米国での主要なガンによる死亡率、1998年から2000年の間はほぼ横ばい
健康・予防政策が功を制して米国ではガンが減っているそうです。対策の遅れている日本は増加の一途ですね。ガン予防策がかなりわかってきていますので、やはり予防が一番ですね。米国での主要なガンである肺ガン、乳ガン、前立腺ガン、大腸ガンによる死亡率が、1990年代後半から減少し続けていたが1998年から2000年の間はほぼ横ばいとなった。「ガンの実態調査年次報告、1975-2000」の新しいデータからわかった。この報告書は、米国疾病対策センター(CDC)、米国ガン学会(ACS)、国立ガン研究所(NCI)、北米中央ガン登録協会(NAACCR:North American Association of Central Cancer Registries)の4機関により共同で作成されたもので、1998年から毎年発行されている。米国のガンの死亡率およびガンの発症率のデータが集められており、ガン対策の開発と評価に役立てられている。報告書は、9月3日付けのJournal of the National Cancer Instituteに掲載された。今年の報告書では1975年から2000年の長期のガン死亡率および発症率の動向と最近5年間(1996年-2000年)の動向に焦点が絞られている。特に、最近5年間の発症率データは米国の人口の68%をカバーしている。また、白人、黒人、アジアおよび太平洋諸国、アメリカインディアン/アラスカ原住民およびヒスパニックの五つの主要な人種別のデータが集められているのも最近の動向データの特徴。それによるとガンによる死亡率は、1998年から2000年の間にほぼ横ばいとなった(人口10万人当たり約200人)。それ以前は、1990年まで増加傾向にあり、1994年まではいったん横ばい(人口10万人当たり215人から212人)、それから1998年まで減少していた。ガンの発症率は、ガン全体でみると、1975年から1992年までは増加、1992年から1995年までは減少、その後、1995年から2000年までは横ばい(10万人当たり約480人)となった。最近、女性の乳ガンおよび男性、特に白人男性の前立腺ガンの発症率増加が認められるが、男性における肺ガンの長期にわたる減少により、全体の発症率は横ばいを保っている。主要な4種のガン別にみると、肺ガンでは白人および黒人の死亡率が1990年代ずっと減少しつづけ、女性の死亡率の増加が鈍くなった。これは、過去10年間の禁煙努力の効果が現れていると推測されている。乳ガンの発症率は、黒人および白人の間で増加し続けているが、その増加速度は1986年以降緩慢になっている。死亡率は、1990年代の初頭より減少しているが、黒人女性よりも白人女性で急激に減少していることが報告されている。1990年代に乳ガンの死亡率が減少し、発症率が増加したのは、マモグラフィースクリーニングの増加と、改善された治療が普及したためとの指摘がある。前立腺ガンの死亡率は1994年以来、下降しているが、その一方では発症率が白人と黒人男性の両方で1995年以来増加の一途をたどっている。最近の発症率の増加原因はよくわかっていない。1970年代から1980年代のはじめにかけて、前立腺ガンの発症率は増加していた。前立腺特異抗原(PSA)検査の導入が、1980年代後半の急激な発症率の増加に寄与したとみられている。最近の発症率の増加は、PSA検査導入以前の増加とよく似ているという。大腸ガンの死亡率は、白人と黒人の間でともに1970年代以降減少し続けているが、特に1980年代半ばから急激に減っている。黒人男性および女性よりも白人男性および女性の間での死亡率の減少が大きい。大腸ガンの発症率は、1996年以降、全男性および女性とも横ばいとなっている。人種別に見ると、すべてのガンの発症率が、アジア太平洋諸国、アメリカインディアン/アラスカ原住民、およびヒスパニック系の男性では減少しているのに対し、これらに属する女性ではこれといった傾向は見られない。ガンによる死亡率はアジア太平洋諸国の男性および女性では、減少したが、アメリカインディアン/アラスカ原住民、およびヒスパニック系の男性および女性では、横ばい状態である。白人と黒人の間で大腸ガンおよび乳ガンの死亡率に差があり、それが広がっていることがわかったが、例を挙げると、2000年では、白人男性の大腸ガンの死亡率が24.445であるのに対し、黒人男性のそれは34.387である(いずれも人口10万人当たり)。乳ガンの死亡率は、白人女性が25.962、黒人女性が35.234(いずれも人口10万人当たり、2000年)。この差は、黒人が、白人と同じようにスクリーニングと治療の機会を得ていないためとみられる。報告書では、ガンはさらに減少させることができるが、そのためには大腸ガンのスクリーニングなどの適切なガンコントロールをすべての人々に浸透させるために、連邦政府、州、各地方、個人の強力なパートナーシップが必要であると結論付けている。特に米国厚生省が掲げている「Healthy People 2010」の目標に近づけるために、ガンの予防、スクリーニング、治療を効果的に行うための方策が必要であるとしている。