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WILDハンター(仮)

WILDハンター(仮)

二章

               第二章

早朝、ジャンボ村へと続く道の途中にある看板の前で一人の男が足を止めている。

「うむ、こっちで間違いないな」

 そう看板を見ながら男は言った。彼の名はドブロク・ダクシュ、ミナガルデ地方ココット村出身のハンターである。“ハンター急募!来たれ、ジャンボ村へ!”というチラシを見て、面白そうという理由でここまで来たのである。

「あともう少しか…着いたらまずは村長に挨拶だな。さてもう一頑張りするか!」

 彼は脇に置いた麻袋を背負うと、再び歩き始めた。

            ~~その数時間後~~

 太陽が昇りきる頃、ジャンボ村の入り口に彼の姿はあった。

「はぁ…はぁ…、結構距離があったな…もう真昼に近いぞ…しかし正に発展途上の村だな」

 村から聞こえてくる活気のある掛け声や作業の音を耳にしてそう言うと、彼の腹から朝から何も入れてないことに対する抗議の音があがった。

「まぁ…落ち着け…まずは村長に挨拶をしてからだ…さて、どこにいるかな?」

 腹を押さえて自分自身に言い聞かせながら、架かっている橋を渡っていくと進むごとに賑やかな空気が濃くなっていく、

(久しぶりの感覚だ…しばらく野宿のみだったから人の温もりのようなものが恋しくなっているのだろうな…)

そんなことを思いながら橋を降りる…と、そこはもうジャンボ村だ…

──コンカン…トントン……おーい、そこはもっと右だ!しっかりやれ!…
木材をはめ合わせる音、釘を打つ木槌の音、威勢のいい怒鳴り声、なんとも活気に溢れた村である。感心しながら早速彼は村長を探し始めようとした…が、村の地理が分からないことに気づき、人に聞くことにした。

「すいません、村長さんはどこにいるか分かりますか?」

 と、木材をはめ込んで枠をつくっている男に尋ねた。
「村長?さっきそこの下にある食材屋にいくのを見かけたよ」
 そういいながら男はすぐ後ろの坂を指差した。

「ありがとう、それでは」

 彼は礼をいい、その坂を下っていった。その後いく先々で同じように聞き、たらいまわしにされるとは夢にも思わず…
~およそ1時間後~
どうやら村長とやらは随分行動派のようだ、そんなことを考えながら彼は村の中央にある掲示板の脇に空腹と疲労のために座り込んでいた、すると…

「あの~もしかしてチラシを見てきてくれたハンターさんですか~?」

 と、少々まのびした少女の声が降ってきた。顔を上げると声の主と思しき給仕服を着た少女が立っていた。声を出す気力も失せていたのでうなずいて答えると、

「よかった~村長も大工のお弟子さんによそから村長を訪ねてきたと聞いて探
していたんですよ~本当に見つかってよかった~」

 どうやら行き違いになっていたようである…

「村長~こっちにいましたよ~」

 彼女が村長を呼ぶ声を聞きながら、彼はやっと探し人が見つかった安堵と朝から歩きっぱなしだった疲労とで深い眠りへと落ちていった。

──トンカン…トンカン…

「う…ん……?…ここは?」

 彼は外の物音で目覚めると、ベッドの中にいることに気がついた。困惑しながらとりあえず、体を起こして今までのことを思い出そうと努める。

「え~と…俺はたしか、村長に会おうとして村中をたらいまわしにされて…」

「その後掲示板のところで倒れたんだニャ♪」

「そうそう…それで掲示ば…って…だれだ!?」

 軽快な声のした方を見ると、一匹のアイルーがこちらを眺めていた。

「おはようニャ♪といってももう昼過ぎなのニャ~♪」

 まるで歌でも歌うような軽やかさでアイルーが言った。まだ色々と整理できていなかったが、とりあえず彼はアイルーに挨拶を返し、誰が自分をこの部屋に運んでくれたのかを聞いた。

「親方が担いできたニャ♪それから村長から伝言があるニャ♪ニャ~と…目が覚めたら酒場で待っていて欲しいそうだニャ♪あ…そうニャ!あとこの家は今後自由に使って構わないニャ♪」

「そうか、なら酒場へ行くか…じゃあ君も自分の家に帰っていいよ」

「ニャ?アイルーはご主人様のお世話をするために雇われたアイルーなのニャ♪だからここはアイルーの家でもあるんだニャ♪」

「そ…そうなのか…じゃあ留守番をよろしく」

「いってらっしゃいませニャ~♪」

 妙に手回しのいいことに若干の疑問を感じつつ外に出ると、日の光が目に染みた…昨日とさほど変わらない光景が広がる村の広場の脇にある酒場へと向かう。もう作業の休憩時間は終わったのだろう…カウンターやテーブルに人影は無い、カウンターの中のウエイトレスは頬杖をついてうたたねをしている。とりあえず村長が姿を現すまで待とうと思い、カウンターに腰掛けた…と

「あれ?ハンターさん気がついたんですか?」

 眠そうな目をこすりながらウエイトレスが、話しかけてきた。どうやら客が来ると起きるようである。中々できることではない…

「あぁついさっきね…村長さんは?」

「え~と、もうそろそろ昼ごはんを食べにくるはずですよ~」

「ならこのまま待たせてもらおうかな」

「ところでハンターさんは何か召し上がります?特別に一食だけおごりますよ
~」

 食事か…と考えたところで、自分が丸一日以上食事をしていないことに気づくと同時に激しい腹の虫が鳴った…

「じゃあ適当なものを一つ…」

 恥ずかしさを隠しながらウエイトレスに告げる…

「はいっ!では適当なものを一つ…大盛りでいいですよね?」

 おかしさを堪えながらウエイトレスが聞き返すのに、彼は苦笑を浮かべながらうなずいた…その後出された料理を食べきった彼のことは、しばらく村中でうわさになった…初めて彼女の料理を完食した人として…
 そして彼が食事を終える頃、坂の下からでかい壷を背負った人影が近づいてきた…

 その壷を背負った男が、カウンターにいるドブロクに気づいて声をかけた。

「やぁ!もう起きていたんだね、体の具合は大丈夫かい?」

 振り向いて相手を確認しようとすると、ウエイトレスが

「あっ村長!」

 と、驚きの声を上げた。

(村長?)

 振り返ると、目の前に人がすっぽり入ってしまいそうな壷を背負った男が立っていた。

(随分若いな…竜人の村長と聞いていたからじいさんかばあさんと思っていたが…)

 そんなことを考えていると、

「ん?どうかしたかい?」

 間が空いたので、村長はいぶかしげに聞くと…

「いえ、ちょっと意外な人だなと思って」

 さらっと失礼なことを微笑いながらいうと、

「ははは、そうかい?」

 晴れやかに笑いながら、続けて…

「そうそう忘れない内にこれを渡しておかないとね」

 そういいながら、村長は腰に下げていた袋を外してドブロクに手渡した。重い…どうやらゼニー硬貨が入っているようだ。

「1500ゼニー入ってる、新しくきたハンターさんに渡す支度金さ。これからよろしく!……え~と」

 村長は目の前のハンターの名前が分からず困ったように頭を掻いていると…

「ドブロク・ダクシュ、こちらこそよろしく…村長さん」

 微笑いながらそう言い右手を差し出す、村長も微笑いながらその手を握る…と思い出したように村長が…

「そうそうハンター登録申請書を書いておかないとね!今日書いてドンドルマの街に送るから2~3日しないと認定書がこないけどいいかい?」

 と、すまなそうに言った。

「構わないですよ、装備も整えないといけないので丁度いいです」

 そうドブロクが言うと村長は、ありがとう、と礼を言いそして…

「じゃあ今日はドブロクさんが村の仲間になった記念に宴会だ!!パティ、今日はご馳走をたんまりつくっておいてくれよ!僕はもう少し見回ってくるから」

 と、ウエイトレス─パティというらしい─に言うと、嬉しそうに造船所の方へ鼻歌まじりに歩いていった。

「はい!腕によりをかけてつくりますよ~♪」

 元気良くパティは返事をすると、ドブロクが食べ終わった皿をひっつかんで勢いよく厨房に駆け込んでいった。

「ふっ、楽しくなりそうだ」

ドブロクは愉快そうにそうつぶやくと席を立ち、工房の方へ装備の注文をしにいった。余談だが…その後開かれた宴会に出された料理の味は想像を絶するモノであったという…


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