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百花繚乱

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2008年02月17日
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カテゴリ:小説A


015


勇人が実乃里と暮らし始めて一週間が経った頃には実乃里の様々なことがわかってきた。

まず、実乃里は物を知らなさすぎた。
孤島で一人暮らしの話を一億歩くらい譲って本当だったとしても、あの無知は神である。
第二に、実乃里は島に住んでいたころの話を嫌う。
そのような話題になると、いかなる場合でも一瞬で黙り込んで重い空気にしてしまう。
それ以外にも、実乃里が恥ずかしがり屋であるとか、とても微妙なところでズレているとことか、究極に不器用であるとか、まぁそんなことである。

「これ、何?」
毎日のように実乃里は勇人に尋ねてくる。
「冷蔵庫だよ」
というわけで勇人も実乃里の純粋な好奇心から出る質問に一々答えてやっている。
「いいか、扉を開けてみろ」
実乃里は言われるがままに扉を開けた。中からひんやりとした空気が出現する。
ひゃっ!と実乃里はかわいらしい悲鳴を上げている。
なんと愛らしいことだろう・・・
「中から冷たい空気が流れてくるだろう?人間はな、体が火照ったり、暑かったりすると体を冷やすためにその冷蔵庫に入って眠るんだ」
そう、勇人は実乃里の純粋な好奇心から出る質問に一々答えてやっているのだ。
「食べ物が入っているのに?」
「お腹がすいたりしたときに、冷蔵庫からでなくても食料を摂取できるように、わざと食べ物を冷蔵庫にいれているのだ」
「ふーん」

もう一度言おう。
勇人も実乃里の純粋な好奇心から出る質問に一々答えてやっているのだ。

「じゃぁ、この箱は何?」
「電子レンジだ」
「デンシレンジ?」
「そうだ。冷蔵庫が人間の体温を冷やすための箱と教えたな。だが、世の中には冷蔵庫で眠りすぎて体を冷やしすぎた愚かな人間がいるわけだ。そこでだ。そんな愚かな人間が体を常温に戻すために体を温めるのが、この電子レンジだ。見ておけよ」
そう言って勇人はコップに牛乳を注ぎ、電子レンジに入れてボタンを押す。
一分二十秒後に勇人は電子レンジから取り出したその牛乳を実乃里に触れさせた。
「温かいだろ?」
「うん」
「こういうことだ」
納得したご様子の実乃里を見ながら笑いをこらえる勇人である。

「でも、こんな小さな箱に人は入らないよ?」
何やら気づきましたという顔でこちらを見てくる。
なるほど鋭い指摘だ。
「いいか?人間というのは実はみんな折り畳み式なんだ。必要に応じて体を折りたたみ、コンパクトにすることができるようになっている」
「そうなの!?」
本当に驚いている。眼を見開いてこちらを見てくる。もちろん嘘なわけだが、今は気にしない。
「じゃぁ、勇人、ここでコンパクトになって!」
キラキラした瞳が本当に可愛い。しかし、無論、俺はコンパクトになる能力は備え付けていない。
「不可能だな。コンパクトになるということは無防備になるということだ。この情報社会において、いついかなる敵が現れるやもしれん。闇の組織に見つかったらやつらのアジトに連れていかれて、どんな人体実験の対象になるかわかったもんじゃないからな。だからみんな隠れてコンパクトになるんだ。誰にも見られないように、ひっそりと」
「そうなんだ・・・・」
勇人は、こいつそのうちある意味とんでもない知識の持ち主になるな、と思いながら実乃里を見つめていた。


016


私の前にとても大きな箱がある。
「これ、何?」
私は勇人に訊いた。
この世界には私の知らない多くのものが存在する。
勇人はそんな何も知らない私にやさしく答えてくれる。
「冷蔵庫だよ。いいか、扉を開けてみろ」
私はうなずいて、その未知なる物の扉を開けた。
いったい、中から何がでてくるんだろう?
ちょっぴり怖かった。
私は思い切って扉を開ける。
「ひゃっ!」
中から冷たい空気が流れてきた。すこし驚いたけど、別に中から毒蛇とかがでなくて安心した。
「中から冷たい空気が流れてくるだろう?人間はな、体が火照ったり、暑かったりすると体を冷やすためにその冷蔵庫に入って眠るんだ」
この中で寝るの?
この世界ってすごいな。
でも、中にはバターとか、チーズとかの食べ物も入っていた。
「食べ物が入っているのに?」
私は訊いてみた。
「お腹がすいたりしたときに、冷蔵庫からでなくても食料を摂取できるように、わざと食べ物を冷蔵庫にいれているのだ」
「ふーん」
私は感心した。
そうか、寝ててもお腹すくもんね。当たり前じゃない。私はいろいろな面で納得する。

私は冷蔵庫の隣を見た。
何やら奇妙な箱が置いてある。
「じゃぁ、この箱は何?」
本当に興味深いものだった。
黒くて、なんかボタンがたくさん付いていて。
「電子レンジだ」
「デンシレンジ?」
「そうだ。冷蔵庫が人間の体温を冷やすための箱と教えたな。だが、世の中には冷蔵庫で眠りすぎて体を冷やしすぎた愚かな人間がいるわけだ。そこでだ。そんな愚かな人間が体を常温に戻すために体を温めるのが、この電子レンジだ。見ておけよ」
そう言って勇人はさっきの冷蔵庫といわれる人間冷却箱から牛乳を取り出してコップに注ぎだした。
なにをするつもりだろう?
勇人はその牛乳をその奇妙な箱の中に入れる。そしてボタンを押した。
奇妙な箱は中が急に橙色に光って中にある牛乳の入ったコップを回している。
その動きも奇妙なので私は見入ってしまった。
どれくらい経っただろう。
急に奇妙な箱からピーと音が鳴った。
勇人は中から牛乳の入ったコップを取り出して私に触らせる。
「温かいだろ?」
「うん」
「こういうことだ」
すごいな。人間冷却箱もあれば人間温め箱もあるんだと、ついつい感心してしまう。

でもそこで新たな疑問が生まれた。
「でも、こんな小さな箱に人は入らないよ?」
「いいか?人間というのは実はみんな折り畳み式なんだ。必要に応じて体を折りたたみ、コンパクトにすることができるようになっている」
「そうなの!?」
私はこれまでで一番驚いた。
人間が折り畳み式でコンパクトにできるなんて知らなかったのだ。
どうなるんだろう。急に気になってきた。
でも私はそのコンパクトになる方法を知らなかった。
「じゃぁ、勇人、ここでコンパクトになって!」
私は身を乗り出して勇人を見た。
一瞬勇人の顔が曇る。
「不可能だな。コンパクトになるということは無防備になるということだ。この情報社会において、いついかなる敵が現れるやもしれん。闇の組織に見つかったらやつらのアジトに連れていかれて、どんな人体実験の対象になるかわかったもんじゃないからな。だからみんな隠れてコンパクトになるんだ。誰にも見られないように、ひっそりと」
「そうなんだ・・・・」
すこし残念だった。
私もいつかコンパクトになる日が来るのかな。
そんなことを思いながら勇人を見ると勇人は手でお腹を押さえて苦しそうに歪んでいた。
お腹でも痛いのかな。
そんなことを思っていた。






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最終更新日  2008年02月17日 14時25分39秒
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