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成果主義失敗時代の生き残り

◆「成果主義の失敗」時代を個人で乗り切るには

●世界的な市場開放やIT革命により、世界的な規模での企業間の競争が激化する一方である。こうした状況で、日本企業でも成果主義や能力主義が積極的に取り入れられるようになり、ビジネスパーソンの生産性向上が、企業の盛衰を分けるポイントとして注目を集めている。
●経済評論家で公認会計士である勝間和代氏は、外資系企業で経営コンサルタント、トレーダー、証券アナリストなどの経験を積み、プライベートでは3人の子育てに奮闘する母親でもある。勝間氏は、公私共に多忙な経験で培われてきた知的生産技術の向上策に関し、ベストセラーも多く執筆している。
●ビジネスパーソンはどのようなポイントに注意して知的生産性を上げていけばいいのか、勝間氏にその神髄を聞いた。また、後編では、生産性が問われる時代の生き方について聞いた。


膨大な情報から重要なものを選別する手法とは

――勝間さんは、知的生産術というテーマでいくつもベストセラーを出されていますが、今までの知的生産術を語った本と、どういった部分が違うのでしょうか。

勝間 氏(以下敬称略):  知的生産術ということでは、梅棹先生の「知的生産の技術」が古典として非常に有名です。梅棹先生の御本の内容自体は非常にすばらしいものですが、そこで使われている京大式カードは、さすがに現在のビジネスシーンにはマッチしないものになってきています。当時は存在すら考えもつかなかったパソコンという強力なツールが現在ではあるので、私の本では、そうしたデジタルなものの使いこなしを取り入れた内容にしています。

また、インターネットというすばらしいインフラが存在するので、インターネットベースでどのように効率的に情報を入手し、整理するのかも、ポイントにしました。

こうしたデジタルツールを使いこなす上で気を付けたいのは、デジタルだけに偏らず、アナログ的な手法もバランス良く取り入れることです。

――インターネットという新しいメディアが生まれたことで、10年前から考えると膨大な量の情報があふれかえっています。こういった状態で、効率的に必要な情報を探し出したり、不要な情報を排除したりするのは、どうすればいいでしょうか。

勝間:  目的意識ですね。私は「自分テーマ」といっています。「どういう目的で、その情報を集めるのか」「何に活用するのか」「何のためにその情報が必要なのか」というふるいがないとダメです。このふるいのことをフレームワークといってもいいでしょう。このフレームワークがないと、大量に存在する情報から、必要な部分を取り出すことができないのです。

もう1つ重要なのは、情報の質の見抜き方です。インターネットなどの新しいメディアの登場により、私達の目の前に膨大な情報にアクセスできる端子ができましたが、情報の質自体は、それほど上がっていないと思います。むしろ下がっているかもしれない。その情報を突き詰め煮詰めていくと何が残るのかという、情報の本質、つまり1%の本質を掴むことが重要なんです。

1%の本質を見極めるためには、きちんとしたフレームワーク力をつけていかなければなりません。そうでないと、大量の情報の中から、必要な情報だったり、正しい情報をすくい出すことは無理でしょう。

ここでいうフレームワークというのは、「ある目的に沿って整理された思考の枠組み」のことです。つまり、どのような情報に対して軸を作り、分類し、場合分けを行い、整理し、タグ分けして頭の中にその情報を保管していくかです。

フレームワークというと難しい気がしますが、「起承転結」とか、ビジネス用語の「3C(Customer、Company、Competitor)」なども、基本的なフレームワークの一種です。個々のフレームワークは多くの人に提唱され、実際に使われています。先人が作ってスタンダード化しているフレームワークを使えば、例えば「自社の製品やサービスがなぜ他社に比べて負けているのか」整理したりできます。

1つ重要なのは、標準的なフレームワークを使いこなしていくだけでなく、応用して自分なりの新しいものも作っていくことです。フレームワークに従って思考すれば大量の情報が整理され、1%の本質に近づきます。残り99%の情報を思い出せなくなってしまっても、1%の本質さえ知っていれば十分なんです。

デジタルの利点を最大限に生かすことが重要だ

――勝間さんの実践されている「新・知的生産術」ではデジタルツールが数多く出てきますが、デジタルツールのメリットはなんでしょうか。

勝間:  アナログとの最も大きな違いは、検索しやすさですね。アナログ時代は「どれだけ検索しやすく情報を整理するか」が、知的生産術の大きなポイントだったんです。現在では、パソコンの膨大なディスク容量にさまざまなデータを取り込んでおき、後で検索すれば、すぐ表示してくれます。だからこそ、どんな情報をパソコンに取り込んでおくのか、どのようにして情報を集めるのかという、情報入手側のノウハウが重要になってきているのです。

パソコンを補助脳として情報を入れ、検索して使うことは、生産性を上げる大きなポイントです。しかしその代わり、京大式カードのように「情報を移す際、整理する」ということがありません。その分、頭の中に分類と道しるべを作っていく必要があります。野口先生の「超整理法」では、封筒を使って情報整理していましたが、多様な情報がデジタル化して入っているパソコンを使う上では、ブザンセンターが提唱するマインドマップが有効です。これが、今までのやり方とは違う部分です。

マインドマップを使えば、いろいろな情報の関連性を追ったりできます。マインドマップは、人が情報を分析、整理するときの頭の働きとよく似た手法であるため、理解や記憶しやすいというメリットがあります。

――パソコンを補助脳として使うようになると、そこにどのような情報を保管するのかが重要になってきますね。

勝間:  そこで、アウトプットを考える必要が出ます。なんでもかんでもパソコンに取り込んでいては、手間なだけです。自分がアウトプットしたい情報に必要なものだけを入れるべきです。

アウトプットというと「別に発表するものはない」という人もいるでしょうが、例えばブログを書くこともアウトプットになります。それ以外にも、普段仕事で企画書を作るとか、ビジネス上の生産性を改善すること、といった目的も、一種のアウトプットですね。

だから「目的意識を持ったインプット」が、重要なんです。行動とか成果物に通じないインプットは、生産性が低いものです。

――たしかに、近々仕事でプレゼンテーションがある場合などは、明確な目的を持っているので、きちんと目的に応じた情報を集める動機を持てます。しかし、普段の仕事上ではなかなか特定の目的はないのが普通だと思います。どのようにしてきちんとした目的を持てばいいのでしょうか。

勝間:  そういう場合は、身近なことでいいんです。例えば「健康になるには」とか「もっと英語を話せるようになって、世界の情報を知りたい」とか、「人と電子メールをやりとりするときに、分かりやすく書きたい」といったことをテーマにすればいいんです。こういった目的を頭の隅で意識していれば、自然とそれに役立つ情報が集まってくるものです。

例えば、昔、電子マネーのコンサルティングを担当したことがあるんです。コンサルティングを始めるまでは、Edyのマークなんか、全く気がつかなかった。でも、電子マネーを自分のテーマにすると、普段街を歩いていても、Edyの看板が目につくようになりました。これは、電子マネーをテーマにしたから、今まで全く気がつかなかった情報が、フィルターを通して浮かび上がってきたわけです。漫然と生活するのではなく、テーマを意識していれば、通勤電車の中吊りを見ても、目に入る情報は違ってきます。

ホワイトカラーの生産性が低いワケ

――勝間さん個人で現在気に掛けているテーマには、どんなものがあるんですか。

勝間:  私自身がテーマとしてずっと考えているもののひとつは、ワークライフバランスです。世の中の人が、週に3回は夕食を家で家族と一緒に食べられ、仕事時間として9時~19時ぐらいで終えられ、土日はゆっくり休める社会システムというのは、どうすればできるのかを、テーマにしています。優秀な一部の人だけ、こういった生活ができるのでは、意味がありません。「ごくごく一般の人が普通に仕事をしていても、こういう生活ができるようになる仕組みは、どういったものなんだろうか」と、いつも考えています。

――ワークライフバランスのお話が出ましたが、日本のホワイトカラーの生産性は、世界基準からすると低いのではないかという議論があります。工場の生産性はトヨタ式などで世界から目標とされるほどですが、ホワイトカラーが弱いと。そのために多くの日本企業で、残業が当たり前な状況が続いているという見方もあります。ノー残業で有名なトリンプは、「残業を止めたから、効率が上がった」という、逆説的な先進例ですね。

勝間:  ホワイトカラーの生産性は、確かに低い部分もあります。特に国内を市場とした産業において低いですね。国際的な市場を持つ産業では、インターナショナルな激しい競争がありますから、それほど生産性は低くないんです。国内市場の産業は、国際基準と照らし合わせると、それほど競争は激しくありません。もちろんあるんですが、質の違った競争なんです。生産性が低いからとクビになることも、あまりなかったですし。

また、海外に比べると、ホワイトカラーとブルーカラーの比率が違っています。海外では、日本ほどホワイトカラーといわれるワーカーは多くありません。そのため、1人あたりの生産性を上げないと対応できない面があるのです。

今までの日本の企業では、あまりきちんとした生産性向上に関する教育を受けてきていなかった人でも、ホワイトカラーとして扱われてきたこともあります。知的生産の教育をきちんと受けている人は、多くないんです。例えば、会議のファシリテーション、企画書や稟議書の出し方、プロジェクトの組み方、指示の出し方といった面での教育が行き届いていないのです。

日本という国では、ある程度優秀な人間の労働力が、安く買えたからでしょう。海外のように、優秀な人間のコストが高ければ、そのコストに見合ったリターンを期待するし、リターンが低ければ、すぐクビになります。あまり優秀でない場合、フォーマット化してそれだけを守らせることで、生産性を上げようとします。

メタビジネスレベルでの工夫が最重要だ

――日本と海外ではホワイトカラーに求められるものが違うのですか。

勝間:  言語や文化の違う多種の民族を扱うために、海外では「多様な人間をいかに使うか」というインセンティブが働くのですが、日本人は勤勉なため、ほっておいてもある程度まで仕事をするので、そこまできちんとした枠をはめて生産性を上げようとはならなかったのでしょう。それに加えてマネジメント側も「限られたリソースをいかに使いこなすか」という訓練は受けていません。トリンプの例のように、残業せずに定時で帰ることで社員の生産性が上がり、会社全体の利益も上がるということを、マネジメント側は理解しなければならないと思います。

実感としてよく分かる方もいると思いますが、結局、忙しいと目の前の仕事しか見えなくなるんです。こうなると作業的なことばかりに追われて、本当に必要なことが見えなくなる。例えば「今やっていることは本当に必要なことなんだろうか」「仕事の流れを見直すことで、もっと効率的にできるのではないか」という大事なことが、考えられなくなるんです。忙しくなればなるほど、さらに自分が忙しくなるといった悪循環に陥るのです。私はこれまでのキャリアでも、言われたことに闇雲に取り組むのではなく、「こうすればもっと効率的にできるので、その方法を試させてほしい」などと訴え、自分の生産効率を高める努力は怠りませんでした。

――ビジネスに取り組む姿勢で重要なのは、単に仕事を効率的にこなすのではなくて、メタなレベルでビジネスを組み替えて、効率アップを図るということですね。

勝間:  そうです。会社としても、社員に余裕を持たせて、社員自身に教育を受けさせる時間を取らせたり、グーグルが定めているように「仕事時間の10%は別のことに割り当ててよい」などと決めたほうが、結果的には効率が上がると思います。

私もコンサルティング等でずいぶん日本の企業に関わってきましたが、良く見られる例で、一般に「保険仕事」といわれるものがあります。これは「昔クレームが入ったから万一のためにこういう作業を追加した」とか「今までの慣習だからそのままにしている」という類です。仕事の流れから見てみると「この作業って必要ないのでは」と思うことが多いです。

また、コンピュータでやれば簡単にできてしまうことを手作業で行っていたりすることも多い。たとえば書類の承認などです。これだけデジタル化されているのだから、コンピュータや電子メール、FAXを使えばいいのに、今までの仕組みを変えられないんですね。

こうした小さなことの積み重ねで、大きく生産性を下げている場合があります。

デジタル機器の進化によって、単純な作業はどんどんコンピュータに任せられるはずなのに、今までのやり方を変えず、業務増に従い作業が増え、本当の知的生産に当てる時間がますます減っているように思えます。

大企業の部長になると、1日の8割ぐらい会議をしていて、残り2割でさまざまな仕事をこなしたりしています。8割の会議もほとんどがおつきあいで、出る必要がないものだったり。これでは生産性は上がりません。社内文書も、各部署との調整作業的なものばかりで、お客様にとって必要な文書は、ほとんどないといった具合です。

海外の企業では、各社員ごとにジョブディスクリプションといったことが決まっていて、その責任範囲で仕事のシステムを組み替え、効率化し、生産性を上げていくことが許されています。日本の企業では、あまりにもこのあたりが曖昧で、生産性が上がるやり方を採用しようとしても、いろいろな部署から反発を受けることが多いですね。

最近でもこういった振る舞いは変わらないのですが、こういった悠長なことをしていると、会社自体が倒産するような時代です。昔なら撤退しなかった事業も早期に撤退するし、どんどん社員を整理するようになってきています。だから日本の企業には、効率面でも変わってほしいです。

──ありがとうございました。

勝間和代(かつま・かずよ)氏

経済評論家、公認会計士
経営コンサルタント、トレーダー、証券アナリストなどを経て、2007年からフリーの経済評論家として独立。
 2005年、ウォールストリートジャーナル紙から「2005年に注目したい50人の女性」の1人に選出。
 2006年、エイボン女性大賞を最年少で受賞。内閣府男女共同参画局「仕事と生活の調和(ワークライフバランス)に関する専門調査会」専門委員。
 オンライン上で、女性コミュニティサイトの草分けの1つであるムギ畑を創始。3児の母。
 2008年、チャリティプログラムChabo!に参加。

主な著書
「効率が10倍アップする新・知的生産術」(ダイヤモンド社)
「無理なく続けられる年収10倍アップ勉強法」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
「決算書の暗号を解け!」(ランダムハウス講談社)「お金は銀行に預けるな」(光文社)等。

(出典:日経bpspecial ITマネジメント)



◆「成果主義の失敗」時代を個人で乗り切るには◆

●世界的な競争のあおりを受けて、日本企業では成果主義や能力主義の人事評価制度導入が進んでいる。成果主義自体は導入が人心を荒廃させしかも肝心の生産性がむしろ下がる傾向もあるなど、評判は芳しくなく見直しも進んでいるが、いずれにしろホワイトカラーの生産性向上は企業にとって重要なポイントになっており、ビジネスパーソンは個人の能力を高め続ける必要がある。
●前編に続き、経済評論家で公認会計士である勝間和代氏に、生産性が問われる時代のビジネスパーソンの生き方について聞いた。


成果主義が失敗した理由とは

――日本の企業では、生産性を上げるために成果主義や能力主義を取り入れることが、ちょっと前に流行のようになりました。しかし結局うまくいかずに有能な人間が流出したり人心が荒廃し、評価につながらない、職場での無償の協力態勢が崩壊するなど、失敗例が多く、むしろ生産性が下がったりして、現在では終身雇用の利点が再発見されたりしています。この失敗の原因はどのようなところにあるとお考えですか。

勝間 氏(以下敬称略):  日本企業では、形だけ成果主義を取り入れたため、うまくいかなかった例が多いです。個々人で課題と目標を明確化して、それをクリアしたかどうかを評価するシステムと指標作りを、きちんとしないと駄目です。明確に「どういった部分を成果とするのか」定量的な定義が明示できなかったことが原因だと思います。

たとえばある企業では成果主義を導入したものの、評価システムがうまく働かず、70%もの人がA評価になったんです。個々人の成果には時期に応じて波があるはずで本来は存在して当たり前のB評価やC評価は、「非常に悪い評価」という価値観に、会社全体が染まってしまった。こうなると評価する側はBやCを付けにくい。目標を達成すればA評価になれるわけですから、従業員も、年度初頭の目標設定時に目標を低く設定したりするようになりました。当然ですが会社全体としてのパフォーマンスは全く上がらなくなり、業績が落ちていったんです。

――成果主義などが取り入れられてきた環境では、ビジネスパーソンは、効率を上げるため、知的生産スキル向上が求められますね。

勝間:  各個人も、会社という組織で安穏として暮らしていくのではなく、どんどん生産性を高める必要があるでしょう。とはいえ、個人のスキルを上げることも必要だと思いますが、それよりも重要なのは、会社の選び方だと思います。どれだけスキルを上げ実力を発揮しても、昇進できなかったり給料が上がらなかったりするようでは、やはり報われません。そういう駄目会社は見捨てて、転職したほうがいいと思います。幸い、昔の社会と違い現在では転職市場が活発なので、ある程度の実力があれば、20代なら大丈夫ですし、30代半ばでも転職できるでしょう。

――転職先を考えたときに、給与面や福利厚生といった項目は数値や文字で出ますから見比べられますが、マネジメントスタイルの比較は難しいのではないでしょうか。

勝間:  先に転職した先輩に聞くことが一番いいですね。もう1つ重要なのは、面接相手の上司を見て、そうなりたいと思うかどうかです。会社のマネジメント層や上司を見て、この人たちのようになりたいと思うかどうかは重要です。

もちろん転職する側にも、きちんとしたスキルが必要になります。「どういう仕事をしてきた」というよくあるものだけでなく、多くの人から見て分かりやすい基準を満たしているかどうかです。たとえば資格ですね。

有利に転職しようと思えば、やはり、きちんとした資格を持っている必要があるでしょう。資格自体が転職先の仕事に有利に働くかどうかは分かりませんが、採用する側にとっては、1つの指針になります。だからこそ、資格は持っていたほうがいいのです。

細切れの時間だって活用できる

――資格は目に見えるから、評価する側としては分かりやすいですね。

勝間:  語学などは、非常にベーシックな技術だと思います。英語に関してならTOEICは、ぜったいにやったほうがいいです。最近では、英語だけでなく中国語なども重要になってきていますが、インターナショナルに仕事をしたいと思っていたり、海外からの情報を入手したいと思っているなら、語学は必須です。英語のスキルを身に付けることで、ワールドワイドな視点で物事が見られるようになります。英語を覚えれば幅広い情報が入ってくるだけでなく、マーケット自体を広げることができるんです。仕入れ先だけでなく、販売先も世界に広げることができます。

よく外資の給料は高いといわれますが、これも簡単な論理なんです。外資というのはワールドワイドでビジネスをしている企業ですから、より安く仕入れ、より高く売る市場を見つけられるからです。

語学にしても、漫然とやるのではなく、TOEICをいつまでに何点取るという目的をきちんと設定することが重要です。また、普段の仕事で、英語を使う機会をできるだけ増やし、インプットだけでなくアウトプットしていくことで、いい循環が生まれ、勉強にも励みになります。

会社に資格取得制度があるなら、それをうまく利用することです。勉強の費用や試験の費用は会社持ちですし、もし落ちたら恥ずかしいとか、査定に響くとなれば、一生懸命に勉強するでしょうし。

もう1つ重要なのが、いろいろな本で書かれていることを、愚直に本当に実行するかどうかです。やってみることで分かることは、数多くあります。人に頼んだり人に聞いたりも大事ですが、やはり実際に自分でやってみることが大切なんだと思います。

――20代や30代の人にとって、基礎といえる勉強はなんでしょうか。

勝間:  私の場合、読む技術や書く技術の本はよく読みました。ものを書くときに重要な起承転結というフレームワークもありますし、「人と話をするときには、こういった組み合わせで、こういった流れで話する」といった、コミュニケーション技術ですね。これがないとフレームワークが増えていきませんし、またアウトプットの技術も磨かれていきません。人とコミュニケーションをするときに、きちんとしたフレームワークを持っていれば、簡潔で分かりやすくコミュニケーションできます。

こういった基礎にあたる部分は、きちんと自分に根付くまでに時間が掛かります。でも、こういったことをしっかりやっておかないと、後々、勉強の伸び代が変わってくるものです。漫然とインプットばかりしていると、目的を見失い、勉強が続かなくなります。だからこそ、何らかのアウトプットの部分を持つべきなのです。こうなることで、勉強自体がいい循環で回っていきます。

社会人になるとなかなか時間が取れないので勉強できないとよく言いますが、1日の生活の中で、細かな時間が相当あるはずです。例えば通勤時間は非常に有効な時間です。満員電車では何も読んだり書いたりできないと思いがちですが、MP3プレーヤーで英語のリスニングをするとか、オーディオブックを聞くとか、いろいろな方法があります。

英語を覚えるなら、会社の近くにある英会話教室に朝通ってもいい。これなら残業で行けなくなることもありません。朝早く出るから電車も空いてます。誰もが持っている細切れの時間をどのように活用するかで、それぞれの人生に大きな差が付きます。寝ずに勉強するのは、社会人では長期間は続けられないでしょう。それよりも、途中挫折せずに、きちんと成果を出す勉強の仕方が必要なのです。

こういうのは、RPGゲームと同じですね。RPGゲームなら、レベルがどれだけ上がったか、簡単に分かります。多くの勉強でも、基礎から初め、きちんとアウトプットしていくことで、今どのくらいの位置にいるのか分かります。テストだけでなく、いろいろ実地に使ってみて、どれだけ成功体験を蓄積できるかが重要です。成功体験が貯まってくれば、この勉強は役に立つと分かり、モチベーションが上がるので、どんどんステップアップしたり、長期間続けられるようになるでしょう。

生き残りのためにも生産性向上が重要だ

――勝間さんは、「情報のGive五乗の法則」というものを言われていますが、これはどんなことですか。

勝間:  情報は、非常に重要なものです。情報こそが現在の通貨といえるほどです。情報の活かし方次第で、私達の生産性、付加価値の量が決まってしまうのです。このためよく言われのが「ギブアンドテイク」ですが、情報に関してはギブし続けることで、いい関係を作り上げられると信じています。情報は、人に与えることで価値が下がるということは、あまりありません。また、物質的なものではないので、無くなりもしません。

例えばブログなどで情報を与え続けていると、そのうち提供されている側は、情報をもらっているばかりでは居心地が悪くなり、何かの機会があったら相手に見返りを渡したいという欲求が高まってきます。ある意味、情報を与えることは、将来にわたる有効な貯蓄と同じなんです。

昔だと、情報をギブするには、実際に人に会うなどが必要でした。しかし最近ではメーリングリストやブログといった手法により、それほど時間と手間を掛けずに情報を出せるようになりました。自分がインプットしたものをアウトプットする練習と考えれば、ブログの記事を書く時間も、それほど苦にならないでしょう。とにかく、情報をギブすることが、上質な人との人脈を作る手段なんだと思います。

――今、少子化による国内市場縮小、グローバル化やIT革命による世界的な競争激化などで、日本企業には厳しい状況が続いています。こうした中で、個々のビジネスパーソンとしては、どのように生きていけばいいのでしょうか。

勝間:  戦後の経済復興自体、日本企業の実力によるというより、世界情勢の流れに応じたラッキーな面が強かったですね。戦争で減った人口が急速に戻っていって国内市場も企業活動も活性化し、朝鮮戦争特需が生まれるなど、好況がうまく持続しました。こうした状況に応じて、普通の人であれば幸せになれる時代が長く続いたと思います。

しかし、70年代中盤から、日本では世界に類を見ないほど急速な少子化が進行し、急速に若年人口が減っていく状況になってきています。私は強く思うのですが、多くの人は、少子化のインパクトを甘く考え過ぎています。人口が減るわけですから、確実に国内マーケットはシュリンクしていき、パイの奪い合いになるでしょう。当然、負け組企業の退場や、企業統合、買収などが起こります。そうすると働く人は嫌でも選別されていく事態になります。こういった状況でどう幸せに生きるかは、今後の課題です。ただ、少子化時代の生き方指針にきちんとした結論が出るには、まだ10年、20年かかると思います。

こうした厳しい社会状況になっても生き抜いていくために、個々人は、きちんとしたスキルを身に付けていくしかありません。普通に「大学を出て新卒で会社に勤めれば、定年まで会社が面倒を見てくれる」時代ではなくなっています。スキルがなければ転職もできないし、フリーランスになることもできません。

自分自身をきちんと磨いていけば、会社が合併しても、リストラされることはないでしょう。もし、それでもリストラされるような企業なら、むしろその会社には先がないわけですから、見限ればいいんです。きちんとしたスキルを持っていれば、転職市場でも、自分を高値で売ることができます。資格など、目に見える形でスキルを持つことが、今後のジョブセキュリティになると思います。

──ありがとうございました。

(出典:日経bpspecial ITマネジメント)


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