地方のがん診療の中核病院でも、手術の実績や治療成績に大きな格差のあることが、厚生労働省研究班の調査で、明らかにされました。
扱う症例数に隔たりがあり、当然といえば当然なのですが、質の高い治療のためにも地方の拠点病院整備が大切だと思います。
何事も予防に勝る治療なしですので、がん予防も徹底して実践しています。
◆厚労省調査 地方の整備急務
調査は国公立がんセンターや成人病センターなど30施設で作る「全国がん(成人病)センター協議会」の加盟病院を対象に行われた。
治療水準の目安ともなる年間手術件数は、2001年に胃がんの場合、最多だった国立がんセンター中央病院の659件に比べ、最少の病院は45件と、約15倍の開きがあった。肺がんでも最大17倍の格差があり、県立がんセンター同士を比較しても、168件から19件と10倍近い差があった。食道がんでは、年間10件に満たない病院が6施設にのぼり、1件しか実施していない病院もあった。
5年後の生存率では、胃がんの場合、1993年から98年までの患者約1万6000人のデータで、年間患者数が100例未満の施設は65・1%と、100例以上の施設に比べ4ポイント余り低かった。
さらに医療機関のタイプにより、▽がん治療を専門にした「がんセンター型」▽総合病院にがんセンターが併設された「併設型」▽心臓病など他の生活習慣病も治療する「成人病センター型」▽すべての疾患を診る「総合病院型」――に分けたところ、がん全体の生存率では、最も高い「がんセンター型」が64・2%だったのに対し、総合病院型は52・2%と12ポイントの差が見られた。
手術件数が多い病院ほど5年生存率が高く、手術に伴う死亡率は低いという別の報告もある。調査では、がんの部位によって手術件数の極めて少ない病院もあり、これが技術や治療成績の格差につながっているとみられる。研究班長の岡本直幸・神奈川県がんセンター研究科長は「施設によって患者の重症度などが異なることが考えられるが、医師の熟練度も治療成績の差の要因となっている可能性がある」と話している。
5年生存率 がんの治療後、5年間生存した患者の割合。がんは5年以上経過した後の再発、転移は少ないことから「治癒」とみなし、治療成績の目安とされる。国立がんセンター中央病院のデータでは、男性で1962―66年の29.5%から92―96年は58.1%に向上した。
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