真・豪州安全保障事情2-減員? 増員?
某所では、オーストラリア政府は2004年に発表された「国防能力計画2004-2014」で海外派遣能力の向上を盛り込み、同時に軍の減員が決定したという話が広められました。これが本当なら、ここ2年ほどの減員はその方針に則ってのものとも考えられるのですが、これは本当でしょうか?昨日紹介した、国防相の昨年9月の月例報告ではオーストラリア陸軍の現況についても説明しています。オーストラリア陸軍は最盛期(1982-1983年)に33,072人の陣容でしたが、暫時削減(欧州よりも削減開始が早い)され、90年代半ばには現状に近い26,000人レベルとなっていました。削減幅は約2割ですから、4-5割の欧州各国に比べればかなり小さいと言えます。それ以降は仕事が増えているため、実際の戦闘や戦闘に関係するポジションに就く要員の比率("tooth to tail")は1996年の45.2%が2006年には66.6%にまで上昇していました。で、某所では「減員が決定」とありましたが、実際には--In December 2005, the Government announced the Hardened and Networked Army initiative, as part of the National Security: Update 2005 plan. The Hardened and Networked Army will provide the Army with greater mobility, combat weight and network capabilities, through a number of initiatives, including: ・1,500 additional personnel, as well as re-focusing the Reserves to provide high readiness forces which will support operations. ・Updating Army structures, training and procedures to enable the Army to make better use of new equipment that will be delivered over the next decade, including new helicopters, tanks, trucks, weapons systems and combat equipment.Combined with the recent announcement of two more battalions, the Australian Army's ranks will be strengthened by more than 4,000 soldiers which, it is projected, will bring our Army's numbers to 30,190 with a "tooth to tail" ratio of 68.2%. 2005年12月に、政府は「National Security: Update 2005 plan」の中で強化及びネットワーク化された陸軍構想を発表した。この構想は陸軍により高い機動性と戦闘力とネットワーク能力をもたらす。それには、以下の方策が含まれる。・即応性の高い予備部隊の構築はもちろんのこと、1,500人の増員を行う。・陸軍の組織、訓練、手順を見直し、今後10年間で供与される、ヘリコプター、戦車、トラック、兵器システム等を含む、新しい兵器によりよく対応できるようにする。2つの軍の増やすとするこの発表と合わせて、オーストラリア陸軍の要員は4,000人以上増強され、陸軍兵力は30,190人となり、"tooth to tail"比は68.2%となる。--と、2005年の段階で既に1,500人の増員が決定していました。そして、今回と合わせて4,000人以上増員し、30,190人にするというのが国防相の認識だということです。さて、本当に「減員が決定しました」というソースはあるんでしょうか?2003年までは増員しておいて、そのフレームワークは崩さないと言いながら、2004年には「減員が決定」、そして2005年にはまた増員?私には甚だ疑問ですね。「悪質なデマゴーグは誰か?」のファイナルアンサーは出たってところでしょう。