白砂青松のブログ

2010/02/10(水)03:53

「シーレーン防衛」幻想に囚われた人々

安全保障(86)

台湾有事の話になると必ず出て来るのが、「中国が台湾を占領したら日本のシーレーン防衛が損なわれる」「中国がシーレーンに対して嫌がらせをする」という類いの主張。 だから日本は台湾の側に立って中国の侵攻を防ぐべきだ、と続くわけですけど、この「シーレーン」の話が幻想に過ぎないということは、これまで弊ブログでも何度か述べて来たこと。 2年以上前にも、この時はインド洋関連でこんなエントリを書いています。 「シーレーン防衛という幻想」 http://plaza.rakuten.co.jp/whitesand72/diary/200710260000/ また、 「お姫様の裏切り?」 http://plaza.rakuten.co.jp/whitesand72/diary/200806160000/ というエントリのコメント欄では自称『高等な人間』という人がやはりシーレーン、シーレーンと喚くので、ちょっと突っ込ませていただいたら見事に醜態を曝して下さいました。 この幻想に浸っている方々は、中国が台湾を抑えたら、外交交渉の場で「シーレーン」を切り札にして日本の譲歩を引き出そうとすると、本気で思っているようです。 でも、そんなものが「切り札」になるはずもない。だって日本に「やれるものならやってみろ」と言われたら、それ以上何もできないんですから。 そう言われてなお、シーレーンを妨害するというなら、それは宣戦布告をするのと同義。もはや「外交交渉」なんて範疇は踏み越えてしまいます。 で、中国が最初から日本と戦争をする気なら、そんな日本に自衛権行使の口実を与えるような手段を採るのは、自分を不利にする意味しかない。 即ち、中国に日本と戦争する気の有る無しにかかわらず、そんな脅しは中国にとって何のメリットもない。よって、よっぽど中国政府首脳がおバカでない限り、そんな手段を採るはずがないということです。 現に冷戦時代においてさえ、平時に相手陣営のシーレーンを妨害するチャンスはいくらでもあったのに誰もやらなかったのに、中国がそんな手段を採ることが「普通にあります」と思い込んでいるのは、やはり幻想の世界に浸っているとしか言い様がありません。 ============================== この幻想を信じている人々の特徴は、自分にとって何がメリットになるかをきちんと考えず、嫌いな者の嫌がることをやればそれが自分たちのメリットになると短絡しているところでしょう。 以前、東シナ海のガス田開発にからんでも、とにかく中国に嫌がらせすればそれで満足、あるいは中国は日本に嫌がらせをすれば満足するに決まっている、そのためにはその嫌がらせによって得られる利益の何倍もの損失を被むるのも厭わず、といった主張をする人がいましたけど、これも似た様な発想ですね。 もう一つは、日本が中国から脅されたら唯々諾々と従うしかないと思っているらしいこと。 そんなもの、相手が本当に何かできるのか見極めて対応すれば何の問題もないのに、なんでこうも及び腰なんでしょう。 悪いけど、私には「ヘタレ」にしか見えないんですけどね。 そして、こういう人が主張するように台湾有事に日本が台湾の側に立つなら、中国と本当にドンパチすることになる。 中国に「商船を攻撃するぞ」とか言われたら縮み上がる癖に、自衛隊や沖縄の住民が攻撃されるのは何とも思わないらしい。 つまりは、こういう人にとって自衛隊や沖縄の人々は自分たちの「弾除け」でしかないってことですね。 ヤレヤレ。 そもそも、台湾占拠ごときで日本のシーレーンをどうにかできるなんて有り得ないってことも、地図を見れば一目瞭然。大きな影響が出るのは「対中国、台湾向け」だけなんですけれどね(苦笑)。

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