Washiroh その日その日

2012/05/08(火)13:01

映画『小早川家の秋』をまた見る

映画逍遥(199)

 6時に起き、コーヒーを淹れた。  ビスケットと煎餅を添えて、飲む。  うまい。  起きたときからコーヒーを欲していただけに、熱いコーヒーがほんとうにうまい。  新聞第1面トップも、テレビニュース第1項目も「国内原発稼働ゼロ」の大見出しとなっている。  毎日新聞は3面の関連記事で、仮に大飯原発が再稼働しても、伊方や柏崎刈羽といった「2番手」以降が続く状況にはないと書いている。  当然だ。  TBS「サンデーモーニング」を見始めた。  全原発が停止した直後にどんな意見が交わされるかに興味がある。  しかし、きょうの顔ぶれが見えたとたんに中身への期待はしぼんでいった。  メンバー名を書いておこう(敬称は省略します)。  寺島実郎、幸田真音、目加田説子(もとこ)、涌井雅之、岸井成格(しげただ)の5人だ。  目加田さんが、定期検査による原子力発電停止は1年も前からわかっていたことなのに、いまになって再稼働に向けて大騒ぎをするのは政府が怠慢だった証拠と述べたのがよかった。  とはいえ、全体に全原発停止をめぐ論議が低調なのはどうしたことだろう。  12時20分ごろ、雨が降らないうちにと急いで出て、バス停に向かったら信号手前で大粒の雨が降り始めた。  やれやれ、傘を持たずに出てしまったよと思うが、取りに戻るには息が苦しい。  止まっている始発バスが目の前で動き始め、あと5歩ばかりのところだったのになぁと思う。  ま、いまに始まった話ではないが、呼吸器の都合で小走りというやつが出来ない以上、乗りたいバスの目の前での発車は覚悟しなければならないのだ。  15分待ちの後、やって来たバスに乗り中央右側の座席についた。  ほどなく発車。  その間に雨も上がり再びいい天気である。  新緑の木々を見ると写真を撮りたくなる。  京王八王子駅前で下車。  降り注ぐ陽射しに目を細める。  天気予報は午後から降りはじめ、夕方には大雨と報じていたが、そうとは信じられない青ぞらだ。  しかし、まちがいなく降る。  ゆるゆる歩きなのだから、先を急いだほうがいい。  そう思っていたから、立ち寄ったドコモ・ショップで15分待ちといわれて直ちに出てきたのは結果的に正解だった。  図書館は空いていた。  本を返し、目をつけておいた金井美恵子の新作『ピース・オブ・ケーキとトゥワイス・トールド・テールズ』(新潮社)を借り出し、2階へ下りようかと思ったけれど時間がないから とこれは抑えた。  雨が降ると紙袋に入れた本が濡れてしまう。  本を探すのもざっと見るだけにし、辺見庸『たんば色の覚書』(毎日新聞社)を選び取って借りるだけにした。  上の写真は図書館からの帰りに撮ったもの。  バス停への近道で眺めた光景だ。  バス停に着いて2分もしないうちに乗るべきバスがきた。  陽射しがなおも明るい。  雨には降られずに済みそうだ。  15分後には家の中にいた。  陽次郎くんが昼食を摂っている。  ぼくも腹がへっているのでキッチンに入り、かみさんが用意しておいてくれたトンカツをキャベツを盛った皿に取る。  と、強風が吹き始めた。  窓の外を見ると、陽射しは消えて灰色になっている。  テレビ画面は分割され、上と左のスペースに文字情報が流れる。  茨城県で強風被害が出始めているらしい。  風の音がすさまじい。  間一髪だったよというと、陽くんが「ホントだねぇ」と答える。  かみさんからの休憩メイルに「出かけたのなら気をつけて」とあったので、すでに帰宅していること、間一髪だったことを書き送った。  食事を終え、陽くんと小津安二郎監督作品『小早川家の秋』(東宝 1961)を見る。  何度か見ている映画だが、ラストタイムはずいぶん前だ。  最初はどんなシーンだったっけ、と自問するが思い出せない。  クレジット・タイトルが終わりトップ・カットが映る。  街の夜景である。  水があるので大阪かなと思う。  つぎのショットもネオンまたたく夜の街。  ニュージャパンという文字が見えるので「赤坂か?」と口に出した。  これはぼくの間違いで、この映画の舞台はもちろん大阪、そして京都だ。  街並みに継いで画面はバーの店内となる。  加藤大介がいる。  森繁久弥が並んで飲んでいる。  そうだそうだ、この店に原 節子が扮する小早川家の嫁で未亡人となっている秋子が現れるのだ。  見ているうちにさまざま思いだし、またも浪花千栄子のなめらかな演技にほれぼれしてしまう。  その浪花千栄子が暮らす家の造りに陽くんが興味を示し「複雑な構造の家だなぁ、家の中に中庭がある。中庭は四角いの?」という。  小さな廊下がコの字型に囲む中庭だ。  「コの字にしつらえられた造りで、日本家屋によくあるかたちだよ」と答える。  登場人物のだれもが抑えた口ぶりでセリフを喋る。  棒読みとも思えるように感情を抑えたセリフまわしが、やがて実在感に満ちた日常会話となって迫ってくる。  小津安二郎演出の味だ。  あらためて感動しながら画面を見つめていた。  長女・文子の新珠三千代が絶妙。  中村鴈治郎とのやりとりに目を見張る。   また、きょうも印象深かったのが店員・山口信吉をやった山茶花究で、この映画を見るたびにいつもこのひとの出る場面に引き込まれてしまう。  しばらくして、あの強烈なラストシーンがやってくる。  望月優子と笠智衆のふたりがすごい。  カラスがすごい。  映画が終わり、食器を洗ったりするうちに午後3時過ぎとなる。  かみさんが帰ってきた。  陽くんと話している。  ぼくはパソコンを起動させた。  夕食後、テレビニュースで竜巻の続報に見入る。  ほどなくテレビをやめ、録画リストから『CSIマイアミ season6 #128』を選び出し、見た。  ファッションショウのさなか、小道具の手錠が金属柱に触れたとたんに感電、モデルが死ぬ。  捜査の末、被害者が服役中の麻薬シンジケートのボス、ジョン・ラドリックの妻と判明。  同じ刑務所にいるホレイショウの息子カイルにまで影響がおよぶ展開となる。  ううむ、正味40分ほどの中にこれだけのエピソードを持ち込むとは(!)  省きすぎず、もちろん無駄なく、みごとにまとめていることに感服する。

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