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賃労働

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2009.01.24
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テーマ:ニュース(96255)
カテゴリ:カテゴリ未分類
  価値観転換へ5つの提言

 今こそ、これまでの価値観を転換すべきである。むきだしの競争社会では人は生きていけない。「連帯と相互の支え合い」という協力原理が活かされる社会、ぬくもりのある社会とするため幅広い国民的な合意を形成していく必要がある。株主主権主義からステークホルダー主義への転換をはかり、効率と競争最優先の価値観から公正と連帯を重んじる日本をめざして大きく舵を切るべきである。
 そのために、政策の基軸として以下の5点を提唱したい。
 第1は、「連帯」である。社会は国家と個人、企業と個人という2極で成り立っているわけではない。家族、地域共同体、労働組合、NPO、各種団体、政党などさまざまな中間組織が市民社会、健全な民主政治を支えている。しかし、これまでの市場原理主義志向の中で、個人の価値や能力も市場価値で測定するという風潮が広まった。雇用関係、労働関係の個別化、個人化も進んだ。英国の社会学者ロナルド・ドーア教授は、これを「市場個人主義」と呼ぶ。自己の経済的利益のために働く論理のことで、「自立自助」「自己責任」「依存排除」「選択の自由」といったフレーズに共通する思想である。しかし、個人主義からは、ぬくもりのある社会は生まれない。「お互いさま」という、協力原理を社会の中心に据えることが重要である。
 第2は、「公正」である。市場原理主義が生み出したのは、格差の資本主義であった。今、転換すべきは、公正な資本主義である。健全な市民社会は、層の厚い中間層で成り立っている。この中間層が、雇用社会を支え、社会保障を支え、消費の主役となる。これに対し格差の拡大は、富める人と貧しい人を作るだけでなく、社会を支える人と社会から支えてもらう人という二極化社会を生み出す。かつて日本は、「1億層中流」と言われるような中流意識の強い国であった。しかしいつのまにか、日本は格差の大きい国になっている。もう一度日本を、厚みのある中間層の国にしなければならない。
 第3は、「規律」である。倫理無き欲望の追求が未曾有の金融危機を招き、世界経済を混乱に陥れた。新自由主義思想は社会にとって必要な規律までをも脇に押しやってしまった。法的規制だけではなく、社会、市民による監視機能、企業や組織の倫理的行動を呼びさます必要がある。今回の金融危機を教訓として、こうした根本的な混乱を再び起こすことのないよう、必要な規律を政策体系に組み込むべきである。適切なワークルールの設定、従業員を含むすべてのステークホルダーとの信頼関係の構築、規制逃れを防止し、コンプライアンスの徹底を促す仕組みづくりが求められる。
 第4は、「育成」である。日本を、金融主導のマネー経済ではなく、ものづくりと産業技術力を重視した経済にしなければならない。公正な処遇と人材育成という視点を欠いたまま雇用形態の多様化を先行させたことが格差社会の大きな要因にもなっている。のみならず、それが、労働者の不満を高め、職場を分断化し、個別労働紛争を増加させている。これまでの企業行動は、雇用削減、総額人件費抑制のバイアスがかかり、人材育成という理念、戦略が軽視されてきた。労働の価値を置き去りにした低価格志向社会への暴走も人材軽視に拍車をかけてきた。競争を通じて、安くて、良い商品やサービスを提供することは市場経済システムのプラスの側面である。しかし、不当な安値競争は、そこに働く労働の価値そのものを損なうことになりかねない。市場競争においても、労働の価値を適切に評価し、不当な価格ではなく、労働の価値が正当に評価されねばならない。
第5は、「包容(インクルージョン)」である。失業、低所得、健康の悪化、家族の崩壊などの問題は、原因まで遡って、問題点を取り除かなければ解決にはならない。競争のスタートラインは平等でなければならない。競争のスタートでハンディのある人には社会的支援が必要である。職業を必要としている人々には、訓練の機会と、その間の生活保障を提供し、より質の高い雇用機会を提供する必要があろう。障害を抱えている人々にも暮らしやすい生活空間を提供するとともに就労に向けたきめ細やかな支援が必要であろう。健康、安心、安全のためのセーフティネットが張り巡らされた社会的、地域的サービスが提供されなければならない。すべての人が、ディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を求める権利を有している。社会的なハンディを負う者を排除するのではなく、包容する政策理念を追求すべきである。
 ただ、こうした価値観転換社会を実現するには、市場原理主義社会よりも多くのコストがかかるかもしれない。国民には新たな負担を受け入れる覚悟も必要となってくる。

  日本的アプローチで危機克服を

 以上のような5つの視点を持ちながら、まず、やらねばならないのは、世界の金融混乱の拡大を防ぎ、実体経済への影響を最小限にとどめることである。
 11月14、15日、米国ワシントンに主要20カ国(G20)の首脳が集まり、金融や世界経済の安定化策について協議した。その結果、「財政の持続可能性の維持に資する政策枠組みを確保しつつ、状況に応じ、即効的な内需刺激の財政施策を活用する」ことが合意された。
では、これに基づく日本の政策は何であろうか。言えることは、均衡予算、賃金引き下げといった縮小均衡による政策をとるのではなく、雇用拡大、賃金増、家計の可処分所得の増大という方向に向けて政策の舵を切るべきであるということだ。わが国の経済成長はこれまで、輸出に依存していた。だが、輸出は世界経済の落ち込みと、急激な円高で打撃を受けており、内需拡大に向けて経済のバランスを取り戻す施策を講じなければならな
い。需要を拡大するには賃金の引き上げがきわめて重要である。必要ならば、財政政策によって家計消費を支え、不平等の拡大にも対応すべきである。
 米国のオバマ次期大統領は、今回の金融危機を新たな発想で乗り越えようとしている。大規模な環境、エネルギー投資を行い、雇用を創出する「グリーン・ニューディール」政策だ。1930年代にフランクリン・ルーズベルト大統領が公共投資のニューディール政策で大恐慌を
乗り切ったが、ダムなど旧来の公共事業ではなく、ハイブリッド車の普及やバイオ燃料の開発など温暖化防止ビジネスを広げていくことで経済と環境の危機を一挙に解決しようとする試みである。オバマ新大統領は1月から、この政策を実行に移すことになるが、実は連合が加盟する国際労働組合総連合(ITUC)では何年も前からグリーン・ニュー・ディールの実施を各国政府に求めてきた。そして、この環境技術こそわが国が最も得意とする分野である。私も、この発想をわが国の土壌とマッチさせた「日本版グリー・ン・ニューディール政策」を早急に実施すべきだと考える。
 日本版では環境負荷の軽減の観点から、長期使用が可能な「200年住宅」の建設促進、太陽光パネルなど新エネルギーの積極活用、電気や水素を燃料とする自動車の普及などが考えられる。さらに環境分野だけでなく、人手不足の介護医療分野や衰退する一方の農業分野にも、新たな雇用機会の創出を目指すべきであろう。
 ただ、財政出動は、国内だけにとどめるべきではない。わが国も含め、経済危機に見舞われながらも外貨準備に余裕のある国は、IMFに対する貸し付けを通じ、開発途上国をもっと支援すべきである。開発途上国では経済危機に端を発した食糧価格の暴騰を受け、飢餓の増大という生死に直結する問題を抱えている。あらゆる分野でグローバル化か進んだ
今、自国発展のみを追求する社会モデルはあり得ない。
 なお、この支援の条件として緊縮財政を押し付けてはならない。各国政府は、継続する食糧危機への緊急対策として食糧市場での投機対策などに合意するとともに、最貧困諸国への緊急援助の拡大、持続可能な食糧生産のための中期的政策、食糧備蓄の再構築にも合意すべきである。また、今回のG20金融サミットを機に各国政府は、途上国援助の拡大とミレニアム開発目標の達成という公約を果たすため、なにをなすべきか具体的に明らかにすべきである。

  緩和ではなく規律こそ必要

 G20金融サミットの主要論点の一つは、今回のような金融危機が再発しないようなルールや仕組みの再構築であった。この20年間、大半の国の政府は国際金融機関とともに規制の甘い「新しい金融体系」を後押ししてきたが、その結果が今回の金融危機である。すなわち、無責任な規制緩和によって、投資銀行、ヘッジファンド、プライベートエクイテイといった金融機関は過剰な負債拡大に走り、信用リスクを証券化で移転する「金融革新」により、仕組商品という"不良債権"が世界中にばらまかれた。今回の危機で明らかになったように、リスクは分散されたのではなく、隠されたのである,
 危機に直面した各国の中央銀行と政府は、信頼感の回復と信用市場の安定化を目指した介入を行ってきた。これは金融システムを守るために必要なことである。とは言え、これらの対策は単なる火消しにすぎず、それだけでは経済のガバナンスに対する国民の信頼は回復できない。再建する必要があるのは各国と世界の規制体系であり、これによって実体経済に安定的かつ効率よく資金を供給するという、金融市場の本来の機能を取り戻すことである。
 なお、G20金融サミットと時期を同じくして、世界の労働組合代表もワシントンに集結し、「G20緊急金融サミットに向けた労働組合声明」をとりまとめた=別表参照。会合には、私も日本の労働組合代表として参加、同時にG20の議長を務めたルラ・ブラジル大統領や世界銀行のゼーリック総裁、IMFのストラスカーン専務理事などと意見交換を行ってきた。そして、今回の金融危機で住宅や雇用機会、年金を失いつつある人々が世界で急増していること、速やかに対策を講じなければ全世界の最も貧しい人々、とりわけ弱者が悪影響を受けることを、再認識したのである。

 次ページ(3)へつづく






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最終更新日  2009.01.24 23:40:59
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