている』と是正勧告していました。

なぜ、50年間も重大問題が放置されたのか。日本の統治機構に欠陥があるのではないでしょうか。」(「消えた年金を追って」p.3)

これが本書全体を貫く問題意識だ。仕事や家庭の事情などで、お役所のシステムを調べたことのある人は、それらが驚くほど煩雑でありながら巧妙に出来ていることを知っているだろう。マイホームのための土地の売買でも、なけなしの遺産相続でも、会社の登記でも、子供の健康診断でもなんでもいい。お役所の仕組みはどれも「どうしてこう面倒なんだ」と思う一方で、「確かにどのステップを省いても問題が出るな」と思わせる緻密さがある。

しかし、年金問題では、お役所の手法で緻密に組み上げられた年金のシステムのそこここに不備が存在し、年金官僚の不誠実な日々の仕事の結果、支払い記録がぐちゃぐちゃになっている事例が多数存在することが明らかになった。

「これは、そもそも日本という国を貫く、システムの根本に欠陥が存在するのではないか」と、著者は考える。年金問題はその一つの表れでしかないのではないか、というわけだ。

その上で著者は、年金問題は「国が国民から信頼されるかどうか」という問題だと指摘する。年金制度は加入する国民のすべてが、きちんと保険料を支払わなければ機能しない。国民が「国は信用できない」と考え、保険料を支払わなければ、制度は崩壊する。支払った保険料に見合った年金が老後に支給されるのかどうかという一点で、国民が国を信用しないと、そもそも機能しない制度なのだ。逆に言えば、年金制度が崩壊するということは、国民が国を信用しないということであり、それは国家の崩壊に直結する。

年金問題は、「老後の資金が‥‥」「払ったはずが払ってないことになっている」という問題ではない。日本国政府が、国民からの信頼されているか、という重大な問題に対するリトマス試験紙なのだ。

「年金は国の礎です。年金制度が信頼を得ている国は発展します。年金制度が信頼を失うと、国家の信頼も失墜し国力は衰退するのです。
年金は、国家の信頼を正確に計るモノサシです。」(「消えた年金を追って」p.6)

◆窓口相談では文書で回答を要求せよ
「消えた年金を追って」は、問題を提起する前文に引き続き、まず「自分の年金をどのように確認するか」というノウハウ編が続く。これまでの年金相談では、相談者の実に8人に1人が訂正を行った。統計的には加入者、受給者の12.5%は支払記録に問題を抱えているということである。これほどの高率で訂正が発生しているということは、「自分は関係ない」として見過ごせる問題ではない。自分が被害者になっている可能性も高いと考えなくてはならない。

著者は、「とにかく申し出て相談をしよう」と呼びかける。その上で、どのような問題が起きやすいのか、窓口で困った対応をされた場合、どのように振る舞って自分の主張を認めさせればいいのかを一つひとつ解説していく。

最近は「お上」というだけで萎縮してしまう人も減ったと思うが、それでも「役所の窓口は苦手で」という人はまだまだ数が多いだろう。著者はそのような人に向けて、どのようにすればいいかを説明していく。

特に、「なにに対しても文書での回答を要求しろ」というアドバイスは非常に有効だろう。著者は、文書回答に時間がかかる場合には「時間がかかる理由を文書で回答するよう要求せよ」とまで言う。

「このような文書を出すことを役所は極端に嫌がります。自分たちの責任が明確になってしまうからです。場合によっては、文書を要求することで、緊張感を持って仕事に取り組ませることも必要です」(「消えた年金を追って」p.28)

年金の窓口相談のノウハウを解説する文中に、早くも驚くべき役所の実態が紛れ込む。国民年金や厚生年金の紙に記録された古い台帳は、電子化に伴い社会保険庁の命令で破棄された。ところが、国家公務員共済年金や地方公務員共済年金といった官僚のための年金については、紙の台帳とマイクロフィルム化された台帳の両方がきちんと保管されているのだという。

著者の問い合わせに対しては「マイクロフィルムはあくまで撮影されたものであり、細かい数字などがかすれて見えなくなるケースも多いので現物も同時に保管するのは常識」という回答が帰ってきた。

「ほうほう、常識かい」と読者としては思ってしまう。つまり、国民年金や厚生年金の紙台帳は非常識にも破棄されたわけだな、と。

「年金大崩壊」のほうに、これでもかとばかりに暴露されているが、実は官僚によって無駄遣いされたのは国民年金と厚生年金であり、国家公務員共済年金や地方公務員共済年金は一切無駄遣いされていない。今なお積み立て基金は増える一方なのだ。

これは常識で考えれば、証拠隠滅だ。国民が自分の老後のために、国を信頼して積み立ててきた年金を、官僚が食い散らかし、後に証拠が残ると面倒だとばかりに紙台帳を破棄した――常識で考えれるならば、そう受け取るしかないのである。

◆官僚組織と戦う難しさ
窓口相談のノウハウに続いて、著者は衆議院議員として自らが行ってきた追求の経緯をまとめる。この節は「役所的答弁」のオンパレードと形容すべきもので、読んでいるだけで気分が悪くなってくる。

いわく「法的に問題ない」「特殊事例であり是正済み」「調査はしない」「万全を期して参ります」‥‥。

著者は「野党議員の最も重要な資質は『官僚との我慢比べに勝つ忍耐力』だ」と書く。官僚にすれば、どんなに議員から追求されても2年ほどで人事異動で別の部署に移っていく。どんなに我慢しても「次の異動まで」であり、異動の後はどんなに深刻な問題でも他人事となる。しかし、追求する側はそうはいかない。のらりくらりの答弁から来るストレスに耐えて、ここぞというタイミングで相手の弱点を突かなくてはならない。

多くの人は、「議員には国政調査権があり、官僚が持っているデータの提出を要求する権利がある」と思っているのではないだろうか。しかし、実際には国政調査権は国会に与えられた機能であり、議員個人が各官庁に「このような内部資料があるのではないか」と問い合わせても、そう簡単に出てくるものではない。

逆に言えば、国会質問において議員から出た質問に、官僚は絶対に答えねばならない。

著者は2004年から年金問題に取り組み始めたが、2006年になってやっと国会質問のチャンスが巡ってきた。国会質問では、多くの場合、質問内容が事前に各官庁に伝えられる。回答を事前に用意できるようにするためだ。著者は内容と同時に、「資料が出てこなければ委員会を止めてでも徹底的に抗議する」と伝えた。「数字を出せ。のらりくらりと逃げるな」と官僚側の逃げ道を絶ったわけだ。

「官僚は『国会で野党が抗議して大臣の心証を悪くすることは避けたい』と考えます。自らのキャリアに傷がつき、出世に影響しかねないからです。」(「消えた年金を追って」p.38)

と、同時に長妻議員は、国会質問のチャンスを最大限に生かすべく動いた。まず国会質問に当たって、事前に厚生労働省に対し、「当日の配付資料として使うので、65歳以上の年金受給者で、きちんと支払い記録が統合されていない案件が何件あるか」を質問した。

この状態では、社会保険庁に「国会質問」というプレッシャーがかかっている。また、質問そのものではないので、社会保険庁側が油断する可能性もある。果たして数字は出てきた。65歳以上の年金受給者でも、きちんと支払い記録が統合されていない案件が2300万件も存在したのである。

2006年6月16日の衆議院厚生労働委員会の様子は国会会議録検索システムで読むことができる。本書の記述とこの日の議事録とを合わせて読んでみるとなかなか興味深い。浮かび上がってくるのは、著者の駆け引き上手と、同時に官僚組織を相手に、言葉で相手の主張を覆し、非を認めさせることの難しさだ。

国会質問を機会に、事前に社会保険庁からデータを引き出したことは、著者の駆け引きのうまさを示すものだろう。しかし、その著者をもってしても、この6月16日の答弁では「ただ、六十五歳以上八十歳未満の方がどうなっているかということについてはデータ上まだ把握できておりませんので、早急に把握をさせていただきたいというふうに思っております。」という通り一遍の答えしか引き出せていないのである。

◆危機感を欠いていた与党
「消えた年金を追って」には、随所に官僚組織に対する怒りといらだちとが見え隠れする。怒りは、官僚に丸め込まれる与党政治家にも向かう。

この部分は、著者が野党議員ということもあり、ある程度割り引いて読む必要があるだろう。それにしても、2007年2月14日の衆議院予算本会議における安倍晋三前首相の発言は、あまりに情けなく、無策だ。官僚に丸め込まれた政治家はこんなものか、と思わせる。

本書の要約した答弁ではなく、国会会議録検索システムから、長妻議員と安倍首相のやりとりを拾うと、以下の通りである。

「○長妻委員 (前略) この問題については、安倍総理、ずっと聞いていただいたと思うんですが、ぜひ緊急事態宣言を出して、これだけ多くの方がいろいろ疑義がある方もいる。しかし、自分の納付記録を確認していただいているという方は一部なんですね。ほとんどの方は、自分の納付記録をきちっと、抜けがあるのかどうか確認されていないんですね。そういうこともございます。潜在的な被害者が大変多いのではないかと危惧するところでございますので、緊急事態宣言をして、社会保険庁は、被保険者と受給権者の皆様全員に納付記録を郵送して、抜けがあるかどうか緊急に点検してください。(後略)」

「○安倍内閣総理大臣 ただいま御提案がありました緊急事態宣言をすべての被保険者に出す、これは年金そのものに対する不安をあおる結果になる危険性があるのではないか、私はこのように思うわけでありまして、そうした中で、いわば年金の支給に際しては、従来から個別に御本人に年金の加入履歴を確認していただいているわけでありますが、昨年の八月から年金記録相談の特別強化体制をとって、すべての被保険者から、受給権者からのお問い合わせに迅速にお答えをするようにしているわけでありますし、また、必要な修正等を行っています。こうしたことを周知徹底していかなければならない、このように考えております。」

冒頭にも書いた通り、年金問題は国民が国を信頼するかどうかという問題に直結する。国が信用されなければ国民は税金を払わず、国は崩壊する。長妻議員は、年金問題を国家にとって迅速かつ徹底的に解決しなくてはならない、国家的な危機であると認識している。

しかし安倍首相は「年金そのものに対する不安をあおる結果になる危険性があるのではないか、私はこのように思うわけでありまして」と言ってしまったわけだ。安倍首相の言った「必要な修正等を行っています」という処置は、その後の推移で全く不十分であったことが証明された。

目の前に破滅の淵が口を開けているから、不安を与えないように破滅の淵の存在自体を教えないというのと、「そこに破滅の淵があるぞ!」と叫んで警告するのと、どちらが結果として安全であろうか。当然後者だ。安倍首相にはこの簡単なことが理解できていなかったのである。

「消えた年金を追って」は、この後、著者による解決策を提示し、最後にさまざまな資料を掲載して終わる。読後、出てくるのはため息ばかりだ。

しかし、まだまだ脱力するのは早い。これまでに厚生省、社会保険庁の年金官僚がいったい何をやってきたのか。もう一冊の「年金大崩壊」は、国民が知らないのをいいことに官僚が行ってきたやりたい放題を暴き出す。

◆9兆円以上の掛け金が失われた
「年金大崩壊」は、かいつまんで紹介するのもためらわるほどの、年金官僚が行ってきた、あるいは行いつつある国民に対する背信行為が満載の本だ。そのひどさは、目次のページを見るだけでも明らかである。

いわく「“年金利権”に群がる官僚がいた」「現役の年金官僚たちが吸う甘い汁」「国民の掛け金を湯水のごとく浪費している」「役人と政治家の年金が守られる仕組み」「宏池会の有力議員たちを中心に事業を展開」「グリーンピア施設の経営実態」「『いまが良けりゃ、いいんだよ』という官僚体質」などなど。

本書が、センセーショナルな見出しであおるだけの本ならば無視するだけで済む。しかし、この「年金大崩壊」はフリージャーナリストが一つのテーマを執拗に追求し続けた結果なのだ。そのような本の目次にこれほどの見出しが並ぶということでも、年金官僚の無茶苦茶な実態が見えてくる。

本文に入ると、そこはもう目を覆うしかない官僚天国だ。

「今回調べてみると、公的年金制度の理念を頑なに守っていたのは、公務員と私立学校教職員のための共済年金だけだった。厚生年金も国民年金も、掛け金の一部が“流用”され、厚生労働省の抱える各種施設の建設費、維持管理費ばかりか、それら施設を運営する特殊法人や財団法人の人件費、物件費などに使われていた。
                (中略)
(そうした損失額は、)国民年金制度が発足した1961年度以降の『年金特別会計』から拾い出してみると累積で約4兆2000億円に達している。このほか、家計金の運用事業等の失敗で失われた年金資金、約5兆円を加えると、総額9兆4000億円の年金財源が失われたことになる(2002年12月現在)。」(「年金大崩壊」p.15)

極悪さの割に、そのやり口は比較的単純である。加入者から集められた年金の掛け金は、法律により四つの使途が定められている。まず受給者に年金を支払う基本業務。次に「年金加入者の福祉向上に直接役立つ」福祉業務、そしてこれらを支払った後の余剰金の運用、最後が運用に携わる職員人件費や諸経費である。

これらのうち、うしろ三つの中に、さまざまな官僚に利する使途を忍び込ませるのである。

◆グリーンピア事業に見るその手口
「年金大崩壊」にはさまざまな“手口”が掲載されている。なかでも「大規模年金保養基地(グリーンピア)事業」は、その規模の大きさで群を抜いている。

グリーンピア事業は、1970年代前半、田中角栄首相の「日本列島改造論」が一世を風靡していた時に、厚生省が立てた計画だ。つまり「列島改造」に厚生省が乗って作り上げたものである。全国13カ所に大規模保養施設を建設して、年金加入者に提供するという、大規模な官によるリゾート開発そのものだった。

グリーンピアは年金を運用する組織である年金資金運用基金(2001年に旧年金福祉事業団が改組)が行っていた。まず、この組織自体が、年金官僚の天下り先であるということに注意する必要がある。つまり、先ほどの目的の「運用に携わる職員人件費や諸経費」というところに、ちゃっかり天下り先の人件費を押し込んでいるわけだ。

年金福祉事業団は年金の積立金の1/4にあたる35兆9000億円もの資金を使って、「年金加入者の福祉向上に直接役立つ福祉業務」を行ってきた。そのうちの一つが「年金加入者の福祉向上に直接役立つ保養施設の建設」である。これがグリーンピア事業だ。

ここまで書けばもうお分かりだろう。建設は利権を生む。政治家の地元にグリーンピアを建設すれば、政治家に恩を売る事ができる。建設した13カ所のうち8カ所が、厚生大臣経験者の選挙区というのだから露骨だ。その中には、地元有力者が取得したものの使い道がなく塩漬け状態になっていた土地をわざわざ買収して建設したグリーンピア大沼のような例もある。

グリーンピアの運営で新たな組織が作られる。つまり天下り先が増えるわけだ。一部では運営が地方自治体に委託されたが、それもまた利権でもある。つまり地方自治体にまで利権のお裾分けが及ぶ。それは中央官僚の支配が地方に及ぶということでもある。

ところが完成したグリーンピアは、どこもとんでもない赤字経営となった。顧客満足の事など考えない官の商売だから当たり前である。赤字は年金福祉事業団が被るが、もちろん我々の支払った年金保険料から補てんされるので問題ない。政治家に恩を売っているので、厚生族と呼ばれる関連議員からの追求もない。

もちろん、我々が支払ってきた年金保険料は、赤字でどんどん消えていっているわけだ。

結局グリーンピアは2001年12月の閣議決定で、すべて廃止することになり、2005年度中にすべて民間に譲渡された。一部施設は解体されたが、解体にかかる費用は年金保険料から支出された。

その一方で厚生労働省は、「高齢化社会を控えて、年金システムは存続の危機にある」として、徐々に給付開始年齢を引き上げ、同時に給付額を引き下げてきた。かつては60歳から受け取れた年金は、今や65歳以上でないと受け取ることができない。

「年金大崩壊」が紹介する年金官僚の悪行は、グリーンピア事業にとどまらない。資金流用のためのトンネル会社の設立、裏カネ作りのためのさまざまなからくりの考案、人件費を年金保険料につけての天下り先の創設などなど。

その一方でデータ電子化にあたってはいい加減な入力を行って支払い記録を混乱させた上に紙台帳を破棄し、国鉄共済年金や農林漁業団体共催年金など、破綻した年金はすべて厚生年金に押しつけて、公務員共済年金への被害を回避する――まさにやりたい放題だ。

1999年の段階で、年金関連組織への天下りは2312人、そのうち公務員関連の年金組織への天下りは15人というような数字を見ると、あきれるほかない。2300人弱を国民年金や厚生年金から給料が支出できるポストに押し込んだわけだ。

このような事態を招来した官僚の思考を、著者は「『いまが良けりゃ、いいんだよ』という官僚体質」と形容する。掛け金は善良なる国民が真面目に払ってくれる。カネはほっといても集まってくる。これを使わなければもったいない。どうせ掛け金を給付金として還元するのはずっと先の話だ。目の前にあるばく大な資金を使って勢力拡大をせずにどうするというのか、というわけだ。

◆年金だけではない官僚のお手盛り
2冊を読み終えて感じるのは、「こりゃ日本は滅びるな」ということである。

この連載の31回で話題にしたように、今日本は未曾有の借金を抱えている。その返済には増税は不可避ということになっている。

しかし、肝心の国がこんなことを延々とやってきたとしたら、いったいどの国民が増税に応じるというのだろうか。

この件に関しては「消えた年金を追って」の著者である長妻昭議員の「国家の非常事態」という認識は正しいと考える。国民の信頼を裏切り、信頼を失った国は滅びるしかない。年金問題は亡国を告げる角笛なのである。

第31回で扱った「『小さな政府』の落とし穴」(井堀利宏著 日本経済新聞出版社)は、増税には「受益と負担のリンク」が重要だと指摘していた。「税金を支払っただけの公的なサービスを自分が受けられるということが、国民全体のコンセンサスとなること」が、増税による財政再建には不可欠だということである。ところが、国民が受ける公的サービスの代表格である年金において、年金官僚によるつまみ食いが政治家をも巻き込んだ形でこれほどまでに進行していたら、これはもう「受益と負担のリンク」どころではない。

誰の目から見ても既に「受益と負担のリンク」は切れてしまっており、切ったのは他ならぬ日本政府の、年金業務を担当する社会保険庁という役所なのである。

しかも、このような事態は、別に厚生労働省や社会保険庁に限ったものではないらしい。

この原稿を執筆している1月末現在、揮発油税の暫定税率をどうするかを巡って国会で論戦が続いている。道路建設に当てる道路特定財源のためにガソリンに暫定的にかけている税を今後どうするかという問題だ。

そのさなか、国土交通省が道路特定財源を、関係職員用のスポーツ用品の購入などレクリエーション費、職員宿舎の建設や都市部の地下駐車場の建設などに使っている実態が明らかになった。レクリエーション費や職員宿舎の建設は建設官僚のお手盛りであるし、巨額を費やして建設した地下駐車場には、もちろん運営組織が設立されて天下りの受け皿になっている。

これはグリーンピア事業と全く同じ構図だ。1)年金資金を「国民の福祉に役立つ」といって巨大リゾート施設の建設に使用し、建設では政治家に恩を売りつつ、そこに天下りのポストを作る、2)道路特定財源を「交通を円滑にする」といって地下駐車場の建設に使用し、建設で政治家に恩を売ったかは明らかではないものの、そこに天下りのポストを作る――まったく変わりはない。

冬柴鉄三国土交通大臣は、1月25日の段階では「レクリエーション費用や職員宿舎建設は法に基づいたもので問題ない」と発言していたが翌日には、国土交通省の峰久幸義・事務次官が、道路関係職員のレクリエーション費への支出を今後やめると表明した。一方の冬柴大臣は「中止は暫定的」と、今後これらの支出を復活させることも示唆している。

大臣の発言を事務次官が否定し、しかも大臣との齟齬(そご)が出てきているわけで、国民の側からすると「大臣の操縦、お疲れさん」としか見えない。

ここで考えねばならないのは、このような官僚のお手盛りと政治家操縦は、社会保険庁と国土交通省だけではないだろうということだ。両方の共通点は、「使途を決めてばく大なカネを国民から徴収する」ということだ。つまり同じ条件が揃っているところでは同じ事が起きている可能性が極めて高い。

国の特定財源は、揮発油税だけではない。航空機燃料税は空港整備に使途を限定して徴収されている。石油石炭税はエネルギー安定供給のために使われることになっている。電源開発促進税は電源開発に使用されている。これらのカネは一体どのように使われているのだろうか。防衛施設庁の談合入札は記憶に新しいが、では年間約5兆円もの日本の防衛予算の現場では、一体どんなことが起きているのか。

考えるだけ恐ろしいことだが、財務省が「増税やむなし」のキャンペーンを張る一方で、官僚組織の中では、税金だだ漏れ使い放題という状況が他にも存在するのではないだろうか。

◆年金をあるべき姿に戻す
官僚が暴走するならば、それを止めるのは政治の役割だ。政治家は、年金の問題を根本的に透明な形で最終解決に導く責務を負っている。

透明な最終解決とは、年金の積立金はすべて年金給付金として国民に還元されることである。年金を基本理念に戻って当たり前の姿に戻すということだ。

が、今回の2冊は、政治家が官僚の非道を正すことの難しさも同時に示している。

「年金大崩壊」は2003年9月に出版されている。つまり4年以上前の段階で、問題の存在は公になっていた。一方、「消えた年金を追って」の長妻昭議員が、この問題の調査を始めたのは2004年、国会質問で問題の所在を明らかにしたのは2006年6月だ。その間、「消えた年金を追って」によると社会保険庁はデータを出し渋り、言葉を左右して長妻議員の調査を妨害してきた。

これは、年金にそれだけのうまみがあり、議員に知られては困る実態が存在したことを意味する。となると、たとえそれが亡国につながる道であったとしても、官僚は抵抗する可能性が高い。

おそらく、年金問題の正常化には、外郭団体もろとも官庁を潰すぐらいの劇的な治療法が必要になるだろう。舛添要一厚生労働大臣には、そこまでの覚悟はあるのだろうか。安倍晋三前首相は、事態を把握できなかったようだが、では福田康夫現首相はどうか。

もちろん、わたしたちもできることをやらねばならないだろう。

森鴎外の「最後の一句」では、罪を犯した父に下された刑罰を、娘のいちが身代わりになって受けようと御白州に申し出る。

「『そんなら今一つお前に聞くが、身代りをお聞屆けになると、お前達はすぐに殺されるぞよ。父の顏を見ることは出來ぬが、それでも好いか。』『よろしうございます』と、同じような、冷かな調子で答へたが、少し間を置いて、何か心に浮んだらしく、『お上の事には間違はございますまいから』と言ひ足した。

(中略)

白洲を下がる子供等を見送つて、佐佐は太田と稻垣とに向いて、『生先《おひさき》の恐ろしいものでござりますな』と云つた。心の中には、哀な孝行娘の影も殘らず、人に教唆《けうさ》せられた、おろかな子供の影も殘らず、只氷のやうに冷かに、刃のやうに鋭い、いちの最後の詞の最後の一句が反響してゐるのである。

(中略)

しかし獻身の中に潜む反抗の鋒《ほこさき》は、いちと語を交へた佐佐のみではなく、書院にゐた役人一同の胸をも刺した。」
(森鴎外「最後の一句」。出典は青空文庫)

わたしたちは民主主義の社会に生きている。いちのように「お上の事には間違はございますまいから」という従順を装った言葉で、社会保険庁の官僚の胸を刺す必要はない。

選挙を通じ、直接政治家を動かし、年金を改革すればよい。今年は衆議院選挙がある可能性が高い。この件についてどの政治家が何を主張し、何を行動し、場合によっては何を妨害しているかをきちんと見定めて投票しようではないか。

「会社やら組合やらなんやらの義理もあるし、いつもの政党、いつものセンセに投票しよう」という意識は、日本という国を滅ぼし、あなたの子どもに災いを遺産相続させるものだと、強く意識する必要がある。そのことは社会保険庁の改革、そして奪われた年金を奪い返すということにとどまらない意味を持つ。

今回読んだ2冊の本は、わたしに期せずして日本滅亡の可能性を気付かせてくれた。確かに、国民の財布に素手を突っ込んで盗むような国家は滅ぶしかない。

だが、国が滅んで辛酸をなめるのは、国民なのである。

(出典:日経BPnet)

夢は見るものではなくて、叶えるものです。たった一度の大切な人生を精一杯エンジョイするには、どんなお仕事を選ぶかがとても重要です。『ユダヤ人大富豪の教え』の自由人になれる好条件が揃ったビジネスで、必ずお役に立ちます。
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