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Einsatz

8.カガリとナジュリア






8.カガリとナジュリア









あるパーティー
それは、六年くらい前に開かれた、風の国"ラクーシャ"とロギドヘブン連合国との親睦を深めるための大変意味のあるパーティーだった

大人や年上の人たちの中、私はポツンとテラスで空を眺めていた…



「…っはぁ~~」

「溜息を一つ吐く度に幸せが一つ逃げる」

「?! 誰ですか?!」



驚いて振り返ると、そこにいたのは金髪の少年…?
どうみても見た目男で、金色の短髪に茶色がかった金色の瞳を持つその人は、黒色の羽織袴を着ていた
そして、腰のところには、場違いにもほどがあると思わせるような三本の刀



「お初にお目にかかる。ロギドヘブン連合国の国家代表を務める、カガリ・L・ブラックだ」



(あ、カガリ・L・ブラックって首長の娘さん?!前言撤回!金髪の少女…)



「私は風の王族のナジュリア・ブロウバードです。あの、私に…何か…?」

「いや、テラスを見たら同い年くらいの子がいたからな…良ければ、話さないかなと思って」

「……よ、喜んで!!」



テラスのベンチに二人で座って、空を見ながら話した



「空ってさ、なんかいいよな」

「カガリさんは空が好きなんですか?」



私は聞き返した
すると、



「カガリ」

「え?」

「呼び捨てで構わない」

「なら、私もナジュって呼んで」



二人はますます仲が良くなった気がした
呼び方を変えただけなのに



「そう言うナジュこそ、さっき空を見ていたんじゃ…」

「ううん、私は風が好きなの!!」

「風………?」

「うん!私が落ち込んだり、悲しんだりしてる時、必ず風が吹いて慰めてくれるの!」



大丈夫だよ!頑張れ!って…と私は続けた
カガリはちゃんと、それに答えたくれたの



「ふ~ん。ナジュは風に好かれてるんだな…ま、風の王族だから当然っちゃ当然だけどな」

「ん~…そうなのかも?」



二人で笑いあった
くだらない話ばっかりだったけど、すっごく楽しかったあの頃





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「へ~、そんな事が…」



部屋でカガリからの手紙を読んでいると兄が入ってきた



「ナジュ」

「あ、お兄ちゃん」

「何やってんだよ。いい加減メシ食えよ!」



手紙に夢中でごはんも碌に食べない私に兄も、両親も呆れかけていた



「だめ。お返事書いて、お届けしてもらわなきゃ!」

「あ~、そう…」



私自身、カガリに出会ってから兄と自分を比較することは無くなっていた
でも、それを周りの大人たちは許さない





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またパーティーがあった
そして、私は泣いた



「カ、カガリ~…」

「ナジュ?どうかしたのか?」



私はカガリに全部話した
カガリは黙って全てを聞いてくれた
話し終わってカガリは言った



「そっか…」

「私、もう自信が無いの……」



私は俯いて涙をぬぐった



「良いんじゃないか?ナジュはナジュのままで」

「カガリ…?」

「…でも、今を精一杯生きれば、それでいいと思う。
 先のことなんて誰もわかるわけがない。ま、辛いことがあれば、いいことが来るってわけだ
 前に、借りたDVDに、"人生楽ありゃ苦もあるさ"って歌があって…で、私もその通りだなぁって思った」



カガリの言うことは、そのときの私にとっては大打撃を与えた
正論だって思えた



「そりゃあ、生きてる間いいこと無かったら悲しいもん!」

「自信が無いなら、もう一回自信を持てばいい。それだけだろ?」

「……うん!」



カガリは本当に何でもできて、強くて、この人がトップに立つロギドヘブン連合国ってどんな国だろうって思った
本気でこの人の役に立ちたいって思った





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私は、一ヵ月後家を飛び出して、カガリが住んでいる、ブラック邸のあるニュートラルへと向かった



「ナジュ!?どうしたんだ、突然」

「カガリの役にたちたくて…」

「そういう問題じゃ…!」



カガリは驚いた
まさか、私が家出してくるなんて思ってもいなかったみたいだから



「家なんてどうでもいい!カガリの傍にいたい!!」

「お前自身が決めたことなんだな?」

「うん」

「全ての責任を負う覚悟が出来た上で、後悔しない道を選ぶんだな?」

「うん」



カガリはやっぱり私のことを心配して、最終確認をするように、質問した
でも、やっぱり私はそれを全て肯定した
覚悟も、気持ちも最大限あるつもりだったから



「なら、私が言うことは何もない。私の傍にいてもらおうかな」





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「───それからカガリとはずーっと一緒なんだ」

「…そうか」

「さ、戻ろう?」



ナジュリアは座っていた切り株から立ち上がると、シルファーに向かって言った



「だが、しかし…」

「シルファー…逃げてばかりじゃ何も変わらないよ?シルファーが立ち向かわない限り」

「………」

「私、知ってるよ?シルファーが、竜王の弟ってことも、次の竜王の候補ってことも」

「何故?!」



思いもよらなかったナジュリアの言葉にシルファーは思わず、ナジュリアの方に振り返った



「あなたには直接あったことはなかったけど、私だって王族だもの」

「そうか…お前が風の者ということには気づいていたがな」



シルファーは目の前に差し出されている小さな手を握った
そして、立ち上がる

「ふふ。大丈夫だよ、シルファー。私がいるよ」



優しく笑うナジュリアにシルファーは思った



(大丈夫、か…そうだな。この者ならば、信じる価値はありそうだ)



手を握り合い、カガリ達がいる元の場所へ戻ろうと歩きだそうとしたとき



「シールファー─!!」

「え?っうわあぁぁぁ!!」



シロンに乗ったカガリが腰に下げている刀を両腕で構え、シルファー目掛けて突っ込んできた
危なく、一刀両断されるところだったシルファーは、命からがらカガリの突撃を回避した



「な…何の真似だ…!!!」



シルファーはぶち切れる



「それはこっちの台詞だ。ナジュ泥棒」

「こんのロリコンすけべ野郎」

「はぁ?!何の事だ!?それと、シロン、すけべは余計だ!」

「とぼけるな!いくらパートナーだからといって、誰がさらっていいと言った!!」

「ロリコンは否定しないのか!?」

「私はロリコンではない!!」



ぎゃあぎゃあと騒ぐカガリとシルファー
それに乗じてシルファーに喧嘩を売るシロン
そして、それを唖然と見つめるナジュリアとファンロック

目の前にあるのは風の城トルネードパレス…





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