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第44代オバマ大統領についての論説は、新聞、雑誌、週刊誌で多く取り上げられている。堤未果さんは、日本では余り知られていない米国の大統領選挙の影の部分について雑誌「世界」2月号に寄稿した。
クリントン氏はサウジアラビアなど外国政府から献金を受けていることが問題になった。オバマ氏は選挙資金をインターネットの小口献金で集めたとしたといわれるが実際は、小口は全体の約4分の1、残りは圧倒的に企業や団体からの大口献金が占めている。最高額大口献金者上位にはゴールドマンサックス社やシティグループなどウォール街の大企業や、エクシロン社のような大手エネルギー企業、ナショナル・アミューズメント社などの巨大メディア企業がずらりと並ぶ。 以下、「世界」2月号から論文を掲載します。 「チェンジ」の裏で失われる「チョイス」 堤 未果 世界2月号 堤 未果(つつみ・みか) 国連、アムネスティなどを経て野村證券ニューヨーク支店に勤務中、9・21テロに遭遇。以降ジャーナリストとして活躍中。著書に『岩波新書、日本エッセイスト・クラブ賞受賞』、『報道が教えてくれないアメリカ弱者革命』など。 「今日アメリカに変化が訪れた」 2008年11月4日夜。アメリカ史上初の黒人大統領に選ばれたバラク・オバマはイリノイ州シカゴに集まった10万人の支持者を前にそう語った。 公民権運動からたった半世紀しかたっていないアメリカで、ケニア人の父と白人の母の間に生まれたこのアフリカ系大統領の誕生は世界中に衝撃を与えた。ハンサムで長身、声はよく通り、抜群にうまいスピーチで観る者を魅了するバラク・オバマ。政府からの援助金を受け取らずにインターネットで数百万ドルの小口献金を集金し、政治離れした若者たちを投票所に向かわせ、過去30年で最高の投票率をもたらした彼をメディアは称賛した。〈ケネディの再来〉〈草の根民主主義の象徴〉〈アメリカ再生の旗手〉。 この8年間テロとの戦いで消耗し、国際社会からの信頼は下がり続け、金融危機によってとどめの一撃を受けたアメリカ国民が失った〈未来への希望〉と〈自国への誇り〉。オバマはそれらを「チェンジ」という砂糖衣に優しく包み、疲弊した国のすみずみに惜しみなくばらまいた。まだ大丈夫、アメリカは変われる。ウルトラCは必ず起こる。長い選挙期間中、オバマが繰り返し言い続けた力強いフレーズの下、アメリカ市民が共に描いた1つの夢。YES WE CAN。 だが選挙という長い祭りが終われば、国政という現実が戻ってくる。変化を望む人だけでなく、望まない人のところへも。そしてまた、世界中を魅了したエンターテイメントの外側で、もうひとつ別の大きなものが失われたアメリカにも。 天文学的選挙資金と競馬レース 「黒人大統領の誕生イコール誰もにチャンスが開かれたアメリカというのはマスコミが作り出した幻想です」 そう語るのはサンフランシスコに住む39歳の金融アナリスト、リチャード・ブラウンだ。彼はオバマ勝利の最大勝因の1つである選挙資金が、候補者にもたらす格差を楷摘する。日本と比べ、アメリカで選挙に出馬する際の必要資金は桁違いだ。上院議員でも1000万ドル(約10億円)はかかるという。オバマの立候補資金は3億ドル、9月に集めた1億5000万ドルは1か月単位の集金額では過去最高で、7億5000万ドルという最終集金額は米国の歴史を塗りかえてしまった。 「現職の政治家に対抗できるだけの資金を集めるなど一般人にはまず不可能です。1992年と96年の大統領選挙に出馬したロス・ペローのような大金持ちか、90年代のクリントンのように財界から巨額の献金を集めるしかない。オバマは黒人であることでまるで可能性を広げたかのように言われたが、実は歴史を塗りかえた彼のもう1つの勝利、選挙資金競争における勝利が、逆に敷居を高くしてしまいました」 数100万ドルの小口献金を集め話題になったオバマ。だがそれだけでは7億5000万ドルという資金には届かない。連邦選挙管理委員会が公表しているデータを見ると小口は全体の約4分の1、残りは圧倒的に企業や団体からの大口献金が占めている。最高額大口献金者上位にはゴールドマンサックス社やシティグループなどウォール街の大企業や、エクシロン社のような大手エネルギー企業、ナショナル・アミューズメント社などの巨大メディア企業がずらりと並ぶ。ニューズコーポレーション社のルパート・マードックのようにヒラリーとオバマの両方に献金している者もあり、オバマのリストの半分以上はヒラリー・クリントンのリストと重複していた。 「競馬と同じですよ。企業は合理的だ。勝ち馬と思えば両方に勝負をかけます」 リチャードは言う。 「政治献金には上限があるはずでは?」 アメリカの選挙運動法は企業などが巨額な献金で政治家をコントロールしようとすることを防ぐ目的で何度も改正が重ねられている。2002年に成立した「マケイン・ファインゴールド法」では候補者への献金には夫婦で4600ドルの、政党への献金には2万5000ドルという上限が設けられた。企業や団体が献金用に設立する政治活動委員会を通した献金も総額上限が1万ドルとなっている。(米国国務省国際情報プログラム室資料 A Primer on Campain Finance 2002) だがリチャードは首を振った。 「実際には選挙運動法(FECA)はザル法と化しています。今回マケイン・共和党陣営が立ち上げた『マケイン・ビクトリー2008』はその上限を7万ドル、オバマ・民主党陣営の『オバマ・ビクトリー基金』は2万8500ドルに設定している。登録しているロビイストやバン ドラーと呼ばれる集金人が1人につき10万ドル単位で集める事もできるのです。ロビイストから献金を受け取らないと公言したオバマも非公式でロビー活動をする企業弁護士たちからはちゃんと献金を集めていた。ヒラリーやマケイン、オバマについたバンドラーの顔ぶれはウォール街の強者揃いで、その結果があの天文学的な数字です」 2004年の大統領選挙でジョージ・ブッシュとジョン・ケリー両者が集めた選挙資金の総額は6億9600万ドルだった。08年10月後半までにオバマが1人で集めた資金は6億5000万ドルを超えている。私の中でふと、かつて超大国間で行われたARMS-RACE(軍拡競争)と、この加速する選挙資金競争が重なった。どちらも一度始めると簡単には抜けられず、相手が脱落するまで拡大し続ける果てのないレースだ。 「資金が多ければ多いほど選挙戦は有利になります。人口が3億人を超えるアメリカで、その半分は広告費に消えますから」リチャードはそう説明する。 投票日直前の10月29目、オバマは全国のテレビ局で夜のプライムタイムにおける30分のCM枠約500万ドル分を買い占めた。全米各地で苦しむ貧困層の映像が流れ、それに対する解決策がオバマによって語られるというこのCMは観る者の心を強くつかむインパクトに満ちていた。オバマが費やした広告費は同月25日までで2億500万ドル、マケイン陣営の方は1億1900。テレビ社会のアメリカで、広告費は大きな差をつける。だがふくれあがる数字と手の中の力が比例するというこの力学によって失われるものはないのだろうか? メディアが追い続ける二大政党間の資金レース。この競争からこぽれおちた他の候補者たちについて、私達はどれほど知っているだろう? 二大政党が支配する大統領討論委員会 1960年にリチャード・ニクソンとジョン・F・ケネディが初めて公の場で討論会を行って以来、公開討論会は大統領選挙において有権者が候補者たちの政策を知る重要なものさしの1つとなっている。候補者たちが各政策について直接対決し熱い議論を交わす討論会は、インターネットの普及により今やテレビだけでなくネットでも観る事ができるのだ。ネット上で数10万人のユーザーが行うリアルタイムの意見交換は、選挙戦をさらに大きく盛り上げる要素になる。 だがワシントンに本部をかまえるNPO、League of Women Voters(女性有権者連盟)の地域オーガナイザーの1人である夕ーニャ・オブライアンは、ネットが全米の有権者をつなぐ開かれた議論を展開させる一方で、この選挙制度が持つ負の側面を鋭く批判する。 「かつてこの公開討論会は国民のための開かれた制度でした。1976年から84年までこの討論会をしきるのは私達LWVの仕事だったのです。女性の社会進出を、もっと積極的に政治に関わることで推進する目的で設立されたこの連盟が最も重要視したのは、できるだけ中立な立場を貫くことでした。今まで男性が支配していた政治という新しい世界に女性がスムーズにはいるためには、私達の側にバイアスがあってはいけない。権力のしがらみのない女性が国を治めるりーダーを公平な目で選べるようにしなければ。そう思い私達は一生懸命でした」 1980年、当時現職だったカーター大統領が無所属候補との討論を拒んだ時、LWVはその候補を外す代わりに大統領抜きで討論会を実施した。その討論会は全米で5500万人の有権者が視聴する大成功をおさめたという。 LWVはまた2大政党側が触れたがらないテーマも有権者のためにちゃんと討論会のテーブルに乗せ、有力候補だけでなく第三党の候補者たちも平等に議論に参加させた。2大政党から何度も参加者リスト案が送られてきたが、LWVは彼らの都合で作成されたリストでは有権者の選択肢が奪われると判断し、それらの案を却下した。 「国民にとっては評判が良い討論会でしたが、2大政党の議員やそれを支持する企業の中にはそういう私達の中立な姿勢をよく思わない力があったようです」 ターニャはため息をつく。 1985年、共和党のフランク・ファーレンコプフ氏と民主党のポール・カーク氏の2人は、両党が立ち上げた国政研究委員会より国政選挙に関する論文を発表、翌年2人はCPD(大統領公開討論委員会)と称するNPOを設立し、公開討論会は両党が主催すべきだと主張した。 次ページ(2)につづく お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009.01.21 01:44:16
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