068604 ランダム
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Einsatz

12.風の兄弟






12.風の兄弟









「オメガ。お前は弟は大事か?」

「ファンロックさん…あぁ、もちろんだ」

「ならば、直接、シルファーと話し合えば良い。本当に大切な者ならば…」



ファンロックは真剣な眼差しでオメガを見据えた
そこでクロウドが突然、語りだす



「…俺さぁ、ナジュは弱いから守ってやんなきゃっていつも思ってた」

「?」

「けど、帰ってきたナジュは前とは比べ物にならねぇくらい強くなってた
 きっとあいつのおかげなんだろうが、悔しすぎてよ。近づけねぇように引き離したら怒鳴り散らされた!!」

「お前の気持ちもわからなくはないが、もう少し考えなきゃだめだな」



クラウディオンがきっぱりと言った



「オメガ、…お前もその少年と同じだ。よく考え、己のすべきことを考えろ。シルファーのことも含めてだ」



もっともな意見だった
オメガはもう一度考えた…今自分はどうすればいいのか、と…

バタン 扉を開けて入ってきた者がいた
合計二人…カガリとシロンだった



「入るぞ」

「シルファーは今、中庭にいる。今はナジュが付き添っていて話を聞いている
 でも、シルファーの話を今、一番聞かなくちゃいけないのは、オメガ自身じゃないのか?」



カガリの正論に押し黙るオメガ
そこへファンロックが口を挟む



「行って来い、オメガ」

「行ったほうがいいんじゃないの?シルファーくんのところに!それで、シルファーくんの気持ち聞いてこようよ!」

「黙ってても始まらないぞ」



リューリア、クラウディオンにも背中を押され、オメガはシルファーと向き合うことを決心した



「そうだな。話し合ってみるか」

「決まりだな。」

「それじゃあ行こう」



そうして、カガリとシロンはオメガを連れて、シルファー達のいる中庭へ向かった





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「その数年前の約束は私にとって、来年も何時までも一緒にいようという約束となんら変わりなかった
 だが、オメガはその約束を忘れて、竜王の座を継いだ!」

「……うん」

「オメガは、心から竜王に選ばれた事を喜んでいた。私は、あいつに見捨てられたんだ、裏切られたんだと思ったら…」

「それでここを出たのね」

「そうだ」

「シルファー…」



ナジュリアが唐突にシルファーの腕を掴んだ
そして、ある方向を向いている
それは中庭への入り口だった
そこにはカガリとシロン──オメガもいた

オメガは前に出てシルファーに話しかける



「シル…俺は…」

「………」

「シルファー、俺はお前を…お前の事を、忘れてた訳じゃ──」

「オメガ、一つだけ聞く」

「あ、あぁ…何だ?」

「お前は、…兄さんは私を……──!?」



ドガァァン!!
シルファーの言葉を遮ったのは、ありえないはずの爆撃音だった



「何だ、いきなり?!」

「どっか爆発した?!」

「一体何が…」

「オメガ!!」

「クー、どうした?!」



混乱する皆の元に飛び込んできたのはクラウディオンとリューリアだった



「大変だ!土の国のオーガの群れが、攻め込んできた!!しかも、"闇の水晶"まで背負ってる」

「何だと!?」

「おい、もしかして…!?」



シルファーとナジュリアが視線を交わす



「竜王を出せって、ジェイムズってやつがそう言ってるの!」

「ナジュ、知ってるのか?」

「この前、ヒポグリフにさらわれた時…」

「ヒポグリフのナワバリを荒らしていた奴だ」

「あの時、シルファーが倒したはずなんだけど…」



ナジュリアとシルファーは困惑していた
倒し、追い返した相手がまた襲い掛かってきているのだ



「普段他の国の連中が来る事は滅多に無いのに…ったく、何のマネだ!」



バサァ!!
オメガは巨大な翼を持ち上げ、慌てて中庭から飛び出て行った



「オメガ?!」

「ナジュリア、ここは離れたほうがいい。オーガはただでさえ好戦的なレジェンズだ
 それが群れで突っ込んでくるとかなり危険だ。それに加え、闇の水晶を背負っているなど…」

「駄目よ!ここには、お母さんも、お父さんも、クロウドお兄ちゃんもいる!!」

「さってと、私にはやることができた。行くぞ、シロン」

「あぁ」



カガリはシロンを引き連れてその場を離れた



「シルファー!!」

「………」

「守ろうよ、助けようよ!!ここは、シルファーの故郷でもあるんだよ?!
 シルファーはわからないの?!貴方のお兄さんは…オメガはずっとこの国を守ってきたんだよ!?
 それは、竜王の義務もあるだろうけど…シルファーがいつ戻ってきても大丈夫なように」

「…オメガ…」



ナジュリアの言葉が胸に刺さる
そこでふいに先ほどのオメガの言葉を思い出した



『シルファー、俺はお前を…お前の事を、忘れてた訳じゃ──』



「ナジュリア…礼を言う。お前のおかげで目が覚めた!行こう!城を守りに!」

「うん!」



二人は頷き合い、オメガの後を追うように空へ舞い上がった





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